阪神8000系電車
テンプレート:出典の明記 テンプレート:Notice テンプレート:鉄道車両 阪神8000系電車(はんしん8000けいでんしゃ)は、阪神電気鉄道が所有する優等列車用の通勤形電車。
先に7801・3521形を改造して登場した3000系に続く、新造の界磁チョッパ制御車である。武庫川線の武庫川団地前駅への延伸に係る輸送力増強と3561・3061形や3301・3501形などの初期高性能車を置き換えるため、1984年から1995年にかけて6両編成×21本の126両が武庫川車両工業において製造されたほか、1995年に発生した阪神・淡路大震災で被災廃車された補充車3両が1996年にかけて武庫川車両工業において製造された。
2010年1月現在では6両編成×19本の114両が在籍し、おもに優等列車で使用されている。合計129両製造されたものの全車が同時に在籍したことはない。
なお、本項では解説の便宜上、梅田側先頭車の車両番号 + F(Formation = 編成の略)を編成名として記述(例:8201以下6両編成 = 8201F)する。
目次
阪神初の6両固定編成導入
1980年代前半の阪神の急行系車両は、他社に先んじて冷房改造は完了していたものの、阪神初の大型車として登場した2扉クロスシートの3011形を3扉ロングシートに改造した3561・3061形やいわゆる「赤胴車」の第1号として登場した3301・3501形、3601・3701形を4両固定編成にして力行専用の電機子チョッパ制御車に改造した7601形などの初期の高性能車の車齢が約25年から30年に達しようとしており、老朽化が目につくようになってきていた。その中でも、3561・3061形や3301・3501形は駆動装置に構造が複雑な直角カルダン駆動方式を採用しており、保守に手を焼くことが多くなっていた。このほか、当時阪神第一の在籍数を数える7801形は、架線電圧の直流600Vから1,500Vへの昇圧と小型車置き換えを目的として製造された1次車の接客レベルが低く、数度の改造を受けてレベルの向上が図られたが、それでもまだ他形式に比べると遜色があった。1983年までに増備された5131・5331形によって5231形を置き換えた結果、普通系車両の100%冷房化を達成したことから、更新が一段落した普通系車両に続いて、今度は急行系車両に新車を投入してこれらの在来車を更新することとなった。
1984年に武庫川線が洲先駅から武庫川団地前駅まで延長されることになった。武庫川線は従来3301形の単行で運転していたが、単行の3301形はサービス電源の関係で冷房装置を作動させることができなかったことから、全線で冷房サービスの提供を行うため、延長を機に輸送力増強を兼ねて、7861・7961形2連に置き換えることとなった。当時7861形は阪神本線や西大阪線(現・阪神なんば線)で幅広く使用されていたことから、新車を投入して捻出することとなった。この時期にはおもな優等列車運用が6連となっていたことや、電機子チョッパ制御に比べると構造が簡単で加減速の少ない優等列車でも省エネルギー効果が高い界磁チョッパ制御の技術が確立されていたことから、阪神では初の6両貫通編成となり、主回路制御に界磁チョッパを本格的に採用した本系列が製造された。その後、本系列はモデルチェンジを繰り返して大量に増備され、上記の急行系初期高性能車を置き換えることとなった。
概要
本系列は1984年から1996年まで12年間にわたって製造された。その間3回のモデルチェンジを行ったことから外観上さまざまな形態が存在するほか、内装をはじめ台車や搭載機器などもモデルチェンジにつれて変化しており、最初に登場した編成と最終増備車では同一系列に見えないまでの差異がある。このため、外観上の視点から本系列はタイプI(第1次車)、タイプII(第2 - 第4次車)、タイプIII(第5 - 第12次車)、タイプIV(第13 - 第21次車)の4タイプに分類することができ、趣味誌上などでもこの区分で紹介されることが多いことから、本項においても4タイプに形態分類のうえ紹介する。
各タイプの共通項としては、Tc - M - Mの3両ユニットを背中合わせに2組連結した6連を組成、末尾の車両番号が奇数のユニットが大阪側、大阪側の3両にそれぞれ1を足した偶数のユニットが神戸方になる[1]。ただし、奇数の車両と偶数の車両では床下機器の配置が車両の向きに合わせて左右逆になっており、全く同じものを背中合わせに連結している訳ではない。これは8201形に搭載されている電動空気圧縮機 (CP) の音の聴こえる場所が奇数車と偶数車とでは異なるので床下機器の違いが確認できる。形式はともに先頭の制御車 (Tc) が8201形、中間電動車が8001形 (M) 、8101形 (M) で、側面窓配置は先頭車がd1D3D3D2、中間車が2D3D3D2(D:客用扉、d:乗務員扉)で、座席はロングシートである。
