カキ (貝)
テンプレート:栄養価 カキ(牡蛎、牡蠣、硴、英名:oyster)は、ウグイスガイ目イタボガキ科に属する二枚貝の総称、あるいはカキ目もしくはカキ上科に属する種の総称。海の岩から「かきおとす」ことから「カキ」と言う名がついたといわれる。古くから、世界各地の沿岸地域で食用、薬品や化粧品、建材(貝殻)として利用されてきた。
目次
特徴
食用にされるマガキやイワガキなどの大型種がよく知られるが、食用にされない中型から小型の種も多い。どの種類も岩や他の貝の殻など硬質の基盤に着生するのが普通である。基盤に従って成長するため殻の形が一定せず、波の当たり具合などの環境によっても形が変化するため、外見による分類が難しく、野外では属さえも判別できないこともある。このため、未だに分類が混乱しているものも少なからずあり、外見に惑わされない分子系統などを使った分類がなされつつある。
養殖する方法は、カキの幼生が浮遊し始める夏の初めにホタテの貝殻を海中に吊るすと幼生が貝殻に付着するので、後は餌が豊富な場所に放っておくだけというものである。野生のものは餌が少ない磯などに付着するため、総じて養殖物の方が身が大きくて味も良い。欧米では種牡蠣を原盤(フランス語ではクペール)という網状の円盤で採取するが、ある程度大きくなるとそれから外して網籠に入れて干満の差が大きい場所の棚に置くか干潟にばら撒いて育成する。この方式はホタテガイで種牡蠣を海中につけっぱなしにしておく日本の方式よりも身が大きくなりやすい。(カキ養殖に関してはen:Oyster farmingも参照のこと)
一旦岩などに付着すると、一生ほとんど動かないため、筋肉が退化し内臓がほとんどを占めている。日本テレビの科学番組『所さんの目がテン!』ではハマグリの内臓を寄せ集めてカキフライもどきを作ったところ、20人中18人が騙されたという結果が出た[1]。
干潮時には水が無い場所に住む場合が多く、グリコーゲンを多く蓄えている。これにより、他の貝と違って水が無い所でも1週間は生きていられる。
英語でカキを指す“oyster”は日本語の「カキ」よりも広義に使われ、岩に着生する二枚貝のうち、形がやや不定形で表面が滑らかでないもの一般を指し、アコヤガイ類やウミギク科、あるいはかなり縁遠いキクザルガイ科などもoysterと呼ばれることがある。
主な食用種
マガキ属 Crassostrea
- マガキ(真牡蠣) Crassostrea gigas (Thunberg,1793)
- 最も一般的な種で、日本でカキといえば本種。本来は冬が旬であるが、大型で夏でも生殖巣が発達しない「3倍体牡蠣」も開発され、市場に出ている。広島県、宮城県、岡山県産が有名。韓国からの輸入品も相当量ある。
- イワガキ(岩牡蠣) Crassostrea nippona (Seki, 1934)
- マガキと対照的に夏が旬であり、「夏ガキ」とも言われる。殻の色が茶色っぽく、マガキに比べて大きいものが流通する。天然物と養殖物の両方がある。
- スミノエガキ(住之江牡蠣) Crassostrea ariakesis (Fujita, 1913)
- 有明海沿岸で食用にされるが、他所へはほとんど出回らない。マガキにごく近縁な種で、殻の表面はやや滑らか。
- シカメガキ Crassostrea sikamea (Amemiya,1928)
- 八代海や有明海、福井県久々子湖に分布するカキ[2]。
- 八代海周辺で食用にされたが、1946年頃熊本県八代市鏡町からアメリカに種ガキが輸出され、現地で養殖が進むと八代海では生産されなくなった。アメリカに輸出されたシカメガキは現在もワシントン州沿岸を中心にクマモトの名で養殖されている。小振りながらクリーミーで濃い味が特徴。
イタボガキ属 Ostrea
- イタボガキ(板甫牡蠣) Ostrea denselamellosa (Lischke, 1869)
