エネルギー
エネルギー(テンプレート:Lang-de-short、テンプレート:Lang-en-short)とは、
- (物理学)仕事をすることのできる能力のこと[1][2][3]。物体や系が持っている仕事をする能力の総称[4]。
- 1. の意味から転じて、物事をなしとげる気力・活力のこと[1]。活動の源として体内に保持する力[2]。
- エネルギー資源のこと[1][2]。
概要
現在用いられているようなエネルギーという概念が確立したのは19世紀後半のことである[5]。
なお、概念の確固たる成立はともかくとして、この用語がいつから使われるようになったかと言うと、19世紀のはじめに、トマス・ヤングが1807年に著書A Course of Lectures on Natural Philosophy(『自然哲学講義』)の中で、従来使われていた「vis(力)」という用語の代わりにこの用語を使い始めたのである[4]。
「エネルギー」という語はドイツ語の Energie が日本語に持ち込まれたもので、その語源となったギリシア語の ἐνέργεια(energeia)は、ἐνεργός(energos)に由来する。これは、en + ergon という構成の語で、en は前置詞で、ἔργον(ergon、エルゴン)は「仕事」を意味する語である。ἔργονに前置詞 ἐν をつけた ἐνεργόςに由来する。つまり、「物体内部に蓄えられた、仕事をする能力」という意味の語である。エネルギーという概念は「仕事」という概念と深いかかわりがあるのである。
このようにエネルギーという語・概念は、物体が仕事をなし得る能力、を意味したが、その後、自然科学の説明体系が変化し、熱・光・電磁気もエネルギーとされるようになり、さらに(20世紀初めには)、質量までがエネルギーの一形態である、とされるようになった[2]。
また、エネルギーという用語は、エネルギー資源、つまり様々な分野に必要な動力の源のことも意味している[2][1]。エネルギー資源の利用の構成は、何度かのエネルギー革命を経て変わってきている。最近では、一次エネルギー資源が枯渇性エネルギーと再生可能エネルギーに分けて考えられるようになっており、世界で再生可能エネルギーへの移行が進行中である。
自然哲学
現代において「エネルギー」という語で呼ばれている概念には、ひな形(あるいは萌芽と呼んでもよいもの)があり、その概念は、ヨーロッパ近世においては「エネルギー」とは呼ばれておらず、ラテン語 で vis(ヴィス、力の意)と呼ばれていた。この概念が様々な経緯を経て、現在の「エネルギー」という概念に似たものに変化してゆくことになった。
1600年頃のこと、ガリレオ・ガリレイは、釘の頭に(金づちよりもはるかに)重い物(石など)をのせても、釘は木の中にめりこんでゆかないのに、それよりも軽い金づちでも振って打つだけで、釘が木材に入ってゆく、ということを、ひとつの問題として取り上げ、運動する物体には何らかの固有の「ちから」がある、との考え方を示した。
デカルトは、1644年に出版された著書において、衝突という現象においては、物体の重さと速さの積(現在の式で言えば、おおよそ mv に相当するような量)が保存されるとし、この量こそが物体の持つ「ちから」である、と述べ、この量は保存されている、と主張した。
ライプニッツは、重さと速さの二乗の積(現在の式で言えば、おおよそ <math>mv^2</math> に相当する量こそが「ちから」である、とし、この量が保存されている、と主張した。なお当時、静力学の分野では、vis mortua(死んだ力) という概念があったが、その概念と対比ししつつ、ライプニッツはその力(<math>mv^2</math>)を vis viva(生きている力、活力)と呼んだ。
デカルトの考え方とライプニッツの考え方では、数式上異なった結論が導き出される。デカルト派の人々とライプニッツ派の人々の間で「ちから」の解釈に関する論争が起き、この論争は実に50年ほども続いた。この論争を the vis viva dispute 活力論争と言う。
その後、ガスパール=ギュスターヴ・コリオリが、「vis viva 活力 は (1/2)<math>mv^2</math>だ」とした[4]。これは、今日で言うところの「運動エネルギー」に相当することになる[4]。
自然科学
エネルギーには様々な形態が存在し、また視点によって分類方法も多々存在する。多くは何らかの機器を使用することで相互に変換することができる。例えば、光エネルギーは太陽電池によって電気エネルギーに変換することができ、より狭義な例では、運動中の物体の高さを斜面などで変位させることによって運動エネルギーは位置エネルギーに変換することができる。