屋根上には冷房装置と中間電動車の奇数車では大阪側、偶数車では神戸側に下枠交差式パンタグラフを1基搭載している。連結器はユニット端部になる両先頭車の前面にバンドン式密着連結器を、8101形奇数車の神戸側、偶数車の大阪側には廻り子式密着連結器を装備し、その他は半永久式密着連結器を取り付けているほか、8101形奇数車の神戸側、偶数車の大阪側は工場入場時の構内入換に考慮して簡易運転台を取り付けている。台車はS型ミンデン台車を装着し、制御装置は前述のとおり界磁チョッパ制御で、三菱電機製の製品を搭載した3000系とは異なり、東芝製BS-1403-Aを8101形に搭載、主電動機は複巻式出力110kWの東洋電機製造製TDK-8170-Aを各電動車に4基搭載したほか、ブレーキ装置は、営業運転では他形式との併結を行わないことから、阪神で初めて全電気指令式電空併用抑速付のMBSAが採用された。補助電源装置も阪神では初めて静止形インバータ (SIV) が採用され、8001形に搭載されている。
形態分類
この項では、当初製造された21編成126両(8201F・8211F - 8249F)について紹介する。震災による廃車の代替車両については後述する。
タイプI(8201F・1本)
3801形3905Fの車体をベースとして製造された。このため従来車と外観上の大きな変化はなく、側窓は銀色アルミサッシのユニット式二段窓が並び、先頭形状は丸みを帯びた3面折妻で前照灯が左右の窓上に配され、化粧板は薄緑の格子柄である。一方、他形式と連結しない前提で製造されたことから、従来車の先頭部にあった埋込式の貫通幌[2]や桟板、ジャンパ栓受けなどが廃止され、貫通扉が前面に出てきたことから、従来の阪神の車両とは異なる平面的ですっきりとした前面となった。冷房装置は阪神標準の分散式MAU-13Hを先頭車に7基、中間車に6基搭載しているが、圧縮機は従来のレシプロ式から低騒音・省エネルギー対応のロータリー式に変更され、中間車では奇数車の神戸方と偶数車の大阪方にパンタグラフを増設できるよう、その部分のスペースを空けた形で冷房装置を配置した。SIVは8001に東芝製BS438F、8002に三菱電機製NC-DAT110Aを装備した[3]。このほか、行先表示器の取り付けに合わせて車体形状を微修正したことから行先表示器が車体から突出しておらず、台枠の構造などの改良によって、構体重量が従来車に比べて1t程度軽量化された。台車は3801形が装着していた住友金属工業製S型ミンデン台車のFS-390, FS-090の軸箱支持部を、弾性板ばね式のSUミンデンとしたFS-390A, FS-090Aを装着する。
このタイプは前記したように武庫川線延長に伴う所要車両数増のため製造されたものであり、試作的な要素も兼ね備えることから結果的にこの1本の製造だけにとどまり、タイプII以降の車両とは大きく外観が異なるが、車両性能は他のタイプと同一である。
タイプII(8211F - 8215F・3本)
1984年末に内外装とも大幅にモデルチェンジされて従来の阪神車のイメージを大きく一新して登場したグループで、車両番号も番台区分が変更されて11からの付番となった。
先頭部は阪神初の窓周りが縁取られた「額縁」スタイルとなり、行先表示器は上方に延長された左右の窓ガラスの中に種別表示と行先表示を分離し、同部分に設置されていた前照灯は従来行先表示器が設置されていた貫通扉上部にそれぞれ設置場所が変更された。車体とフラットになった貫通扉は左右の窓が拡大されたことによって幅が狭くなり、車体下部にはこれも阪神初の排障器(スカート)が取り付けられた。左右の窓下に設けられていた尾灯は、通過標識灯が新設されて横長の枠に2つ並ぶ形でケーシングされた。側窓は各窓が独立した一段下降式となったことから、サッシ部分をユニット式として構体から独立させ、窓開口部からサッシ内に入り込んだ雨水を完全に排水できるようにするなど、雨水による車体腐食対策に留意した設計となった。冷房装置はタイプIと同一のMAU-13Hであるが、先頭車最前部の装置については乗務員室にも冷風をダクトで送ることを可能にするため、CU-10Hに変更された。パンタグラフを含めた屋根上の機器配置に変更はない。台車はFS-390A, FS-090Aと同じSUミンデン台車であるが、形式名がFS-525, FS-025に変更された。SIVの搭載位置は8201Fと同様、奇数車がBS438Fを、偶数車がNC-DAT110Aを搭載しており以後の各タイプに継承された[4]。
