近鉄2600系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2014年8月5日 (火) 17:25時点における218.218.180.115 (トーク)による版 (外部リンク)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

テンプレート:鉄道車両 近鉄2600系電車(きんてつ2600けいでんしゃ)とは、1970年に登場した、近畿日本鉄道大阪線名古屋線急行車である。

通勤形と同じ4扉を装備しながら、固定式クロスシートを採用して長距離利用者の利便に応え、同時に収容力も両立させたグループである[1][2]。当時の大阪線や名古屋線の急行は、2200系2250系などの旧型車が運用されていたが、老朽化が進んでいたこと、特に2200系は戦前製で半鋼製車であることから、長大トンネル区間での保安面を考慮し、新型車を導入することになった[1][2]

いずれも、外観は一般ロングシート車と変わらなかったので、乗り込んだ途端驚く一般客もいたという。ただしクロスシートで新製された2600番台系列については、側窓の天地寸法がロングシートの2800系・2000系よりも80mm大きく、窓框の高さも50mm低い。化粧板の色は関西私鉄標準の薄茶色である。

2680系電車は、廃車となった特急車10000系の機器を流用し、近鉄の特急車以外では初めての冷房付きとして1971年に製造されたグループ、2610系電車は、2600系の量産型で冷房装置を搭載し1972年から製造、2800系電車は2610系と同型で客席をロングシートとした通勤形である。2000系電車「ビスタカーII世」10100系の電装機器を流用して、2800系同様の車体を新製した通勤形である。2013系電車は2000系を観光列車「つどい」に改造した形式である。本項では、これらをまとめて紹介する。

2600系

テンプレート:鉄道車両 2600系は、1970年に4両編成2本と2両編成2本が近畿車輛で製造された[2][3]。電算記号(他社でいう編成記号)はQである。

車内インテリア

車内設備は、座席は4人掛け向かい合わせ式のクロスシートで、扉間に2ボックスが設置された。4扉とクロスシートの両立のため、ボックス長は1,320mmで国鉄近郊形(当時の標準1,400mm)よりも狭く、シートの背摺りもロングシート並みに低い設計であった[2]。座席表地はビニールクロスである。扉部分には団体列車として使用した際に使う収納式の補助席も設けられており、補助席使用時には乗降扉は700mmしか開かないようになっていた[4]。冷房装置は搭載せず、ラインデリアを装備した[1]

トイレはク2700形とサ2750形に和式が1箇所ずつ設置された[4]。処理方式は貯蔵タンク式である。また、トイレや運転席のないモ2650形は定員210名[5]と国内最大を誇った。これはモ2660形、モ2680形も同様である[5]

主要機器・性能

駆動装置はWNドライブで、主電動機三菱電機MB-3110-A (155kW) を装備する[1]。これは2400系以来採用されているものである[2]。制御装置は同じ三菱製のABFM-214-15-MDH電動カム軸式抵抗制御(モーター4台制御[4])で各電動車に搭載した[1]台車はともに近畿車輛KD-66で、シュリーレン式空気ばね台車である。パンタグラフは下枠交差式でモ2650形に2台、モ2600形の連結側に1台装備した[1]。ブレーキ(制動)方式はHSC-D発電制動抑速制動付き電磁直通ブレーキである[4]空気圧縮機電動発電機はク2700形とサ2750形にそれぞれ装備した[1]。起動加速度は2.5km/h/sで営業最高速度は110km/h。大阪線の新青山トンネル22‰上り勾配では94km/h以上の登坂性能を確保し、33‰上り勾配・架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度87km/hを確保している。また、前面には12000系以降の特急車同様に排障器が取り付けられた。

編成

  テンプレート:TrainDirection
4両編成 Tc
ク2700形
M
モ2650形
T
サ2750形
Mc
モ2600形
2両編成 Tc
ク2700形
Mc
モ2600形
  • ク2700形とサ2750形にはトイレが設けられていた。

改造

1979年に冷房装置の取り付けを行った[2][6]。これにともない電動発電機はク2700形に集約された。車内設備では座席の背ずりが低いのを高く改修し、ビニールクロスの座席表地はモケット[7]に変更され、一部座席はボックス長を広げている[2]

1989年から車体更新工事を行い[4]、トイレが5200系に準ずるものに改良され、方向幕装置の取り付けも行われた。後述の2610系、2680系はトイレ前の一区画残してロングシートに改造されたが、本系列はクロスシートのままで残った[4]。その理由は団体用としてのニーズがあったこと、そして前述の補助席使用時の乗降扉が700mmしか開かないようにする機能があったことが挙げられる。

新造から廃車までの運用

新造から5200系登場までは後述の2610系2680系とともに、大阪名古屋 - 松阪伊勢鳥羽間の急行を中心に、1976年3月のダイヤ変更まで設定されていた名阪直通急行などの長距離急行の運用に多用された。1979年に全車両が富吉検車区に転属して以降は名古屋線の急行運用が多くなり、5200系増備車や1997年L/Cカー投入後は2601F・2604Fは再び大阪線高安検車区所属に変更されたが[8]、運用本数が増加するラッシュ時や団体旅行のピーク時以外は予備車として留置されることが多かった[9]。名古屋線所属の2602Fも車両不足の代走を除き、大阪線同様に運用が少ない状態が続いたが2603Fは1810系1200系(現・1201系)など、名古屋線所属の2両編成車を1・2本併結した4・6両編成[10]でラッシュ時などの一部の急行・準急や5200系などの代走に引き続き運用された。

廃車

2002年2月から同年3月にかけて2601F・2602F・2604Fが廃車解体、2004年1月の2603Fをもって本系列全車が廃車解体され[2][11]、現存しない。同時期に製造されていた2410系、2430系の殆ど[12]が2度目の車体更新(B更新)を受けているにも関わらず、2600系が廃車になったのは、固定クロスシート(ボックスシート)による居住性に難があり、末期は2603F以外はあまり使用されていなかったことが理由に挙げられる。

廃車後、ク2700形とサ2750形が装備していたKD-66Cは、1200系(現・1201系)1202F - 1206FのTc車に流用し2250系の流用品であるKD-78Aと交換されている。

本系列の代替車両は大阪線用は5820系5851F・5852Fが新造され、名古屋線用は大阪線からの1200系1211F・1212Fの転属で置き換えている。 テンプレート:-

2680系

テンプレート:鉄道車両 2680系は、1971年に近鉄一般車では初めての冷房車として[13]、3両2本の計6両が製造された。電算記号はX。主電動機出力や編成構成が1480系と同一であることから、形式番号もこれに倣って2680系となった。