- かつては多く食用にされ、能登半島や淡路島周辺が有名な産地であったが、現在は瀬戸内海地方で僅かに市場に出回る程度で、絶滅危惧種状態。食用のみならず貝殻が最上質の胡粉の原料となる点でも重要であり、本種の復活と養殖技術開発の努力がなされている。
- ヨーロッパヒラガキ Ostrea edulis (Linnaeus, 1758)
- ヨーロッパ原産で、イタボガキに似た外観で輪郭が丸く平たい貝。別名:ヨーロッパガキ。市場ではフランス牡蠣、ブロン、フラットなどとも呼ばれる。日本では宮城県気仙沼市の舞根(もうね)などで僅かに養殖され、高級食材としてフランス料理店などに卸される。
- かつてのヨーロッパ、特にフランスでカキと言えば本種のことであったが、1970年代以降、寄生虫などにより激減。需要をまかなうために日本産のマガキを輸入して養殖するようになった。それ以来フランスなどで流通するカキの相当部分は日本由来のマガキであるという。
- 2011年、東日本大震災の津波により宮城県のカキ養殖施設が壊滅状態に陥った時には、フランスのカキ養殖業者達がかつて日本に助けてもらった恩返しとして、養殖施設の復旧に協力した。
利用
食材
グリコーゲンのほか、必須アミノ酸をすべて含むタンパク質やカルシウム、亜鉛などのミネラル類をはじめ、さまざまな栄養素が多量に含まれるため、「海のミルク」と呼ばれる[3]。カキフライのような揚げものや、鍋物の具にして食べるほか、新鮮なものは網焼きにしたり生食したりする。
食用としての歴史は非常に長く、世界中で食され、人類が親しんできた貝の一つである。一般的に肉や魚介の生食を嫌う欧米食文化圏において、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、古代ローマ時代から珍重され、養殖も行われていた。生ガキはフランス料理におけるオードブルとなっている。また、生ガキをメニューの中心に据える「オイスターバー」と呼ばれるレストランも存在する。ナポレオン、バルザック、ビスマルクなどがカキの愛好家であったことが知られている[3]。
日本では縄文時代ごろから食用されていたとされ、多くの貝塚から殻が発見されており、ハマグリに次いで多く食べられていたと考えられている[3]。室町時代ごろには養殖も行われるようになったという。大坂では明治時代まで広島から来るかき船が土佐堀、堂島、道頓堀などで船上での行商を行い、晩秋の風物詩となっていた。
かつては広島や東北などの産地から消費地まで輸送するのに時間がかかったため、日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、もっぱら酢締めや加熱調理で食された。日本人では武田信玄や頼山陽などがカキの愛好家であったことが知られている[3]。
日本人がカキを生で食べるようになったのは、欧米の食文化が流入した明治時代以降であり、生食文化が欧米から輸入された珍しい食材である。
カキと食中毒
古くから食べられてきたカキであるが、その一方で「あたる」食品(食材)としても知られている。カキの食中毒が注目されるのは非加熱状態で食べられる機会が多いことと関係している。
現代の日本国内で流通している生食用のカキは、食中毒を極力回避するために生産・流通段階でいくつかの対策がとられている[4]。例えば、生食用として販売されるカキには加工基準が設けられ、カキそのものを対象として規格基準が設けられている。さらに、保存基準、表示基準も規定されている[5]。具体的には、加工基準としては、食品衛生法或いは厚生労働省通知に基づき
- 定期的な貝毒検査の実施[6]
- 大腸菌群最確数が一定以下の海域で採取されたもの
- それ以外の海域で採取されたものであって、大腸菌群最確数が一定以下の海水、または塩分濃度3%の人工塩水を用い、かつ、当該海水若しくは人工塩水を随時換え、又は殺菌しながら浄化したもの
