誤植
テンプレート:百科事典的でない テンプレート:複数の問題 誤植(ごしょく)は、印刷物における文字や数字、記号などの誤りのこと。ミスプリント、タイプミスとも言う。
活版印刷、写真植字で間違った活字を植字してしまうことを言う。現在は印刷物全般に対して用いられているが、間違い。印刷物以外の字の間違いは単に誤字と呼ぶ。インターネット上の誤字脱字を誤植と言うのも間違い。
タイプミスと言った場合は、ワードプロセッサ、タイプライター、コンピュータのキーボード等の、タイピング上の間違いを広く指し、こちらは印刷物に限らず各種テキストに用いられる。
目次
概要
当初の誤植とは、「植字の誤り」つまり活版印刷での印刷過程である組み版時のミスであり、植字工がおこす活字の組み間違いだった。活字の欠落、酷い場合には単語そのものの欠落や、活字の配置間違い(例えばcatをact等)は目立つミスであるが、文字サイズが9ポイントで指定されているのに、8ポイントや10ポイントのものが紛れ込んでしまう、ポイント間違いも含まれる。ただし、電算植字やDTPの普及発達によって、「誤植」の起こる組み版そのものが行われなくなっている。
手書きの文書の誤りは「誤記」と言う。「誤植」は主に活版や写植などの大量印刷物の表記の誤りを指す言葉であり、文書処理ソフト上における綴り誤りはその誤り方によって「ミスタイプ」や「誤変換」という。しかし、インターネットの普及によって、ブログなど書いたものが直接公開されるものが一般化し、出版形態も印刷一辺倒でなくなった事もあって、誤記と誤植の差は、無くなりつつある。
また「誤植」はあくまでも表記の誤りのことを指す。例えば「日本はアメリカ合衆国より面積が広大である」という文は事実に反するが、誤謬であって誤植にはあたらない。そのような誤りを正す作業は「校閲」という。しかし今日では内容の間違いも、タイプミス、誤変換なども全て「誤植」と呼ばれる様になってきている[1]が、言葉としては誤りであり、誤用の定着の一例と言える。
誤植とは、本来意図した表現の一部が別の字に置き換わってしまう誤りである。大抵は気付けば元の表現に復元できるが、場合によっては深刻な誤解を生むこともある。例えば薬学の本で薬の量の桁や単位を誤れば生命に直接関わる。百科事典や辞書などで間違いがあれば間違った知識が流布してしまう危険がある。同様に、小売店が商品の値段を書き間違えた場合には損を承知でその値段で売らざるを得なくなる事態も起きる。電子化された領域では、ヒューマンエラーやデータの破損などでこの様な事態が発生することが考えられる。実際、一時期オンライン販売業界の界隈では価格の登録ミスによるトラブルが度々表面化し、幾つかの業者が損害を発生させたことから、現在では大半のオンライン販売サイトで、価格の誤表示については遡って無効とできる旨あらかじめ断り書きを販売規約に入れておくなど何らかの対処がされている。
本来誤植は編集作業の過程で「校正」によって正されるべきものである。校正は軽んじられがちだが、誤植の有無は出版物や出版社の質を計る指針にもなりうる。校正が不十分だと刊行後にも誤植が残ることが多い。このため、論語子罕第九の「後生可畏」の句をもじって「校正畏るべし」の警句がしばしば言われる。逆に校正者の思い込みによって正しい表現に間違った修正がなされることも起こり得るが、表現に関して直接修正する事は、校正者権限の逸脱であり最も忌避される。表現修正に踏み込む場合は、正誤確認のお伺いを立てて、著者や編集者に確認を取るに止まる。ただし、近年に多い編集者が校正も兼ねている場合や、著者校に回す時間のない新聞などは別である。
刊行後に誤植が大量に判明した場合や緊急の場合には、修正箇所をまとめた正誤表が改版前に出されることもある。その正誤表にも更に誤植が発見される例もある。
原因
言語上の原因
- 原稿に「誤書」がある。厳密には誤書と誤植は異なるが、読者には区別がつかないことが多い。首都圏で2番目に開通した地下鉄の路線名は「丸ノ内線」の用字が正しいが、しばしば「丸の内線」の用字の表記を目にする。この場合、原稿段階で誤っているのか、それとも編集工程の誤植なのかは、読者にはわからない。
- 原稿の読み間違い。その字や単語が他のものと似ていたり、手書きの字が汚かったりするために発生する。「墓地」を「基地」、「陛下」を「階下」「陸下」、「口腔」を「口膣」、「完璧」を「完壁」、「施条痕」を「旋条痕」などと誤植するのはこの例である。OCRでもこの種のミスが発生する。
- 誤変換。同音異義語によって起こる場合と区切りによって起こる場合の両方がある。手書き原稿の場合でも、現在では手書き原稿から直接文選はされず、最初に電子化されるため、誤変換による誤植は発生しうる[2]。この例は無数にあるが、特に「自立型ロボット」と「自律型ロボット」、「偏在」と「遍在」、「競演」と「共演」、「対称」と「対照」と「対象」、「開放」と「解放」、「異議」と「意義」、「体制」と「体勢」と「態勢」など、熟語に同じ漢字が使われ、誤った方でも意味がつながる場合に特に見落とされがちになる。
- 同種の語句が繰り返されていた中に、異なる語句が混ざっていた場合[3]。たとえば「Aである。Bである。C。Dである」のような文が「Aである。Bである。Cである。Dである」となる類。
