防災
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防災(ぼうさい)とは、災害を未然に防ぐ目的をもって行われる取り組み(行為[1])である。災害の概念は広いので、自然災害(天体活動による天変地異、地殻変動、大気循環・熱塩循環等々による災害、野火災害、ほか)のみならず、人為災害(失火、過失による爆発・落下・漏洩、ほか。[2])への対応も含めて使われることがあるほか、ときに伝染病への対応をも含む場合まである。ただし、伝染病に関しては防疫(ぼうえき)という呼称が本来的で、防疫は防災の一種とも言える。
また、防災に類義語として危機管理があり、「防災」と「危機管理」はいずれも何らかの具体的な行為によってリスクを減らすことを目的とするものの、後者はより広い事物や事後の対応も含んだやや広い実務的な概念と言える。
英語では、防災は、disaster prevention(災害の予防を重視する), disaster management(防災・減災・応急対応・復旧復興までを含む広い意味での防災全般を対象とする)という。減災には、disaster mitigation, disaster risk reduction (DRR) が使われる。被害軽減(damage reduction)という用語も使われる。災害原因事象(地震、台風、火山噴火、竜巻など)はハザード(hazard)、それによってもたらされる負の効果を災害(disaster)という。disaster は、直接被害、間接被害、二次被害なども含む広い概念である一方、damage は直接被害のみを指す。経済被害の場合は経済損失(economic loss)という。一般に「災害の防止軽減」という場合には disaster prevention and mitigation が使われてきた。
自然災害のみならず人為事故や防疫、防犯なども含め実務的な防災の場合は、危機管理(crisis management)という言葉が使われる。 その他、類語として、緊急事態管理(en:emergency management)、ダメージコントロール (damage control) があるが、これらは防災のうち、事象発生直後の応急対応を対象とする。
目次
歴史
世界の防災の歴史
日本の防災の歴史
世界の防災
テンプレート:節stub 世界的に自然災害は人間がコントロールし得ない災害とされ、日本のように巨額の防災対策関係費を計上する国は希有である。アメリカ合衆国を例にとれば、土砂災害(地すべりなど)による防災対策は、国ではなく土地所有者が行うべきものとされるなど、自己責任の原則が貫かれている。 しかし、2000年代に入ると、スマトラ島沖地震による津波災害、ハリケーン・カトリーナによる洪水災害など、規模の極めて大きく、かつ、事前の予知が可能とされた自然災害が頻発している。このため、国家レベルの自然災害対策の重要性が徐々に認識され始めた。災害規模と貧困の関係もあり、なかなか難しい面もある。
日本の防災
テンプレート:節stub 日本は、地震・津波・台風・洪水・高潮・高波・火山噴火・雪崩などの自然災害が世界的に見て多い国であり、古くから災害に関わる研究が積極的に行われてきた。21世紀初頭では、自然災害に関する研究の中でも特に防災や減災の視点での研究が盛んである。現在日本の防災に関する研究拠点として京都大学防災研究所や防災科学技術研究所が挙げられる。
現在の日本において、一義的に防災任務に当たるのは市町村(災害対策基本法)とされ、都道府県や国は市町村を援護・支援する機関として位置づけられている。国レベルで防災に関与している省庁は内閣府を筆頭に警察庁、消防庁、国土交通省、国土地理院、気象庁、文部科学省、厚生労働省、防衛省など多岐にわたる。総理大臣の諮問機関として中央防災会議があり、大規模地震のための対応など国家レベルでの各種行動計画を策定している。
国家レベルでの取り組みは、ダム、防波堤などの防災施設の設置(ハード対策)、住民への周知、避難対策(屋内退避、ソフト対策)等であり、主に公共事業による充実が図られている。
風水害に関しては、1950年代には年間数千人前後を記録していた死者数も、防災対策が進んだ1970年代には年間500人前後に、更に1990年代以降には年間数十人と確実に減少しており、防災効果が証明されている。
津波災害への対策でも最近の例では、岩手県下閉伊郡普代村や同県九戸郡洋野町では、M9.0を観測した東北地方太平洋沖地震においても高さ15.5mの普代水門(1984年完成)や太田名部防潮堤(普代村)や高さ12mの防潮堤(洋野町)が破壊されずに津波を大幅に減衰させ、実質的に津波を食い止めたため、貴重な人命と財産を守った[3][4][5]。普代村では2011年の東北地方太平洋沖地震において被災した民家は無く、死者はゼロである[6]。