のどちらかであることが規定されている[7]。また、規格基準としては、細菌数E.coli(大腸菌)最確数、V. parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)最確数も規定されている。これらに加えさらに厳しい指導基準を各生産地域が設けている場合もある[8]。なお、生食用カキの上記加工基準を満たすために、紫外線殺菌された海水中や人工海水などを充分に循環させた環境下にて絶食状態として数日間飼育される場合がある。この場合、貝表面や貝内部に取り込まれた細菌の大部分を貝内から排出させほぼ無菌状態になることとは引き替えに、同様の処理がされていないものに比べ身が痩せてしまうこともあるので、加熱処理用のものよりも味が劣ることがある[9]。
現代において、食中毒症状を引き起こす原因としては貝毒、細菌(腸炎ビブリオ、大腸菌など)とウイルス(特にノロウイルス)がよく知られているが、どの原因も生育環境(海水)に由来するものであり、二枚貝特有の摂餌行動などによって貝内部、特に消化器官(中腸腺など)に取り込まれ濃縮されるものである。
貝毒以外の食中毒の予防のために留意すべきことは、
- 十分に加熱することで食中毒を回避できる
- カキを含むいずれの二枚貝も、同様の処理で食用にする限り食中毒の危険度に関しては変わらない
という点である。
貝毒
テンプレート:Main 貝毒は貝が捕食する海水中の有毒プランクトンを蓄積したものである。対策として、生育海水中の植物プランクトンの種類および貝に含まれる毒が定期的に検査されている[6](参照:マウスユニット)。有毒プランクトンの発生し易い時期は3月から5月。広島県立総合技術研究所の研究によれば、濾過海水中で一定期間飼育することで、毒の量を規制値以下に減毒できるとしている[10]。
細菌
細菌は海水中に常時一定数存在するものであり、ごく少量であれば食中毒症状を引き起こすことはない。しかし、気候や水質、保存方法などによっては細菌が大量に増殖することもあり、生食する際には注意が必要である。なお、現代の日本国内の生食用カキの場合は上述のように流通段階では十分な対策が取られている。むしろ、残った少量の細菌を増殖させてしまうような環境に放置することの方が危険である。
- 腸炎ビブリオ
- 20℃付近でおよそ10分間に1回と活発に分裂・増殖するが、15℃以下では増殖は抑制される。また、経口摂取によって感染症状を引き起こす際には生菌100万個程度が必要であるとされる。
- これらのことから、20℃以上の環境に数時間置いておくだけで食中毒を引き起こす可能性があると言えるので、家庭で調理する際には十分に注意されたい。夏期に海水温が20℃を超えるようような時期はやはり食中毒の原因となりやすい。70度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされている。
- 大腸菌
- 一般的には37℃付近でおよそ30分に1回と活発に分裂・増殖する。紫外線照射および殺菌海水などの循環によって同菌への対策がなされている。75度以上1分間の加熱でほぼ死滅するとされている。
- 赤痢菌
- 日本国内産についてはまず問題になることはないが、韓国では2001年にカキが原因で1,000人規模の罹患者を出した。この際、韓国産のカキが日本国内において、国内産として産地偽装され流通されていることが発覚した。
ウイルス
- ノロウイルス
- 2000年頃より特に注目されている。ノロウイルス感染力は85℃以上で1分間以上加熱されることにより破壊されると考えられていることから、中心部まで十分に加熱することが重要とされる[11]。
- 2001年-2003年の調査では、生食用カキの12.9%、加熱加工用カキの24.4%がノロウイルスで汚染されていた[12]