内装も大きくモデルチェンジされた。化粧板は従来の薄緑の格子柄からベージュ系のドット模様となり、客用扉も従来の塗装仕上げから化粧板仕上げとなった。天井の化粧板は白からアイボリーホワイトとなり、床板と吊り手は緑系からグレー系に変更されている。この他にも座席脇のスタンションポールが廃止されたほか、客室貫通扉もガラスが下方に拡大された。座席のモケットの色はエンジ色で変わりはないが、配色が大きく変わったこととスタンションポールの撤去、客室貫通扉の拡大によってシャープで軽快なイメージの車内となった。
編成ごとの変更点としては8211Fのみ手歯止め(ハンドスコッチ)を運転台左側の窓下に搭載したことから、8211・8212のみスカート左側に手歯止収納用のふたが設けられていた[5]。また、8215Fでは試験的に座席の袖仕切りの形状が変更されたり、客室貫通扉にドアチェックが装備されたり、正面貫通扉の窓にデフロスタが追加されるなどマイナーチェンジが施されている。
なお、このグループ以降の本系列の編成は8201Fと区別する目的で新8000系や8011系、あるいは8011形と呼ばれることがあるほか[6]、古くからの鉄道ファンの中にはこのグループ以降の本系列を、戦前の急行系小型車の代表車で「喫茶店」の愛称で知られる851・861・881形のイメージに重ならせて連想する者もいる。
タイプIII(8217F - 8231F・8本)
1986年から1990年にかけて登場したグループで、空調方式が変更された。冷房装置は従来のMAU-13Hなどの分散式を1両あたり6 - 7台搭載するのを改め、阪神初の集約分散式冷房装置であるCU-198を1両あたり4台搭載した。これによって天井の見付が大幅に変更され、冷風の吹き出し口が従来の天井から突出していたのとは異なり、室内灯脇に設けられた連続したものが取り付けられ、天井中央には補助送風機のラインデリアと整風金具が取り付けられた。この変化に対応して冷房ダクトが変わったことから車体断面が変更になり、車体高さが約5cm高くなった。このほか、パンタグラフの搭載位置も変更され、車端部に搭載されるようになったほか、パンタグラフ1基でも回生ブレーキ作動時の集電に離線などの問題がなかったことから、タイプIIまでのようにパンタグラフの追加搭載スペースは確保されなかった。これ以外の内外装および装備機器に大きな変更はないが、8217 - 8220の台車は3801形3901Fの廃車発生品および3904の7890への電装改造時に発生したFS-090を装着する[7]。このグループも増備を重ねるごとに細部の改良が行われ、のちの編成に継承されていった。編成ごとの変更点は以下のとおり。
- 8221Fでは、車内放送装置に自動ボリューム調整機能が付加され、車掌台の放送装置から調整つまみが除去された。
- 8223Fでは、吊り手のさやが丸みの多いものに変更された。
- 8225Fでは、客用ドアの開閉装置が1シリンダ連動式のY2-1Aに変更された。従来の開閉装置よりシリンダ力が大きくなったことから、注意喚起のためにクッションゴムの色が黒になった。
- 8227Fでは、行先表示器および種別表示器の字幕が英字表記入りのものになった。
- 8231Fでは、続くタイプIVでのモデルチェンジを控えて、室内灯カバーをワンタッチで開閉できるものにしたほか、車内のアルミ部分を薄黄色の着色アルミとした。
なお、1989年1月7日に竣工した8223 - 8023 - 8123の3両は、阪神唯一の昭和64年製の車両である。
タイプIV(8233F - 8249F・9本)
1991年以降登場したグループで、タイプII以来の内外装のモデルチェンジが行われた。このモデルチェンジに際しては、阪神の車両部のスタッフや武庫川車両工業のスタッフに加えて近畿車輛のスタッフも加わって検討が行われ、内装デザインの一新と側窓の拡大を中心に変更が加えられた。また、このタイプの製造当初には車体塗色の変更も検討され、8233に3種類の試験塗装が行われた。このうちの一案が基本となって、のちに製造した5500系の塗装となって実現した。
側窓の窓柱が従来車の110mmから67mmへと細くされ、同時に寸法も拡大されて窓間の桟が黒色に塗装されたことから連続窓風の外観となった。窓サイズの変更に伴って構体設計も見直され、先頭車の前にある貫通扉の窓にもワイパーが装着されたほか、塗色の塗り分け線が若干下げられている。車内では座席が阪神初のバケットシートに変更され、モケットの地色もピンク色に変更されたほか、床材は中央部ベージュ、左右座席付近が茶色となって、着座時のフットラインを表示した。同時にシートの袖仕切り形状も変更されて、仕切りを取り付けて、その上にポールを延長する形でスタンションポールが復活したが従前のように天井まで達するものではない。また、ドア上にはこれも阪神初のLED式車内案内表示装置が千鳥配置で設置[8]された。このような内装の変更により、接客設備が向上している。編成ごとの変更は以下のとおり。
- 8237Fでは、車内の化粧板がベージュ系ながらも従来のドット模様から砂目模様に変更された。
