ドラえもん のび太の海底鬼岩城
『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』(ドラえもん のびたのかいていきがんじょう)は藤子・F・不二雄によって執筆され、『月刊コロコロコミック』1982年8月号から1983年2月号に掲載された「大長編ドラえもんシリーズ」の作品。および、この作品を元に1983年3月12日に公開された映画作品。大長編、映画ともにシリーズ第4作。映画監督は芝山努。配給収入10億円、観客動員数210万人。同時上映は『忍者ハットリくん・ニンニンふるさと大作戦の巻』『パーマン・バードマンがやってきた!!』。
解説
雑誌『月刊コロコロコミック』に連載された「大長編ドラえもん」シリーズの第4作。ムー大陸、アトランティス大陸の両者を冷戦時の2大超大国に見立てた物語に、バミューダトライアングルの要素や日本海溝、マリアナ海溝など海底に関する情報が盛り込まれた作品。話中盤で出てくるトリエステ号の記録、生物の進化論やクジラの話なども実際の自然科学に基づいたものとなっている。また、本作の直前に1982年を現在とした短編作品「竜宮城の八日間」が執筆されており、この作品でも竜宮はムー大陸にあった国という設定であった。しかしながら本作品は、2年前に公開された映画「復活の日」の内容に酷似する部分が存在し(ポセイドンとARSの類似性の他、アラスカにおける地震と海底火山の噴火等シナリオの一致)一部では著作権侵害の懸念がなされた。
連載当初のタイトルは『のび太の海底城』だったが、連載4回目に現行のタイトルとなる。本作は「大長編ドラえもん」シリーズで最初に単行本化された作品である(第1作の『のび太の恐竜』は1983年12月発行で、この作品は1983年6月発行)。そのため、映画原作の単行本で恒例となっている「映画の主題歌が表記された見開きの加筆ページ」がてんとう虫コミックス版にはない(藤子不二雄ランド版や映画大全集にはある)。単行本にある最初の2ページは連載時のものを全く同じ内容で再度描き直したものである。
本作ではのび太が『のび太の恐竜』、『のび太の宇宙開拓史』、『のび太の大魔境』の話を回想する場面が登場しているが、映画版ではこのシーンはない。
映画版は本作から監督が芝山努になり、『のび太のワンニャン時空伝』までの22作品を監督した。また本作で初めてオープニング前のアバンタイトルが始まるようになる。
1995年にはミュージカル化され、1997年には香港でも上演された。
あらすじ
物語はのび太としずかが山へ、ジャイアンとスネ夫が海へ行きたいと議論するところから始まる(映画では逆)。結局ドラえもんの提案で海底山へ行くこととなる。海底山キャンプに出かけたのび太たちは、そこで海底人のエルたちに出会った。
そしてのび太たちは、海底火山の活動の影響で、数千年前に滅亡した海底国家アトランティスに残された自動報復装置ポセイドンが活動を再開したことを知る。ポセイドンによって鬼角弾が発射されれば海底ばかりか全地球上に甚大な被害が及び全ての生物が死に絶えてしまうという。
のび太たちは鬼角弾の発射を阻止するため、アトランティスのあるバミューダ海域へ向かう。
舞台
- 海底山
- ドラえもんがキャンプ地に選んだ、太平洋海底の山。ドラえもんのひみつ道具『テキオー灯』により、のび太たちは海底でも地上と変わりなく行動できる。
- ムー連邦
- マリアナ海溝の底に存在する海底人の連邦国家。1万年も前から高度な文明を築き上げていた。テキオー灯も独自に開発・保持しており、高い科学力がある。七つの海を統べるナバラの神を信仰する独自の宗教が存在する。
- バミューダ三角海域(アトランティス連邦)
- ムー連邦と敵対していた海底人の国であるアトランティス連邦が存在した海域。上空までをもカバーする強力なバリアーで囲まれており、永遠の闇が支配する世界としてムー連邦の人々に恐れられている。