- 編集者や校正者が誤りと思って訂正したが、誤字ではなく筆者の意図どおりだった場合。誤謬したわけではないので「誤」植とは言えないという意見もある[4]。元原稿が「ライ症候群」なのに、編集者や校正者がこれを「ハンセン病」と改めて、誤植となる、といった場合である。
- 同じ語句に対し複数の読み方やカナ表記が存在する場合。例えば英語"Carry"を元とする名称の場合、カバンの一種だと「キャリーバッグ」となるが、スズキの軽トラックは「キャリイ」となる。この例だと後者は固有名詞(商標)であり、誤表記が起こると特に問題となり得る。
工学上の原因
誤植の歴史
「誤書」は写本の時代からあったが、誤植の歴史は活版印刷の歴史と同時に始まった。ヨハネス・グーテンベルクの印刷した『グーテンベルク聖書』は西洋ではじめての本格的な活版印刷物とみなされ、出版史における不滅の金字塔であるが、その中にも多数の誤植がある。42行聖書はたびたび紙数の都合で行数を変更しており、組版の組み替えなどによる多数の混乱が生じていた。そのため、この聖書の研究では、誤植と訂正の状況を追う研究が一分野をなしている。
洋の東西を問わず、王室や政府、政教分離が成されていない国における宗教書にまつわる誤植では厳しい措置が取られることが多く、キリスト教の聖書絡みのものでも後述するようなものが知られているが、戦前の日本でも、皇室がらみの記事で誤植があると「不敬」として厳しく処罰された。1942年、富田常雄作『軍神杉本中佐』で「天皇陛下」を「天皇階下」と誤植した童話春秋社はこのために出版停止の憂き目に遭った。その対策として、ある新聞社では「天皇陛下」の四字を一つにまとめた特注の活字も製作されたという。
誤植の形態も、時代や技術革新によって変化している。出版物が活版印刷中心の時代には、版の組立時の似た活字の取り違えが多かったが、20世紀後半に文章執筆がワードプロセッサもしくはワープロソフトなどによるものが主流になってからは、かな・漢字変換の際の誤変換や単漢字辞書検索での選択ミスなどによる、同音異義語や似た読みの取り違えが増加した。OCRスキャナによる文書読み取りでは、しばしば形状が似た字の読み違えが生じる。またその他に、文字コードの外字領域などが僅かに異なる環境で文書の作成とDTP編集を別々に行って印刷に出したところ、それらの文字が別の文字に置き換わってしまう場合、また誤って1バイト文字と2バイト文字を混用した場合(例: 51個、appleなど)、同一でなければならない文書内のフォントサイズや種類を誤って混用した場合などにも、誤植が発生する原因になる。
また、海外で製造された日本向け製品では、日本語を母国語としない現地担当者が日本語のマニュアルやパッケージの説明書きを作成したことで、似たような形状の文字、たとえば「し」と「レ」、「ン」と「ソ」、「ニ」(カタカナ)と「二」(漢数字)を混同したり、「ル」を「ノレ」と書くなどといった誤植が起きている。
誤植の例
聖書の誤植
グーテンベルク聖書から始まった近代出版史は、誤植の歴史でもある。聖書には誤植史上記念碑的なものが多々ある[7][8] 。
- 姦淫聖書
- 1631年に英国で印刷業者ロバート・バーカー(Robert Barker)によって印刷された欽定訳聖書は、のちに The Wicked Bible 、すなわち「姦淫聖書(邪悪聖書)」と呼ばれた。それは出エジプト記におけるモーセの十戒の第七条、"Thou shalt not commit adultery" (汝姦淫するなかれ)から否定のnotが抜け落ちたために、「汝姦淫すべし」となり、神が人々に姦淫を勧める聖書となってしまったからである。このためバーカーは高額の罰金を科されるも、支払えずに投獄されて獄死し、聖書は回収された。しかし密かに隠して取っておいた者が何人もいて、現在も世界に11部残されているそうである。
- 馬鹿者聖書
- 1763年の欽定訳聖書では、詩編の"the fool hath said in his heart there is no God"(愚かな者は心のうちに神はないと言う)という一節を、noを落として"there is a God"(神はある)と誤植し、信仰のある者こそが悪である、という趣旨になった。印刷者には高額の罰金が科され、問題の聖書は回収された。
- 1580年にドイツで刊行された聖書では、出版屋の妻がひそかに印刷所に忍び入り、創世記の"Und er soll dein Herr sein."(彼は爾の主たるべし)とあるところを、勝手に活字を組み替えて"Und er soll dein Narr sein."(「彼は爾の馬鹿者たるべし」)とした。この聖書は、ヴォルフェンビュッテルのアウグスト大公図書館に所蔵されている。
- 酢の聖書
- 1717年刊行のクラレンドン・プレス版の聖書は、ルカ福音書第20章の表題を、"the Parable of the Vineyard"(葡萄畑の寓話)とすべきところを、"the Parable of the Vinegar"(酢の寓話)と誤植したため、「酢の聖書」と呼ばれている。
日本の法令の誤植