- 厚生労働省や保健所は二枚貝を内臓も含めて、食す際には内部まで十分に加熱調理するように、また調理の際に使用した器具の十分な洗浄を呼びかけている。感染原因としては、感染者の排泄物に含まれるウイルスを下水処理場では十分に除去できないため、排水が流入する養殖海域で養殖される貝類などから検出されることが多い。免疫のない者(1年以内に感染していない者や、先天的に免疫ができない者)、抵抗力が弱い老人や子供などはウイルス感染を起こし、激しい感染性胃腸炎を引き起こす。通常1-2日で治癒するが、乳児・高齢者は重症となることがある[13]。
- なお、ノロウイルスに関する情報として厚生労働省の公式サイト内にノロウイルスに関するQ&A[14]が用意されているので、こちらも参照されたい。
- 日本では報道により、「ノロウイルスと言えばカキ」という印象が広まり、特に2006年から2007年にかけてノロウイルス感染報道があるごとにカキの売上が減少した。
カキの食べられない月
産卵期にはカキは精巣と卵巣が非常に増大し、食用とはならない。一般にカキとして認識されているマガキの場合は、グリコーゲン含量が増える秋 - 冬にかけてが旬とされており、英名に「R」のつかない月、すなわちMay, June, July, Augustの5、6、7、8月は産卵期であり食用には適さないとされている[3]。ただし、春から夏に旬を迎えるイワガキと呼ばれる種類のカキもあり、それぞれ養殖も盛んであることからマガキに限らないならば通年食べることができる。また、産地によっては、水温などの条件により旬が変わることもある。
料理
カキの殻の表面は剃刀の刃のように薄いものが重なっており、生食の際には軍手などの手袋を用いないと手のひらに無数の傷がつく。網焼きや生食では身だけでなく汁もともに吸う。多くの人はカキの身にのみ栄養があると考えているが、身が浸されている殻の中の海水を含む汁にも多くの栄養素が含まれていることが知られている。
- 網焼き
- 殻のままカキを網の上で焼き、殻が開いたら食べる。焼く際、平らな面をまず焼くことで、貝の汁を残しつつうまく開けることができる。
- カキフライ
- カツレツの手法によって、生のカキに小麦粉をまぶし、溶き卵をくぐらせてからパン粉をつけて、油で揚げる。
- カキの天ぷら
- 中国広東省などでは、厚めの衣をつけた天ぷらが好まれている。
- 牡蠣の土手鍋
- 土鍋の内側の周囲全体に味噌を厚く塗った中に、カキ、ネギやその他の具材を入れて加熱し、味噌が溶け出したら食べる。広島県の郷土料理。
- かきめし
- カキの煮汁でご飯を炊き、炊き上がったところでカキを混ぜ数分ほど蒸らして作る。厚岸駅や広島駅では駅弁にもなっている。
- カキ鍋
- 季節の具材とともに煮る鍋料理の一つ。土手鍋とは異なる。
- カキカレー
- カレーライスの具にカキを使ったもので、広島などで供されたり、レトルト食品として売られている。
- お好み焼き
- 広島風お好み焼きの具材としてポピュラーである。また、お好み焼きの具にカキを使ったものでは岡山県の備前市日生地区のカキオコが有名。
- カキの燻製
- 缶詰や真空パックで流通している。
- カキ入り卵焼き(蚵仔煎、オーアチエン)
- 台湾や中国福建省、広東省の一部で一般的な料理で、お好み焼きのように平たく焼いてから、甘い味のタレをかけて食べる。
- カキ粥(台湾語:蚵仔粥、オーアティオッ)
- 台湾、広東省(特に汕頭市)、香港などで好まれる料理のひとつ。カキのむき身を米の粥に入れ、揚げたネギ、広東セロリ、コリアンダーなどを添えたもの。
- カキスープ(台湾語:蚵仔湯、オーアトゥン)
- 台湾などではショウガの味を利かせたカキのすまし汁にも人気がある。
調味料
- カキ醤油
- 広島県・厚岸町(北海道)で水揚げされるカキの出汁を用いて醤油が製造される。
- カキ油
- カキ油(オイスターソース)は中華料理の重要な調味料。中国マカオのものが著名。
- 干しガキ