- 8241Fでは、バリアフリー対応として中間車の元町(西)寄りに車椅子スペースが設置され、その部分の側窓が固定式となった。このほか、禁煙表示はピクトグラムに変更されたり、車体内外の製造銘板などはエッチングプレートとされた。
タイプIVにおける変更点は、5500系およびそれ以降に登場した9000系・9300系の各系列にリファインされた形で継承されていった。
大量増備
先に登場した8201Fのうち、1984年2月18日に登場した8201 - 8001 - 8101 - 8202の4両が同年3月14日から試運転を開始、その後3月6日に竣工した8102 - 8002を組み込んで試運転を続け、同年4月末から特急や快速急行をはじめとした阪神本線の最優等列車を中心に営業運転を開始した。引き続いて同年秋から廃車が開始された3561・3061形の代替として、1985年からタイプIIが営業運行に投入され、同形の中で諸般の事情から置き換えられなかった3567 - 3568の2連×1本を除く全編成の代替を完了したのに続き、1986年には当時阪神唯一の両運転台車であった3301形の置き換えも完了した。また、タイプIIが営業運転を開始した1985年は、阪神タイガースの21年ぶりのセ・リーグ優勝および2リーグ分裂後初の日本シリーズ制覇と重なったことから、阪神甲子園球場への観客輸送にも充当され、当時の主力選手ともども阪神の「顔」としてPRされた。引き続いてタイプIIIが毎年2 - 3本増備されて1989年までに3501形と3567 - 3568の置き換えを完了、同年からは7601形と7801形1次車の置き換えが開始された。
このように本系列は初期高性能車の置き換えとともに増備されたことから、1990年代初めには廃車と2000系への改造で数を減らした7801形を抜いて阪神に在籍する車両の中では最大両数を数えるようになり、阪神本線の優等列車運用がすべて6両編成化されたことから、運用も特急から準急まで幅広く使われるようになった。また、それまでの阪神の車両が各形式が区別なく分割併合されたのとは異なり、編成単位で運用されるようになったことから、当時在来車の中でも6連貫通編成となった8801形や2000系とともに従来の阪神の車両では見る機会が少なかった統一された「編成美」を見せるようになった。タイプIIIからタイプIVにモデルチェンジされても増備のペースは変わらず、7601形が淘汰された1991年以降は7801形1次車の置き換えが進められ、1995年3月に8249Fが登場した時点で7801形1次車の置き換えを完了するとともにデータイムの特急および快速急行運用を本系列でまかなうことが可能になることからダイヤ改正を実施してスピードアップを実施する予定であった。
このほか、8201Fは当初はスカートを装備していなかったが、1994年にタイプII以降の車両と同型のものが取り付けられ、時期は不明であるが8211Fのハンドスコッチの格納位置が他編成同様乗務員室扉下に変更された。
震災での編成替え
このように名実ともに阪神を代表する車両となった本系列であるが、1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)で当時の在籍車両数6両編成20本+3両の123両のうち半数にあたる10編成60両が被災した。被災編成と被災箇所およびその後の経過については以下のとおり。
- 8201F:石屋川車庫10番線において被災、脱線。
- 8213F:御影留置線21A線において被災、脱線転覆。
- 8215F:御影留置線22C線において被災、脱線。
- 8217F:石屋川車庫1番線において脱線、検修ピット内に転落。
- 8219F:御影留置線22B線において被災、脱線。
- 8221F:石屋川車庫8番線において被災、脱線。
- 8223F:石屋川車庫13番線において被災、脱線。
- 8225F:御影留置線22D線において被災、脱線。
- 8231F:御影留置線22A線において被災、脱線。
- 8235F:御影留置線21A線において被災、脱線転覆。
- 8201Fは大阪市西淀川区に設けられた仮設の被災車両置き場に搬出後、8202が3月31日付で、8001・8101が7月6日付で廃車[9]。8102・8002・ 8201は9月7日付で復旧、同時に8201を方向転換のうえ8502に改番し、新8523Fの神戸方に組み込み(詳細は後述)。
- 8213Fは脱線復旧後、青木駅 - 御影駅間の復旧に先立ち尼崎車庫に収容、8113・8014が3月31日付で、8114が7月6日付で廃車。8214は8222の代わりに8221Fに組み込まれて6月15日付で、8213と8013は8117を組み込んで6月28日復旧。8118 - 8018 - 8218を組み込んで新8213Fを組成。
- 8215Fは尼崎車庫に収容、3月3日復旧。