日本の法令の公布その他公示手続きは、判例上、「特に国家がこれに代わる他の適当な方法をもつて法令の公布を行うものであることが明らかな場合でない限りは、法令の公布は従前通り、官報をもつてせられるものと解するのが相当で」[9]あるとされているが、官報にも誤植が散見する。官報の誤植には、大別して「原稿誤り」及び「印刷誤り」の二種類存在する。原稿誤りとは、主に、国の機関から独立行政法人国立印刷局に対して官報への掲載を依頼する際に、国の機関から送付される原稿に誤りがある場合を指す。原稿誤りが発見された場合、掲載を依頼した国の機関が、独立行政法人国立印刷局に対して、職権により、正誤欄への掲載を依頼することとなる。対して、印刷誤りについては、原稿に誤りはなく、独立行政法人国立印刷局が官報を印刷する際に誤りが生じた場合を指す。印刷誤りの場合、独立行政法人国立印刷局又は掲載を依頼した国の機関が正誤の手続きを行うこととなる。
官報の誤植には、掲載されている法令の効力に重大な影響を及ぼす可能性がある。1948年に起きた食糧管理法違反事件では、1947年12月30日に公示された農林省告示で、本来「いんげん」(改正前の告示におけるテボーに相当する)と記載するべきところが、農林省の原稿誤りにより、「ナタマメ」と誤記したことが問題となった。1948年4月7日に農林事務官(国の機関である農林省の事務系職員)名義で官報に正誤を掲載することとなった。日本の法令では、前述のとおり官報によって公布されることとなっており、また、法令の効力について、判例は、「成文の法令が一般的に国民に対し現実にその拘束力を発動する(施行せられる)ためには、その法令の内容が一般国民の知りうべき状態に置かれることが前提要件とせられる」[10]としていることから、本件では、官報正誤による法令の効力及び官報正誤以前の法令の効力について問題とされた。本件について最高裁判所は、「官報に公示するがごとき公示手続上の過誤は、農林事務官においてこれが正誤の手続を執ることは当然その権限内にあるものと解するを相当とするから、前示正誤は正当であつて、少くとも官報正誤の日以後における本件「テボー」の輸送委託をした行為にはその正誤された告示が適用されるものといわなければならない」」[11]とし、官報正誤による法令の効力について、少なくとも官報正誤の日以後については正誤された告示が適用されると判示している。さらに最高裁判所より差し戻された本件における札幌高等裁判所判決では、「公布せられた告示に誤があつて、その誤であることが外部から容易に認識し得るときは、その誤を正して解釈すべきであるから、正誤の有無に拘らず、その告示ははじめから正しく解釈せられたところに従つて効力を有するといはねばならないが、その誤が外部から容易に認識し得るものでないときは、後に正誤せられるまではその誤つている部分は国民を拘束する力がなく、正誤せられた後にその時からはじめて正誤せられたところに待つて効力を生下ると解するのが相当である」[12]とし、本件について官報正誤以前に行われた公訴事実については無罪としている。
- 年金改革法案
- 2004年(平成16年)7月、厚生労働省から提出された年金改革法案の中に、条項を追加したにも関わらず、その後で「前条の規定により…」と引用する他の条文が修正から漏れていたために、別の関係ない条文を引用してしまうことになるなどの条文ミスが多数発見された。
- なお、2005年(平成17年)5月には、社会保険庁から発行している国民年金保険料の納付免除・猶予申請の却下通知書に、本来「全額免除」とあるべきところを印刷業者のミスにより「金額免除」と誤植されて、刷り直しを余儀なくされた。54万枚印刷され、印刷費用は250万円である。
辞書の誤植
- 『岩波国語辞典』第3版
- 岩波書店の国語辞典、『岩波国語辞典』第3版の第1刷では、「ごびゅう」(本来は「誤謬」)を引くと、「【説謬】あやまり。「―を犯す」」という誤植があった。刊行当時「自らが率先して誤謬を実践してくれるとは親切な辞書だ」と皮肉られた。
- 『生物学語彙』
- ゴキブリは、かつては「御器齧り(ゴキカブリ)」等と呼ばれていた。しかし、1884年(明治17年)に岩川友太郎が書いた日本初の生物学用語集『生物學語彙』では、最初の記述には「ゴキカブリ」とルビが振られていたものの、2か所目には「ゴキブリ」と書かれ、一文字抜けていた。この本は初版しか発行されず、間違いを訂正することができなかった。その後1889年(明治22年)に作られた『中等教育動物学教科書』にも「ゴキブリ」と記述されてしまい、この間違いは、以降の教科書や図鑑にも引き継がれてほとんど全ての文献に「ゴキブリ」と書かれ、和名として定着した(→#定着した誤植)。これはのちにフジテレビ系『トリビアの泉』でも視聴者投稿により紹介された。
教科書の誤植
- 雪国はつらいよ条例
- 1988年(昭和63年)に新潟県中魚沼郡中里村 (現・新潟県十日町市)が制定した「雪国はつらつ条例」(現在は失効)が、2002年(平成14年)2月に発行された中学公民教科書『新しい社会 公民』(東京書籍刊)で「雪国はつらいよ条例」と誤って紹介され、報道などで取り上げられ一時話題となった。自治体名の「中里村」も「中里町」と同時に誤植されていた。
漫画・漫画界の誤植
- 『ねじ式』
- 1968年『月刊漫画ガロ』(青林堂)に掲載されたつげ義春の漫画『ねじ式』では、主人公の少年が海でメメクラゲに腕を噛まれ、血管が露出するシーンがある。この「メメクラゲ」は、本来は「××クラゲ」という伏字表現になっていた。写植屋が×をメと間違って植字したために「メメクラゲ」と印刷された、と言い伝えられてきたが、実際は少し違っている。青林堂の編集者高野慎三がこの奇怪な作品に「メメクラゲ」という生物はごく自然だと思い込み、作者の目前で読むと作者に××かどうか確かめもせずに写植へ回した。翌日打ち上がった写植もメメクラゲとなっていた。このとき同僚の一人も「メメクラゲとは実に異様ですね。」と言い、高野も「さすがつげさんだね」と応じたという。しばらくの後、高野がつげに会った際に、つげは「メメクラゲのほうが作品に合っているような気がするね。」といった。以降、メメクラゲが定着し流行語にすらなった[13]。