車内設備は2600系に準じたものとした。トイレはク2780形に設置している[13][14]。冷房装置は8,500kcal/hの集約分散式ユニットクーラーを1両に5台設置し[13]、これにラインデリアを併設したほか、熱交換型換気装置(ロスナイ)も1台設置されている。また本系列以降、近鉄では通勤車でも新製冷房車に限り室内は平天井構造となっている。

主要機器・性能

駆動装置はWNドライブで、主電動機は三菱電機MB-3020-C(125kW)を装備するが[13]、これは1971年に廃車となった10000系「ビスタカーI世」からの流用である[13]。制御装置も10000系の廃車発生品である三菱電機製ABF-178-15MDH電動カム軸式抵抗制御(モーター8台制御[14])である[13]。直列・並列切り替えを手動で行う特急用制御装置の流用のため、主電動機4個永久直列2群の並列制御に固定されており、直並列制御は行えないようになっている。台車は新造品が用意されており、近畿車輛製シュリーレン式空気バネ台車のKD-72で、電動車はKD-72を、制御車はKD-72Aを装着する[5]。台車の基礎ブレーキ装置は従来通りの両抱き式である。ブレーキ(制動)方式はHSC-D発電制動・抑速制動付き電磁直通ブレーキである[14]。パンタグラフはひし形パンタグラフでモ2680形(奇)に2台装備する[13]

起動加速度は3.2km/h/sで営業最高速度は110km/h。大阪線の新青山トンネル22‰上り勾配では101km/h以上の登坂性能を確保し、33‰上り勾配・架線電圧10%減・定員乗車条件でも均衡速度94km/hを確保している。

編成

テンプレート:TrainDirection
テンプレート:TrainDirection
Tc
ク2780形
M
モ2680形
(奇数)
Mc
モ2680形
(偶数)
  • 2014年4月1日現在、高安検車区に2684Fの3両編成1本が配置されている[15]
  • ク2780形にはトイレが設けられている[14]

改造

1979年に座席の改良がなされ[16]、2610系と同じ仕様となった。また、方向幕装置の取り付けも行われている[16]。1979年3月に名古屋線富吉検車区に転属した[13][14]1991年には5200系の増備が進んだことで、座席をロングシートに改造[14]、トイレを5200系に準ずるものに改修、冷房装置の配列を一部変更等の車体更新を施工している[14]

鮮魚列車専用車両化

2684F(第2編成)は2001年1481系の代替として鮮魚列車専用車に改造され[16]、塗装もマルーンレッドをベースに、前面に白帯を入れる塗装として区別されるようになった[16]。内装はつり革とつり革を吊るパイプが全て撤去された以外、ほとんど手を加えられておらず、側面方向幕は撤去されてその部分は埋められたが、正面方向幕は残され、「鮮魚」(漢字表記のみ)の表示を掲出して運行される[16]。2012年10月に転落防止幌および新型ATS設置工事が施工されている[17]

新造から廃車までの運用

新造から名古屋線転属まで上本町(現・大阪上本町) - 松阪駅宇治山田駅鳥羽駅間の快速急行・区間快速急行・急行を中心に運用されていた。名古屋線転属後も近鉄名古屋駅 - 津新町駅伊勢中川駅・鳥羽駅間の急行を中心に運用されていたが5200系の増備が進み、次第に普通列車の運用が主体となった。

後述する2610系2800系改造L/Cカーや新造車両である5800系5812Fの投入後、末期には大半が準急・普通列車の運用のみとなり、検査などの代走でのみ本系列の2編成を連結するか、2470系1000系などと6両編成を組んで長距離急行に充当された。

廃車

2002年8月に2682F(第1編成)が廃車された[16]。製造当初より冷房装置搭載の通勤車が廃車されるのは近鉄ではこれが初めてのケースである。廃車の理由はこの年に行われたダイヤ改正で列車が減便されたことや、乗客減による余剰であったこと、そして旧車機器流用車のため、足回り機器の老朽化や2684Fのための部品取りなどが挙げられる。 テンプレート:-

2610系

テンプレート:鉄道車両 2610系は、1972年から1976年に4両編成17本68両が近畿車輛で製造された[18]。当時長距離急行に運用していた2200系などの代替車種である[18]。電算記号はX。当初は伊勢方面への観光輸送・長距離乗車、大阪口での通勤輸送、大阪線山間部区間での地域輸送など、多目的な輸送の両立を考慮したクロスシート車として製造された[19]

車内インテリア

車内設備は、座席は4人掛けの対面式固定クロスシート[19]、扉間に2ボックスが設置された。扉部の補助席をなくしたため、ボックス長は1,400mmに拡大された。背摺りの高さを当時の一般的な固定クロスシート並みにした他、座席表地はモケットとされたが、混雑時の対策として、立席スペースを当時の近鉄標準のロングシート車の5%減に留める設計を行っている。ただし、肘掛は設置されなかった。

トイレはサ2760形に和式が1箇所設置されたが、ク2710形には設置されていない[20]。処理方式は貯蔵タンク式である。冷房装置は集約分散式ユニットクーラーで他にラインデリア、熱交換型換気装置が装備されている。なお、冷房装置は最初の6編成 (2611F - 2616F) は5台搭載の個別カバーだったが、1973年製以降は容量を10,500kcal/hに増大した新型とし、4台搭載の連続カバーになった。また、新製時から前面方向幕も装備されるようになった。

主要機器・性能

性能は2600系と同一で、駆動装置はWNドライブ、主電動機三菱電機製155kWモーター[18]、制御装置は同じ三菱製のABFM-214-15-MDH電動カム軸式抵抗制御である。
台車は近畿車輛製のシュリーレン式空気ばね台車であるKD-72形を採用し、M車・Mc車はKD-72Dを、T車はKD-72Eを装着したが[21]、ク2711 - ク2716とサ2761 - サ2766の12両はKD-66Cを装着した[21]。ただし、ク2721 - 2724とサ2771 - 2774の8両は2200系が使用していたコイルばね台車の近畿車輛KD-49Cが流用され[21]、ク2721 - 2723とサ2771 - 2773の6両は、B更新施工時に空気ばね台車のKD-64Aに交換された。2625F以降はM車・Mc車をKD-72Fへ、T車・Tc車はKD-72Gへ変更された[21]。いずれの台車も基礎ブレーキ装置は従来通りの両抱き式で、現在では全編成が鋳鉄制輪子から合成制輪子に交換されている。
パンタグラフはモ2610形に1台、モ2660形に2台装備した。ブレーキ(制動)方式はHSC-D型(発電制動・抑速制動付き)である。空気圧縮機はク2710形とサ2760形、電動発電機はク2710形に装備した。最高速度110km/hである。