一方で市町村レベルでは防災計画の策定や防災用品の整備をはじめとする様々な防災施策を担当する。ただし小規模な自治体では防災に割ける人員・予算が限られており、専ら水害や地震への施策にとどまる例が散見される。また広域災害になると市町村レベルでは限界があることも指摘されている。一方で行政だけでなく地域住民の互助を促し、住民による防災を進めることの重要性も指摘されている。
防災基本計画
災害対策基本法第34条、第35条に基づき中央防災会議が作成する国の基本指針を示す防災計画。防災に関する総合的かつ長期的な計画、中央防災会議が必要とする防災業務計画および地域防災計画作成基準を示す。対象とする災害は震災、風水害、火山災害、雪害、林野火災で、防災予防、発生時の対応、復旧等を記しておく。内容は行政側のみではなく、住民側の防災対応策についても記述されている。近年は災害時のトイレが防災の観点から重要との認識からマンホールトイレについての記述も増えている。トイレに関しては防災担当部署だけでなく、下水道や学校関連部署などの連携が必要となる。下記のように被災した自治体などを委員にした検討の元、国土交通省ではBCP策定マニュアルが策定されている。
関連資料
防災安全街区
道路、公園等の都市基盤施設が整備されるとともに、医療、福祉、行政、避難、備蓄等の機能を有する公共施設・公益施設が集中立地し、相互の連携により被災時における最低限の都市機能を維持できる街区。普段からの安心まちづくり、非常時の危機管理に対応したまちづくりを実現することを日的としている。次世代の都市として環境、エネルギー、情報通倍等と連動したエコシティの一部として整備されることが望まれている。
防災街区整備事業
密集市街地整備法に基づき、建築物の権利変換による土地、建物の共同化によって、老朽化した建築物を除却し、防災性能を備えた建築物および公共公益施設の整備を行う公共事業。防災街区整備地区計画として、地区の防災性の向上を目的とする地区計画を適用する。その上で密集市街地における耐火建築物の整備、不燃化促進、敷地広さに関する制限等を定め、道路、公園等の防災公共施設の整備とともに、災害に強い街区の形成を図る市街地開発事業。
進行中の防災街区整備事業
- 東岸和田駅東地区防災街区整備事業 大阪府岸和田市土生町
- 板橋三丁目地区防災街区整備事業 東京都板橋区
- 寝屋川萱島桜薗町地区防災街区整備事業 大阪府寝屋川市
- 寝屋川市萱島東地区防災街区整備事業 大阪府寝屋川市
- 関原一丁目中央地区防災街区整備事業 東京都足立区
- 那覇市農連市場地区防災街区整備事業 沖縄県那覇市
東京都墨田区が住宅市街地総合整備事業(密集市街地整備型)を進めている京島二・三丁目地区内では、新たに防災街区整備事業の事業化が検討されている。
防災まちづくり事業
地域の地理的、気候的条件や都市構造、地域の実情に応じた災害に強い安全なまちづくりを促進するため、1986年から2001年まで行われた公共事業。現在は防災基盤整備事業および公共施設等耐震化事業に継承され、防災拠点施設整備や建物の不燃化と耐震化を推進している。
防災拠点
テンプレート:Main 地震等の大規模な災害が発生した場合、被災地において救援.救護などの災害応急活動の拠点、拠点となる施設。的確な情報提供、災害対策の体制構築、計画実施、救援救助や応急復旧活動、負傷者等の安全な受け入れ、医療支援等、復旧活動の中心となる。防災計画で当該県庁や市役所役場、消防署、警察署、学校、病院、大規模な公園等が指定されている。
防災公園
都市の防災機能向上により安全、安心な都市づくりを図るため、地震災害時の復旧・復興拠点や中継基地となる防災拠点、周辺地区からの避難者を収容し、市街地火災から避難者の生命を保護する避難地として機能する地域防災計画に付置づけられる都市公園等を言う。 地域防災計画に基づき、公園には広域避難基地機能、備蓄倉庫耐震付貯水槽、放送・情報通信施設、ヘリポート、延焼防止用散水施設が整備される。
防災公園街区整備事業