- 『おまけの海藤家』
- 白泉社の少女漫画雑誌『花とゆめ プラチナ増刊』1998年(平成10年)5月15日号に掲載された加藤知子の漫画『おまけの海藤家』で、登場人物が「なんとまあ、俺様ときたらおちこんでるらしいんだぜ」という内容の科白を言うシーンで、「こ」と「ん」が置き換わってしまった。
- コミカルではない雰囲気で男性器の話題が飛び出すこの誤植は、『本の雑誌』や『VOW』にも紹介され表紙に使われたこともある。
- 『ジョジョの奇妙な冒険』
- 荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の単行本第1巻初版で、主人公ジョナサン・ジョースターが愛犬を蹴り上げるディオの行為に対して「何をするだァーッ」と叫んでいた[14]。
- 『トリコロ』
- 海藍の『トリコロ』の『まんがタイムきらら』2005年5月号掲載の話で、登場人物が花粉症に関連した話の流れで「IgE抗体」をローマ字読みで誤読するシーンがあるが、そのセリフでは「ハゲ抗体」となっていた。単行本(メディアワークス版1巻特装版付録「稀刊ツエルブ」)では本来の「イゲ抗体」に修正されている(「イ」の各字画が離れて「ハ」と誤読された)が、雑誌掲載当時は語感の奇抜さとあいまって話題となった。ちなみに、このセリフは当該掲載分の第1ページ・最終ページの離れた2箇所に出現するが、いずれも「ハゲ抗体」となっていた。
- 『RYU FINAL』
- 中平正彦の『RYU FINAL』の連載開始告知で「中平正彦宣誓執筆!」(本来は「先生」)、中盤ダッドリーが「体勢を大きく崩す蹴り技など不様!」(本来は「不要」)、最終話の最終ページのリュウのセリフで「確かみてみろ」(本来は「確かめてみろ」)と誤植される。単行本では修正された。
その他書籍の誤植
- いい親を演じなさい
- 三重県が2004年から毎年11月の子ども虐待防止啓発月間に合わせ発行している、県の「子どもを虐待から守る条例」を紹介するパンフレットの「子育てのヒント」の欄で「いい親を演じない」とすべきところを「いい親を演じなさい」としてしまい、三重県は急遽パンフレットの回収を行った。2007年11月になって誤植に気付いたという。
- スタソド、ヶーブル、カ夕カナ
- パソコンメーカーのDELLのモニター接続解説書には「スタソドに取り付ける」(「ソ」が「ん」ではなく「そ」)や「ヶーブル」などの誤植が見られる。また、キートップ上の「カタカナ」が「カ夕カナ」(カタカナの「タ」ではなく漢字の「夕(ゆう)」)となっていたり、カタカナの「ソ」と「ン」が混同されて使われるなどの事例もある。なお、このような誤植はDELL以外のメーカーでも、説明書の印刷を中国など海外の業者に委託した際に少なからず見られる。これは日本人以外にはカタカナの細かい差異を区別することが難しいことと、「漢字カナ(かな)交じり文」のように複数の系統の言語を混在させて使用する文章は日本語固有のものであるためである。
- 後述の「ドラゴンモデルズ」の項も参照
- 川本三郎=誤訳
- サンリオ文庫から出ていたロザリンド・アッシュ『蛾』(工藤政司訳、1979年、初版)の巻末の既刊書目録にはレイ・ブラッドベリ『万華鏡』が記載されているが、訳者名を「川本三郎=翻訳」とすべきところが「川本三郎=誤訳」となっている。
- 真田信仍
- 戦国武将の真田信繁(真田幸村)の名前は、しばしば真田信仍(さなだのぶより)と誤植された。徳川光圀『西山遺事』・湯浅常山『常山紀談』など複数の資料で誤記され、明治時代に資料を翻刻(活字化)された際にもこの誤植が踏襲されている(光圀はわざわざ「幸村というのは誤りで信仍が正しい」とさえ発言している)。これは信繁の自筆署名のくずし字の判読を誤った誤植であるという。菊池寛は著書『真田幸村』で「信繁の兄の真田信之が「私の弟の名前は武田信繁と同じで、字も同じだ」といっているのだから信繁が正しい。江戸時代は信仍で通っていた」と述べている[15]。
- 罪の巨塊 / 巨魂
- 曽野綾子には著書『ある神話の背景』で大江健三郎『沖縄ノート』を引用する際に「罪の巨塊」とある部分を「罪の巨魂」と誤読し、出版社も気づかなかったテキストがある(読売新聞社 1984、PHP研究所 1992、ワック 2006)。厳密には「誤植」というより、曽野綾子の誤解・誤読であり、1984年刊行の『曽野綾子選集. II 第2巻』を元テキストとし、それ以前の著作および大江健三郎の元引用テキストを確認しなかった編集者のミス(広義の誤植)である。さらに曽野綾子は「SAPIO」2007年11月28日号、「沖縄集団自決と従軍慰安婦=なぜ日本人はデマに平伏してしまうのか」(池田信夫×曽野綾子)では「罪の巨魁」という語を使っている。
- 二銭銅貨
- 江戸川乱歩の推理小説『二銭銅貨』は、文字を点字の表現に置き換えるスタイルの暗号が用いられている。この点字の表現において誤植があり、発表後、数十年間、誤ったまま増刷され続けていた。現在は改版されているという。