- 干しガキ(蠔豉、蚝豉、ハオチー)は中国広東省で製造、使用されている調味用食材。カキのむき身を塩ゆでしてから日干しにしたもので、うま味を出すのに使われる。
薬用
貝殻は牡蠣(ボレイ)といい、焼成してから粉砕した粉は『日本薬局方』に「ボレイ」および「ボレイ末」として記載の生薬である[15]。ボレイの歴史は古く梁の陶弘景が『神農本草経』を修訂した『神農本草経集注』に収載されている。現在市販されているものはマガキの左殻が普通である。
「ボレイ末」は炭酸カルシウム (CaCO3) が主成分で、リン酸塩、他マグネシウム、アルミニウム、ケイ酸塩、酸化鉄などを含有する。
処方例として、安中散、桂枝加竜骨牡蠣湯、柴胡加竜骨牡蠣湯などに使われる。また、農薬として、長期的に使用すると除草効果(雑草の根張りが悪くなる)があるとされる。
薬理作用として、かき肉には血糖低下(カキ身エキス)、免疫増強作用(中性多糖類)、牡蠣制酸などの作用があるとされる。
薬用以外には天然炭酸カルシウムとして、あるいは1000℃程度に焼成すると牡蠣灰などとも呼ばれる酸化カルシウム (CaO) が主成分のものとなるので、消しゴムの添加剤などの工業用や食品添加物、砂糖精製用助剤などに利用することも行われている。
餌
「ぼれい粉」の名前で鳥類の餌として供給される。牡蠣殻は、鳥に必要なカルシウム分が豊富である。
その他
- 養殖
- カキの養殖用のいかだ(カキいかだ)を用いて養殖が行われている。天然の環境を利用して半養殖の形で採取することが多い。
- 海苔の養殖などにおいて、海苔の糸状体が蛎殻に付着することを利用し、採苗に貝殻が利用される場合もある。
- 海水の浄化
- 二枚貝は水中の懸濁態物質やプランクトンを取り込むため、カキを収穫することで、水中の栄養塩の回収につながる。特にカキは濾過量が他の2枚貝に比べて多い。米国チェサピーク湾では、オイスターガーデニングと呼ばれる水質浄化活動も行われている。カキの擬糞はゴカイなどの底生生物の餌となり、底生生物は魚類の餌となる。しかし、過剰なカキ養殖などにより底生生物による分解能力を超えて擬糞が発生すると、低層が貧酸素化し、底泥もヘドロ化することがある。
- 胡粉
- 日本画によく使われる白色の顔料。岩絵具の一つにも分類される。
- 肥料
- 粉砕された殻が「かき殻石灰」などの名前で有機石灰の一種として供給される。消石灰と異なり、作物に有効な微量元素を多く含んでいる[16]。
流通に係わる法制度
東京都では食品として安全に流通させるために、生食用かきを取り扱う場合、保健所長への届出を必要とさせている。届け出を行うと『生食用かき取扱い届済』ステッカーが交付される[17]。
同時に、大腸菌、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌O157、ノロウイルス、貝毒等の項目の検査と履歴の保存を指導している。また、生食用カキが原因となる食中毒が発生した際に、速やかな調査と食中毒事故の拡大を防止する目的で、採取海域の表示を義務付けている。
日本の産地
日本の2009年における牡蠣水揚げ量は209200トン。内訳は広島県が105900トンでシェア約50%、宮城県が48100トンでシェア約23%、岡山県が18300トンでシェア約8%、以下岩手県、兵庫県、三重県、北海道、石川県、福岡県、長崎県、香川県、新潟県、愛媛県、京都府…と続いている。広島県は大規模業者が多いのに対し、宮城県は個人での生産が多く、牡蠣生産に携わる漁業関係者は宮城県が一番多い。また、同年の輸入量は14,892トンであり、輸入量の93%を韓国からのものが占めていた。
日本全国の主な産地は次の通り。これらの産地ではシーズンを迎えると、観光客向けの大規模なツアーやイベントを企画したりして、観光振興に一役買っている。
- 北海道(サロマ湖畔、厚岸町、知内町)
- 岩手県(山田湾、大船渡湾)