- 8217Fは被災車両置き場搬出後、8217・8017が3月31日付で廃車、8118・8018・8218が6月21日付で、8117が6月28日付で復旧、前述のとおり8213 - 8013 - 8117 - 8118 - 8018 - 8218で新8213Fを組成。
- 8219Fは尼崎車庫に収容、8120 - 8020 - 8220が3月22日付で、8219 - 8019 - 8119は4月21日付で復旧。
- 8221Fは被災車両置き場搬出後、8222が7月6日付で廃車。8221 - 8021 - 8121が6月15日付で、8122 - 8022が8214を組み込んで6月15日付で復旧。新8221Fを組成。
- 8223Fは8223が尼崎港に設けられた被災車両仮置き場に搬出後現地で解体、2月9日付で廃車。他の5両は大阪市西淀川区の仮設の被災車両置き場搬出後、8124・8024が3月31日付で、8224が7月6日付で廃車。8023・8123は9月21日復旧。代替新車の8523を組み込んで3両ユニットを組み、神戸方に8102 - 8002 - 8502を組み込んで新8523Fを組成。
- 8225Fは尼崎車庫に収容、4月13日付で復旧。
- 8231Fは尼崎車庫に収容、8132 - 8032 - 8232が5月23日付で、8231 - 8031 - 8131が6月5日付で復旧。
- 8235Fは8036・8236が搬出不能のため現地で解体、残り4両は尼崎車庫に収容。8235・8035・8135が1996年1月23日付で、8136が1月30日付で復旧。8136に代替新車の8336 - 8536を組み込んで新8235Fを組成。
上記のように本系列には8201・8213・8217・8221・8223・8235Fの6本から合計15両の廃車が発生した。他形式とは異なり6両全車が廃車となった編成はなかったが、編成によって残った車種がバラバラであったため、下表のとおり正常な編成とするためにこれら同士を組み合わせ、不足分は追加新造で賄われることとなった。色分けは元の編成に対応しており、白文字はタイプIIを、白地は新造された車両を表す。
テンプレート:TrainDirection | |||||
Tc 8201 | M 8001 | M' 8101 | M 8001 | M' 8101 | Tc 8201 |
8523 | 8023 | 8123 | 8102 | 8002 | 8502 |
テンプレート:Color | テンプレート:Color | 8117 | 8118 | 8018 | 8218 |
8221 | 8021 | 8121 | 8122 | 8022 | テンプレート:Color |
8235 | 8035 | 8135 | 8136 | 8336 | 8536 |
新造された車両は「被災前にその位置に連結されていた車両の番号+300」の車両番号が付与されており、形態もそれに準じている。すなわち、8523はタイプIII、8336・8536はタイプIVの車体を持ち、被災廃車された車両から取り外した座席や機器のうち使えるものを再利用している。その一方で製造銘板がエッチングプレートになっていたり、禁煙表示などがピクトグラム化されたことをはじめ、8336には車椅子スペースが設けられるなど、のちに製造された車両の改良点が採り入れられている。
また、編成組成の都合上、8201Fで残った梅田方先頭車8201が同じく残った8102 - 8002と連続して連結するために元町向きに方向転換され、番号も8502に改番されるとともに床下機器の配置も8202と同様のものに改造された。先述のとおり、この編成の梅田方先頭車8523はタイプIIIの車体で新造されているので、8523Fは梅田側の3両と元町側の3両で形態が大きく異なる結果となった。そして1996年初めには、8336と8536の代替新造に伴って最後まで残っていた8235Fの復旧が完了、震災後に登場した8249Fを含めると、当初製造が予定されていた6両編成×21本の合計126両から2本12両減の6両編成×19本114両で復旧した。震災復旧以降の増減はない。
直通特急運転開始前後
震災で大被害を受けた阪神本線も約半年後の1995年6月26日に全線復旧し、同じく震災で駅部分が陥没した神戸高速鉄道東西線大開駅を含む新開地駅 - 高速長田駅間が同年8月13日に復旧したことで、山陽電気鉄道本線須磨浦公園駅への乗り入れが再開された。本系列は震災前と同様に急行系車両を使用する列車で幅広く運用され、被災車両も順次復旧した。1996年3月には崩壊した石屋川車庫と御影留置線が再建され、車両面でも被災車両の復旧と急行系9000系、普通系5500系の代替新車が竣工したことで震災前の車両数に戻ったことから3月20日にダイヤ改正を実施、スピードアップは行われなかったが列車本数は朝ラッシュ時の輸送力が強化されるなど、震災前を上回るものとなった。