雑誌の誤植
- 『中央公論』幸田露伴「佐佐木氏の如き歌」
- 『中央公論』1905年(明治38年)1月1日号に掲載された幸田露伴の評論「文芸の批評家と一般士女との関係」(のち「批評」と改題)内で、「歌人にして歌学者たる佐佐木氏の解する能はずといふが如き歌」が「歌人にして歌学者たる佐佐木氏の如き歌は今猶行はるゝにあらずや。」と誤植された。ここは流行に阿った芸術の悪い例が列挙された部分だが、数字の脱字により「佐佐木氏でもわからないような歌」とするつもりが、「佐佐木氏のような歌」となり、また、この直前の4項目が「~にあらずや」で連続しているため、この文もそのような形に誤植された。これにより、露伴の親友でもあった佐佐木信綱(佐佐木氏)を非難する文となっている[3]。
- この件で、露伴は信綱に謝罪の書簡を送り(信綱からの書簡と共に内容は伝わっていない)、その一方で、内容確認のために編集部に原稿の返却を求めたが、原稿は紛失されていた。露伴は再度、信綱に書簡を送り(岩波書店『露伴全集』書簡集に186として収載)、編集部に訂正方を申し入れ、2月1日号の「前号正誤」に訂正と謝罪とが掲載された。いっぽう信綱は、露伴からの書簡に添えたメモで「つまらぬ事」と評しており、気にはしていなかったようである[3]。
- 『週刊SPA!』大正洗脳事件
- 1989年(平成元年)2月2日発売の週刊誌「週刊SPA!」2月9日号の記事中、「大正天皇」を「大正洗脳」と誤植した箇所があると判明。発行元の扶桑社は同号を発売中止とし、併せて既に発送した分を回収した。
- 『女性セブン』幻の皇大子
- 『女性セブン』(2004年12月23日号)は2004年(平成16年)12月9日発売予定だったが、皇室記事の見出しで「皇太子」が「皇大子」となっていたことに印刷作業の途中で気付き、急遽刷り直すことになったため、発売が12月13日に延期された。
- 『ゲーメスト』インド人を右に
- ゲーム雑誌の「ゲーメスト」も誤植が多かった。同誌の誤植として、レーシングゲーム『スカッドレース』の攻略記事中の「くお~!! ぶつかる~!! ここでアクセル全開、インド人を右に!」がある。本来は「ハンドルを右に!」だが、鉛筆書きの原稿の文字が汚く、写植オペレータには「インド人」にしか見えなかったという。
- 同誌は他にも「ザンギュラのスーパーウリアッ上」「レバー入れ大ピンチ」「しゃがみ大パンツ」「ZストリートファイターERO3」「確かみて見ろ」など多数の誤植を出している。詳しくはゲーメストの項を参照。
- 『RPGマガジン』兒
- 誤植の多かった同誌で特に話題になったのが『フォーチューンの海砦』第1話で「蟲」が「兒」となったもの。入稿したデータが印刷されるまでの間に文字化けしたことが原因。
「ゲーメスト」の例は原稿が手書きだった時代のもので、このような誤植はワードプロセッサの普及とともに減少した。その反面、「週刊SPA!」のように些細なタイプミス、変換ミスが誤植につながる事例が多く見られる様になってきている。
新聞の誤植
新聞は、日刊という形態と時事を扱うスタイルから、入稿から印刷までが非常に短く、校正する時間も限られるために漫画、雑誌より誤植が出やすい。後日に訂正欄もしくは訂正記事によって訂正されることが多い。誤報#単純なミスも参照。
- 「無能無智ロシア皇帝」事件
- 1899年(明治32年)5月24日、読売新聞がロシア皇帝について書いた社説の中に「全能全智と称せられる露国皇帝」とすべきところを「無能無智」としてしまった。「全」と「無」は楷書では似ていないが、崩し字が文選で読み間違えられた[16]。同新聞社は、即日「謹んで天下に謝す」と題した訂正の号外を配布し、ロシア公使館に単なる誤植である旨を説明して事なきを得た。
- 「ペネルクイズ」
- 1975(昭和50)年4月6日に放送が開始されたABCテレビの「パネルクイズ アタック25」初回放送日の朝日新聞東京本社版のテレビ番組表に「ペネルクイズ アタック25」と誤植されていた。
- 「老人死ね」事件
- 1989年頃の上毛新聞の見出しが「殴られ重体の老人死ぬ 松井田」と出そうとしたところ、「老人死ね 松井田」となってしまったことで問い合わせや抗議が殺到した。この誤植は『VOW』の2号(『VOW2』1989年7月発行)にも収録され、バラエティ番組の誤植特集で取り上げられるなどした。
- 「木戸ビグザム」事件
- 北海道新聞のラジオ・テレビ欄で「機動戦士ガンダム」の「機動ビグザム」の回が「木戸ビグザム」となっていたことがある。
- 「観光客を拉致せよ」事件
- 2005年(平成17年)11月2日宮崎日日新聞の朝刊のテレビ欄でMRTイブニング・ニュースの内容を「観光客誘致を!!韓国でトップセールス」としようとしたところ、「観光客拉致を!!~」となってしまい、後日訂正がなされた。
- 自粛されたはずの「赤福餅の天気予報」
- 伊勢新聞では長年、赤福餅提供による「漫画天気予報」(赤福のキャラクター・赤太郎が登場して三重県の天気を伝える)を1面題字下に掲載していたが、2007年(平成19年)10月の製造日不正表示事件の発覚を受けて、その協賛広告付天気予報は自粛することとなり、一般的な天気のイラストのみを使って掲載している。
- ところが、その自粛期間中にもかかわらず誤って2008年(平成20年)1月5日の新聞で赤福を登場させてしまった[17]。そのため、翌1月6日の紙面で「1面の天気予報は赤福提供ではありませんでした」とお詫びを掲載した。
