E.T.
テンプレート:Infobox Film 『E.T.』(イーティー、テンプレート:En)は、1982年公開のアメリカのSF映画。ならびに、同作品に登場する、架空の地球外生命体(Extra=外の、Terrestrial=地球の)の名称である。
製作会社はユニヴァーサル映画で、監督・製作はスティーヴン・スピルバーグ。約1,000万ドルという予算で製作されたが、公開と同時に、アメリカ国内だけでおよそ3億ドルという当時の映画史上、最大の興行収入を記録する。全世界では『タイタニック』、日本では『もののけ姫』(どちらも1997年公開)に抜かれるまで、邦画と洋画の配給収入の歴代1位であった。日本での前売り券の販売数は、9大都市の劇場だけで37万7000枚、総数では約170万枚と当時としては記録的なものであった[1]。
第40回ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞受賞作品。第55回アカデミー賞では音響効果賞、視覚効果賞、音響賞、作曲賞を受賞した。また、作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞にもノミネートされた。また、1994年に米国連邦議会図書館がアメリカ国立フィルム登録簿に新規登録した作品の1つである。
目次
ストーリー
アメリカのとある杉の森に球形の宇宙船が着陸し、中から小さな宇宙人が数人出てきた。彼らは地球の植物を観察し、サンプルを採集する事が目的だった。しかし、1人だけ宇宙船から遠く離れ、住宅街付近の崖の上から光の海を見て驚く。それは郊外の住宅地の灯だった。一方、宇宙船では、突然物音がして、着陸を知った人間たちが宇宙船に近づいてきた。宇宙船は危険を察知して離陸するが、遠くにいた宇宙人1人が地上にとり残されてしまう。
その頃、住宅地のある家では、少年たちがカード遊びをしていた。10歳のエリオットは小さいという理由から、兄マイケルらの仲間に入れてもらえず、嫌気がさしていた。ピザの出前を受け取りに外へ出たエリオットは物置小屋で音がしたことに気付いて怖くなり、みんなを呼びよせた。しかし、中には誰もいなかった。その深夜、エリオットはトウモロコシ畑で宇宙人を目撃する。翌日、夕食を食べながら、エリオットは宇宙人を見たことを話すが、誰も信じない。「パパなら…」というエリオットの言葉に母のメリーは動揺する。メリーと折り合いが悪いパパは、愛人とメキシコに行っていたからだ。
夜もふけ、エリオットがポーチで見張っていると、ついに宇宙人が彼の前に姿を現わす。エリオットは宇宙人を部屋に連れ入れクローゼットに隠した。翌日、エリオットは仮病をつかって学校を休み、宇宙人とのコミュニケーションを試みる。そして帰宅した兄、妹ガーティに紹介する。宇宙人は太陽系を遠く離れた星からやって来たことを超能力でボールを宙に浮上させて説明した。次の朝、エリオットにマイケルの友達が「怪物がいたか」と尋ね、宇宙人だと聞かされると、「ではエキストラ・テレストリアルだな」という。こうしてその宇宙人は以後、エキストラ・テレストリアルを略してE.T.と呼ぱれることになる。
学校で授業を受けるエリオットと家にいるE.T.との間に心が通いあい、E.T.が冷蔵庫からビールを取り出して飲むと、学校のエリオットも酔っぱらう。E.T.がテレビで「静かなる男」を見て、ジョン・ウェインとモーリン・オハラのキスシーンに見とれていると、学校でエリオットがかわいい女の子にキスをする。E.T.は「セサミストリート」を見ながら、英語を覚え、家に電話したいと言い出す。E.T.はノコギリや傘を使って通信器を作る。
ハロウィンの夜、子供たちはE.T.に白い布をかぶせて森に連れ出し、E.T.は故郷の星に連絡をとる。翌朝、E.T.は瀕死の状態となり、エリオットの兄マイケルが彼を家に運ぶ。E.T.を初めて見て驚くメリー。突然、宇宙服を着た科学者たちが家にやって来た。NASAの科学者キースがエリオットに「私も10歳の時からE.T.を待っていた」と話しかける。
E.T.は死亡し、エリオットは悲しみに暮れていると、E.T.の胸が赤くなる。彼は死んでいなかったのだ。エリオットは兄妹、兄の友人グレッグ、スティーブ、タイラーの協力を得て、科学者たちからE.T.を助け出し、森へ向かう。連絡を取った場所に到着すると宇宙船が現れ着陸する。エリオットとE.T.は最後の別れをし、E.T.は宇宙船に乗り込む。宇宙船が消えたあと、空に美しい虹がかかるのであった。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |
---|---|---|---|
VHS・BD版 | DVD版 | ||
エリオット | ヘンリー・トーマス | 浪川大輔 | 村上想太 |
