リモコンキーID
リモコンキーIDとは、地上デジタルテレビ放送などにおいて放送局単位で決められているリモコンの押しボタン(ワンタッチボタン)用の番号のことである。リモコンキー識別番号・リモコン番号とも呼ばれる。チャンネルポジションとして表記されている場合もある。
目次
概要
テレビ視聴におけるリモコンのチャンネルキー番号は、それを選択することで放送チャンネルを1つ選ぶものである。アナログ放送では国際協定や各国の放送法制で定義されている周波数帯域チャンネル1つ分が放送チャンネル1つ分に対応しているが[1]、デジタル放送においては1つの周波数帯域チャンネル[2]で複数の放送チャンネル(番組)を配信できるようになった。また地上デジタル放送は従来のアナログ放送と異なり全てのチャンネルがUHFでの送信として行われることになったため、リモコンの番号と送信チャンネル(その放送を送信している実際の周波数帯域チャンネル)を一致させることに不都合が生じてきた[3]。これらの事情を総合的に解決する方法として考案・策定されたのがリモコンキーIDであり、このIDに従ってリモコン操作上の番号が決定する。
基本的に地上波・衛星波を問わずデジタルテレビ放送ではこのリモコンキーIDに関する情報(SI情報)を放送波の中に含めて送信し、受信機で地域設定などの情報と突き合わせて受信した周波数の放送を特定のリモコンの番号に割り当てることができる。日本の衛星波や韓国では番号を全国レベルで揃えているため、基本的に機器出荷の時点で情報を固定的に記憶させている。しかし、その後の変更についてはプログラム書き換えで対応するか、視聴者が手動で設定するかしかない[4][5]。
なお複数(地上波・BS・CSなど)のデジタルチューナーを搭載した統合型チューナーの場合は、それぞれで別に定義された同じ数値のリモコンキーIDを持つことになる(例 : 地上波のリモコンキーID=10での101chとBSの101ch)が、同じリモコンチャンネル番号に異なる複数の放送ネットワークのチャンネルが設定されている(受信されている)場合はその機器の仕様に基づいて選択可能になっている。また指定されたリモコンキーIDと異なる番号にしたいときは、機器の設定を手動で変更する必要がある。
日本
日本では2000年12月にBS衛星波でデジタル化が始まった際にこのシステムが導入された。当時NHKは3波体制を取っていたことから「1」から「3」までを占め、「4」から「12」までが民間に割り当てられた。その際、地上波系を「4」から「8」までに固め、衛星波独立局を残りに配置した。
この思想は丁度3年後に始まった地上波のデジタル化にも影響を与え、東京都では基本的にBS衛星波の割り当て思想がそのまま持ち込まれた。しかしこれを全国に広げるにあたって、次項のような軋轢が生じた。
地上波基幹放送局に関するID割り当てを巡って
デジタルテレビジョン放送では映像も音声もコンピュータで扱えるデータの形式で送信されることから、このリモコンボタン番号を統一しようという動きが持ち上がった。
統一作業は日本電子機械工業会(現・電子情報技術産業協会)が中心となり国(総務省)や各放送業者も加わって何度も話し合われた上で決定した。原則として全国で現在のネットワーク系列局の番号を統一しようということであったが、「アナログ放送親局と同じチャンネル番号を維持したい」という一部の放送局[6]などの反対を受けて実現しなかった。このため、全国共通でID「2」が割り当てられたNHK Eテレ[7]以外は地域によって番号が異なる局が出ることになったが、「同一都道府県内では同一番号」の原則は維持された。
実際、地上アナログ放送の親局がVHF波の局ではそれと同じチャンネル番号のIDとなった局も存在する。ここでは東京以外の事例を述べる。
- 1 - 北海道放送[TBS系]、青森放送[日テレ系]、東北放送[TBS系]、北日本放送[日テレ系]、東海テレビ放送[フジ系]、日本海テレビジョン放送[日テレ系]、四国放送[日テレ系]、九州朝日放送[テレ朝系]、南日本放送[TBS系]
- 4 - 毎日放送 (MBS)、RKB毎日放送
- いずれもTBS系で、毎日新聞社が設立にかかわった姉妹会社の関係である(MBSがRKBの大株主)。
- 5 - 札幌テレビ放送[日テレ系]、CBCテレビ[TBS系]
- 6 - IBC岩手放送[TBS系]、北陸放送[TBS系]、朝日放送[テレ朝系]
- 8 - 関西テレビ放送、沖縄テレビ放送
- 両社ともアナログ時代からキー局のフジテレビと同じ「8ch」で放送を行っていた。
- 10 - 讀賣テレビ放送[日テレ系]
- 関西地区では広域民放4社の申し合わせでアナログ時代の番号をそのまま使うと決めたことによるもの。
