自動車
自動車(じどうしゃ)とは、車両の下に複数の車輪を設置し、原動機の動力を車輪に伝えることによって陸上を走行する輸送機関である。鉄道と違って専用の軌道を必要としないため、操作者により自由に進路を設定できることが大きな特徴。英語ではautomobile、motorcarなどという。
目次
概要
一般的には、三輪以上で乗員が車室内に備えられた座席に座る構造を備えたものを「自動車」として認識されているがテンプレート:要出典、法規上はオートバイや無限軌道によって走行する車両、他の自動車によって牽引される車両も自動車として定義されている。一方、排気量が50cc以下(または定格出力が0.6kW以下)の車両(ミニカーを含む)や架線を用いるトロリーバスは法規上の「自動車」に含まれない。
英語のautomobileはフランス語を語源としていて、カタカナでは基本的に「オートモービル」と表記される。日本語の自動車という単語は、先述のautomobileに由来しており、"auto"は「自ら」、"mobile"は「動くもの」という意味を持つことから作られた。同じ漢字圏でも中国語では別の語を、韓国語では日本語由来の語を用いる。英語で単にcarと言った場合、馬車や鉄道車両なども含めた車両全般を指す。
自動車を動かすこと、操ることを運転という。ロボットカーとも呼ばれる自動運転技術も研究されている。主に人や荷物の輸送手段として用いられるが、運転操作自体を娯楽やスポーツとしたり、所有すること自体を趣味として保有されるほか、単なる資産として保有されたりといった例も少なくない。特に高級車の保有はステータスシンボルとしての意味合いがある。
歴史
最初の自動車は蒸気機関で動く蒸気自動車で、1769年にフランス陸軍の技術大尉ニコラ=ジョゼフ・キュニョーが製作したキュニョーの砲車であると言われている。この自動車は前輪荷重が重すぎて旋回が困難だったため、時速約3キロしか出なかったにもかかわらず、パリ市内を試運転中に塀に衝突して自動車事故の第一号となった[1]。イギリスでは1827年ごろから定期バスとして都市部および、都市間で広く用いられ、1860年ごろにはフランスでも用いられるようになった。1885年に、フランスのレオン・セルボレが開発し1887年に自動車に搭載したフラッシュ・ボイラーにより蒸気自動車は2分でスタートできるまでに短縮された。1900年ごろにはアメリカ合衆国で、石炭の代わりに石油を使った蒸気自動車が作られ、さらに普及していった。この頃は蒸気自動車の方がガソリン自動車よりも騒音が少なく運転が容易だった。アメリカ合衆国では1920年代後半まで蒸気自動車が販売されていた。
1865年にイギリスで赤旗法が施行された。当時普及しはじめた蒸気自動車は、道路を傷め馬を驚かすと敵対視されており、住民の圧力によってこれを規制する赤旗法が成立した。この法律により、蒸気自動車は郊外では4マイル(6.4km)/h、市内では2マイル(3.2km)/hに速度を制限され、人や動物に予告するために、赤い旗を持った歩行者が先導しなければならなくなった。イギリスでの蒸気自動車の製造、開発は、この赤旗法が廃止される1896年まで停滞することになり、それに続くガソリン自動車の開発においても、ドイツやフランスが先行する事になる。
1870年、ユダヤ系オーストリア人のジークフリート・マルクス(Siegfried Samuel Marcus)によって初のガソリン自動車「第一マルクスカー」が発明された。1876年、ドイツのニコラウス・オットーがガソリンで動作する内燃機関(ガソリンエンジン)をつくると、ゴットリープ・ダイムラーがこれを改良して二輪車や馬車に取り付け、走行試験を行った。1885年にダイムラーによる特許が出されている。1885年、ドイツのカール・ベンツは、ダイムラーとは別にエンジンを改良して、車体から設計した3輪自動車をつくった。ベンツ夫人はこの自動車を独力で運転し、製造者以外でも訓練さえすれば運転できる乗り物であることを証明した。ベンツは最初の自動車販売店を作り、生産した自動車を数百台販売した。また、ダイムラーも自動車会社を興した。現在、ガソリン式自動車の発明者はダイムラーとベンツの両人とされることが多い。
初期の自動車は手作りであるため非常に高価なものであり、貴族や大金持ちだけが所有できるものであった。そして彼らは自分たちが持っている自動車で競走をすることを考えた。このころに行われた初期の自動車レースで活躍したのが、今日もF1などで活躍するルノーである。このころはまだガソリン自動車だけでなく蒸気自動車や電気自動車も相当数走っており、どの自動車が主流ということもなかったが、1897年のフランスでの自動車レースでガソリン自動車が蒸気自動車に勝利し、1901年にはアメリカのテキサスで油田が発見されてガソリンの供給が安定する一方、電気自動車や蒸気自動車は構造上の問題でガソリン自動車を越えることができず、20世紀初頭には急速に衰退していった[2]。