公庫補助事業として、防災公園街区整備事業 (住宅市街地総合整備事業制度要綱に基づく密集住宅市街地整備型重点整備地区を含む整備地区)がある。災害に対し脆弱な構造となっている大都市地域等の既成市街地において、防災機能の強化を図ることを目的として、地方公共団体の要請に基づき、都市再生機構が主に上記市街地に生じる工場跡地等を機動的に取得して防災公園の整備と市街地整備を一体的に推進する防災まちづくり事業であり、地域防災計画その他の地方公共団体が策定する防災に関する計画において、避難地若しくは防災活動拠点として位置づけられるものまたは位置づけられることが確実なものを含んだものが、おおむね1ヘクタール以上、用地取得が困難で緊急を有するものは0.7ヘクタール以上、密集市街地緊急リノベーション事業の整備計画に位置づけられるものは1,500平方メートル以上の防災公園の整備を、事業用地の相当部分を防災公園として整備し、公園の整備と併せて行われるべき市街地の整備改善を図る。木造の建築物が密集しており、かつ十分な公共施設がないことや、その他当該地域の土地利用の状況から防災機能が確保されていないと認められる市街地が存する地域を対象地域とし、首都圏・中部圏・関西圏・九州圏といった大都市地域の既成市街地及びこれらと連担し一体の市街地を形成する地域、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域内の既成市街地、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく東南海・南海地震防災対策推進地域内の既成市街地、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づく日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域内の既成市街地、地震予知連絡会が平成19年度までに指定していた観測強化地域又は特定観測地域内の既成市街地が該当とされるが、これ以外にも都市再生プロジェクトで第三次決定に基づく特に大火の可能性の高い危険な市街地およびその周辺地域、密集法第3条の防災再開発促進地区、住宅市街地総合整備事業制度要綱に基づく密集住宅市街地整備型重点整備地区を含む整備地区と、これらの密集市街地の整備改善に資する事業の用に供する土地も、既成市街地の防災上危険性の高い密集市街地が存する地域も該当となる。
防災公園街区整備事業の実施事例
- 杉並区桃井三丁目地区桃井原っぱ公園・インザパーク荻窪サウステラス(日産自動車の工場跡地)
- 高槻市八丁畷地区
- 市川市大洲防災公園
- 摂津市千里丘四丁目地区防災公園
- 鎌倉市岩瀬下関防災公園
- 神戸市浜辺通地区みなとのもり公園(神戸震災復興記念公園)
- 東京都北区西ヶ原四丁目地区西ヶ原みんなの公園・アルティス西ヶ原パークヒルズ. 老人ホーム飛鳥晴山苑(外語大跡地公園)
- 三鷹市新川防災公園・多機能複合施設(仮称)整備(市民センター周辺地区防災公園街区整備事業・東京多摩青果三鷹市場跡地、新川6丁目)
- 大阪府八尾市南木の本三丁目地区
- 高槻市古曽部町3 丁目地区曽部防災公園
- 大阪府枚方市北片鉾町地区
- 兵庫県宝塚市末広町地区末広中央公園
- 千葉県柏市中原一丁目地区
防災生活圏
既往コミュニティの活動範囲を目安に日常的な生活圏を基本として、道路や公共不燃化建物による延焼遮断帯で囲まれた小、中学校区程度の区域をいう。防災生活圏ごとに避難場所となる公園整備を図り、防災拠点となる公共施設に隣接させるなど、防災まちづくりの基本単位としている。
延焼遮断帯
大規模な地震等で市街地大火を阻止する機能を果たす、道路、鉄道、公園等の都市施設と、沿線の範囲に建つ耐火建築物で構築される帯状の不燃空間である。
防災地図
避難場所や避難経路、防災施設、防災拠点等が示された地図で、災害発件後の行動の拠り所となる。ハザードマップのように危険予測図的な内容が含まれる場合もあり、災害時の崖地の崩壊や水害による洪水等の危険箇所を示したもの。また、こうした地図作成には、地元まちづくり団体や地域住民自身が協働で作成しているものもある。
文化遺産防災
文化遺産とその周辺地域を一体的に災害から守る防災の考え方で、内閣府では地震対策の検討項目として位置づけられている[7]。人の命と生活を守り、更に文化をも守ることを目指し、地域の防災力を高めようとしている[8]。
脚注
参考文献
関連項目
- 「防災」と類義語
- 防災一般
- 防災の喚起
- 防災に関わる準備
- 防災と都市計画
- その他
外部リンク
テンプレート:日本の救助隊テンプレート:Disaster-stub- ↑ 施策も含む。
- ↑ 対して、悪意をもって人為的に起こされる火災その他の災害は、犯罪被害であり、したがって、これに対応する防備は防災ではなく防犯である。
- ↑ 明治の教訓、15m堤防・水門が村守る 読売新聞 2011年4月3日 2011年4月24日閲覧
- ↑ 岩手県普代村は浸水被害ゼロ、水門が効果を発揮 日本経済新聞 2011年4月1日 2011年4月24日閲覧
- ↑ 『津波で5割超の防潮堤損壊 岩手県が効果検証へ』共同通信 2011年4月12日 2011年4月24日閲覧
- ↑ 普代守った巨大水門 被害を最小限に 岩手日報2011年4月24日閲覧
- ↑ 内閣府防災情報のページ
- ↑ 立命館大学歴史都市防災研究センター