地上アナログ放送の親局がVHF波でチャンネル数字が2桁の在京キー局であるテレビ朝日 (「5」・VHF10ch)、テレビ東京 (「7」・VHF12ch) の2局はアナログ親局チャンネルとはID番号が異なる(両局ともチャンネル1桁を希望したため)。また地上アナログ放送の親局がVHF波のテレビ西日本 (「8」・VHF9ch) もテレビ朝日やテレビ東京と同様にアナログ親局チャンネルとはID番号が異なる。これは「9」がID番号としては一般的でなかったことや、創業地である八幡の頭文字にちなんだ「8」(フジテレビの「8」という意味ではない[10])を希望したため。上記以外で「9」以降の番号を割り当てられた基幹放送局は、「9」の東京メトロポリタンテレビジョン(東京都、独立局)と奈良テレビ放送(奈良県、独立局)、「10」のテレビ愛知(愛知県、テレビ東京系)、「12」の放送大学(関東圏)のケースしかなく、「11」のIDを使用する地上波無線放送局は存在しない。
上記の影響で地上アナログ放送の親局がUHF波の放送局は同系列の在京キー局か在阪準キー局に合わせたり、中には先述のケースに当てはまらないID番号を割り当てられたりしたケースもある。
- 日本テレビ系列の福岡放送(NNN/NNS加盟)は「4」を希望していたが、先述のようにRKB毎日放送が「4」を獲得したため札幌テレビと同じ「5」とした(「5」は本来ANN系列の多い番号だが、福岡県では九州朝日放送が「1」を獲得したため「5」が空いていた)。
- NNN・ANNクロスネット局[11]の福井放送は、県内の民放テレビ局が他に福井テレビしかなく、隣府県民放を視聴するケースが多い県内の事情も考慮し、日本テレビ系列の「4」でもテレビ朝日系列の「5」でもなく、「7」を希望し認められた。嶺北では「5」に北陸朝日放送、「6」に北陸放送が設定され、嶺南では「4」に毎日放送、「6」に朝日放送が設定できるようになった。
- ANN系列局の北海道テレビ放送および名古屋テレビ放送の場合はキー局と同じIDの「5」を希望していたが、先述のように札幌テレビおよび中部日本放送が「5」を獲得したため、両局とも朝日放送と同じ「6」とした。
- JNN系列局の中国放送、テレビ山口、長崎放送、大分放送、熊本放送、琉球放送の場合はキー局と同じIDの「6」が空いていたにもかかわらず、地上アナログ放送の親局のチャンネルでもない「3」にした。そのうち、大分放送に関しては開局順に割り当てられたため「3」になった。また、中国放送と長崎放送および熊本放送は「1」を希望していたが「3」となった。琉球放送に関しては、中国放送・長崎放送と同じ理由であったのに加えて、「6ch=AFN(米軍チャンネル)」のイメージが強いことから、それを避けたため「3」となった。
- TXN系列局のテレビ愛知が「7」で統一した他の5社と異なり唯一「10」となったのは、同じ愛三岐圏にある独立テレビ局の三重テレビに「7」が割り当てられたため、東海テレビが「1」を選択したため空いていた隣接リモコンキーIDの「8」を希望した。しかし「8」も同じ独立テレビ局の岐阜放送に押さえられたことから、結局これまで無縁の番号だった「10」の使用を余儀なくされた[12]。
- フジテレビ系列のFNN・FNS加盟局に関しては、大半の局で「8」に揃えられた。これは、FNN・FNSが5大民放ネットワークの中では唯一[9]関東と関西で互いに地上アナログ放送親局が同じ8chで、更にフジテレビが大株主となっていた沖縄テレビも同じく親局が8chだったことが大きい[13]。またFNSに属するほとんどの加盟局が、他の民放ネットワークと比べても中心局(フジテレビ)のカラーが非常に強いため地方人の間でも地元のFNS加盟局のチャンネル(ケーブルテレビ等でのVHF変換も含む)が8でないにもかかわらず「フジテレビ=8チャンネル」というイメージが非常に強い上、フジテレビが他の在京民放局よりも自身のチャンネル番号に強いこだわりがあったため結果的に全国ほぼ全ての系列局のIDを「8」で統一することができた。但し、それでも地域事情でこれによらなかったケースは存在しており、東海テレビが「1」を(先述)、サガテレビ(在福局が視聴可能な地域が多いことから在福局が使用しないIDを選択)とテレビ宮崎(トリプルネットに配慮しキー局が使用していないチャンネルを選択)が「3」を、テレビ大分が「4」(大分県内では各局の開局順に1-5のchを割り当てたが「4」は日本テレビ系列のIDでもある)を、それぞれ選択した。
岡山県・香川県は2県を1エリアとして民放の在京キー局系列を全てカバー(NHKは、各県に独立して放送局がある)する独特の運用体制だが、在京キー局系列とNHK以外にいわゆる独立テレビ局などのローカル局はなくチャンネルIDは関東広域圏と同じである(物理的な放送周波数は当然異なる。電波相互乗り入れの項目も参照のこと)。