1908年には、フォードがフォード・T型を発売した。フォードは、流れ作業による大量生産方式を採用し自動車の価格を引き下げることに成功した。これにより裕福層の所有物であった自動車を、大衆が所有することが可能となり自動車産業が大きく発展するさきがけとなった。ヨーロッパでは1910年ごろに、大衆の自動車に対する欲求を満たすように、二輪車の部品や技術を用いて製造された小型軽量車、いわゆるサイクルカーが普及していった。1922年に、フォードと同様の生産方法を用いたシトロエン・5CVやオースチン・セブンなどの小型大衆車が発売され、本格的に自動車が普及していく事になった。また、それに伴いサイクルカーは姿を消していくことになる。
電気自動車や燃料電池を動力源とした自動車もあり、前者は今でもトロリーバスとして存在している車両もある。
上記のT型フォードなどの大衆車の普及によって、一般市民が自動車を所有することが可能となり、自家用車が普及すると、それに伴って自動車を中心とする社会が形成されるようになり、自動車が生活必需品となっていく、いわゆるモータリゼーションが起こった。世界ではじめてモータリゼーションが起こったのは1920年代のアメリカ合衆国であり、次いで西ヨーロッパ諸国においても起こり、日本でも1970年ごろに本格的なモータリゼーションがはじまった。個人用自動車の普及は、鉄道や船といった公共交通機関に頼っていた時代に比べて利用者に圧倒的に高い自由度をもたらし、個人の行動半径を大きく拡大させることとなった[3]。
共有の歴史
所有者に重いコストがのしかかる乗り物という存在を、所有はせず活用はする、という発想は非常に古くからあり、まだ自動車が無かった時代、例えば古代ローマにも、馬車を現代のタクシーのように従量式で使う手法も存在したことがあったともいう[4]。1620年にはフランスで貸馬車業が登場し(言わば、現代のレンタカーに当たる)、1662年にはブレーズ・パスカルが史上初のバスとされる5ソルの馬車を発明しパリで営業を開始した、ということには言及しておくと文脈や背景がよく分かるだろう。自動車の歴史の中のそれについては、1831年にゴールズワージー・ガーニーが、同年にウォルター・ハンコックが蒸気式の自動車で乗り合いバスの運行を開始したことが挙げられる。1871年にはドイツ人de:Wilhelm Bruhnによってタクシーメーターが発明され、1897年にはゴットリーブ・ダイムラーが世界初のメーター付きタクシー(ガソリン車)Daimler Victoriaを製造した。レンタカーの最古の歴史ははっきりしないが、米国における最初のレンタカー業者は、初の量産車とされるT型フォードを用いて1916年から営業した、と言われることはある。その最初のレンタカー業者とされるネブラスカの男Joe Saundersは、車にメーターを取り付け 1マイルあたり10セントの方式で貸したという[5]。 現代では1970年代にスイスなどでカーシェアリングも行われるようになり、現在にいたるまで世界各国に広がり、自動車を所有せず利用する形態は多様化してきている。
個人所有の歴史
日本では個人所有した自動車を「マイカー」と和製英語で呼ぶことがある。世界最初の個人所有のブームはフォードのT型車の大量生産によって引き起こされた。大量生産することで販売価格は低下して個人が自動車を所有できるようになった。大量生産の手法は、ベルトコンベア生産などの概念ともに分業生産手法を社会に広く出現させた。これは、人間の行動欲求が自動車という高価で居住には不要の移動のための製品を買うことからはじまった。贅沢や不要なものを獲得する行動である。所得の増大は、自動車の個人所有の一時的な増大を引き起こす。自動車の個人所有の急激な増加は「マイカーブーム」とも呼ばれる。近年では中国での個人所有車の増加[6]が見られるなど、マイカーブームは国家の経済発展に付随するものといえよう。
産業
テンプレート:Main 一台一台の自動車は多数の部品でできており、多くの部品製造にも多くの人員や技術が必要である。そのため、自動車製造業そのものが大きな産業であり、自動車を製造するために必要な自動車部品や電子機器、鉄鋼などの周辺分野や素材産業も含め、ありとあらゆる産業から部品や資材を購入し、それらの産業を支えている。世界的には、1980年代以降、自動車産業の多国籍企業グループへの集約が進んでいる。
