パワーウェイトレシオ

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パワーウェイトレシオ(出力重量比、馬力重量)とは、自動車などの動力性能のうち、主に加速能力を表す指標として用いられる比率である。オートバイ船舶航空機など自動車以外の輸送機械、あるいはエンジン単体の素性や性能を表す場合にも用いられる。

概要

加速性能はその輸送機械(例えば乗用車)にとって重要な商品力となる場合がある。一般に乗用車の性能としてはエンジンの出力だけが注目されがちであるが、同じ出力のエンジンを積んだ車であっても車体の重量が異なると、得られる加速感には違いが生じる。加速度は、エンジンの出力によって前に進もうとする比例し、機械全体の質量に反比例するため、同じ出力のエンジンならば、軽い車の加速度は大きく、重い車では小さい。このためエンジン出力だけでは加速性能の良い指標とはならない。そこでより加速感に則した指標値として、パワーウェイトレシオが用いられる。

一方、もう一つの加速度に関わる重要な要素に歯車比がある。時に排気量が小さめのスポーツカーホットハッチなどのスポーティーカーでの運転の楽しさや走りが、より大排気量のスーパーカーGTカーにも劣らない局面があるのは、このギアリングによるところが大きい。陸上の乗り物で変速機を持つものでは、タイヤファイナルを含むギアレシオの設定次第で、原動機出力の小さい物や重量の大きい物でも高い加速度を得ることができる。しかし、最高出力はトルクx回転数で決まるため、必然的に減速比を大きくしなければならず、桁外れに回転限界が高い原動機や、桁外れに変速比の大きな変速機[1]を使わない限り、高出力でパワーウエイトレシオが優れているものとの比較では、各変速段の伸びや最高速度で劣ることになる。

流体に依存して移動する乗り物の場合にはアスペクト比の他、船舶では船底プロペラの形状が、また、航空機では前面投影面積、翼型翼面荷重、プロペラ形状など、といった要素が加速度(航空機では上昇力も)や最高速度に大きな影響を与える。パワーウェイトレシオは、特に自動車で用いられることが多い。ただし自動車の場合も駆動方式、タイヤのグリップ、重量配分、電子制御システムなどの要素が影響を与えるので、絶対的な指標になるわけではない。

単位

日本で使われるパワーウェイトレシオと海外でそれにあたる "Power-to-Weight Ratio" とでは、使用する単位の組み立てが異なる。

日本では「単位馬力あたりの重量」を指し、通常は重量 (kg) を馬力 (PS, bhp) で割ったものが使われる。この場合、値が小さいほど優れた加速性能を持つことを示す。[2] 対して海外では「単位重量あたりの最高出力」を指し、出力 (PS, bhp, kW) を重量 (kg, t, lb) で割ったものが様々な組み合わせで[3]使われる。こちらの場合は、値が大きいほど優れた加速性能を持つことを示す。

比較

車両 重量 最高出力 パワーウェイトレシオ Power-to-Weight Ratio
7代目ダイハツ・ミラ 820kg 58PS 14.14kg/PS 70PS/t
2代目トヨタ・カローラアクシオ
(1.5 2WD・CVT車)</br>
1090kg 109PS 10.0kg/PS 100PS/t
MINI2010年モデル 1130kg 122PS 9.26kg/PS 108PS/t
ロータス・エリーゼ 900kg 136PS 6.62kg/PS 151PS/t
マセラティ・グラントゥーリズモS 1888kg 440PS 4.29kg/PS 233PS/t
マクラーレン・MP4-12C 1336kg 600PS 2.23kg/PS 449PS/t
アリエル・アトム V8 550kg 500bhp 1.10kg/bhp 909bhp/t
フォーミュラ1カー
(2013年レギュレーション)</br>
642kg 750PS 0.86kg/PS 1168PS/t
トップフューエル・ドラッグスター 907.2kg 8000hp 0.11kg/hp 8818hp/t

脚注

  1. 超クロースレシオかつ超多段、または、プーリーの可変範囲が極端に広い無段変速機のいずれかとなり、どちらも現実的ではない。ただし、原動機がモーターであれば、減速比が一段固定であっても高い加速度と最高速度の両立は可能である。
  2. 日本のパワーウェイトレシオにあたるものを英訳すると"Weight-to-Horsepower Ratio"になる。
  3. 輸送機械の種類を問わない場合はkW/kg,自動車にはPS/tや単位の国際化が遅れている地域を中心にbhp/tが主に使われる。

関連項目