幻魔大戦
テンプレート:Pathnav テンプレート:Sidebar with collapsible lists テンプレート:Portal 文学 『幻魔大戦』(げんまたいせん)は、SF作家平井和正と漫画家石森章太郎との共作で『週刊少年マガジン』に連載された漫画で、幻魔大戦シリーズの第1作。また、作中で描かれる戦いの総称。
概要
1967年、『週刊少年マガジン』に平井和正と石森章太郎との共作として連載された。
超能力に目覚めた主人公が、宇宙的規模の敵・幻魔と闘わねばならない運命に直面し、世界中の超能力者を結集するために苦闘する姿が描かれた。しかし連載は、地球に急接近する髑髏模様の月と、その前に立ち尽くすかのように見える超能力者たちを描いた見開きの絵をもって、人類の敗北を暗示して終了する。
なお、『少年マガジン』版の物語終盤にはジョン・ダンの詩『霊魂の進歩』が引用されている。
あらすじ
高校生の東丈は超能力に目覚め、宇宙を無に帰せんとする幻魔と闘わねばならない現実を知る。幻魔に対抗しようと超能力者を結集するが、幻魔の強大な力にはとても及ばなかった。月が地球に急接近する絶望的なシーンで物語の幕は閉じる。
主要登場人物
- 東丈(あずま じょう)
- 高校生。出来の良い弟・卓に対するコンプレックスなどから鬱屈した日々を送っていたが、ルナとベガにより強力な超能力に目覚める。当初は力の強大さに酔いしれていたが、やがて自身の使命に覚醒、幻魔との戦いに身を投じる。
- 使用できる超能力は当初はサイコキネシスだけだったが、終盤では高温の熱エネルギーを発する「ノヴァ」、周囲の熱エネルギーを自らの体に取り込む「絶対零度」の超能力も獲得した。
- 小説版では幻魔の存在を人々に知らしめるべく活動し、幻魔への対抗集団「GENKEN」の代表となる。
- プリンセス・ルナ
- オリジナル漫画版ではルーナ姫。小国トランシルヴァニアの姫。年齢は漫画版では19歳。強力なテレパシーと予知能力の持ち主。旅客機で飛行中に幻魔に抹殺されかかるがフロイに救われ、自身の使命に覚醒する。当初は育ち故にワガママで人種差別的なところがあり、丈やソニーと反目する事もあったが、やがて真の慈愛に目覚めていく。
- ベガ
- 異星のサイボーグ戦士。過去の幻魔との戦闘に敗れて屈辱の眠りについていたが、ルナのテレパシーにより覚醒、地球で再び幻魔との戦いに挑む。全身に武器を内蔵している。
- アリエータという恋人がいた。
- 東三千子(あずま みちこ)
- 丈の姉。丈を母親代わりに育ててきた。彼女も強力なエスパーであり、オリジナル漫画版や劇場アニメ版では、幻魔に殺された後も残留思念として丈を見守る。小説版では丈を精神的に支える。『ハルマゲドンの少女』では後半部の主人公としてハルマゲドンで活躍する場面も。
- ソニー・リンクス
- オリジナル漫画版ではサンボ。ニューヨークに住む黒人少年。テレポートや壁抜けの能力を持ち、幼いながらギャングのボスとして君臨していた。幻魔に襲われて一度は逃げ出したが、戦士の誇りに目覚めて参戦する。
- フロイ
- オリジナル漫画版ではベガの戦友で、犬のような姿をした異星人。テレパシーでルナを覚醒させ、さらに子犬の姿の101匹の息子達を地球に送って丈達を助けた。遂には幻魔大王との決戦のため自らも地球に降り立つ。
- 小説版や劇場アニメ版では宇宙を漂うエネルギー生命体となっている。
- ドクター・タイガーマン
- オカルト研究者。オリジナル漫画版での名前は「レオナード・タイガー」、通称ドク・タイガー。興奮すると虎の姿になる特異体質の持ち主。催眠、サイコキネシス、テレポート、四次元空間移動などの強力な能力に目覚め丈達に接触するが、身勝手かつ利己的で平気で人種差別を行い、獲得した超能力を自分の欲望に使うような性格から、早期に丈達と反目した。オリジナル漫画版では丈達の超能力者軍団のリーダーになれないと知るや、丈達を人類の反逆者に仕立て上げるなどの妨害や嫌がらせを行ったり、地球を幻魔に売り渡そうとしたりしていたが、最後は幻魔の奴隷にまで落ちぶれた。
- トランシルバニアの超能力者達
- オリジナル漫画版においてプリンセス・ルナが連れてきたトランシルバニアに住む超能力者達。凄まじい生命力の持ち主達で、体をバラバラにされても体の破片に土をかけるだけで再生できる。
- ナオミ
- オリジナル漫画版にのみ登場。エスパーの少女で、丈と同じくサイコキネシスの能力を持つ。シグの攻撃で石化した丈をサイコキネシス・マッサージで元に戻すなど、幼い少女とは思えないほど知識が豊か。