しかも自動車の全世界での製造台数は大きいので、自動車製造は巨大産業であり、消費者が直接見聞きする自動車メーカーだけでなく、そうしたメーカーに自動車の材料や数万点におよぶ部品(鋼材やガラスにはじまり、座席や電子機器など、小さいところではネジ類1本まで)を供給している、消費者からは直接的には見えない諸企業(鉄鋼産業・ガラス産業・合成樹脂メーカー、電子機器メーカー、ソフトウェア製造業まで、数え切れないほどの企業)の売上にも影響を及ぼしている。(ちょうど住宅産業の売上が、住宅建築に必要な素材や部品を供給する多数の企業の売上と連動するのと同じ関係にある)。
世界的に見ると自動車産業内での企業間の競争は激しく、価格競争の激化や経営内容悪化や淘汰などが起き、1980年代以降、多国籍企業グループへの集約が進んでいる。
社会に及ぼす影響
自動車は使用者に多くの便益を与えるが、反面、生命・健康・安全などの市民の基本的権利を侵害する存在である。この損失は社会全体が被るものであり、社会的費用ととらえることができる[7]。
自動車が社会に及ぼす原因は、自動車が自走することに起因する交通事故と、自動車が燃料を燃焼することに起因する排気ガスの排出や騒音などによる環境問題が主な問題である。また自動車が高性能な乗り物へと改良されるようになるに連れますます運転マナーの悪い乗り方を好む者が現われ問題とされるようになっている。これは近代化による交通の発達により、自動車の利用者が急速に増大し、それによって個々の運転者による交通マナーという概念が生まれ、社会がそれを求めるようになったという背景もある。
その反面、製造には大規模な設備投資が必要となることが多く、その企業や工場だけでなく、協力会社なども集まってきて企業城下町を形成するなど、立地周辺への経済的効果は非常に大きいといえる。
交通問題
自動車が走行する道というのは、市街地においては人も歩行するために使用するものであるため、どうしても交通が干渉してしまう。そのため自動車が走行するための秩序や環境を整備する必要が第一に迫られた。自動車が世間に登場した際、歩行者と自動車の交通空間が明確にされておらず、歩行者が歩行する中を自動車が走行することになった。最初はそれで問題がなかったが、次第に自動車の交通量が増えていくと、歩行者との干渉が問題となり、歩道と車道というふうに明確に区別された。さらに自動車が増えると交差点での行き来が問題となったため、交通信号が整備され、法律によっても自動車が整備されるようになった。また自動車の登場により平坦な路面が求められるようになったため、自動車が走ることを考えて路面はアスファルトやタイルで舗装されるようになった。自動車が高性能化し高速走行が可能になるようになると、高速に自動車が走行できるよう高速道路が整備されるようになった。
このように自動車が走行するための条件は20世紀の早いうちにある程度整備されるようになってきたが、質量の大きい自動車という乗り物が歩行者のすぐ傍を通り、時には干渉するということから交通事故が未だ大きな問題となっている。また、歩行者が死亡する事故比率が各国と比べて多いということもあり歩行者優先意識の啓発が必要とされている。また、自転車などの軽車両は本来車道を走行するのが正しい姿だという知識、意識の欠如も目立つ。交通事故は時に死者を出し、交通が妨げられることによって経済にも影響を及ぼすこともある。
環境問題
自動車は環境にも影響を与える。一般の自動車はガソリンであり、自動車の走行するための燃料となる化石燃料は、燃焼時に二酸化炭素を主に排出するが、石炭や、とりわけ質の悪い燃料では二酸化炭素以外の窒素酸化物や硫黄酸化物などが黒煙と共に大量に排出する。そのため地球温暖化への関与や大気汚染、酸性雨の原因ともいわれており、こうした排出の削減が、自動車の増加と共に叫ばれるようになった。そのため燃費の向上による燃料の有効活用や触媒による窒素酸化物、硫黄酸化物の分解の技術も向上してきた。さらに、最近では、ガソリン車からハイブリッド・カーや電気自動車などへとシフトすることでこれらの問題を解決すべく、多くの自動車メーカーが開発にしのぎを削っており、各国政府によっても購入者に対し様々な優遇措置がとられるようになってきている(2012年現在)。根本的な解決として、先進国の特に都市部において、環境にもやさしく健康増進にも効果のある自転車への乗り換え、活用が奨励されている国や地域も多い。
大量に自動車の走行する道路沿いでは大気汚染だけでなく走行による振動とそれに伴う騒音と言った様々な公害が大きな問題となる。