独立テレビ局では、以下のようになった。
- 3 - とちぎテレビ、群馬テレビ、テレビ埼玉、千葉テレビ放送、テレビ神奈川、びわ湖放送、サンテレビジョン
- 5 - 京都放送、テレビ和歌山
- 7 - 三重テレビ放送
- 8 - 岐阜放送
- 9 - 東京メトロポリタンテレビジョン、奈良テレビ放送
関東広域圏ではTOKYO MX以外の独立系局がIDを「3」で統一しているが、TOKYO MXは広域放送と同じ場所(東京スカイツリー)から送信している関係上スピルオーバーが大きくほかの独立系局とIDが重複しない「9」を採用している。一方、近畿広域圏ではIDを3つに振り分けて隣接する府県の独立テレビ局のIDが重複しないようにしている。
放送対象地域外の放送を受信しその放送を視聴したい場合でかつリモコン番号が重複した場合は放送対象地域内の放送をまず割り当てた後、リモコン番号の重複する局一覧を表示して視聴者が手動でリモコン番号を選択出来るような動作がARIB TR-B14によって例示されている。この場合は3桁チャンネル番号に枝番が付くことになる。この方法を応用して、使い慣れたアナログ放送のリモコン番号に調整している視聴者も存在する。ただし複数の物理チャンネルが受信できてもリモコンキーID、放送局名がまったく同じ場合は枝番が付かない。
ケーブルテレビ自主放送について
自主放送(コミュニティチャンネルなど)の地上デジタルパススルー方式の送信が2006年より一部のケーブルテレビ (CATV) 局で始まった。このような放送に対し、割り当てられるリモコンキーIDは1つの局に1つのみということとなった。そして各都道府県にケーブルテレビ局はあまたあり番組編成も異なっているが、ID番号は各都道府県で統一することとなった。IDは地上波テレビ局が採用していない「11」や採用している地上波テレビ局が少数である「9」「10」「12」を使用している。アナログ放送終了後は一部地区で2つ目のキー割り当てが行われている。
リモコンキーID番号一覧
2013年10月現在
地上波系統
リモコンキーIDと物理チャンネル・使用周波数の関係はテレビ周波数チャンネルを参照のこと。
基幹放送局は『ARIB TR-B14 地上デジタルテレビジョン放送運用規定』第3.8版(一般社団法人電波産業会)で規定されているもの[14]に一部補足したものを示す。またCATV自主放送については日本ケーブルテレビ連盟によって規定されたもの[15]を示す。
- NHK Eテレは全国1エリアを免許方針としていることからARIBでは具体的な地域割りを指定していないが、実際運用では上表のように放送エリアに応じてプライマリー(優先設定)局が決められる。
- 逆に福岡県についてはARIBでは福岡と北九州で分けているものの、北海道と異なり全県を同一とみなして処理するよう設計された受信機が少なくない。この場合、北九州・京築地域でも「福岡県」の設定でスキャンを行う必要がある。
- 上表に示した全ての局一つ一つに固有の番号が設定されていて、放送波に載せられている。NHK宇都宮・前橋両局の総合は開局後に番号が設定されたため、該当地域内で改めてチャンネルスキャンを行う必要があった。
- 多くの受信機が番組表システムに採用しているGガイドも上表に準拠している。
BSデジタルテレビ放送
『ARIB TR-B15 BS/広帯域CSデジタルテレビジョン放送運用規定 技術資料』4.6版(社団法人電波産業会)の「ワンタッチボタンの機能を搭載する場合、参考となるボタン割り当ての例」[16]を示す。独立ラジオ放送・独立データ放送についてはIDが割り当てられておらず、2011年10月1日以降に開局した放送局へはテレビ放送でもIDが割り当てられていない。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
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NHK BS1[17] | (NHK BS1 サブチャンネル)[18] |
NHK BSプレミアム[19] | BS日本 | ビーエス朝日 | BS-TBS | BSジャパン | BSフジ | WOWOW プライム | スター・チャンネル 1 | 日本BS放送 | ワールド・ハイビジョン・チャンネル |
大韓民国
韓国は国土が狭いということもあり、デジタル放送を始めるにあたりリモコンキーID設定を全国で揃えた。
その際基準としたのは首都・ソウルにおけるチャンネルであった。アナログ時代のチャンネルは以下の通りで、全てVHF。
- K-06ch SBS(開局時「ソウル放送」)
- K-07ch KBS第2テレビジョン(開局時「東洋放送」)