- ザメディ
- エスパー狩りを命じられ地球に現れた下級幻魔の一人。ニューヨークで警察署長のオライリーに憑依してソニーを捕らえ、巨大なエネルギー・ボールと化して街をパニックに陥れるが、丈やベガの活躍により敗北。その後周囲の人間達を引き寄せて融合させるという残虐行為を行って逃走し、後に東三千子を襲い絶命させるが、合体したザンビと共に三千子の能力により相打ちとなる。
- オリジナル漫画版での名前は「サメディ」。
- ザンビ
- ザメディの相棒。三千子を襲うが、超能力に目覚めた彼女の逆襲に遭う。オリジナル漫画版での名前は「ゾンビー」。
- シグ
- オリジナル漫画版における幻魔の地球侵攻の司令官。文明滅亡の悲壮美を好む芸術家を名乗る。丈を追い小説最新作『幻魔大戦deep トルテック』に再登場する。
- アニメ版では「カフー」という名前で登場。
- 幻魔大王
- 宇宙のあらゆる物の破壊・消滅を本能とする凶暴なエネルギー生命体。オリジナル漫画版ラストでは人類に不気味な宣戦布告を行う。
映画
アニメーション映画『HARMAGEDON 幻魔大戦』(1983年)
幻魔大戦最初の映像化作品。角川文庫版1-3巻付近の展開および少年マガジン版をベースにした物語にオリジナルの結末を付け、1本で完結する物語として描いている。 角川映画(旧・角川春樹事務所)による「角川アニメーション映画」第一作でかつ、大友克洋がアニメーション制作に初めて参画し、実制作をしたマッドハウス黎明期の長編映画の一つでもある。当時角川春樹事務所所属のアイドルだった原田知世がタオ役で出演。
キース・エマーソンと青木望によるシンセサイザーとドラムセット、オーケストラ伴奏を併用した独創的なサウンドトラックと、部分的に使用された2DCG描写による近未来的な仕上がりが特徴的であり、1983年時点の日本映画では採用が少なかったドルビーステレオ(アナログ2.0ch)で公開された。
20年目を迎える2003年1月1日にアトラスからDVDビデオが発売。その後、25年目の2008年にりんたろう監修によるデジタルリマスター版が製作され、角川エンタテインメントからDVDビデオ版が発売されている。これらはドルビーデジタルおよびDTS5.1chにリマスタリングした音声が収録されている。翌2009年11月にはこのデジタルリマスター版を基にキュー・テックのFORS Systemという設備で更にリマスタリングを施した[1]Blu-ray Disc(BDMV)版が同じく角川エンタテインメントから発売された。また、BD版発売に先立つ2009年10月25日に秋葉原エンタまつりの枠内で角川映画(現在は株式会社KADOKAWAの映像事業ブランド名)による上映会が秋葉原UDXシアターで行われ、井上伸一郎角川書店社長(当時)と監督・りんたろうのトークが行われた[2]。
スタッフ
- 製作:角川春樹・石森章太郎(石ノ森章太郎)
- 原作: 平井和正・石森章太郎
- 脚本:桂千穂・内藤誠・真崎守
- 監督:りん・たろう
- キャラクターデザイン・原画: 大友克洋
- 作画監督:野田卓雄
- 作画監督補佐:富沢和雄
- 美術監督:椋尾篁
- 美術:男鹿和雄・窪田忠雄
- 撮影:八巻磐
- スペシャルアニメーション(クライマックスの作画等):金田伊功
- 音楽制作:角川レコード(販売元:キャニオンレコード)
- 音響監督:明田川進
- 効果:佐々木英世・倉橋静男・柴崎憲治
- 編集:田中修
- 製作協力:マッドハウス(アニメーション制作)・マジックカプセル
- 角川春樹事務所作品
キャスト
- 東 丈:古谷徹(幼年期:恵比寿まさ子)
- ルナ:小山茉美
- ベガ:江守徹
- 東 三千子:池田昌子
- 沢川 淳子:潘恵子
- フロイ:美輪明宏
- 幻魔大王:佐藤正治
- カフー:穂積隆信
- ザンビ:永井一郎
- ザメディ:滝口順平
- 江田 四郎:塩沢兼人
- ソニー:林泰文
- タオ:原田知世
- ヨーギン:槐柳二
- アサンシ:田中秀幸
- サラマンダー:内海賢二
- オライリー署長:寺田誠
- 女占星術師:白石加代子
- 侍従長:宮内幸平
- アナウンサー:矢田耕司
- 黒人ギャング:塩屋翼、塩屋浩三
備考
- 脚本の内藤誠は、1981年の東映映画で真田広之が主演した『冒険者カミカゼ』の脚本を書いていたとき、桂千穂と東映の岡田茂社長に、本作・「幻魔大戦」を同じ真田主演の実写で映画化したい、と申し出ていたが、原作権をおさえていた角川春樹がその話を聞いてアニメ化したと話している[3]。