さらに自動車の買い換えサイクルが生まれるようになると、使い終わった古い自動車の廃棄処分の問題も生まれた。そのため自動車のリサイクルというのも大きな問題である。
その他の問題
自動車利用犯罪 :自動車が生活に密着していなかった頃は、犯罪者の居住地域と犯罪地域は密接な状態にあった。自動車の普及につれ、この前提は既に崩れている。他の交通機関でも犯罪を犯した地域からの脱出は可能であるが、公共機関では移動時間帯が限られている点や、(駅にカメラが設置されている電車や、運転手が目撃者となり得るタクシーなど)匿名性を保つことが困難な点などの関係で、犯罪者が犯罪を犯した地域から離れる場合の手段として自動車移動を用いたもの(自動車利用犯罪)が増えていることが、毎年発表される警察白書から確認できる。この問題には、高速道路での移動や盗難車による移動も含まれる。この問題に対し自動車ナンバー自動読取装置設置などの対策が施されているが、高価な装置であることなどの理由から設置場所は限られており、ナンバーを見難くするカバーを付ける者がいるなど、完全な対策になってはいない。
人体への影響
乗り物酔い、シックカー症候群についてはシックハウス症候群をそれぞれ参照。
スポーツ、趣味としての自動車
自動車は多彩な車種・形状があり、また用途によって様々な自動車が使い分けられる。単に走ると言っても、整備されたコースだけでなく条件の悪いコースなどもあり、様々な楽しみ方がある。そのような様々な観点から自動車を乗ること、集めることなどを趣味にする人も多い。特に遠方の行楽地に向かう際に自動車による移動を主目的の一つとしたり、目的地を決めずにただ自動車を運転する周遊旅行は一般に「ドライブ」[8]あるいは「遠乗り」と呼ばれている。また、自動車を操縦しより高速なスコアタイムを目指すことはスポーツの一種として認識されており、モータースポーツと呼ばれる。とにかく速く走るためのスポーツ専用の自動車であるフォーミュラカーで走ることが全てではなく、市販車や自作車でのレース、また長時間の運転となる耐久レースなど、多彩なものが世界各国で開催されている。フォーミュラ1(F1)やインディカー・シリーズ、ル・マン24時間レースといったレーシング大会は特に著名な国際大会である。趣味としては、自動車を走行させるだけに限らず、ミニチュアカーと呼ばれる精巧な自動車のミニチュアの製作や収集、また部品の収集や写真の撮影など多岐に渡る。走行する自動車に関する趣味としては、様々な自動車に乗車することを趣味にしたり、自動車の改造やメンテナンスを趣味にすることもある。 またクラシックカーと呼ばれる過去に製造された車両を復元、保存し歴史的価値を見出す愛好家もいる。このように、自動車は単に人や物資を輸送するだけの存在に留まらない。
分類
それぞれの国で法規によって排気量や車体の大きさ、輸送能力などによって分類され、税区分や通行区分、運転免許の区分の基準とされる。日本においては、道路交通法第三条により、大型自動車、中型自動車、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、大型自動二輪車、普通自動二輪車の7種類に分類され、道路運送車両法第三条により、普通自動車、小型自動車、軽自動車、大型特殊自動車および小型特殊自動車に分類されている。
構造
自動車の構造はその歴史のなかで様々な形態が現れ、変遷してきた。ここでは現在市販されている自動車として一般的なものを示す。したがって、いくつかの自動車には例外があり、特に競技用や工作用など、特殊な用途に特化したものについては構造が大きく異なる例もある。
それぞれの部分における整備に関しては「自動車の整備」の項が詳しいテンプレート:See also
車体構造
車体の強度部材に用いられる材料は鋼鉄が主流で、近年ではアルミニウム合金や炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料を用いたものも市販されるようになってきている。骨格部材以外のパネル部分には合成樹脂を用いる例も増えてきている。
構造は大きく分けてフレーム形式とモノコック形式とに分けられる。フレーム形式は独立した骨格部材に車室を構成する外殻構造が載せられたもので、古くから自動車の車体構造として用いられ、現在でも貨物車を中心に採用されている。モノコック形式は車室を構成する外殻自体が強度部材として作られた構造で、20世紀半ば頃から自動車の車体構造として普及しはじめて、現在の乗用車のほとんどで採用されている。
原動機