編成・配置

テンプレート:TrainDirection
Tc
ク2710形
M
モ2660形
T
サ2760形
Mc
モ2610形
  • 2014年4月現在、2621F・2626F・2627Fの3編成は富吉検車区、その他の14編成は明星検車区に所属している[15]
  • サ2760形にはトイレが設けられている[20]。ただし、大阪線編成は2009年夏頃に頻発したトイレ放火事件の影響で、防犯のために、青山町以西の一部の運用[22]ではトイレが使用出来なくなっている。

新製時の運用

新造から5200系登場までは2600系や2680系と共に大阪線・名古屋線急行車両の主力として大阪・名古屋 - 宇治山田・鳥羽間や1976年3月まで設定されていた名阪直通の急行や区間快速急行、快速急行を中心に運用され、乙特急よりも停車駅の少ない臨時列車「高速・伊勢志摩」号でも運用されていた。基本的には2410系1810系等、各線の2両編成車を連結した6両編成で運転されていた。

転属

新造配置は全編成明星検車区であったが[18]、1991年に2611F・2622F - 2625Fが富吉検車区へ所属変更されている。大阪線で運用されていた2626F・2627Fは1997年の車体更新時に名古屋線富吉検車区へ転属となった。大阪線で試験運用されていた試作改造L/Cカーの2621Fも同時に富吉検車区へ転属している。

なお、車体更新を受けた後も本系列や後述の2800系改造L/Cカー、5800系の投入まで名古屋線に所属していた2611F・2625Fは明星検車区に、2622F - 2624Fは高安検車区に転属となったが、鮮魚列車の予備編成として高安検車区に配置されていた2612F・2613Fも含めて、2002年までに明星検車区に所属変更されている。

改造・車体更新

本系列は大阪線・名古屋線急行の新型車両として登場したが、2600系や2680系より若干改善されたとはいえシートピッチ・幅ともに狭く、さらには肘掛が設置されなかったため実質ロングシートと同等以下の乗り心地でしかないクロスシートであった。また、大阪 - 伊勢・鳥羽間の旅客輸送においては自動車を除いて競合相手がおらず[23]、速達性や快適性を求める乗客は特急料金を払って特急に乗車するため、必ずしもクロスシートが必要ではないという同路線の事情もあった。さらに1988年に3扉転換クロスシートの車内設備を備えた5200系が登場し、一部の快速急行・急行の運用を5200系に振り替えることになったため、1991年から車体更新が開始され[20][19]1997年までに全編成が更新を完了している。大阪線所属の編成から先に着手し、トイレ前1区画を残してロングシートに改造された。このため、内装は東日本旅客鉄道(JR東日本)の107系と似ている(ただし107系は3扉)。なお、トイレ前に残されたクロスシートは僅かながらシートピッチを広げてある。ロングシートの袖ひじ掛けは最初に車体更新された2611FのみVVVFインバータ制御車と同一品であるが、その他は界磁チョッパ制御車、1420系などに近いパイプ式の旧式ひじ掛けとなった。方向幕も前面および側面に装備されるようになった。車体更新の際にトイレが5200系に準ずるものに改修されている。ク2710型に搭載されていた空気圧縮機はサ2760形に大容量のものを搭載して集約したほか、分散式冷房装置を搭載する2611F - 2616Fは車体更新の際にモ2660形の冷房装置の配列を一部変更している。

2000年から2回目の車体更新(B更新)が開始され、2010年時点では2611F - 2623Fが更新を完了済みで、サ2760形に設置されているトイレは従来のまま存置されている。
2000年に更新された2611Fでは内装は従来通りで、雨樋の設置や乗降扉付近の水切り加工が行われ、2001年以降に更新された2612F以降は内装がL/Cカーと同様の明るめグレーに改装されている。2003年までに2611F - 2616F・2618Fが更新を完了したが、それ以降は21000系7000系の車体更新を中心に施工されたため、2006年までにB更新が一旦中断している[24]

2006年からはB更新が再開され、同年以降に更新された2617F・2619F - 2623Fでは内装更新の仕様変更が行われ、座席モケットが7020系に準じた仕様に交換されている。2006年に更新された2619F・2620Fでは客室側窓の一部が大型の固定1枚窓に交換され、2008年以降に更新された2617F・2621F・2622FではTc車への車椅子スペースが設置され[25]、2621F - 2623Fではク2710形とサ2760形の台車が空気バネのKD-64Aに交換されている。

2002年から2012年1月にかけて全編成に転落防止幌が設置され、2008年から2013年にかけて全編成が新型ATS(ATS-SP)・デッドマン装置設置工事を受けている。2013年以降、2621F・2625F - 2627Fのパンタグラフが下枠交差型に交換されている[26]

L/Cカーへの改造

1996年に2621F[20]、1997年に2626F・2627F[20]の4両編成3本が車体更新の際にL/Cカーに改造された[20]。座席を昼間時はクロスシート、ラッシュ時はロングシートに切り替えできる画期的な座席を導入したもので、2621Fでの試用を経て、新造車(5800系)および改造車を導入することになった。なお、試作車の2621Fとは客室側窓のロールカーテンが異なり、2626F・2627Fはフリーストップ式に変更され、側面二枚窓中央のサッシの車体側は黒く塗装されている。

名古屋線車両がL/Cカーに改造された理由は、名古屋線には競合する東海旅客鉄道(JR東海)の関西本線紀勢本線が存在し、名伊特急や3扉転換クロスシート車の5200系とともに快速「みえ」と対抗する役割も担っているためである[27]。所要時間は「みえ」より長いが車内設備は同等(増結車を除く)で編成両数も「みえ」よりも長く[28]、特急料金がかからないため運賃の面でも対抗しており[29]、また松阪駅以北では特急同様運転本数の面でも優位に立っている。

2008年に2621Fが2回目の車体更新(B更新)を施工され、座席モケットの5820系などと同様の赤系への交換・L/Cシートと転換装置の新品取り換えや車端部のロングシート部分のヘッドレストの撤去が行われている。側面二枚窓中央のサッシの車体側は黒く塗装されているが、他の改造L/Cカーに装備されているフリーストップ式ロールカーテンや大型の固定1枚窓への交換はされていない。

2011年から2012年1月にかけて2621F・2626F・2627Fの車体側面窓下に貼られていたL/Cマークが検査時の車体再塗装の際に撤去されている。

廃車

2014年4月現在のところ、本系列の廃車は発生しておらず、製造された全17編成が現存している[15]

アートライナー

テンプレート:Multiple image テンプレート:-

2800系

テンプレート:鉄道車両 2800系は、旧型車の1400形の代替を目的に1972年から1979年にかけて近畿車輛で製造された2610系のロングシート版である[30][31]。電算記号はAX

