栗塚旭

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テンプレート:ActorActress 栗塚 旭(くりづか あさひ、1937年昭和12年)5月9日 - )は、北海道札幌市[1]出身の俳優。近年は舞台活動が中心だが、昭和40年代に演じた土方歳三は当たり役となり、多くの作品で土方を演じている。後年の『暴れん坊将軍』シリーズで山田朝右衛門も当たり役である。劇団くるみ座出身。

来歴・人物

北海道札幌市出身。幼少の頃に父を亡くし、札幌市立向陵中学校[1]を卒業する頃には母も亡くしたため、教師をしていた兄夫婦を頼って1953年(昭和28年)4月に京都へ移り住む[2]京都府立洛北高校へは編入という形での入学だったため、定時制へ1年間通い、翌年から全日制へ移った[2]。定時制当時は、法然院などへ来ていた映画撮影隊のロケを昼間の空いた時間を使ってよく見に行ったという[2]

高校では放送部に所属[2]。部の新入生の恒例行事として参加させられた『正しい日本語講座』で講師をしていた女優・毛利菊枝との出会いが後に人生の転機に繋がる[2]。高校3年生時の文化祭では三島由紀夫原作の戯曲『邯鄲』を上演[2]、次郎役(主役)を演じて演出も担当した。

高校を卒業して浪人中だった1957年(昭和32年)、予備校に通っていたが大学受験の勉強に身が入らず、毛利菊枝が主催する劇団くるみ座稽古場へ見学に行ったところ、『イヤイヤ机に向かっているより青春を賭けるのはこっちだ[3]』と演劇に惹かれ、くるみ座付属の『毛利菊枝演劇研究所』に入所。研究生を経て、1958年(昭和33年)に正式にくるみ座の劇団員となった。

くるみ座に入った当初は、演劇よりも広告モデルの仕事などの方が多く、大阪そごうデパートクラボウワイシャツなどの新聞広告週刊誌広告のモデル仕事をこなし、高島屋テレビCMにも出演[4]1960年代前半期にはKHKラジオ(現・KBS京都ラジオ)の『藤井大丸テレフォンリクエスト』のディスクジョッキーを2年間ほど担当した[5]

その間、志願して毛利菊枝の付き人もこなし、毛利に付き従って映画やテレビドラマの様々な撮影現場に足を踏み入れ、この時の付き人の経験は「カチンコの音にも慣れ、撮影所の裏表も見ていて対処の仕方を体で覚えていたので、いざ自分がカメラの前に立っても緊張することがなかった」と、後に自身が映像作品に出演した際に役立ったと述懐している[6]

テレビドラマは、日本電波映画東伸テレビ制作の作品に脇役で何本か出演した後、1964年(昭和39年)に「栗塚旭を明智光秀役で使いたい」と東映から劇団へ連絡が入り[2]NET東映京都テレビプロダクション制作の品川隆二主演『忍びの者』で光秀役に起用され、そこで監督の河野寿一や当時はまだ助監督だった松尾正武らと出会う。その後、同社制作の『つむじ風三万両』、『六人の隠密』、『柳生武芸帳』と、東映京都テレビプロ作品に立て続けにゲストで起用された。

そして、1965年(昭和40年)には『新選組血風録』で主役の土方歳三役に大抜擢され、これが栗塚のイメージを決定づけるハマリ役となって評判を呼び、ニヒルな演技と風貌で人気を集め、以降もテレビ、映画、舞台で幾度となく土方を演じるほどの当たり役となった。

1966年(昭和41年)に京都市民映画祭『テレビ部門主演男優賞』と日本映画製作者協会『スター新人賞』を受賞し、その後も脚本家・結束信二と河野寿一監督、松尾正武監督らの手による『われら九人の戦鬼』、『俺は用心棒』、『帰って来た用心棒』、『天を斬る』、『燃えよ剣』などの東映京都テレビプロ作品やTBSテレビ松竹制作の『』といったテレビ時代劇、さらに『ばってら』、『商魂』などの現代劇でも主演をつとめ、松竹映画では『映画版・おはなはん(第1部・第2部)』、『春日和』、『女の一生』などで岩下志麻の相手役を演じ、1978年(昭和53年)から始まった『暴れん坊将軍』シリーズではセミレギュラーの山田朝右衛門役を20年近くに渡って演じた。

1968年(昭和43年)末に劇団くるみ座を退団[1]。俳優業の傍ら、京都の『哲学の道』沿いに購入した自宅の敷地内で1972年(昭和47年)4月[1]より喫茶店若王子』を経営していた(長年に渡って店を手伝っていた義姉の死去などの諸事情により2002年平成14年)1月に休業)。