1998年2月15日のダイヤ改正では山陽姫路駅まで乗り入れる直通特急の運転が開始された。本系列は9000系とともにホーム有効長が短い大塩駅でのドアカット機能の追加などといった山陽電鉄全線乗り入れ対応改造が施工されたが、8523Fについては震災復旧時の経過から運転台の構造が異なるタイプIとIIIの混成編成のため、性能的には他の編成と同一であるが、この編成のみ対応改造がなされず、2000系などと同様に須磨浦公園駅までの運用とされた。
リニューアル
直通特急の運転開始以降、山陽5000系が直通特急として梅田駅まで乗り入れるようになり、阪神本線においても日常的にクロスシート車に乗車できる機会が増加した。と同時に、中長距離を利用する乗客も増えたことから、利用客のクロスシートへのニーズも高まっていた。2001年3月10日のダイヤ改正では直通特急の増発を実施するとともに、阪神においても直通特急の増強用と3000系の代替として、中間車の座席をセミクロスシートとした新車9300系を投入した。
本系列も第1編成の製造から20年近く経過していることから、2002年から9300系に準じたリニューアル工事を1年に1 - 2本のペースで実施することになった。塗装は9300系に準じたオレンジ色(プレストオレンジ)と白(シルキーベージュ)の塗り分けになり、接客設備改善のために中間車4両の客用ドア間にはロングシートに代えて新たに転換式クロスシートが設置された。内装も化粧板が白系に、座席モケットが濃いオレンジ色に張り替えられ、乗務員室背後の客室仕切り窓の遮光幕は横引きカーテンから電動の自動昇降式に変更された。このほか、タイプIII以前の車両はタイプIVに合わせてLED式車内案内表示装置が設置された。9300系と同様に、両端の先頭車がロングシートのまま存置されたのは、阪神本線と乗り入れ先の神戸高速鉄道東西線および山陽電鉄本線において、梅田、山陽姫路の両起終点駅をはじめ三宮、元町、高速神戸、新開地などの主要駅で両端の先頭車が改札口や階段に最も近い位置にあることから、混雑緩和を図るためである。 このほか、タイプIII以前の車両のロングシート車においてもタイプIV以降の車両と同じ1人あたり470mm幅のバケットタイプのロングシートに変更されている。 また、電子部品の劣化による運転保安度の低下が心配されたことから、界磁チョッパ制御装置と全電気指令式電磁直通空気制動装置の電子部品の更新も実施された。
リニューアル第1号となった8211Fは2002年4月11日に運転を開始、2003年には8219Fがリニューアル改造を受けた。
8211Fは、リニューアル時に転落防止幌を南海電気鉄道で見かけるような、お互いに2枚ずつの板を互い違いに配置するタイプを試験的に採用していた。このタイプは本線系統では本採用されず、2006年の定期検査時に他車と同様のタイプに変更されたが、武庫川線の車両で本採用された。
2004年にはリニューアル第3号となった8221Fに施工されたが、混雑緩和対策のため中間車のクロスシートへの改造は3・4号車(8101形)のみに縮小され、クロスシート部分にも吊り手が増設された。この仕様は以降のリニューアル車に継承され、同年には8215Fに施工されたのに続き、2005年に8213Fが、2006年には8225Fがそれぞれ施工されている。また、タイプIV8233F以降と同様に、先頭車の前面貫通扉にワイパーが装着され、塗り分け線も少し低い位置になった。リニューアル時に、乗降扉は複層ガラスの新調したものを使用しているが、8221Fについては、なぜか8221のみ車内側の化粧版を張替えただけ[10]にとどまっており、外見でも窓の形状が異なるほか、窓周りに銀色のふちが目立っており異彩を放っていたが、後の定期検査で他5両と同様の扉に変更された。車内の袖仕切りも8211F・8219Fで採用されたポールと仕切り板の組み合わせからポールのみのタイプに変更されている。
2007年5月(4月竣功)には8523Fがリニューアルを受け、三宮方の3両は従来の車体のまま直通特急対応改造がなされた。これにより、8000系は全編成が直通特急対応となった。ただし、8523Fは2009年3月時点では直通特急の運用には入っていない。8502は化粧板を客室のみ白系とし、乗務員室は緑系のままとされ、乗務員室の仕切り窓の形状が運転席後ろと仕切り扉のみタイプII以降と同様になり、助手席側の窓は変更されていない。また、仕切り扉の幅は縮小され、中央よりも若干助手席側にずれて配置されている。2007年度は車両部門への予算投入の重点を1000系の増備に移すことから、8523Fに続くリニューアルは実施されなかった。