大阪線2430系・名古屋線1810系に落成当初から冷房装置を搭載したもので、座席はロングシートである。座面を低く、奥行きを広くして座り心地を良くした。1977年製の2814F以降はロールカーテンが一段階ストップ式から三段階ストップ式に変更されている。

冷房装置は集約分散式ユニットクーラーで他にラインデリア、熱交換型換気装置が装備されている。なお、冷房装置は最初の4編成 (2801F - 2804F) は5台搭載だったが[30]1973年製2805F以降は容量を増大した新型とし、4台搭載になった[30]。また、同時期製造の奈良線向け8600系南大阪線向け6200系と同様に前面方向幕も装備されている。この関係で1977年製の2814Fまでの車両では大型運行標識板取付ステーが省略された(1978年から1979年に増備された2815F - 2817Fでは設置)。

主要機器・性能

性能は2430系や2610系と同一である。ブレーキ(制動)方式はHSC-D型(発電制動・抑速制動付き)である[31]。台車は2610系と同じくKD-72を採用しており、M車・Mc車はKD-72Bを、T車・Tc車はKD-72Cを装着した[32]。サ2963以降のT車台車はKD-72Eに、最終増備車の2816F・2817FはM車・Mc車をKD-87へ、T車・Tc車をKD-87Aへそれぞれ変更された[32]
空気圧縮機はク2900形とサ2950形、電動発電機はク2900型に装備した[30]。パンタグラフはひし形式で、2両編成はモ2800形に2台[30]、3両編成がモ2800形の運転席側に1台とモ2850形に2台[30]、4両編成はモ2800形のパンタグラフが連結側にあり、モ2850形は2台装備する[30]

1975年製の2809Fのみ、他の4両編成と若干仕様が異なっており、南大阪線6200系と同様にT車を抜いた3両編成運用も考慮しているため、サ2959形には空気圧縮機を搭載しておらず、3両編成時にパンタグラフが接近し過ぎないようにモ2809形のパンタグラフが運転席側に搭載されている。1979年製の2816F・2817Fは一部仕様変更が行われ、パンタグラフが下枠交差式に変更された[33]

改造・車体更新

1993年から1998年にかけて全編成に車体更新工事が実施され、側面方向幕も全車に装備された[31]。1998年に施工された2816F・2817Fは雨樋の設置や床材のノンスリップ加工が行われている。分散式冷房装置を搭載する2801F - 2804Fは車体更新の際にモ2850形の冷房装置の配列を一部変更している。

2008年3月から2回目の車体更新(B更新)が開始され、2013年12月までに2801F - 2808F・2810Fが更新を完了している[34][26]。座席モケット・壁紙・床材が7020系に準じた仕様にそれぞれ交換され、ク2900形の連結側に車椅子スペースが設置されている。

2008年から2012年12月にかけて全編成に転落防止幌が設置され、2008年から2013年にかけて全編成が新型ATS(ATS-SP)・デッドマン装置設置工事を受けている。2013年以降、従来ひし形パンタグラフを装備していた2811F・2813Fのパンタグラフが下枠交差型に交換されている[26]

トイレの設置

1989年に2817F、1997年から1998年3月にかけて2811F・2813F・2815Fのサ2950形に急行での運用を考慮してトイレ[35]が設置されている[31]が、トイレが設置された場所が異なる[36]

その他の13本には2014年現在でもトイレが設置されていない。

L/Cカーへの改造

1997年から1998年3月にかけて2811F・2813F・2815Fの4両編成3本がL/Cカーに改造された[31]。座席だけでなく、中間車の連結面の窓が埋められ、フリーストップ式のカーテンが採用され、2610系改造L/Cカーと外見上・内装上は差異が殆どない。

2610系の大多数がロングシートに改造されたにもかかわらず、2800系にもL/Cカーへの改造車が登場しているが、1997年当時は2610系の初期車両がロングシートに改造されて間もなかったことや、4両編成では既に2805F - 2810F(2809Fは2006年7月から3連化)と2610系2611F - 2625Fが車体更新を完了しており、4両編成の新製冷房車で未更新の編成は2610系2626F・2627F以外に2811F・2813F・2815F - 2817Fのみであったこと、そして車体更新の時期がちょうど1997年に当たっていた2811F・2813F・2815Fの車内設備以外が2610系と変わらなかったことが挙げられる。

2010年7月から2011年12月にかけて2811F・2813F・2815Fの車体側面窓下に貼られていたL/Cマークが検査時の車体再塗装の際に撤去されている。

転属・組成変更

3両編成の2801F - 2804Fは1480系の置き換え目的で1998年までに大阪線高安検車区から明星検車区に転属している。

2006年7月には奈良線東花園検車区からの9200系転属に伴い、トイレ無しの4両編成が余剰となったため、T車を抜いて3両編成で運用する事が可能であった2809Fはサ2959を抜いて3連化され、高安検車区から明星検車区に移籍した。

2811Fは当初高安検車区に配置されていたが、1997年から1998年にかけて先述の車体更新・L/Cカー改造を施工後、名古屋線富吉検車区へ転属している。

2013年6月には2両編成の2812F・2814Fが1810系1822F・1823Fの廃車代替のために、大阪線高安検車区から名古屋線富吉検車区に転属となった[37][26]。 これにより、大阪線系統に所属する本系列はトイレ無しの4両編成のみになった。

2813F・2815F・2816F・2817Fは当初名古屋線所属だった[30]ものの、5200系の増備に伴って1990年に高安検車区へ転属したが、2813F・2815Fは先述の車体更新・L/Cカー改造を完了後に高安検車区から富吉検車区へ、2817Fは2002年に明星検車区へ所属変更された後、2004年3月に廃車となった1000系1002Fの代替として明星検車区から富吉検車区にそれぞれ再度転属した。

廃車

2014年4月現在、サ2959形以外に廃車となった車両は発生していないものの[15]、2006年7月に先述の2809Fの3連化・名古屋線転属により、編成から外されたサ2959は2800系では初の廃車・除籍となり、塩浜工場で解体された。このため、近鉄車両全体における新製冷房車の廃車解体は同年5月に廃車解体された奈良線8000系8076F・8077Fのモ8276・モ8277(界磁位相制御化の際に組み込まれた新製冷房車)以来5度目の解体である[38]。実際には1810系中間T車と編成を組んでいた2430系2443F・2445Fも3連化は可能であるが、同時期に2444F・2445Fが3連化の上でB更新・ワンマン改造を施工された際に切り離されたサ1976を2443Fに組み込まれていたサ1961と交換し、サ1977を当時名古屋線に所属していた2433Fに組み込んで4連化したため、2443Fは4両編成のままであったこと[39]、そして車齢については2809Fより2430系2443F・2445Fにそれぞれ組み込まれていたサ1970形の方が4年程度若く(サ2959形は1975年1月落成、サ1970形は1979年11月落成である[40])、廃車とするには時期がやや早かったため、2809Fが3連化の対象になったことが挙げられる。