- かつてアトランティス連邦は鬼角弾(地上で言えば核ミサイルに相当する)をもってムー連邦を屈服させることを目論んだ。同時にアトランティス本国をバリアーで覆う事で自国の絶対的優位を得ようとし、強力なバリアーも開発された。バリアーには放射性物質や放射線などを遮る機能を持たせておいた為、鬼角弾を用いても自国は安泰であるはずだった。しかしバリアー完成直後に核実験に失敗し、国中に核分裂生成物が広がって汚染されてしまった。この時バリアーの機能が裏目に出て汚染は拡散せず、結果アトランティス連邦だけが滅びてしまった。
- アトランティス連邦が滅びて久しい現在でもバリアーは存在していて、この海域を通過しようとした艦船や航空機はそのバリアーに触れるがために行方不明(沈没・墜落)となるケースが少なくないと作中では言われている。少なくともバリアー内部の海底には、船や航空機の残骸が多数存在していた。また、バリアー以外にも鬼岩城と自動報復システム、さらにそれが管理する鬼角弾が多数現存している。この他、鬼岩城などを守るロボット兵士なども稼動し続けている。
ゲストキャラクター
- エル
- 声 - 喜多道枝
- ムー連邦の勇敢な少年兵士。ムーから逃亡したのび太たちを捕らえるため追跡していたが、その時アトランティス連邦の残存部隊である巨大魚型ロボットのバトルフィッシュから攻撃を受けてしまう。その際、逃亡中にもかかわらず自分達を助けた5人に感銘を受け、裁判ではエルだけが皆を庇った。鬼岩城が活動を開始した際には、ドラえもんらと共にアトランティスに乗り込むことになる。
- なお原作では黒髪であるのに対し、映画では黄色の髪である。
- 水中バギー
- 声 - 三ツ矢雄二
- ドラえもんのひみつ道具の1つで、海底キャンプの足として出した水陸両用のバギーカー。内蔵コンピュータにより人間同様に会話ができるが、性格が良いとは言えず、すぐに機嫌を損ねてへそを曲げるなど、人間臭い。ドラえもんたちには逆らうことが多いが、しずかには甘え寄る描写もある。しずかの頼み事には素直に応え、彼女のためならどんなことも顧みない。他のメンバーからは「バギー」と呼び捨てにされるが、しずかには「バギーちゃん」とちゃん付けで親しまれる。ドラえもんの一道具に過ぎなかったが、物語を演出する重要な位置付けのキャラクターとなる。鬼岩城に乗り込んだ際には捕らえられたしずか達を救うためにドラえもんが持っていた爆弾を積んだままポセイドンの中に突入し、壮絶な最期を遂げた。また、大山のぶ代ら声優陣がドラえもんで一番印象に残ったキャラクターとしてバギーを挙げている。
- ムー連邦首相
- 声 - 大宮悌二
- ムー連邦の首相。当初、地上世界に海底人の存在を知らせまいとのび太たちを軟禁し、逃亡される。ムーから逃亡したのび太たちを敵視していたが、鬼岩城が活動を開始した際、エルに説得されドラえもんらにアトランティス潜入を依頼する。
- バトルフィッシュ
- 魚のような外貌をした鬼岩城の自律型巨大魚型ロボット。光線を放つ。最初の1体はのび太を襲ったが、2度目はムー連邦から脱走したドラえもん達を追跡していたエルを背後から不意打ちで追い詰めるが、スモールライトで小さくされ金魚鉢に入れられた(その後、囮用に使われた)。
- 監視および戦闘用に大量に製造されており、アトランティス滅亡後も海中を彷徨い続けている。
- 鉄騎隊
- 半魚人のような外貌をした鬼岩城防衛用のロボット兵士。音に敏感。巨大魚型ロボットのバトルフィッシュと共にアトランティス亡き後もポセイドンの尖兵として活動している。自律型のバトルフィッシュと異なり、ポセイドンの直接操作下にある。ポセイドンが破壊された後は機能が停止された(原作ではドラえもんから「ただの鉄くず」と評していたが、映画ではジャイアンから「銅像みたいに固まった」と評していた)。
- ポセイドン
- 声 - 富田耕生
- アトランティスの鬼岩城の自動報復システムを司るコンピュータ。アトランティス滅亡後も未だに鬼岩城に鎮座しており、海底火山の活動を自国への攻撃と受け取り、報復を開始する。「復讐の神」を自称していた。また、レーザービームなども発射可能で、これでバギーを攻撃した[1]。ドラえもん達主要人物5人全員を戦闘不能まで追い込み優位に立つが最後は、爆弾を積んだバギーに内部に突入されて爆発、破壊された。鬼岩城もコントロールを失い海底火山の噴火に飲み込まれ、アトランティスは完全に滅亡した。なお、あまり知られていないが富田は初期(元祖である野沢の前のドラえもん)の声を担当したことがあり、今作で新旧ドラえもん対決となった。