2004年(平成16年)のNHK大河ドラマ新選組!』では、土方歳三の実兄・土方為次郎役として出演。ドラマ収録時に会った土方歳三役の山本耕史の年齢(当時27歳)が、自身が土方を演じた当時の年齢とほぼ同じなのを知り、『何も恐れることはないし、堂々と演じたらいい』と励ましのエールを送ったという[2]

2005年(平成17年)、主演映画『二人日和』(監督:野村恵一)が岩波ホールロングラン上映され、同作品は『第5回ニッポン・コネクション(ドイツ・フランクフルト日本映画祭)グランプリ』、『第60回毎日映画コンクール技術賞』、『第25回藤本賞奨励賞』、『第2回おおさかシネマフェスティバル撮影賞』を受賞した。作品は現代の京都を舞台に、神主京都御所関係の神官装束を作り続けてきた、栗塚演じる寡黙な伝統職人と、長年連れ添った余命幾ばくもない妻(藤村志保)との夫婦の機微が描かれた。

2006年(平成18年)から2009年(平成21年)にかけ、CS時代劇専門チャンネルにて往年の主演ドラマ『新選組血風録』、『燃えよ剣』、『用心棒シリーズ』、『天を斬る』やその他の出演作品が再放送されたことをきっかけに、当時からのファンはもとより、栗塚の全盛期を知らない新たなファン層からも大きな反響を呼び、時代劇専門チャンネル公式ホームページ内には栗塚ファンに向けての専用掲示板が別個に設置されるなど、異例ともいえるほどの好評を博した。

この時の人気再燃ぶりは、読売新聞夕刊2007年(平成19年)12月12日)でも『土方歳三役・栗塚旭ブーム再燃 若い女性層にも広がる』という記事として取り上げられ、その後も時代劇専門チャンネルの広報番組や特別企画番組にゲストとして度々出演するなど、時代劇専門チャンネルのマスコット的な存在となっている。現在も関西を中心に活動している。

エピソード

  • ニヒルでクールな役柄が多いが、性格は全く正反対のネアカであり、自他共に認める笑い上戸(本人いわくゲラ)。そのため『新選組血風録』の収録の時、監督の河野寿一から「おまえは喋るな、動くな、笑うな」ときつく演技指導されていた[7]
  • 『新選組血風録』の企画書には当初、栗塚旭は篠原泰之進役に想定され、土方歳三役は品川隆二であったという。同時期に仕事が入ったことで品川が降板、栗塚が土方役に抜擢されたという(プロデューサーの上月信二の証言によれば、当時このような事実はなかったとのことで、この話を否定しているが真偽は不明)。
  • 幼少の頃は、音楽・映画・演劇鑑賞や絵を描くことは好きだったが学校の体育の授業をほとんど見学で過ごすほど体力がなく、学芸会で何かやれと言われると泣いてしまうような子供だったという[2]。本人いわく”映画少年”で、学校を休んで映画を観に行き、映画館から出て来たところを先生に見つかって怒られたこともあったという[7]
  • 『新選組血風録』の原作者・司馬遼太郎は、自身の原作を元に1963年(昭和38年)に制作された市川右太衛門主演の東映映画『新選組血風録 近藤勇』の内容に不満を持っており、当初は東映によるテレビドラマ化には難色を示していたが、プロデューサーが熱心に説得したこともあって態度を軟化させ、さらに司馬を納得させるためにプロデューサーが嵐山料亭で土方歳三の扮装をさせた栗塚を司馬夫妻に引き合わせたところ、夫妻は『いい青年ですね[8]』と満足そうな様子を見せ、司馬は『頑張って下さい』と栗塚を励まし、栗塚が持参した原作本にサインをしてくれたという[9]
  • 『新選組血風録』で共演した坂口祐三郎は、栗塚の素顔はナヨナヨした人で、撮影中すぐに機嫌が悪くなる河野寿一監督のご機嫌をとるために二人でオネエ言葉で会話しながらふざけてみせると、それを見た河野監督が『こいつら、またそんなことやって』と呆れながらも機嫌が良くなって撮影が早く進むため、河野監督がダレている時や撮影を急がなければならない時は、河野監督の前でオネエ会話を二人でやってくれと、助監督の松尾正武から頼まれたと著書で述べている[10]
  • 現在に到るまで独身であるが、トークショーイベントの中で、「土方さんに殉じています」と語っている。
  • 時代劇専門チャンネル情報番組『瓦版』の1コーナー『時代劇体操』のテーマソングである『あっぱれ!みなさま』の歌詞の合間には、時代劇専門チャンネルでも再放送された栗塚主演のテレビドラマ『天を斬る』の主題歌中に流れる栗塚の発した物と同じ「斬る!」という短い台詞が入るが、これはこの曲(CHINO版・瀬川瑛子版共に)のために新たに録り下ろした栗塚自身の声である。また、2012年12月からリニューアルされた『時代劇体操』のNEWバージョンには、歌う瀬川瑛子の後方にある高い台の上に置かれた大型テーブルの前でターンテーブルミキサーを動かすクラブDJのような動き(スクラッチ)を見せて踊る『DJ土方』役として出演。久しぶりに土方歳三の扮装をする依頼を受けて最初は丁重に辞退したものの、自分が死んだ時の遺影写真が何もないので冥土のみやげに一度扮装をして末期(まつご)の時には飾らせてもらおうと思って参加させていただいた、とインタビューで語った[11]