編成・配置

  テンプレート:TrainDirection
2両編成 Tc
ク2900形
Mc
モ2800形
3両編成 Tc
ク2900形
M
モ2850形
Mc
モ2800形
4両編成 Tc
ク2900形
M
モ2850形
T
サ2950形
Mc
モ2800形

2014年4月現在、高安検車区に2805F - 2808F・2810F・2816Fの6編成、富吉検車区に2811F - 2815F・2817Fの6編成、明星検車区に2801F - 2804F・2809Fの5編成が配置されている[15]。2両編成は2本、3両編成は5本、4両編成は10本の計59両が在籍する。なお、モ2862・2864とサ2951 - 2954・2962・2964は当初から欠番である。

アートライナー

  • 2811F:赤塚「FFCパイロゲン」(2006年3月 - 2007年12月)
  • 2817F:志摩スペイン村「ピエロ・ザ・サーカス」(2008年5月 - 2009年8月)

テンプレート:Multiple image テンプレート:- テンプレート:Multiple image テンプレート:-

2000系

テンプレート:鉄道車両 1978年に名古屋線旧性能車の代替用として製造された[41][42]。1C8M制御・2M1Tの3両編成で[41][42]、全車名古屋線所属。車体は同時期に製造されていた2800系後期車2815F以降と同一である[43]。電算記号はXT。本系列と同様の機器流用車である2470系および1000系の新製時から冷房装置を搭載した車両または2680系のロングシート仕様と言える[42]。なお、2000形という形式番号は過去に1930年製の参急デニ2000形、次に1948年製の大阪線用・運輸省規格型20m3扉車で使用されており、本系列は3代目ということになる[44]

主要機器

主電動機は廃車になった「ビスタカーII世」10100系から流用[42]しているが、電動機出力は10100系時代の125kWから132kWに増強されている[42]。一方、主制御器は日立製作所MMC-HTB-20E型が新製されM車に搭載[42]。パンタグラフはM車に[42]、10100系から流用した東洋電機製造PT-4203が2基搭載されたが、1979年に増備された車両は新造された下枠交差形の東洋電機製造PT-48に変更されている。

台車は流用品、新造品を問わずにいずれも空気バネ台車であるが、2101F・2102Fでは電動車も10100系の近畿車輛KD-41Jをそのまま流用[41][43][42]、第3編成以降では、制御車のみKD-41Lを流用され[41][42][43]、電動車は近畿車輛KD-85が新造された[42]。2103F以降のク2100に装備されていたKD‐41L台車は、後に廃車となった8000系60番台のサ8710等から流用したKD‐64Aに2003年から2004年にかけて全て交換された[43]。なお、2101F・2102Fの台車は2014年現在も交換されておらず、KD-41JおよびKD-41Lを装備している。

全車名古屋線用として製造された[43]が、抑速ブレーキを含む発電ブレーキを装備している[41]ことから、一部編成は当初大阪線所属の1480系・2470系、2430系3両編成の冷房改造に際しての車両不足の代走として大阪線の各列車に運用されたこともあった。性能は1480系・2470系や2680系とほぼ同一で、起動加速度は3.2km/h/s、最高速度は110km/hである。

改造・車体更新

1996年から1999年にかけて全編成に車体更新工事が施工され、側面方向幕も全車に装備された[41]。第1・2・7編成以外の編成は湯の山・鈴鹿線用ワンマン運転対応改造も施工され[43]、乗務員室仕切窓の小型化、客室内の乗務員室仕切扉のガラスが22000系と同様の黄土色のガラスに取り替えられている。ワンマン列車の表示は、専用の行先表示幕による表示と、通常の行先表示幕を併用した電光表示器によるものが混在している。

2007年から2013年にかけて全編成の車体連結部に転落防止幌設置、2011年から2013年にかけて全編成が新型ATS設置・デッドマン装置更新・戸締灯増設の各工事を受けている。2013年からは一部編成が先頭部と中間連結部の通路板を5800系に準じた3枚板のものに交換している。

トイレの設置

1989年に2107Fのク2107に急行での運用を考慮してトイレが設置されていたが[43][41]、主要駅間の区間乗車が多い普通列車での運用が大半となっている事もあり、使用頻度は低かったものの、大阪線所属の2610系同様に名古屋線急行車の予備編成にもなっており、かつては大阪 - 伊勢志摩間の快速急行にも運用された時期があった。名古屋線急行車の代走を務める際は、抑速ブレーキ未装備の編成と連結する場合もあるために大阪線の間合い運用には充当されなかった。また、団体貸切列車や臨時列車などで湯の山線[45]や志摩線などの通常は運転されない線区で運用された場合もあり、後述のイベント用列車に改造されるまではその状態で使用されていた。

その他の11編成には2014年現在でもトイレが設置されていない。

2013系(イベント用列車「つどい」)への改造

トイレが設置されている2107Fは2013年9月に後述のイベント用列車「つどい」に改造され、形式も2013系に変更された[26]

編成・配置

テンプレート:TrainDirection
Tc
ク2100形
M
モ2000形
(奇数)
Mc
モ2000形
(偶数)

2014年4月現在、全車が富吉検車区に配置されている[15]

アートライナー

  • 2108F:名泗コンサルタント(2008年8月 - 2012年5月)
  • 2109F:名泗コンサルタント(2005年6月 - 2008年8月)
  • 2111F:シー・ティー・ワイ(2008年6月 - 2011年10月、2011年12月 - )
  • 2112F:シー・ティー・ワイ(2005年4月 - 2008年5月)

テンプレート:Multiple image テンプレート:-

2013系「つどい」

テンプレート:鉄道車両

前述の2000系電車の中で、トイレが設置されている2107Fが2013年に観光用列車へ改造された際に、内外装が大幅に変更され、形式を2013系に変更した事から生じた系列[46]大阪名古屋寄りからク2107 (Tc) ー モ2013 (M) ー モ2014 (Mc) の編成を組む[46]。2014年4月1日現在の配置検車区は明星検車区である[15]

改造までの経緯

2013年10月に開催される第62回伊勢神宮式年遷宮に合わせ、同年3月に50000系「しまかぜ」の新造投入、および2012年8月から2013年7月にかけて23000系伊勢志摩ライナーのリニューアルが行われたが、これと並行して式年遷宮の多客期に伊勢市駅 - 賢島駅で専用列車を運行する計画が持ち上がり、開発プロジェクトが2012年末にスタートした[46]