現在は内燃機関が主流で、電気モーターを用いるものも製品として量産されている。内燃機関では、ピストンの往復運動をクランクシャフトで回転運動に変換して出力するディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどのレシプロエンジンが一般的である。それぞれに4サイクルと2サイクルがあるが現在では4サイクルが主流となっている。火花点火機関の燃料にはガソリンが用いられるのが主流となっているが、環境性能や単価を理由にLPGやLNG、アルコール系燃料が用いられる場合もある。近年では、黒煙などが排出されにくいディーゼル車や、内燃機関と電気モーターを組み合わせたハイブリッドカー、電気自動車なども普及してきている。
- Honda RA005E engine 2005.jpg
レシプロエンジン
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ハイブリッドカー (ホンダ・インサイト) のエンジン
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蒸気自動車
動力伝達
動力は、原動機が効率的に出力を発揮する回転速度から走行に適した回転速度へと変速機によって減速される。変速機は、運転者が複数の減速比から選択して操作するマニュアルトランスミッション(MT)と、自動的に選択または変化するオートマチックトランスミッション(AT)に大別できる。MTは基本的に減速比を切り替える際などにはクラッチを操作する必要があるが、このクラッチ操作を自動化したものはセミオートマチックトランスミッションと呼ばれる。近年は、MTの基本構造を持ちながらクラッチ操作と変速操作が自動制御された、自動制御式マニュアルトランスミッション (AMT)も普及し始めている。電気自動車の場合は、原動機の効率的な回転速度の範囲が広いため減速比を切り替えない変速機を採用し、原動機を逆回転させることが可能なので後退ギアを持たない場合がほとんどである。
マニュアルトランスミッションの場合、前進の変速比は4段から8段程度が一般的だが、副変速機を用いて変速段数を2倍とする例は貨物車を中心に少なくない。
オートマチックトランスミッションは、トルクコンバータとプラネタリーギアを組み合わせたものが広く普及している。日本の乗用車では、CVT(Continuously Variable Transmission) と呼ばれる無段変速機の採用例が増えてきている。いずれの方式においても、運転者の操作によって「Lレンジ」などのように減速比の範囲を限定する機構や、「マニュアルモード」などと呼ばれる任意の減速比に固定できる機構を備えている。
セミオートマチックトランスミッションは日本の法規ではAT車に分類され、日本車の例ではトヨタ・MR-SのシーケンシャルMTがある。
操舵装置
操舵は前輪の方向を変えて車体を旋回させる前輪操舵方式が一般的で、その機構全体を指してステアリングと呼ぶ。操作部を「ハンドル」あるいは「ステアリング・ホイール」と呼ぶ。ハンドルの回転はボール・ナットやラック・アンド・ピニオンなどの機構を介して車輪を左右に押す作用に換えられる。近年は油圧や電動モーターを用いて運転者のハンドル操作を助力するパワーステアリングが広く普及している。
旋回中は内側の車輪のほうが小さな半径の弧を描く軌跡を通過するため、これに合わせて舵角に差を持たせていて、例えばハンドルを右に切ると右タイヤの方が舵角が大きくなるように設計されている。こうした機構をアッカーマン機構と呼ぶ。
制動・拘束装置
ブレーキの操作は、足踏み式のペダルで行うものがほとんどである。ペダルに加えられた力は油圧や空気圧を介してブレーキ装置に伝達し、摩擦材を回転部分に押しつけ、運動エネルギーを熱エネルギーに変換してスピードを落とす。市販車のほとんどが、エンジンの吸気管負圧や空気圧を利用した、ペダル踏力を軽減する倍力装置を有している。
駐車時に車体が動き出さないように拘束するパーキングブレーキはワイヤ式または空気式のものが多い。乗用車の場合はブレーキ装置を制動用のものと共用する構造がほとんどであるが、希に制動用のディスクブレーキの内周に拘束用のドラムブレーキを備える場合がある。貨物車ではミッション(変速機)出力部にドラムブレーキを備える例や車輪にパーキング用の機構を備える例が多い。
下り坂などで、フットブレーキに頼り過ぎるとフェード現象やヴェイパーロック現象が起き、制動力が著しく低下してしまうことがある。これらを防ぐためにエンジンブレーキを利用することが運転免許教習でも指導されているが、エンジンブレーキの効果が得られにくい大型の貨物車では排気ブレーキやリターダを搭載する車種も多い。