おもな出演

テレビドラマ

映画

  • 武器なき斗い(1960年、大東映画) - 秘書
  • いれずみ判官(1965年、東映) - 梶川三五郎
  • おはなはん 第一部・第二部(1966年、松竹) - 速水謙太郎
  • 土方歳三 燃えよ剣(1966年、松竹) - 土方歳三
  • 春日和(1967年、松竹) - 町工場の青年社長・丸井利明
  • 人妻椿(1967年、松竹) - 矢野昭
  • 女の一生(1967年、松竹) - 御木宗一
  • 男の挑戦(1968年、松竹) - 日本自動車のテストドライバー・猪木邦夫
  • 釧路の夜(1968年、松竹) - 矢吹丈二
  • 霧にむせぶ夜(1968年、松竹) - 滝口明
  • 霧のバラード(1969年、松竹) - 乾啓吾
  • めくらのお市 みだれ笠(1969年、松竹) - 宍戸左近
  • 夜霧の訪問者(1975年、松竹) - 秋元刑事
  • てんびんの歌(1988年、日本映像企画) - 近藤大作の父
  • 東京交差点 第3話「出発」(1991年、バーム) - 児童福祉司
  • 稲川淳二のショートホラーシネマ 伝説のホラー 山姥(2003年、角川書店) - 僧侶
  • 愛なくして(2003年、二人だけの劇場セザンヌ) - 僧侶
  • 二人日和(2004年、野村企画) - 神祇装束司の職人・黒由玄 ※2005年に「Turn over 天使は自転車に乗って」から改題
  • 小夜鳴鳥(2005年、OKOKU) - 村木医師
  • 小津の秋(2007年、野村企画) - 四村茂
  • TAKAMINE〜アメリカに桜を咲かせた男〜(2011年、「TAKAMINE」製作委員会) - 伊藤博文
  • 天使突抜六丁目(2011年、シマフィルム) - 磯尻刑事部長
  • 忍たま乱太郎 夏休み宿題大作戦!の段(2013年、東映) - 六道辻ヱ門
  • 蠢動 -しゅんどう-(2013年、三上康雄事務所 / 太秦) - 西崎隆峰
  • 太秦ライムライト(2014年、京都市太秦ライムライト製作委員会) - 本人役