プロジェクトのメンバーは近鉄グループの総力を結集し、近鉄の企画統括部営業企画部と技術管理部が企画を、大阪輸送統括部工機部検修課が工事図面の作成から施工管理を担当、デザインはアド近鉄株式会社、内装品の設計や製作は株式会社近創、車両改造は近鉄車両エンジニアリング株式会社が担当した[46]。検討段階では各地の輸送統括部事業課などの現業部門からも意見を幅広く集約し、計画からおよそ9ヶ月という短期間で企画・設計・材料手配・施工を進め、式年遷宮の時期である2013年10月には営業運転開始にこぎつけている[46]

開発プロジェクトでは、志摩地域の魅力を再確認することから始まり、地元自治体の志摩市関係者と共に志摩市の見所を回り、豊かな自然や海の幸などを楽しみ議論を重ね、開発コンセプトは次のようになった[46]

  • 明るく楽しい雰囲気の列車
  • 伊勢志摩地域の見所をご紹介する列車

愛称は、にぎやかで楽しい多彩な車両空間かな、自然と人が集まり、わいわい賑やかに楽しんでいただくと言うコンセプトにふさわしい名称として「つどい」に決定した[46]

改造種車

開発コンセプトと使用条件から、改造方針が次のようになった[46]

  • 標準軌全線を走行可能な車両性能[46]
  • 定員は団体バス2台分のお客様を収容可能な88名[46]
  • 飲食を楽しめるテーブルを備えた腰掛[46]
  • 飲食物をご提供できるバー・カウンター[46]
  • 各種催しが出来る広いイベントスペース[46]
  • 自然の風を感じるオープンスペース[46]
  • 車内での飲食に備えたトイレ付き車両[46]

これらの仕様を満たす車両として、3両編成でトイレを備えた車両である2000系2107Fが選定された[46]。 

本系列では通勤車からの改造であり、主要機器が2000系時代から手を加えられていないことから、車両性能も全く同一であり、標準軌全線で運用可能な性能を有する[46]

車体外見

車体構造は車内設備の関係や定員80名を確保するために、各車の乗降扉を片側4ヶ所から1ヶ所とされたが、中間車のモ2013形は機材搬入時の業務用扉として片側1ヶ所が残されている[46]。側扉を撤去した部分のうち、座席スペースとなる部分には固定窓が新設されている[46]。方向幕装置は前面・側面共に全て撤去された[46]。車体連結部には棒状の転落防止幌を装備する[46]

外観の塗装はシルキーホワイト1色塗装を基調とし、伊勢神宮や海の幸など、伊勢・鳥羽・志摩の魅力をイラストで表現したものとしている[46]

車内設備

共通事項

車内は天井をオレンジとグリーン、側壁の化粧板を木目調とされ、床面は伊勢エビやフグなどの伊勢志摩の特産品をモチーフとした柄や色鮮やかなカーペットを敷きつめて、キュートかつ賑やかな雰囲気とした[46]
乗務員室についても、ブルーの濃淡3種の化粧板を使い分け、観光列車らしい雰囲気とされた[46]

座席スペース
1号車の半室24席、2号車の賢島方車端部8席、3号車の48席を合わせて座席数は80席となっている[46]。座席は窓向きに配置され、景色を見ながら飲食を楽しめるようにテーブルを設けた[46]

 ク2107形 

1両目は半室を座席スペースとして客室中央部をガラスで仕切り、「風のあそびば」と名付けられたフリースペースを設置[46]。扉部分には、スリットと床面までの大型ガラス (高さ約1700mm、幅約600mm) を設置した。スリットから入る爽やかな風を感じながら景色を楽しめるようにしている[46]。側扉は残されており、車庫の入庫時や悪天候時には完全に締め切る事が出来る[46]
車内はカラフルかつユニークな形状の座席を配置し、天井は空をイメージしたブルーで、側壁の化粧板は木目調とされた[46]。床面には色鮮やかなカーペットが敷かれ、明るく楽しい空間を演出した[46]。各部には波形手すり「クネット」を配して安全面にも配慮し、アクセントとした[46]
トイレは従来の和式から、5200系更新車と同等の洋式に改造され、青色の濃淡3種の化粧板を用いて海中をイメージした「うみのトイレ」とされた[46]

 モ2013形 

2両目はバーカウンターや物販テーブルがあるイベントスペースになっている。各種催しが出来るように、車端部の座席を全て撤去し、広いイベントスペースを確保した[46]。イベントスペースには側壁のスペース全体に受け金具を設け、着脱式テーブルを装備し、催しに応じて自在に変更する事が可能で、使用しない場合は折りたたんでバックヤードに収納する事も出来る[46]。バー・カウンターでは志摩市、志摩市観光協会、志摩市商工会が志摩地域の食材や特産品を販売し、その場で飲食できるようになっている[46]。一部の日程で海女、ご当地キャラクターとの記念撮影会、トークショーなどの特別イベントも開催している。座席スペースはバー・カウンターの両端に配置した[46]
車内の天井は太陽をイメージしたオレンジ色で、側壁の化粧板は木目調とされた。床材は海をイメージした青色の床敷物であり、中央部にはスペイン割タイル調のデザインシートを貼りつけた[46]
放送とAV関係はバー・カウンターに3両一括の車内放送用マイクを追加で設置し、2号車専用のイベント用放送装着であるワイヤレスマイクシステムを既存の放送回路と独立させた4個のスピーカーと共に新設し、映像視聴を可能とする32インチの液晶ディスプレイを車内中央部に新設した[46]
大阪・名古屋方車端部には車椅子スペースが設置され、非常通報装置 (通話式) を併設した[46]

モ2014形

3両目は全て座席スペースとされた。乗務員後方には「こども運転台」を設置し、運転士気分が味わえるようにしている。運転台機器は廃車となった1810系1823Fのモ1823形からマスコンと制動弁が流用された[46]テンプレート:-