ガーティ | ドリュー・バリモア | 藤枝成子 | 松野瞳 |
マイケル | ロバート・マクノートン | 鳥海勝美 | 林勇 |
メアリー | ディー・ウォレス | 駒塚由衣 | 藤生聖子 |
キーズ | ピーター・コヨーテ | 安田隆 | 牛山茂 |
グレッグ | K・C・マーテル | ||
スティーブ | ショーン・フライ | ||
タイラー | C・トーマス・ハウエル | 宮野真守 | |
E.T.の声 | パット・ウェルシュ | 高橋和枝 | 真山亜子 |
- VHS・BD版
- その他の声の出演:小室正幸、大滝進矢、立木文彦、岩田光央、杉元直樹、菊池英博、村田彩、嶋俊介、森一、竹口安芸子、大山高男、鈴木希実、羽村京子、筈見純、納谷六朗
- 日本語版制作スタッフ:演出:小山悟、翻訳:戸田奈津子、調整:小野敦志、制作:東北新社
- DVD版
- 演出:山田智明
スタッフ
- 監督/製作:スティーヴン・スピルバーグ
- 製作:キャスリーン・ケネディ
- 脚本:メリッサ・マシスン
- 編集:キャロル・リトルトン
- 撮影:アレン・ダヴィオー
- SFX/20周年記念特別版公開時の修復:ILM
- SFXスーパーバイザー:デニス・ミューレン
- アニメーション監督:コリン・ブレイディ
- 特殊効果:カルロ・ランバルディ
- パントマイム:カプリース・ローズ
- 音楽:ジョン・ウィリアムズ
作品解説
当初予定されていた台本は「グレムリンのような地球外生命体が、とある農家を恐怖に陥れる」というものであった。これは1955年8月21日にケンタッキー州ホプキンスビル郊外のケリーにおいて起きたとされる事件に基づいているが、当事者から「事件を映画化するのなら訴える」と脅かされたため断念したという(なお、この事件については目撃者以外の証言や物証が無く、存否さえ怪しいものである)[2]。
この映画の着想の一つは、監督が来日した際に見た映画『ドラえもん のび太の恐竜』だと言われている(詳しくは当該項目を参照)。本作品のテーマはスピルバーグ監督自らが経験した「両親の離婚」であり、SFは表面的な要素にすぎないという。ラストで少年がE.T.に別れを告げるシーンは、両親の離婚を受け入れるメタファーでもある。なお、監督が一番気に入っているのは自転車で空を飛ぶシーン(「AFI選出 アメリカ映画 勇気と感動ベスト100」のインタビューより)。
監督のスピルバーグは、アクターズスタジオのインタビューで、本作をフランスの映画監督のフランソワ・トリュフォーに捧げたと公言している。『未知との遭遇』でトリュフォーを出演者としてアメリカに招いた際、撮影時に「これから、あなたは子どもたちに向けた映画を創りなさい」と、クリエイターとしての将来の助言を受けた出来事が本作を作る強いモチベーションになったと述懐している。
映画の終盤、子供達がE.T.を乗せた車両を盗み出し自転車で森に向かいE.T.が帰って行くまでのシークエンスは、通常の手順通り編集済みのフィルムに合わせて演奏していたものの「画面と感情的になかなか同調しない」というウィリアムズの意見を聞いたスピルバーグが、映写機を止めた状態で行われた演奏を気に入って音楽に合わせ再編集した経緯がある[3]。
E.T.のモデル
地球に迷い込んだ地球外生命体という設定であるE.T.は「甲羅のない亀のような姿」で、アルバート・アインシュタイン、アーネスト・ヘミングウェイ、カール・サンドバーグらの晩年の写真に見られる「落ち着きのない目」というコンセプトを元に製作された。
一説にはE.T.の姿は、ロックバンド『クイーン』のドラマー、ロジャー・テイラーのファーストソロアルバムのジャケットがヒントになったとの説もある。
配役
作中、E.T.やエリオットを治療していた医師団は、南カリフォルニア大学病院に勤務する本物の医師と看護師である。スピルバーグ曰く、リアルさを出すためには本物でなければと思い、スピルバーグの主治医に頼んで、その主治医の同僚に出演してもらったとのこと[4]。
影響
エリオットがE.T.を探すために森に蒔いたチョコレートはハーシー社製である。当初はM&M's社のチョコレートを使う予定であったが、M&M's社に断られ、代わりにハーシー社のものを使用した。映画のヒットによりハーシー社のチョコレートは大ヒットし、自社のチョコの使用を断ったM&M's社の責任者は解雇されたテンプレート:要出典。
日本ではバンダイが商品化権を取得し、特にアパレル関係で大々的に売り出したが大失敗に終わり3億円の損失を計上した。
映画に登場するハロウィンと宅配ピザがこれ以降、日本で定着していった[5]。
ビデオソフト
