ヘドロ
ヘドロとは、河川や沼、池や湖、海などの底に沈殿した有機物などを多く含む泥。底質と呼ばれる。河川のヘドロは河川底質(かせんていしつ)とも呼ばれる。ヘドロは屁泥とも書かれることがあるが、語源は定かではない。灰泥(はいどろ)、維泥(いどろ)が訛ったものだとか、神奈川県津久井郡(現在は相模原市の一部)の方言でぬかるみを意味する言葉が語源であるという説もある[1]。
「ヘドロ」という語句は日本語だが、漢字が存在せず、慣習的に片仮名で表記されることがほとんどである。
有害物質を含んだヘドロ
港湾部の干満の影響のある流れの緩やかな河川の底質には汚染物質が堆積していることが多い。近年各地で底質ダイオキシン類の環境基準を超過する事例が公開されるようになっており、関東の事例としては、埼玉県の古綾瀬川や東京都の横十間川などが発表されている。今後その下流側の底質汚染調査が進むにつれ汚染の状況が明らかになると予想される。特に、深度方向調査により高濃度のダイオキシン類が検出されることが多い。
主に、産業廃棄物など有害物質の混ざった汚泥を指すことが多い。ダイオキシン類の異性体パターン等を調べれば汚染原因者が特定されることができ、島根県馬潟工業団地周辺水路においては、公害防止事業費事業者負担法により、汚染原因者の産業廃棄物処理会社等から浄化対策費用を徴収している。
汚泥としてのヘドロは、悪臭などの問題が出ることがあり、公害のひとつとしても認識されている。有害物質の混ざらないものに関しては、そのまま、もしくは加工され、肥料として利用されることがあるが、様々な有害物質が含まれていることもあるため、十分な分析調査が必要である。
有害物質が含まれているものについては、焼き固めてレンガにすることで再利用することもある。
ヘドロの滲出による水中生物環境の破壊
自然の状態ではヘドロは層として沈殿し、その上に砂礫層が被さるため、水中に浮遊することはない。海底の地殻変動や、人工的な要因(河砂・海砂の採取や、その他の水底工事)で水中に浮遊することがある。そのような場合には規模に応じて、エラにより呼吸する水中生物の窒息を招き、死滅や、汚染水域からの忌避を招く。また、清浄な砂礫地を産卵場所として好む水中生物も多く、水底表面がヘドロによる汚染された場合、汚染水域での水中生物の激減を招くこともある。もって、漁獲高の減少に影響する。
河川・湖沼・沿岸域における栄養塩過多のヘドロ
粒径が細かいシルト分で構成されるだけでなく、含まれる有機物の量が過多で嫌気的になった場合にヘドロと呼ばれる。一般的に、底泥の強熱減量が13%を超えるかどうかが汚濁の目安とされている。浚渫などの対策が行われることも多いが、場合によっては浚渫窪地に再度有機物が溜まり、貧酸素化した窪地内にヘドロが溜まるという悪循環に陥る場合もある。流れが停滞しない場合、貧酸素化しにくいため、水の流れをつくる工夫が同時に行われることもある。
バイオマス
主に土砂成分が少ないヘドロを原料としたバイオマスの少量生産と民生用化に欧米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ロシアが成功しており、地球温暖化対策や人口過多による資源問題対策に期待されている。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
- 環境省(環境庁)
- 底質の暫定除去基準(昭和50、52年)
- テンプレート:PDFlink(平成12年)
- ダイオキシン類による水底の底質の汚染を含む環境基準(平成14年)
- 底質の処理・処分等に関する指針(平成14年)
- 国土交通省
- 港湾における底質ダイオキシン類対策技術指針(改訂版)(平成15年)
- 河川、湖沼等における底質ダイオキシン類簡易測定マニュアル(案)(平成16年)
- テンプレート:PDFlink(平成17年)
- 河川、湖沼等における底質ダイオキシン類常時監視マニュアル(案)(平成17年)
- その他
- ↑ 『国土問題』66号「テンプレート:PDFlink」2005年3月