現在の運用

名古屋線所属車両

  • 2両編成車両
  • 2800系2812F・2814F
名古屋線の準急・普通に編成単独および他編成と併結した2両 - 5両で使用されるほか、急行の増結編成にも使用されている。また、早朝・深夜の1往復のみ快速急行・急行として、大阪上本町駅まで乗り入れる。
大阪線時代は2410系と共通で運用され、名古屋線には早朝・深夜の1往復のみ急行・準急の増結編成として乗り入れていた。編成単独による名張駅 - 伊勢中川駅間の普通列車、信貴線ではほとんど運用されていなかった。
  • 3両編成車両
  • 2800系2801F - 2804F・2809F
  • 2000系2101F - 2106F・2108F - 2112F
主に名古屋線の準急・普通、山田線を中心に運用されているほか、平日朝の近鉄四日市発着急行[47]でも運用されている。
湯の山線鈴鹿線でのワンマン運転には対応していない編成は湯の山線・鈴鹿線、日中の近鉄名古屋駅 - 近鉄四日市駅間の急行には運用されないが、鈴鹿線では平日の名古屋線近鉄四日市始発平田町行き急行があり、この1本とその前後の鈴鹿線内列車は車掌乗務のツーマン運転であるため、鈴鹿線に入線することもある。
ワンマン編成は名古屋線運用の他に湯の山・鈴鹿線のワンマン列車[43]、深夜の下り最終を除いた近鉄名古屋駅 - 近鉄四日市駅間の急行でも運用されている。
  • 4両編成車両
  • 2610系2621F・2626F・2627F
  • 2800系2811F・2813F・2815F・2817F
通常の定期運用ではL/Cカーの5800系5812F、ロングシート車の1200系1211F・1212Fと共通運用で、1230系1810系1201系9000系などの2両編成を増結した6両編成で近鉄名古屋駅 - 伊勢中川駅宇治山田駅鳥羽駅間の急行を中心に、間合い運用で近鉄名古屋駅 - 富吉駅間の準急、朝の宇治山田発白塚行き普通、夜間の1往復で大阪線快速急行、大阪線名張発名古屋行き急行[48]にも運用される。トイレが設置されている関係上、団体貸切列車等に使用される場合もあり、その際は志摩線などの通常運用されない線区にも入線する事がある。特に、2009年以降は志摩線活性化の一環として、「ペンギン列車」[49]、「サイクルトレイン」[50]といった臨時・団体列車での志摩線へ乗り入れる機会が多くなっている。名古屋線では短距離運用に入る場合でもトイレの利用が可能である。

大阪線所属車両

  • 4両編成車両
  • 2610系2611F - 2620F・2622F - 2625F
  • 2800系2805F - 2808F・2810F・2816F
大阪線大阪上本町駅 - 名張駅青山町駅では快速急行から普通列車まで種別を問わずに運用され、単独4両編成の他、2410系1430系、2610系等を増結した6 - 10両編成でも運用されている。
トイレを装備しない2805F - 2808F・2810F・2816Fは青山町駅以西の運用を中心に、トイレを装備する2610系は大阪線急行の主力車両として中・長距離を問わずに青山町駅以東に直通する急行・快速急行でも運用されているほか、1日2・3編成(2編成乗り入れる場合、残る1本は1400系1407Fか5200系)が間合い運用として夜間上り、早朝下りの名古屋線急行で3往復ずつ運用されている。トイレを装備する関係で大阪線・名古屋線急行車の共通予備車にもなっているため、検査や更新改造などの運用離脱で5200系や5800系L/Cカーなどが検査や団体運用などで定期運用を離脱した場合は2610系が代走することがある。
ただし、トイレ無しの編成は運用が乱れた場合などの異常時以外は、青山越え運用に充当されない。

その他

  • 3両編成車両
  • 2013系2013F
運行区間は伊勢市駅 - 賢島駅間1日2往復[46]。特別料金は大人300円、子供150円であり、運賃とは別途必要となる[46]。運転期間は2013年10月5日(土)から2014年3月30日(日)までの土休日運行。運休日には標準軌全線での団体運用も可能とする[46]
  • 2680系2684F
日曜日を除き、早朝と夕方の決まったダイヤで大阪上本町駅 - 松阪駅・宇治山田駅を鮮魚列車として運行される。

その他

ここまでの大阪線名古屋線抵抗制御通勤車(1470系以前を除く)の基本性能は、主電動機出力の差に関わらず起動加速度(高加速時)=2.5km/h/s(MT比1:1)・3.2km/h/s(MT比2:1)、常用減速度=4.0km/h/s、営業最高速度=110km/hとされている。ただし、大阪線の急勾配区間を走行可能なのは、155kWモーター車はMT比1:1、125kWまたは132kWモーター車はMT比2:1以上の、全車抑速ブレーキ付き編成に限られる。歯車比は155kW(MB-3110系)が4.61、125kWまたは132kW(MB-3020系)が5.47と差があるが、155kWモーターは低回転高トルク型なので、定格速度(全界磁で各々49.0km/hと46.5km/h)や走行特性は類似している。

参考文献

  • カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p39・p40・p49 - p51(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  • 日本の私鉄「近畿日本鉄道」p76 - p82・p139・p140(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年) ISBN 978-4-620-32003-8
  • 『近畿日本鉄道完全データ』 p.56 - p58・p65・p.68・p.69 (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  • 「近鉄時刻表 各号」(著者・編者 近畿日本鉄道、出版・発行 同左)
  • 近畿日本鉄道のひみつ p126・p127(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  • ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) p4・p5・p22 - p29・p84・p85・p92・p93・p96・p97・p164・p182 - p184(著者:飯島厳・藤井信夫・井上広和 編集者:名取紀之 発行人:笹本健次 発行所:ネコ・パブリッシング 2002年)ISBN 4-87366-296-6
  • 鉄道ファン』2014年1月号 {第633号} p.56 - p61