- アニメ版製作者の角川春樹は自身のオカルトへの傾倒からこの作品に入れ込んでおり、「実際に、この世に東 丈が現れる」と語っていた。21世紀になって吉田豪がこの件についてインタビューすると、「救世主としての東 丈は現れなかったが、自分(=角川)が救世主だったんだよ」と答えた。
- 漫画家の大友克洋は本作への参加がきっかけとなり、アニメーション制作に傾倒することとなった。 1988年、自身の漫画をアニメーション映画化した『AKIRA』を監督したが、超能力の表現や大規模な都市破壊シーンなどに「幻魔大戦」の影響が見られる。
- 2001年に公開された映画『メトロポリス』で、久々のりんたろう(監督)、大友克洋(脚本)のコンビとなった。
- 作者の平井は大友のデザインした東丈について、「でこっぱち[4]にされた」とコメントしている。
- 劇場公開による配給収入10億6000万円は、同日封切の『クラッシャージョウ』を大きく離すばかりか、『宇宙戦艦ヤマト 完結編』『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』を僅かに上回るほどに健闘し、アニメ映画としては同年首位の興業成績であった。
- 本作のキャラクターデザイナーの候補に上がっていたのは、同年『装甲騎兵ボトムズ』の作画監督で業界内外の注目を集めることになるアニメーターの谷口守泰であったといわれている。
- 麻原彰晃のハルマゲドン思想は本作の影響を受けた。
- 『ハイスクール!奇面組』の登場人物・春曲鈍(声:古谷徹)は本作から命名された。
- 主題歌「光の天使(CHILDREN OF THE LIGHT)」はキース・エマーソンのシンセサイザーが特徴的な楽曲であるが、27年経過後の2010年に高橋洋子のカヴァー・アルバム「20th century Boys & Girls 〜20世紀少年少女〜」においてピアノアレンジでカバーされた。なお、英題が同じジャクソン5らの楽曲とは一切関係が無い。
映画からのメディア展開
- 『幻魔大戦』オリジナル・サウンドトラック(キース・エマーソン、青木望) - 1983年 キャニオンレコードからLP発売。1998年にWEA JAPAN(ワーナーミュージック・ジャパン)より音楽CDとして発売。
- 『キャラクター・オブ・幻魔大戦 WARNING!』(キャラクターデザイン集/ 大友克洋) 1983年
- 『シナリオ幻魔大戦』(ノベライズ文庫/桂千穂・内藤誠・真崎守) 1983年
- 『幻魔大戦』(ポニカ)映画版のストーリーを元にしたパソコン用アドベンチャーゲーム。PC-8801、FM-7、MZ-2000等当時主流だった複数の機種に対応したパッケージが発売された。全機種のプログラムは高橋義信一人により組まれている。
- レーザーディスクゲーム(データイースト)1983年 - 同社のレーザーディスクゲーム第1弾。本作品の映像を流用した、スペースインベーダー風のシューティングゲーム。LDゲーム自体が短命に終わったため、現在稼働している場所は無いと言われている。
- 『幻魔大戦』(バンダイDOシリーズのテーブルトークRPG)1983年
- 『CR幻魔大戦』(映画版を原作としたパチンコ/西陣)2006年
派生作品
七月鏡一の脚本、早瀬マサト・石森プロの作画による『幻魔大戦Rebirth』が、小学館のウェブサイト『クラブサンデー』において2014年8月5日から配信されている。『週刊少年マガジン』版『幻魔大戦』の新たな続編として描かれ、第1話「グランド・プロローグ」では『週刊少年マガジン』版のストーリーをダイジェスト的に回想している。小説版『幻魔大戦』『真幻魔大戦』『ジュン (漫画)』など他の平井作品や石ノ森作品からの要素も一部取り入れられている。
脚注
- ↑ 週アス+『幻魔大戦』BD制作現場に聞く! 高音質・高画質の舞台裏
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 黒沢清・四方田犬彦・吉見俊哉・李鳳宇編集 『日本映画は生きている 第4巻』岩波書店、2010年、281頁。
- ↑ 突き出ている額(ひたい)を意味する「おでこ」に嘘っぱちや自棄(やけ)のやん八(=自棄っぱち)に見られる「~ぱち」を付けたもので、額が広い人を嘲う言葉である。 テンプレート:Cite web
- ↑ 『オリコン・チャートブック LP編 昭和45年-平成1年』オリジナル・コンフィデンス、1990年、333頁。ISBN 4871310256