- 映画ではエルに「このコンピュータはあまり優秀ではない」と評されており、実際アトランティスの滅亡を認識できておらず、敵国の攻撃と自然災害の区別をつけることもできていない。
- おそらく幽霊船を動かしていたのも、ポセイドン張本人だとされる。
- アナウンサー
- 声 - 郷田穂積
- 幽霊船についてのニュースを読んだアナウンサー。
- 隊員
- 声 - 松岡文雄、佐藤正治、戸谷公次、塩屋浩三、橋本晃一
- ムー連邦の巡視隊員。
- 大イカ
登場ひみつ道具
- 水中バギー
- テキオー灯
- どこでもドア
- 深海用海草胞子と魚の卵各種詰め合わせ
- テントアパート
- 海底クッキングマシーン
- 消光電球
- 水中キャンプファイヤー
- とりよせバッグ
- ほんやくコンニャク
- 水上もうせん
- スモールライト
- 通りぬけフープ
- カメレオン帽子
- ジェットモグラ
- ムードもりあげ楽団
- タケコプター
- ショックガン
- 水圧砲
- ひらりマント
スタッフ
- 原作・脚本 - 藤子不二雄
- 作画監督 - 富永貞義
- レイアウト - 本多敏行
- 美術監督 - 工藤剛一
- 美術設定 - 川本征平
- 撮影監督 - 小池彰
- 録音監督 - 浦上靖夫
- 音楽 - 菊池俊輔
- 監修 - 楠部大吉郎
- プロデューサー - 別紙壮一、菅野哲夫
- 監督 / 絵コンテ - 芝山努
- 演出助手 - 森脇真琴、生嶋真人
- 動画チェック - 小林幸
- 色設計 - 野中幸子
- 仕上検査 - 代田千秋、夏田優子
- 特殊効果 - 土井通明
- 編集 - 井上和夫、鶴巻のり子
- 効果 - 柏原満
- 文芸 - 水出弘一
- 制作進行 - 田中敦、吉岡大
- 制作デスク - 山田俊秀
- 制作担当 - 田村正司
- 制作協力 - 藤子スタジオ、旭通信社
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
- 原画
- 中村英一 森下圭介 窪田正史 原完治 みのわみえこ 神村幸子
- 川越ジュン あべじゅん子 加藤鏡子 後藤真砂子 石井文子 鈴木信一
- 徳田悦郎 木上益治 星川和子 春貴健司 池ノ谷安夫 小林正義
- 大塚正実 吉川由美子 飯口悦子 上ノ山順子 一川孝久 山崎勝彦
- 飯山嘉昌 野口大蔵
- 協力
- オーディオ・プランニング・ユー 東京アニメーションフィルム アトリエローク
- 井上編集室 スタジオメイツ トミプロダクション
- 亜細亜堂 風プロダクション スタジオイルカ
- あにまる屋 スタジオタージ スタジオ九魔
- スタジオディーン イージーワールド シャフト
主題歌
- オープニングテーマ - 「ドラえもんのうた」
- 作詞 - 楠部工 / 作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 大杉久美子(コロムビアレコード)
- エンディングテーマ - 「海はぼくらと」
- 作詞 - 武田鉄矢 / 作曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 岩渕まこと(コロムビアレコード)
- この歌も『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』の主題歌『心をゆらして』と同様、TVの感動系やスペシャルの話でも、アレンジされてBGMとして使われた。
脚注
関連項目
- ドラえもん映画作品
- アニメーション映画
- ドラえもん (ファミコン) - 本作はこのゲームの中の「海底編」にあたる。
外部リンク
テンプレート:芝山努監督作品- ↑ 漫画「大長編ドラえもん」では鉄騎隊による攻撃だった。