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 96p ISBN 4-87366-296-6
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 近畿日本鉄道のひみつ p.126・p.127(発行者 小林成彦、編者・発行所 PHP研究所 2013年)ISBN 978-4-569-81142-0
  3. それまで2600という形式番号を使用する車両に新2200系の貴賓車を出自とするサ2600号1両が存在したが、1964年にサ3018へと改番されており、形式、個体番号ともに重複したことはない。
  4. 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.51(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  5. 5.0 5.1 5.2 ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 164p ISBN 4-87366-296-6
  6. 2603F・2604Fは将来のパンタグラフ増設を考慮してクーラーキセのカバーが中央に寄せて設置されている。
  7. モケットは、当時一般的なエンジ色である。
  8. カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.144(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  9. 走行機器や車体は通勤型の2410系や2430系とほとんど同一で、保守面に問題は無かったが、車内設備では補助席を装備する関係上、立席スペースが若干狭く本来はラッシュ時の運用には不向きであった。
  10. 2両編成に限らず、4両固定編成の2602Fや当時の名古屋線唯一のロングシート4連車である1000系1002F、5800系等4両編成L/Cカーや5200系と組んだ事もあった。
  11. 2601F・2603F・2604Fは高安へ回送の後に高安検修センターで、2602Fは五位堂へ回送の後に五位堂検修車庫で解体された。
  12. B更新を受けなかったのは2410系ク2591形のみである。
  13. 13.0 13.1 13.2 13.3 13.4 13.5 13.6 13.7 ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 97p ISBN 4-87366-296-6 
  14. 14.0 14.1 14.2 14.3 14.4 14.5 14.6 カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.50(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  15. 15.0 15.1 15.2 15.3 15.4 15.5 15.6 鉄道ファン』2014年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2014 車両配置表」「大手私鉄車両ファイル2014 車両データバンク」
  16. 16.0 16.1 16.2 16.3 16.4 16.5 『近畿日本鉄道完全データ』 65p (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  17. 【近鉄】2680系X82編成が運用復帰 (RMニュース)  ネコ・パブリッシング 2012年10月2日
  18. 18.0 18.1 18.2 18.3 ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 28p・29p ISBN 4-87366-296-6 
  19. 19.0 19.1 19.2 『近畿日本鉄道完全データ』 57p (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  20. 20.0 20.1 20.2 20.3 20.4 20.5 カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.40(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  21. 21.0 21.1 21.2 21.3 日本の私鉄「近畿日本鉄道」p76・p77(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年) ISBN 978-4-620-32003-8
  22. 以前から、大阪上本町 - 高安・河内国分間の準急と普通列車では運行距離が短かったことから、乗客の少ない列車によるトイレでの喫煙やいたずら防止のため、5800系や5820系などトイレ付きのクロスシート車両はトイレを使用不可とする処置がとられていた。
  23. 大阪府や奈良県内においては大阪線桜井駅や特に大和高田駅五位堂駅河内国分駅以西では大和路線や和歌山線桜井線との競合が多少はある。
  24. 当時は本系列以外にもB更新工事の施工途中であった2430系8600系6020系12200系のB更新も一旦中断されている。
  25. 『近畿日本鉄道完全データ』 57p写真2 (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  26. 26.0 26.1 26.2 26.3 26.4 鉄道ファン』2014年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2014 車両データバンク」
  27. 1990年3月に快速みえの運行が開始され、1993年8月からは5200系と同様の3扉転換クロスシート車両のキハ75形気動車が投入されている。
  28. 快速「みえ」は4両編成を基本(2011年3月12日ダイヤ改正まで一部列車に2両編成での運転があった。)として運転されているが、近鉄の名伊急行では早朝と夜間の一部に4両編成で運転される列車を除いて2両編成のロングシート車両を増結した6両編成を基本としている。
  29. 快速みえ以外にも1989年から関西本線に2扉ではあるが、転換クロスシートを装備する213系5000番台、1999年以降はラッシュ時を中心に3扉転換クロスシート車両の313系1100・1500・1600・1300番台が投入されている為、名古屋駅 - 四日市駅間では快速・普通列車とも多少は競合している。
  30. 30.0 30.1 30.2 30.3 30.4 30.5 30.6 30.7 ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 24p・25p ISBN 4-87366-296-6 
  31. 31.0 31.1 31.2 31.3 31.4 カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.39(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  32. 32.0 32.1 日本の私鉄「近畿日本鉄道」p78・p79・p80(著者・編者 広岡友紀、出版・発行 毎日新聞社 2012年) ISBN 978-4-620-32003-8
  33. この2編成のみ、パンタグラフ搭載位置が車端寄りに変更された関係でヒューズボックス位置も若干変更されている。
  34. 鉄道ファン』2013年8月号 交友社 「大手私鉄車両ファイル2013 車両データバンク」
  35. 処理方式は5200系と同じく貯蔵タンク式であるが、室内の配色は2817Fのみ5200系に準ずるものに、L/Cカーに改造された2811F・2813F・2815Fは5800系に合わせて、落ち着いたものとなっている。
  36. 2817Fは1200系1211F・1212Fと反対側であるが、車端部の側面窓が一枚の部分で、2811F・2813F・2815Fは2610系に合わせて、車端部の側面窓が二枚のところとなっている。
  37. [1]【近鉄】1810系(H22・23編成)高安検車区へ廃車回送 (RMニュース) 2013年7月2日
  38. 大阪線・名古屋線所属に限定すれば、新製冷房車の廃車解体は2002年8月の2680系2682F、2003年8月の1810系1825Fのク1925(新製時から冷房装置搭載で製造された1000系1002Fのク1102と交換した車両)、2004年3月の1000系1002F以来4度目の解体であるが、大阪線・名古屋線の機器流用車ではない完全新製車両では本系列のサ2959が初の廃車解体である
  39. サ1970が組み込まれた2433F・2443Fは既に2回目の車体更新 (B更新) も完了しており、2430系や本系列の中でB更新やワンマン改造が施工できるのは2444F - 2447Fと2801F - 2804Fしかなかったが、後のB更新によるワンマン改造では2444F・2445Fのみがワンマン対応に改造されている。
  40. ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 183p・185p ISBN 4-87366-296-6 
  41. 41.0 41.1 41.2 41.3 41.4 41.5 41.6 カラーブックス「日本の私鉄 近鉄2」p.49(著者・編者 諸河久・山辺誠、出版・発行 保育社 1998年) ISBN 4586509058
  42. 42.0 42.1 42.2 42.3 42.4 42.5 42.6 42.7 42.8 42.9 ネコ・パブリッシング 復刻版 私鉄の車両13 近畿日本鉄道Ⅱ (通勤車他) 92p・93p ISBN 4-87366-296-6 
  43. 43.0 43.1 43.2 43.3 43.4 43.5 43.6 43.7 『近畿日本鉄道完全データ』 58p (発行 メディアックス 2012年) ISBN 9784862013934
  44. 初代は近鉄モニ6251形となり名古屋線に転属、1974年廃車。2代目は3両編成(モ2000形10両・ク1550形5両)であったことが現行との共通点として挙げられるが、3代目登場より5年前の1973年に廃車。
  45. 近鉄名古屋線・湯の山線で「唄声列車」運転 交友社鉄道ファン』railf.jp 2011年05月15日
  46. 46.00 46.01 46.02 46.03 46.04 46.05 46.06 46.07 46.08 46.09 46.10 46.11 46.12 46.13 46.14 46.15 46.16 46.17 46.18 46.19 46.20 46.21 46.22 46.23 46.24 46.25 46.26 46.27 46.28 46.29 46.30 46.31 46.32 46.33 46.34 46.35 46.36 46.37 46.38 46.39 46.40 46.41 46.42 46.43 鉄道ファン』2014年1月号 {第633号} p.56 - p61
  47. 7:24発名古屋行き、7:50発鈴鹿線平田町行きの2本
  48. 前日夜の快速急行で大阪線に入った編成をそのまま運用する。
  49. 近鉄2800系,「ペンギン列車」で志摩線に入線 交友社鉄道ファン』railf.jp 2010年04月18日
  50. 近鉄名古屋線で「サイクルトレイン」運転 交友社鉄道ファン』railf.jp 2010年05月09日

関連項目

外部リンク

テンプレート:近畿日本鉄道の車両 テンプレート:リダイレクトの所属カテゴリ