その後、2009年10月に1000系の増備が一段落着いたところで8229F[11]が、2011年3月に8227F[12]が、同年9月に8231F[13]がそれぞれ施工された。ただ8231Fについては、行先表示器が1000系等と同様のフルカラーLED式になったほか、車内では1000系などに準じた改造がなされており、ドアへの盲導鈴の取り付け、ドア上部に扉開閉予告灯を設置したため車内案内表示装置の取り付け位置が広告枠の上部に変更されているなど、細かな相違がある。また、リニューアル時に新調されたドアに交換され、この際に捻出されたドアは7890形に譲渡されている。これにより、タイプI〜IIIまでの10編成はすべてリニューアルを終えた。
リニューアル未施工であったタイプIVについては、2012年4月に8233Fが初めてリニューアル工事を受けた。ただ外観・装備の変更点は8231Fと同様ながら、座席については中間車の一部に転換クロスシートを設けるのをやめ、全車ともバケットシートタイプのロングシートのままとされているが、シート自体は交換されている[14]。リニューアルに伴い、LED車内案内表示器が新品に交換され、やや表示部が小さくなっている。8233Fに次いで同年10月に8235Fが、2013年4月に8237Fが、同年9月に8243Fが、それぞれリニューアル工事を受けて運用に復帰しているが、8233F同様に全車ロングシートのままとされている。
その後、2014年3月に8245Fがリニューアルを受け、運用に復帰している。この8245Fからは補助電源のSIVがGTOからIGBTの新品に交換された。
変遷と現状
2006年以降、2009年3月20日に開始された近畿日本鉄道(近鉄)との直通準備として、連結器を阪神独特のバンドン式密着連結器から、近鉄が採用している一般的な廻り子式密着連結器に換装された[15][16]。なお、これに伴い連結器高さを変更したためスカートの連結器上部部分のパーツを取り外し(撤去)、車体裾の一部を切り欠いている[17]。一部の先頭車は9300系以外の阪神電車と比べて車体裾が少し高いため、車体裾の切り欠きにおよんでいないものもあったが、現在はすべての車両に切り欠きがついている。なお、近鉄形ATS設置などの直通運転対応工事などは施工されていないため、阪神なんば線および近鉄奈良線には入線しない[18]。
2009年3月改正以降、梅田発着の優等列車はほとんどが8000系と9300系での運用となっていて、近鉄直通対応となった9000系・1000系の運用は一部に限定されている。
2013年11月18日から12月20日まで、8241Fが沖縄ジャックトレインとして運行されていた。沖縄ジャックトレインの運行期間は、本来12月15日までの予定だったが、運用の都合で20日まで運転された。その後ラッピングを剥がし営業運転に復帰している。
なお、2015年度を目処に全車をリニューアルする予定とされている。
2013年11月現在、6両×19編成の114両が在籍している。
編成
- リニューアル車
テンプレート:TrainDirection | ||||||
8200 (Tc1) |
8000 (M') |
8100 (M) |
8100 (M) |
8000 (M') |
8200 (Tc2) |
注釈 |
8211 | 8011 | 8111 | 8112 | 8012 | 8212 | クロスシート4両(2 - 5号車) |
8213 | 8013 | 8117 | 8118 | 8018 | 8218 | クロスシート2両(3 - 4号車) |
8215 | 8015 | 8115 | 8116 | 8016 | 8216 | クロスシート2両(3 - 4号車) |
8219 | 8019 | 8119 | 8120 | 8020 | 8220 | クロスシート4両(2 - 5号車) |
8221 | 8021 | 8121 | 8122 | 8022 | 8214 | クロスシート2両(3 - 4号車) |
8523 | 8023 | 8123 | 8102 | 8002 | 8502 | クロスシート2両(3 - 4号車)、直通特急非充当編成 |
8225 | 8025 | 8125 | 8126 | 8026 | 8226 | クロスシート2両(3 - 4号車) |
8227 | 8027 | 8127 | 8128 | 8028 | 8228 | クロスシート2両(3 - 4号車) |
8229 | 8029 | 8129 | 8130 | 8030 | 8230 | クロスシート2両(3 - 4号車) |
8231 | 8031 | 8131 | 8132 | 8032 | 8232 | クロスシート2両(3 - 4号車)、行先表示器・標識灯LED化、ドア部に盲動鈴・扉開閉予告灯設置 |
8233 | 8033 | 8133 | 8134 | 8034 | 8234 | 全車ロングシート、行先表示器・標識灯LED化、ドア部に盲動鈴・扉開閉予告灯設置 |