1988年に本作のビデオソフトが発売。アメリカでは24.95ドル(当時、通常の人気映画作品は50 - 80ドル程度)、日本では10,500円(当時、通常洋画作品は15,000円 - 16,000円程度)という低価格での販売となった。アメリカでは予約注文だけで1,100万本を記録し、同年11月までに1,200万本を販売した。それまでの米国記録であった『シンデレラ』の530万本を大きく上回った。日本でも同年11月までに17万本を売り、劇場映画としてはそれまでの日本記録であった『トップガン』の14万本を上回った[6]。
20周年記念特別版
公開から20年を経た2002年、人形(パペットや着ぐるみ)で作られたE.T.を最新技術のCGで作り直し幾つかの場面を修正および追加した、『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』が公開され約4億6千万ドルの興行収入を記録。オリジナル版との総計で約12億6千万ドルの興行記録となる。
この「特別版」では最新技術による修正や、世相を反映したセリフなどの変更がなされている。具体的な変更点は以下のとおりである。
- オープニングのユニバーサルロゴが、自転車で空を飛ぶシーンをコラージュした特別なものに変更。
- オリジナル版でSFXを担当したILMが再び編集を担当。背景に雲を流し、樹木や登場人物の衣装が風に靡くようになった。これにより月に映るシルエットがアンブリンロゴと似たデザインになった。
- オリジナル版ではカットされていた「バスタブでのシーン」や「ハロウィンのシーン」が、最新技術での編集により公開可能な水準に達し20年を経て初めて追加された。
- 主人公達を追いかける警察官の手から拳銃とショットガンが取り除かれ、トランシーバーなどに変更。これに伴いショットガンのクロースアップのカットと「銃はやめて。相手は子供なのよ!」というセリフは削除された。父親になって以降のスピルバーグが常に変更を望んでいたシーンである。また、劇中における「テロリスト」という台詞が「ヒッピー」に変更された。公開前年の2001年に発生したアメリカ同時多発テロ事件の影響を考慮したものと推測される。
受賞/ノミネート
- 第55回アカデミー賞
- 受賞 - 作曲賞/視覚効果賞/音響賞/音響効果編集賞
- ノミネート - 作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞/編集賞
- 第36回英国アカデミー賞
- 受賞 - 作曲賞
- ノミネート - 作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞
- 第40回 ゴールデングローブ賞 ドラマ部門作品賞/音楽賞
- 第17回 全米映画批評家協会賞 監督賞
- 第8回 ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞/監督賞
- 第25回 ブルーリボン賞 外国作品賞
- 第56回 キネマ旬報ベスト・テン 委員選出外国語映画第1位/読者選出外国語映画第1位
- 第6回 日本アカデミー賞 最優秀外国作品賞
- 第1回 ゴールデングロス賞 外国映画部門 最優秀金賞
自転車
この映画で空を飛んだ自転車は、大阪・今里にあるKUWAHARA BIKE WORKS(映画公開当時は桑原商会)という会社の製品である。自転車のカラーリングはデザイナーとスピルバーグにより当時では珍しい白赤2色のグラデーション(レジェンドカラー)のデザインになった。映画公開当時にはE.T.自転車として全世界で売れたヒット商品となり、日本ではレプリカが39,800円。競技用が59,800円と子供が乗るには高価な自転車だった。 E.T.公開20周年の2002年には特別編公開を記念して映画で使用したモデルの復刻BMX(KZ-03)が限定300台が49,800円で復刻され、オプションでE.T.を乗せるカゴが4,500円で販売された。 そしてE.T.公開30周年の2012年には映画で使用されたモデルでは無く、公開当時E.T.自転車(競技用版)として販売されたBMXを復刻(KE-01)を発表。 予約販売にて56,700円(税込)で販売されました。(予約受付期間:2012年10月9日〜10月25日まで 出荷は2013年1月〜2月)
ゲーム
家庭用ゲーム機のAtari 2600にもゲーム化されたが、このゲームは大変出来が悪い、いわゆるクソゲーとの評価を受け、アタリショックを起こす原因となった。詳しくは「E.T. (アタリ2600)」を参照。
アトラクション
E.T.アドベンチャー
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンには2009年5月10日まで、この映画を題材にしたアトラクション「E.T.アドベンチャー」があった。ゲストは冒険者となり、森を抜けE.T.の故郷グリーンプラネットを救う冒険に出発するという趣向であった。待ち列には映画に登場した無線機などの小道具が展示されていたほか、名シーンである月に自転車の陰が映るシーンも再現されていた(提供:docomo)。親子で楽しめるメインアトラクションの一つだったため、無くなってしまったことを残念がる人も多い。