- 「岡田首相退任」事件
- 2010年(平成22年)7月1日デーリー東北の朝刊で「岡田監督 退任の意向」とすべき内容を、「岡田首相」と誤って記者が入力し印刷され、40分後に印刷部員の指摘によって「岡田監督」に修正し、印刷し直すことになったが、すでに新聞販売店への発送が始まっていたので、発行部数10万5000部のうち、およそ半分の5万部は誤った紙面のまま配布された。翌日訂正がなされた。ちなみに同姓の岡田克也は最大野党時代(自公連立政権)で党代表を務めたことがあるが、民主党が与党だった時期(2009年~2012年)に代表者そのものを務めたことは一度もない。「岡田首相」自体は過去に岡田啓介が首相を経験した事があるが、在任したのはデーリー東北創刊(1945年)以前の1934年~1936年である。
- 「温家室」事件
- 2010年12月30日付の人民日報で中国の温家宝首相を「温家室」と誤植。担当者は解雇も含め厳しい処分が予想されているが[18]、その後、人民日報編集部の関係者が口頭反省で済んだと報道された[19]。
- 「大塚製薬のリポビタンD」
- 2011年10月9日付けの伊勢新聞朝刊で、前日10月8日に行われた「津まつり」のステージイベント出演者に対して栄養ドリンク・「リポビタンD」を大正製薬の協賛で配布するという記事が掲載されたが、その見出しを「演者らにファイト!! 大塚製薬、『リポD』配る」と誤って掲載してしまった(ただし本文は「大正製薬」のままであった)[20]。なお大塚製薬が製造・販売する似た商品は「オロナミンCドリンク」(医薬品ではない)である。
その他メディアの誤植
- 天気予報
- 大阪・朝日放送の気象情報で、京都・舞鶴の予想最高気温を9℃にすべきところ、テンプレート:いつ範囲。また、東京・日本テレビの天気予報で、群馬の最高気温がテンプレート:いつ範囲。これは36℃の誤植である。
- 『お山のお猿』 「戸倉千代子」
- 歌手島倉千代子のプロデビュー曲は『この世の花』であるが、その5年前にもテイチクレコードから童謡『お山のお猿』を発売していた。しかし、このレコードは歌手名が「戸倉千代子」と誤植されていたため(レコード会社の社員によるミスとされている)、「島倉千代子」としてのデビュー曲にはならなかった[21]。
- 『ウルトラマン』「M78星雲」
- テレビ番組『ウルトラマン』で、主人公の出身地は当初、極めて特異な特徴を持つ星雲(正確には銀河)であるM87にちなんで、「M87星雲」とするはずだった。しかし企画書に「M78星雲」と誤植された。「万一本当のM78星雲からクレームが来るとしても、我々はとっくに死んでいるずっと未来のことだろうから」として、そのまま劇中でも使用され、定着した。なお、これによって没とされてしまった「M87」の名称は、後にウルトラ兄弟の長兄となったゾフィーの必殺技「M87光線」の名前で使用されている。ちなみに、実際のM78は、地球から見て比較的明るいということ以外、特にこれといった特徴のない反射星雲である。
- 『魔境伝説アクロバンチ』「猪にひとり」
- テレビアニメ『魔境伝説アクロバンチ』のテレビ本放送時には、オープニングアニメ(OP)・エンディングアニメ(ED)の映像が未完成の状態から放送が開始されたが(放送回を重ねるごとに完成度が上がっていった)、その第1話OPのクレジットで、ED曲名の「渚にひとり」が「猪にひとり」になっているという誤植があった。後にパイオニアLDC(現NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)より発売・販売されたDVDでは、全話完成OPに差し替えられて収録されたので、「猪にひとり」を見る事はできない。
- 『ロング・グッバイ』「俺は帽子をなくした」
- レイモンド・チャンドラー原作のフィリップ・マーロウものの映画化作品で、字幕スーパー作成のために取り寄せた脚本に誤植があり、cat が hat になっていた。本来は、主人公が事件に関わったせいで飼い猫に逃げられたと吐き捨てる台詞である。さすがにいぶかしく思った字幕作者が配給会社に問い合わせて、未然に防がれた。
- 『月姫』「お部屋をお連れします。」
- 2000年の同人ゲーム『月姫』にて、登場キャラクター翡翠(ひすい)のセリフにあった誤字で、体験版である通称『半月版』にて発覚、製品版では修正されている。その後、TYPE-MOON公式HPの企画画像で、セルフパロディとして「あなたを、犯人です」というセリフが登場した。格闘ゲームの『MELTY BLOOD』シリーズでは声優に「あなたを、リベンジです」としゃべらせたり、背景に誤字が乱舞したり、とネタとして使われている。
- 『Kanon』「もろちん」
- 1999年のPCゲーム『Kanon』にて、ラスト近くのテキストにて、「もちろん」の「ち」と「ろ」が入れ替わっている。
- 『ファイナルファンタジーII』「てったいしなければならかった」
- 1988年のFCゲーム『ファイナルファンタジーII』で、電源を入れる度に必ず表示されるオープニングデモのテキストにて、「てったいしなければならなかった」が「てったいしなければならかった」となっている。リメイク版(ファミコン版I・II以降)では修正されており、ゲームボーイアドバンス版以降では「撤退をよぎなくされた」になっている。