- 宮城県(牡鹿半島、松島沿岸)
- 新潟県(加茂湖、真野湾)
- 富山県(新湊)
- 石川県(能登半島)
- 三重県(鳥羽市、志摩市)
- 京都府(久美浜湾)
- 兵庫県(播磨灘沿岸)
- 岡山県(備前市日生諸島、瀬戸内市虫明湾、浅口市寄島町)
- 広島県(広島湾一帯)
- 香川県(高松市牟礼町、さぬき市)
- 愛媛県(宇和島市)
- 福岡県(糸島半島)
- 長崎県(九十九島、有明海、大村湾)
北海道厚岸町のシングルシード(蛎殻を砕いたものに各一匹の幼生を付着させて育てたもの)のカキ「カキえもん」、三重県の「的矢かき」・「浦村かき」、広島県の3倍体のカキ「カキ小町」、北海道寿都町の「寿(ことぶき)カキ」など、各産地ごとにブランド化した牡蠣を売り出すなど、新しい動きもみられる。特に三重県の的矢かきは生食かき養殖技術発祥の牡蠣である[18]。
香港郊外の流浮山は牡蠣の焼き物などの料理が有名な養殖地であったが、近くの深圳の工業化によって、海水の汚染が酷くなり、衰退している。
言語
語源
古来からの和名は「おかきのかい」あるいは「かき」であり、密集している貝を掻き取ることが語源と考えられている[19]。
派生義
- 英語のoysterは寡黙さの代名詞[3]。as close as an oysterで「口が固い」という熟語。
- 広東語で「蠔豉 / 蚝豉」(干しガキ)は「ホウシー(テンプレート:ピン音)」といい、「好市」(テンプレート:ピン音、良い市況)と似た発音なので、旧正月に好んで食べられる。
日本語のアクセント
テンプレート:Sister 植物のカキ(柿)とは同音だが、共通語ではアクセントの位置が異なる。カキ(貝)の場合はカキであり、これは「夏季」「夏期」「下記」「火気」「花器」「火器」「花卉」等の熟語などとも同じ。他方、カキ(柿)はカキである(それぞれ太字にアクセント)。
漢字
テンプレート:Sister 「蛎」「蠣」だけでカキの意味を表す。しかし実際には「牡」の文字も用いて「牡蛎」「牡蠣」と表記することもある。これは一般に貝は雌雄で色の異なる部分[20]があり、白い物が雄と考えられていたのに対し、カキは全身が白い[21]ことから「牡しかいない貝」と誤解されたことに由来する。
実際にカキの生殖巣においては精巣と卵巣が入り混じっていることもあり、その区別は肉眼では不可能で、顕微鏡を使用しなければならない。
中国語では「牡蛎」「牡蠣」(ムーリー、テンプレート:ピン音[22])も使われるが、専門用語的であり、口語では「蠔」、簡体字で「蚝」(ハオ、テンプレート:ピン音)が用いられる。
閩南語や台湾語では「オーアー、台湾語仮名 オヲ15pxアア15px」と別の語が使われる。中国では「蚝仔(蠔仔、テンプレート:ピン音)」と表記し、台湾では同音の旁を使った「蚵仔(テンプレート:ピン音)」という漢字表記が作成された。
色
カキの身のような色として、生牡蠣色がある。
参考画像
- Ostrea edulis.jpg
ヨーロッパヒラガキ
- Crassostrea gigas p1040847.jpg
- Crassostrea gigas p1040848.jpg
- Pearl Oysters.jpg
- Open Oyster Lyon market.JPG
- Oyster culture in Belon, France 03.jpg
フランスのベロンでの養殖
- OysterHuîtreRecif.jpg
岩に付着した貝殻
- Kaki 20080703aomori.JPG
海辺のコンクリートに付着したカキ(夏)
- Ostreidae ja 20090114.JPG
海辺のコンクリートに付着したカキ(冬)
脚注
関連項目
外部リンク
- カキ肉 - 「健康食品」の安全性・有効性情報 (国立健康・栄養研究所)
- 生かきの衛生的な取扱い 東京都福祉保健局 健康安全室食品監視課ru:Устрицы