高速からの制動には、放熱性に優れるディスクブレーキが有効であるが、重量が大きい車両の制動や、勾配での駐車などには、自己倍力作用の働きで、拘束力の大きいドラムブレーキが有利となる[9]。
運転装置
運転者の座席は座部と背もたれを備えた椅子形のものが主流である。運転席の正面には操舵用のハンドルとアクセルペダルとブレーキペダル、あるいはクラッチペダルが備えられているのが標準的な自動車の構造である。ハンドルは円形が一般的だが、オート三輪では棒状のハンドルも存在した。また、近年は楕円形のハンドルを採用している車種もある。駐車ブレーキを操作する装置は、レバーを引き上げる方式のものが主流であるが、古いトラックやワンボックスカーでは杖状のレバーを車体前方の奥から手前に引き寄せる方式のものもある。また、近年では足踏み式のものや電気的に作動する押しボタン式も採用されるようになった。変速機の操作レバーはMTの場合はシフトレバー、ATの場合はセレクトレバーと呼ばれる。いずれの場合も運転席の脇、車体中央側の床に設置されているフロアシフトが大半を占める。古いタクシーやトラック、ワンボックスカーではステアリングコラムにシフトレバーを設置したコラムシフトのMTも多く存在した。現在のAT車ではステアリングコラムにセレクトレバーを備える車種はミニバンを中心に珍しくないものとなっている。近年はインストルメントパネルにセレクトレバーを配置したものも多い。
サービス業
自動車は人や物を輸送でき、また道路さえ整備されていれば様々な場所に行くことができる。そのため自動車を用いたサービス業が多種存在する。 これには大きく分けて「自動車で何かをする」形態と、「自動車に何かをする」形態がある。
前者の例として、旅客輸送や貨物輸送を行うサービス全般を運輸業と呼ぶ。旅客であればタクシーやハイヤー、またバスなどとして運営され、バスは多くの人員の輸送が可能であることから、形態に応じて路線バス、観光バス、高速バス、定期観光バスなどと様々なものがある。貨物輸送に関しては運送会社がトラックを用いて輸送する。 直接的な輸送サービスの提供ではないが、自動車を賃貸するレンタカーやカーリースもある。
後者の例としては自動車の整備を行う自動車整備業などがある。
脚注・出典
関連項目
- リコール (自動車)
- 走行性能
- 日本道路交通情報センター
- モータービークル
- 自動車用語一覧
- 自動車工学
- 自動車産業
- 全地形対応車
- 水陸両用車
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- 車台番号
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- 自動車製造者の一覧
- 高度道路交通システム
- 自動運転(ロボットカー)
- 東京モーターショー
- 自動車部品生産システム展
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- ドイツ車
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- イタリア車
- アメリカ車
- 輸入車 (日本)
- セグメント(階級区分)
- 中古車
- 日本における自動車
- 日刊自動車新聞
- 乗り物をあらわす記号と絵文字
- 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法)
外部リンク
サイト
ビデオ
- 「自動車のできるまで」 - 埼玉県狭山市にあるホンダの工場を取材して、自動車ができるまでの工程の流れを説明している(全15分) 1998年 サイエンスチャンネル
- ↑ The History of the Automobile - Steam Cars, About.com
- ↑ 「自動車、そして人」p21 財団法人日本自動車教育振興財団 1997年10月1日第1刷
- ↑ 「自動車、そして人」p122 財団法人日本自動車教育振興財団 1997年10月1日第1刷
- ↑ en:taxiなど
- ↑ [1]
- ↑ <自動車>マイカー族の買い換え需要ピークに=世界最大の市場の快進撃続く―中国 2010年02月01日23時01分 Record China 中国でマイカーブームが起きたのは2003年
- ↑ 宇沢弘文『自動車の社会的費用』(岩波新書、1974年、ISBN 4-00-411047-5)
- ↑ オートバイによる同様の行為は「ツーリング」、自転車によるものは「サイクリング」あるいは「ポタリング」である。
- ↑ S&Eブレーキ株式会社 ブレーキ雑学講座 「雑学講座42 ディスクブレーキとドラムブレーキ」