- 『ギターフリークス・ドラムマニア』「KONMAI」
- 1999年のコナミのゲーム『ギターフリークス』と『ドラムマニア』で、e-AMUSEMENT用の「KONAMI ID」を登録する部分で「A」と「M」が入れ替わって「KONMAI ID」と表記された。また、コナミが発売したゲームのバグや誤字、ユーザーの希望や要望から大きく外れた仕様を揶揄する「コンマイクオリティ」という用語が生み出され、以後定着した。「コンマイクオリティ」は自由国民社刊の『現代用語の基礎知識2008』にも収録されている。
- なお、コナミはこれ以降にも「KOMANI」「KOMAMI」「KOMNAMI」「KOANMI」など、自社名の誤植を何度もしている。
- 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』「歴史保存教会」
- SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がDVD化されたときの誤植。本来なら「歴史保存協会」だが、「歴史保存教会」となっていた。マーティがデロリアンを見た時の「ヘビーなデザインだ」も「ベビーなデザインだ」となっていた。Blu-ray Discでは後者のみ修正されている。
- 『ドラゴンモデルズ』「フや消し」シリーズ
- 香港に本社を持つプラモデルメーカー『ドラゴンモデルズ』の模型の組み立て説明書の誤植。
- ドラゴンモデルズから発売されている模型の組み立て説明書やパッケージは世界展開を考慮して多国籍の言語で表記されているが、その中でも日本語表記は「つや消し」が「フや消し」や「フセ消レ」、「つや消レ」とされている。また、これ以外に同様ないし類似の誤植ケースが多数あるといわれる。
- 2014年2月のワンダーフェスティバルでは、パロディ商品として、これらの誤植を色名に反映させた塗料用ボトルがGSIクレオスホビー部からイベント会場限定で販売された[22]。
- 『おジャ魔女ドールNEW』「おかぷを立たせて」
- 2002年(平成14年)にバンダイから発売されたガシャポンのフィギュア、「おジャ魔女ドールNEW」の「4 おんぷ&ロロ」で、取扱説明書で「おんぷを立たせて」とすべきところが「おかぷを立たせて」となっていた。
- 尾崎豊『COOKIE』 「クッキーを燃いてくれ」
- 1990年(平成2年)に発売された尾崎豊のアルバム『誕生』の歌詞カードで、収録曲『COOKIE』のサビ「クッキーを焼いてくれ」が「クッキーを燃いてくれ」と誤植されていた。上記の「老人死ね」「宮尾すすむ」同様、これも『VOW』に掲載された。なお、この誤植は1箇所のみで、他の部分については「焼いてくれ」となっている。
- 『トランスフォーマー』 「無念お砲塔」
- 2007年(平成19年)公開された映画『トランスフォーマー』の玩具のホームページで登場キャラクターの1人(実際に本編には登場していない)「スィンドル」の紹介文で「胸の砲塔」と表記すべきところが、ローマ字の誤入力が元で「無念お砲塔」に誤植された。
- フジテレビの天気予報 「はえ」
- 1988年(昭和63年)10月17日に放送されたフジテレビの全国ニュース(FNNスーパータイム)内の天気予報で、「名古屋 はれ」とするべき所を、「名古屋 はえ」と誤植されて表示された。これは後に同局の『NG大賞』(現『がんばった大賞』)で何度も取り上げられた。
- 『ドリフ大爆笑』 「スポーツでいい汁かこう!」
- 1990年代前半頃、フジテレビ系バラエティ番組「ドリフ大爆笑」にて、字幕で「長介のスポーツでいい汗かこう!」と表記すべき所を、間違えて「長介のスポーツでいい汁かこう!」と誤植した。このことは『VOW7』(1995年)でも採り上げられた。
- 気象庁地震速報「震度8」
- 2011年11月17日19時11分頃、福井県嶺北地域で発生した地震の震度が誤って「震度8」とした速報テロップが表示された。実際の震度は震度3であった。
- 『あたしンち』「未納加茂市」
- 2004年5月、テレビ朝日系のテレビアニメ『あたしンち』のお母さん川柳のコーナーにて、投稿者の字幕テロップの住所を「岐阜県美濃加茂市」と表記すべき所を、「岐阜県未納加茂市」と表記していた。3年後のBSでの再放送でも修正せず放送。当時は政治家の年金未納問題が話題になっていた。
- 自動車の車種名に関する誤植
- 由来となる単語に二つ以上の仮名表記がある場合やV音が使用されていた場合、どちらで表記するのかがあやふやになるなどして誤表記を招く可能性はあり得る。
- また、時代などにより呼び方が異なる例(フォード・マスタング(ムスタングと呼ばれていた時代がある)や現代自動車(会社側はヒュンダイを正式呼称としているが、本来ヒョンデと発音するためこちらで呼称する場合がある)など)もあり、その場合非公式な呼び方がメディアや口語などで後年まで残ることがある。
- 出川哲朗氏お別れの会
- 2013年12月2日付の「webザ・テレビジョン」のNHK総合テレビジョンの情報番組・「ニュースウオッチ9」の紹介で、「川上哲治氏お別れ会」と表示すべきを、誤って「出川哲朗氏お別れ会」と表記し、ネット上で話題となった[26]。
- 千倍の性感
- 2014年発売のヤングコミック7月号25ページで「4倍の性感がある」を誤って「千倍の性感がある」と表記し、Twitterなどで訂正した[27]。