- K-09ch KBS第1テレビジョン(KBSオリジナルチャンネル、開局時「大韓放送」)
- K-11ch MBC文化放送
- K-13ch EBS教育放送
これを基準とし、地上波はボタン6番から11番までに固めることとした。KBS、MBC、SBS(国内系列民放を含む)の4つのチャンネルはソウル局のアナログチャンネル番号をそのまま適用し、EBSには「10」を、日本のテレビ神奈川のような首都圏の独立局であるOBS京仁テレビには「8」を、それぞれ割り当てた。
脚注
テンプレート:Reflist- ↑ 周波数帯域の定義についてはテレビに関する放送法についての部分を整備した当時のアナログテレビ放送技術を基準にして、1つのチャンネル当たりの周波数帯域が定義された。
- ↑ 日本の地上波テレビ放送では6MHzの帯域幅をもつ周波数の範囲に付けられた番号で、物理チャンネルと呼ばれている。アナログ放送ではこの1物理チャンネルが受信機でも1つのチャンネルに対応している。デジタル放送における物理チャンネルはテレビ周波数チャンネルを参照のこと。
- ↑ 既存のアナログ放送でのチャンネル方式をデジタル放送にも当てはめると、日本では1chから12chは永久欠番になり13ch以降しか存在しないことになる。放送が行われないことが明白な放送周波数にチャンネル番号を固定的に割り当てること自体に無駄があり、使い勝手の面からも好ましくない。
- ↑ 例えば、日本で2007年12月に開局したBS11およびTwellV、2011年4月のNHK衛星放送再編がこの事例に該当する。
- ↑ 「ARIB TR-B15 広域CS/BSデジタルテレビジョン放送運用規定 技術資料」(一般社団法人電波産業会)ではリモコンキーIDは規定されておらずワンタッチキーの割り当て例が提示されているだけで、「実装については商品企画マターとする」とされている。但し日本では大多数のチューナーでチャンネル設定を容易にするためシステムが実装されている。
- ↑ 具体的にいえば大都市広域圏各局や1chを親局としていた放送局、クロスネット局
- ↑ NHKは当初総合テレビも全国共通で「1」を割り当てることにしていたが、地上アナログ放送の親局が「1」チャンネルの北海道放送、東海テレビ放送、九州朝日放送などが反対したため断念した。
- ↑ 函館・旭川・帯広・釧路・室蘭・岐阜・津・松江・北九州を除く。
- ↑ 9.0 9.1 1975年3月30日まで、ABCはTBS系(JNN系列)だった(腸捻転)。開局からアナログ放送終了までTBSとABCで親局チャンネルが同じ6chであった。
- ↑ テレビ西日本は1958年8月、日本テレビ系列として開局したが1964年10月にフジテレビ系列にネットチェンジした。
- ↑ 厳密に言えば、FBCはNNNの指定するニュース番組はキー局と同時ネット、ANNは昼のニュースのみの同時ネットとなっておりNNNではフルネット扱いとなっている(日本テレビのウェブサイトによる国内ネットワーク表を参照)。
- ↑ 余談ではあるが、テレビ愛知と三重テレビは同じ中日資本のテレビ局である。
- ↑ ちなみに、他系列で8chを親局とする民放はNNN・NNS系列の高知放送のみ。
- ↑ 一般社団法人電波産業会「ARIB TR-B14 地上デジタルテレビジョン放送運用規定」(第3.8版) 第七編 9.2.1 表9-1
- ↑ 一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟「テンプレート:PDFlink」
- ↑ 一般社団法人電波産業会「ARIB TR-B15 BS/広帯域CSデジタルテレビジョン放送運用規定 技術資料」(4.6版) 第一部第七編 8.2.1 表8.2.2
- ↑ 2011年3月31日までNHK衛星第1テレビジョン(旧NHK BS1)。
- ↑ 2011年3月31日までNHK衛星第2テレビジョン (NHK BS2)。同年4月1日以降は102chがBS1の臨時放送チャンネルとなり、臨時放送休止中はテレビによって何も映らないか、101ch (ID1) へ誘導されていたが、同年10月17日からは102chが臨時放送扱いではなくなったため誘導されなくなった(BSデジタル放送の電子番組表 (EPG) について(2011.10.17 NHKデジタル))。これ以降BS1のマルチ編成時にリモコンの「2」を押してサブチャンネルに切り替えるよう案内も行なっており、ID2が実質的にサブチャンネル専用のIDとなっている。なお、機種によっては「2」が空き(未登録)となっているものもあり、この場合はNHK BS1のサブチャンネル放送中でも切り替わらない。
- ↑ 2011年3月31日までNHKデジタル衛星ハイビジョン (BS hi)。