8235 | 8035 | 8135 | 8136 | 8336 | 8536 | 全車ロングシート、行先表示器・標識灯LED化、ドア部に盲動鈴・扉開閉予告灯設置 |
8237 | 8037 | 8137 | 8138 | 8038 | 8238 | 全車ロングシート、行先表示器・標識灯LED化、ドア部に盲動鈴・扉開閉予告灯設置 |
8243 | 8043 | 8143 | 8144 | 8044 | 8244 | 全車ロングシート、行先表示器・標識灯LED化、ドア部に盲動鈴・扉開閉予告灯設置 |
8245 | 8045 | 8145 | 8146 | 8046 | 8246 | 全車ロングシート、行先表示器・標識灯LED化、ドア部に盲動鈴・扉開閉予告灯設置 |
- 原色車
テンプレート:TrainDirection | |||||
8200 (Tc1) |
8000 (M') |
8100 (M) |
8100 (M) |
8000 (M') |
8200 (Tc2) |
8239 | 8039 | 8139 | 8140 | 8040 | 8240 |
8241 | 8041 | 8141 | 8142 | 8042 | 8242 |
8247 | 8047 | 8147 | 8148 | 8048 | 8248 |
8249 | 8049 | 8149 | 8150 | 8050 | 8250 |
脚注
参考文献
- 『鉄道ピクトリアル』1997年7月臨時増刊号 No.640 「特集:阪神電気鉄道」 電気車研究会
- 『鉄道ダイヤ情報』1995年3月号 No.131 「特集:阪神電車の研究」 弘済出版社
- 『関西の鉄道』No.53 「News:阪神だより」関西鉄道研究会
- 『サイドビュー阪神』1996年 レイルロード
- 『車両発達史シリーズ 7 阪神電気鉄道』2002年 関西鉄道研究会
- 『カラーブックス 日本の私鉄 5 阪神』1989年 保育社
- 『鉄道ファン』2002年7月号(通巻495号) 「CAR INFO 阪神8000系 リニューアル車」 交友社
- ↑ 8211Fで例えると、大阪側より8211 - 8011 - 8111 - 8112 - 8012 - 8212となる。
- ↑ 7801形1次車とその亜種形式および5261形や5311形を除く。
- ↑ 搭載されたSIVは同一性能だが、機器きせの形状が異なっている上、東芝の傘マークとTOSHIBAロゴおよび三菱のスリーダイヤマーク等でメーカーの違いは容易に判別可能である。
- ↑ カラーブックス 日本の私鉄 (5) 阪神(保育社 1989年10月31日発行)
- ↑ 他の編成では従来車同様乗務員室扉下にある。
- ↑ タイプII以降のグループを「8010系」と呼ぶことは阪神の付番ルールと矛盾するのでほとんどない。
- ↑ 3901・3902・3904と3802の台車で4両分まかなえるが、3802の台車はFS-390なので換装時に改造を実施している。
- ↑ 設置場所は進行方向梅田向きで山側(左側)2か所、海側(右側)1か所である。
- ↑ 資料によっては8101の廃車日時を3月31日とするものもある。
- ↑ このときのドアの化粧版は灰色無地だった
- ↑ 「大手私鉄車両ファイル 車両データバンク」『鉄道ファン』2010年9月号(通巻593号)付録、交友社
- ↑ 「大手私鉄車両ファイル 車両データバンク」『鉄道ファン』2011年9月号(通巻605号)付録、交友社
- ↑ 阪神8000系8231編成がリニューアルを終える - 『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース(交友社) 2011年9月29日
- ↑ 阪神8000系8233編成が更新工事を終え運用に復帰 - 『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース(交友社) 2012年4月9日
- ↑ 8000系においては、製造当初より将来の連結器換装を前提として当初はバンドン連結器を伴板守部にアダプターを介して取り付けていた。これは以降の9000系・9300系・5500系も同様である。
- ↑ この密着連結器は、1000系で採用されているものと同様、上部を切り欠いたタイプである(他の阪神電車も同様。ただし一部を除く)。
- ↑ 後からスカートを追加されたタイプIも含めて、スカートも将来の連結器換装に備えて改装が容易になるよう考慮されていた。これは5500系・改造2000系も同様である。
- ↑ 阪神型ATSが設置されている阪神なんば線桜川駅 - 尼崎駅間は入線可能ではあるが、桜川駅構内にある引き上げ線は近鉄用の保安設備しか設置されていない。