定着した誤植
誤植が正規表現に替わって定着する場合もある。上記の「ゴキブリ」、「メメクラゲ」、「M78星雲」はその好例である。
作品
- 『ルパン三世』の銭形警部の本名として設定された名前は4種類有るが「平一」という最初の設定が誤植されて生まれた「幸一」という名前がアニメ版の公式設定になってしまった。
- 「ひょっこりひょうたん島」のドン・ガバチョの笑い声が「ハタハッハ」なのは、本来「ハッハッハ」とすべきところを台本が誤植されており、声優がそのまま読んでしまったためだが、定着した。
- 『魔人探偵脳噛ネウロ』で、登場人物の1人「石垣筍」の本来の名前の読みは「いしがき しゅん」だったが、誤植によって「じゅん」が正式な名前になったことが単行本2巻で明かされた。また、「魔界777ツ能力(どうぐ)」の一つ「生まない女王様(イビルバジャー)」は、本来は「産まない女王蟻」であることが、単行本第5巻で明かされた。
- 長野県歌「信濃の国」の5番で、仁科五郎盛信が仁科五郎信盛と歌われているが、歌詞を訂正しないまま長野県の歌としてそのまま歌い継がれている。ただし、仁科盛信は晩年に「信盛」と改名していた可能性が指摘されている[28]。
- 寺田寅彦の俳句「粟一粒秋三界を蔵しけり」は、岩波書店の寺田寅彦全集で「栗一粒秋三界を蔵しけり」(アワ→クリ)と誤植されたが、こちらの誤植バージョンが有名で、「栗の句」の代表作として知られている[29]。
名称
- ホンソメワケベラ(ホン・ソメワケ・ベラ、漢字では“本染分倍良”)は当初“ホソソメワケベラ”(ホソ・ソメワケ・ベラ:細染分倍良)と命名されて発表される予定だったが、論文に“ホンソメワケベラ”と誤植されて直されることなく発表され、漢字表記も誤植された側に合わせて“ホンソメワケベラ”が正式な標準和名となった。
- 富山県高岡市の「高岡開町400年記念事業」に際して発行された記念商品は、立山連峰を「立山連邦」と誤植してしまった。これを逆手にとって記念事業を推進していた高岡次世代経営塾は立山連邦王国なる架空のミニ独立国を建国した。
- 戦国武将の林秀貞は、最近まで本名を林通勝と誤って伝えられていた。同時期に「林若狭守通勝」という人物がいたためとされる。これに限らず戦国武将には似た名前が多いため事績の混乱しているケースは多く、徳川実記を編んだ江戸時代の学者林述斎は、史料の混乱により、氏名が誤記されて、事績が混乱しているケースが多いと嘆いている。ただし、秀貞の子が勝吉、孫が勝久と「勝」の字を使った名前であることから、「通勝」を名乗った後に「秀貞」に改名した可能性も指摘されている。
- 小説家吉川英治は、本名の「英次」(ひでつぐ)で作品を書いていたが、出版社が誤って「英治」としたのを本人が気に入り、筆名とした。
- コラムニストの押切伸一はある雑誌で「伸切伸一」と表記された(『VOW』ネタにもなった)ことで「のびきりのびいち」を一時期名乗っていた。親族や友人等からは「そりゃお前らしい」と言われたという。
- 四方田犬彦は本来の筆名の「丈彦」を「犬彦」と表記され、それをそのまま筆名として使うようになった。
- 漫画家の矢野健太郎は、数学者の矢野健太郎をもじって「矢野建太郎」という筆名を名乗ったが、処女作の掲載時に「矢野健太郎」と誤植されてしまい、そのまま現在の筆名として使い続けている。
- 漫画家のうすた京介は、読み切りを投稿する際に、近くにあったウスターソースをもじって「うすた宗介」と名乗ったが、作品の入賞が発表された際に「うすた京介」と誤植されてしまい、そのまま現在も筆名として使い続けている。
- 小説家の時雨沢恵一は、編集者の誤植である「雨沢恵一」を、複数の著書のあとがきに登場させた。
- もじら組はイベント「関西オープンソース+フリーウェア2003」のパンフレットで「もぐら組」と誤記されたことで一時期自ら「もぐら組」を名乗っていたことがある[30]。
- 新日本プロレス所属レスラーの高橋裕二郎は、デビュー当時あらゆる書類で「裕次郎」と誤植されたため、「石原裕次郎にあやかる」意味も合わせて2010年まで「裕次郎」をリングネームにした。
- 大相撲力士(元関脇)の海乃山は、「海力山」と改名届を出した1957年1月場所に番付表の誤植に遭い、そのまま番付どおりの四股名を名乗った。
- 競走馬のダイユウサク(1991年の第36回有馬記念優勝馬)は、本来馬主は「ダイコウサク」という馬名にするつもりだったが、競走馬登録の際に「コ」と「ユ」の文字を取り違えられて「ダイユウサク」の名前で登録されてしまい、以後その名前で現役を通した。
- 同じくスウヰイスー(1952年・桜花賞馬)も、はじめは「スゥィートスー」(ないしは「スウヰートスー」)で馬名登録をしようとしたが、馬主から調教師に馬名を説明した際に「スウィースー」と聞き違いをしたことから結果的に上記馬名で通したとする説がある。
- サッカーガーナ代表のリチャード・キングソンの本名はリチャード・キングストン (テンプレート:En) だが、2006 FIFAワールドカップに出場した際、ユニフォームの背中ネームを「KINGSON」と誤植され、以来、代表でも所属クラブでも「キングソン」の登録名でプレーし続けている。
誤植を題材とした小説
佐野洋の推理小説「一本の鉛」ISBN 4-04-131201-9 は、誤植が題材の推理小説。「一本の鉛」は活字の意味である。