- 声の出演
- E.T.、ボタニカス:真山亜子
- コントロールパーシー:江原正士
- ナイト・オウル:原田大二郎
- 本官ヘンリー:加藤治
- 本官エドワード:屋良有作
- ガーグル:下屋則子
- ビックゾム:肝付兼太
- オービドン:加藤精三
- マグドル:佐々木優子
- モンスター・ジェームス:熊倉一雄
- モンスター・ダック:田中信夫
E.T.アドベンチャー ザ レジェンド
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに2009年7月17日オープン。以前あったE.T.アドベンチャーとは違い、案内人と共に自分自身で歩きながらスピルバーグ監督のメッセージを聞き、映画E.T.のメイキングシーンを見たりしながらグリーンプラネットに行くものに変わっている(ツアー形式のショーアトラクション)。2010年2月28日に営業を終了。
豆知識・エピソード
- 英語の言葉遊びがあり、その部分は日本語字幕では正確に訳せていない。E.T.がアルファベットのBを発音し妹に "テンプレート:En" と言われると、そのまま真似して見せるが、これは "テンプレート:En" になる。これが最後の別れの場面で使われる。
- この映画のハロウィーンでE.T.がヨーダの仮装をした人を追いかける場面ではさりげなくヨーダのテーマ曲が流れている。これは本作と『スター・ウォーズ』の音楽ともに担当したジョン・ウィリアムズによるジョークである。
- 『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』の銀河元老院の場面で3人のE.T.が登場している。そのうちの1人は惑星ブロドー・アソーギ代表の銀河元老院議員グレブレイプス (Grebleips) という設定がされている。この名前は、スピルバーグ (Spielberg) を逆さから呼んだアナグラムから名付けられた。
- 脚本を担当したメリッサ・マシスンは『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』でスピルバーグがインディ・ジョーンズ役として起用したハリソン・フォードの当時の妻である。なお本編ではカットされているが校長役でフォードも出演している。
- イギリスのロックバンド、カサビアンのボーカル、トム・ミーガンが大の『E.T.』ファンで、映画で実際に使用されたBMXを2007年に1万ポンド(当時のレートで約231万円)で購入した。
- E.T.がエリオットの肩に背後から手をかけるシーンがあるが、このシーンは後にスピルバーグがリメイク版を監督する『宇宙戦争』におけるアン・ロビンソンと火星人のシーンのオマージュである。
脚注
関連項目
- 新春かくし芸大会(フジテレビ) - 『E・Te(いて)』というパロディドラマの演目があった(1983年・第20回大会、演:堺正章)。
- オレたちひょうきん族(フジテレビ) - コーナードラマ「タケちゃんマン」で、『いーてふ』(1982年12月11日)、『続・いーてふ』(1983年1月15日)というパロディドラマがあった(着ぐるみ)。
- エグザムライ - コミカサイズ版6話にて登場人物が持っている板(DVDのケースらしきもの)の絵がE.T.のDVDのジャケットになっている。
外部リンク
- 20周年アニバーサリー特別版公式ホームページ テンプレート:En icon
- テンプレート:Movielink
- テンプレート:Movielink
- テンプレート:Movielink
- テンプレート:Movielink
テンプレート:スティーヴン・スピルバーグ監督作品 テンプレート:ゴールデングローブ賞 作品賞 (ドラマ部門) 1981-2000
- ↑ 『日経産業新聞』1982年12月8日付、14頁。
- ↑ 皆神龍太郎・志水一夫・加門正一『新・トンデモ超常現象56の真相』(太田出版、2001年)
- ↑ 曲自体人気がありウィリアムズ本人も気に入っている楽曲の一つであり、若干短縮されたアレンジがボストン・ポップスとウィリアムズが共演する演奏会ではかなりの頻度で演奏され、Alfred社から「地上の冒険」(Adventure on Earth) のタイトルで管弦楽用の楽譜が出版されている。
- ↑ スクール・オブ・フィルム #19
- ↑ ピザーラ/株式会社フォーシーズ 資料:沿革 1986年。
- ↑ 「『E.T.』ビデオ、日米で快進撃」『日経産業新聞』1988年11月7日、2面。