また、熱という物理量も熱の仕事当量という概念によってエネルギーへ帰属することが出来る。 20世紀前半に発表された特殊相対性理論においては、エネルギーは質量と等価とされており、質量はエネルギーのひとつの形態だと解釈することができる。 このように位置(ポテンシャル)・光・電気・熱(運動)・質量と、さまざまな形態を持って現れているものがエネルギーという概念で結びつけられた。
エネルギーという概念が用いられる以前、vis という名称で類似概念が論じられていた時代から、すでにこれの保存則を主張する人はいた。だが、そうした保存則というのは、一旦信じられたものの、後の時代になってから、実は成立していなかった、とされることが、科学史的には何度も繰り返していた。20世紀初めにアインシュタインが特殊相対性理論を提唱した後も、大半の物理学者は、エネルギーに保存則が成立するかどうかは怪しい、と考えていた。その後(確かな根拠があるわけではないが[6])、エネルギーの合計は保存されるのではないかと考える人や、きっと保存されているのだろう、と信じる人が増えてきた。こうして、エネルギーに保存則が成立していると見なした時の、その保存則の呼称が「エネルギー保存の法則」である。
最近の日本の初学者向け・高校生向けの、古典力学を教える教科書などでは、「外部にした仕事が0であるとすれば、変換前後におけるエネルギーの総和は変化しない」と教える。
エネルギーの単位
テンプレート:物理量 国際単位系におけるエネルギーの単位はジュール (J) である。しかし、分野によっては他の単位が用いられることもある。例えば、栄養学や食品の世界ではカロリー (cal) が用いられる。他に以下のような単位がある。
- エルグ (erg) = 10-7 J
- キロワット時 (kWh) = 3.6 MJ
- 電子ボルト (eV) = 1.602 176 487(40)×10−19 J
- 英熱量 (Btu)
- 石油換算トン (toe) = 41.868 GJ
Gcal (109) |
MBtu (106) |
GJ (109) |
MWh (106) |
toe (石油換算トン) |
tce (石炭換算トン) |
---|---|---|---|---|---|
10 | 39.6832 | 41.8680 | 11.6300 | 1 | 1.4286 |
0.2520 | 1 | 1.0551 | 0.2931 | 0.0252 | 0.0360 |
0.2388 | 0.9478 | 1 | 0.2778 | 0.0239 | 0.0341 |
量子力学的体系におけるエネルギー
量子力学においては、古典力学とは異なり、定常状態でとりうるエネルギー固有値 E には最低の値があり、連続的な実数値がすべて許されるわけではなく、ある範囲においては、離散的な値(=とびとびの値)しか許されなくなる[5]。したがって、相対性理論で唱えられているエネルギー保存も、あくまでこの離散値の選択肢の中でかんがえねばならない[5]。エネルギーの値がこのように離散的になることの効果が、特に、低温での熱的な性質に顕著に現れる[5]。
エネルギーの種類
エネルギー資源
テンプレート:Main 産業・運輸・消費生活などに必要な動力の源のことをエネルギー資源と呼んでいる[1]。
18世紀までは主要なエネルギー源は薪、炭、鯨油などであったが、19世紀の産業革命のころからそれらにかわって石炭、水力、石油が主に用いられるようになり、20世紀には核燃料が登場した[8]。
最近では、一次資源が枯渇性エネルギーと再生可能エネルギーに分けて考えられるようになっており、再生可能エネルギーの開発とそれへの移行が進行中である。
エネルギー消費の構成が急激に大きく変化すること、特に第二次世界大戦後の石炭から石油への急激なエネルギー源の転換などを指して[9]、エネルギー革命と言う[9]。
脚注
関連項目
テンプレート:ウィキポータルリンク テンプレート:Sister テンプレート:Sister
テンプレート:自然テンプレート:Link GA- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 テンプレート:Cite book
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 物理学辞典、培風館、1998年、pp.191-193。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 テンプレート:Cite book
- ↑ 保存則となると、全宇宙の性質に対する命題となるので、結局、形而上学的な命題となる。20世紀前半でも大半の物理学者たちは疑っていた。その後も現在までに保存則を支持するような決定的な証拠が得られたというわけではない。
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 9.0 9.1 テンプレート:Cite book