その他のテレビ番組

  • 高等学校講座 わが心のヒーロー(1)幕末の青春・土方歳三(1984年、NHK教育
  • ふるさと登場 きんき紀行「勤王志士が駆けぬけた街 京都・高瀬川界隈」(1986年、NHK-BS1
  • 長部日出雄の人生セミナー(1989年、ANB) - 講師
  • 新選組プロジェクト(京都チャンネル
    • 第1回「最後の上映会」(1998年)
    • 第2回「わが青春の新選組 栗塚旭VS松尾正武」(1998年)
    • 第4回「わが青春の新選組2 黄金の三人」(1999年)
    • 第10回「総集編・ドラマに賭けた男たち」(1999年)
    • 第21回「栗塚旭と土方歳三展」(2001年)
    • 第22回「栗塚旭VS逢坂剛」(2001年)
    • 第23回「新選組が結んだ男たちの夢」(2001年)
  • バスDEコロコロ(1999年、KTV)
  • 映画と歩く(1999年、WOWOW
  • 新選組黄金期(京都チャンネル)
    • 第2回「帰ってきた原田左之助」(2000年)
    • 第4回「今夜復活! 新選組副長 土方歳三」(2000年)
    • 第5回「若王子通信スペシャル」(2000年)
    • 第6回「俺は用心棒 月明かり」(2000年) ※2000年7月に収録した舞台録画
    • 第9回「若王子通信スペシャル2」(2000年)
    • 第10回「永久保存版! 総集編スペシャル」(2001年)
  • 新選組バイブル 第6回「日野燃ゆる 栗塚旭と土方歳三」(2002年、京都チャンネル)
  • 新選組・あなたの“誠”はなんですか(2003年、NHK・BSデジタルハイビジョン※司馬遼太郎・作「燃えよ剣」を朗読
  • 新選組スペシャル「土方歳三ゆかりの地を往く・前編」(2004年、京都チャンネル)
  • 栗塚旭が自らを語る“素晴らしき哉、役者人生”(2007年、時代劇専門チャンネル
  • もっともっと関西(2007年、NHK大阪、関西ローカル) - スタジオ生ゲスト
  • 時代劇最新情報番組「瓦版」(時代劇専門チャンネル)
    • 第175回 - 第176回「すぺしゃるいんたびゅー」(2007年)
    • 第177回「時代劇専門チャンネル特別企画ツアー 時代劇のふるさとを訪ねて」(2007年)
    • 第196回(2008年)
    • 第200回 - 第201回(2008年)
    • 第225回(2008年)
    • 第276回 - 第281回「栗塚旭とぶらり」(2009年) 全6回
    • 第318回 - 第321回「時代劇大喜利」(2010年) 全4回
    • 第358回 - 第366回「京都ぶらり」(2011年) 全9回
  • クリスマスイブスペシャル 暴れん坊将軍×栗塚旭「暴れん坊将軍 思い出のエピソード」(2007年、時代劇専門チャンネル)
  • 我ら、もの申す!(2008年、時代劇専門チャンネル)
  • 栗塚旭 新選組を歩く(2008年、時代劇専門チャンネル) 全6回
  • お宝TVデラックス 第23回「時代劇のニューヒーロー」(2009年、NHK-BS2
  • 新選組交友録(2009年、時代劇専門チャンネル) 左右田一平島田順司との対談番組
  • 時代劇法廷 CASE9「被告人は土方歳三」(2012年、時代劇専門チャンネル) - 本人役
  • 龍ちゃん松ちゃんのぶらり探訪 東海道「五四景 京 旅の終わりに」(2012年、時代劇専門チャンネル)
  • 時代劇ニュース オニワバン!(時代劇専門チャンネル)
    • 第5回「踊る!瀬川瑛子さん 時代劇体操」(2012年)
    • 第54回(2013年)
  • 時代劇体操 NEWバージョン(2012年 - 、時代劇専門チャンネル) - DJ土方

舞台

ラジオ

CM

  • 高島屋(1960年代前半)
  • 金鳥・ガラスに虫コナーズ「窓ふきシャンソン篇」(2010年5月 - )

レコード

脚注

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参考資料

  • 洛北高校同窓会誌『あかね42号』(2004年、洛北高校同窓会)
  • 黒須洋子・著『テレビ映画「新選組血風録」の世界』(2000年、新人物往来社)ISBN 978-4404028754
  • 山村竜也、岸田一則、横田淳・編『映画・テレビ完全ガイド 燃えよ!新選組』(2003年、たちばな出版)ISBN 978-4813317432
  • 新赤影製作評議会・編『赤影 愛と復讐』(1999年、ワイズ出版)ISBN 978-4898300169
  • 読売新聞夕刊(2007年12月12日、読売新聞社
  • キネマ旬報社・編『日本映画人名事典 男優篇 上巻』(1996年、キネマ旬報社)ISBN 978-4873761886
  • テレビドラマデータベース

関連項目

外部リンク

  • 1.0 1.1 1.2 1.3 日本映画人名事典(1996年、キネマ旬報社)p.575.
  • 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 2.5 2.6 2.7 2.8 洛北高校同窓会誌 あかね42号「新撰組と私」(洛北高校同窓会)
  • 『テレビ映画 新選組血風録の世界』キャスト・インタビュー 栗塚旭 p.224.(新人物往来社)
  • 『テレビ映画 新選組血風録の世界』キャスト・インタビュー 栗塚旭 p.225.(新人物往来社)
  • 『テレビ映画 新選組血風録の世界』キャスト・インタビュー 栗塚旭 p.226 - p.227.(新人物往来社)
  • 『テレビ映画 新選組血風録の世界』キャスト・インタビュー 栗塚旭 p.226.(新人物往来社)
  • 7.0 7.1 ラジオ深夜便 サンデートーク(2004年、NHKラジオ第1)
  • 映画・テレビ完全ガイド 燃えよ!新選組「特別インタビュー 栗塚旭語る」p.47.(たちばな出版)
  • 『テレビ映画 新選組血風録の世界』キャスト・インタビュー 栗塚旭 p.232 - 233.(新人物往来社)
  • 『赤影 愛と復讐』p.82.(ワイズ出版)
  • 時代劇専門チャンネル「時代劇ニュース オニワバン!」第5回(2012年12月放送)