JRA顕彰馬
JRA顕彰馬(ジェイアールエーけんしょうば)とは、中央競馬の発展に多大な貢献のあった競走馬の功績を讃え、後世まで顕彰していくために1984年に制定されたものである。顕彰競走馬は「殿堂入り」に相当する。
競馬の殿堂には調教師・騎手顕彰者とともに顕彰馬の肖像画、ブロンズ像、関係資料が展示されている。
目次
選考方法
現在の選考方法は10年以上競馬報道に携わっているマスコミ・新聞関係者による選考投票を行い(1名2頭までの連記式、「該当馬なし」として投じることも可能)、総投票者の4分の3以上の得票を得れば選出という方式であり、2004年より実施されている。選考は毎年4月に行われる。選定対象馬は3月31日を起算日とし競走馬登録抹消1年以上経過し、20年以内の馬である。現役馬や競走馬登録抹消1年未満の馬、競走馬登録抹消20年を経過した馬は対象外である。
1984年から2000年までは下記の選定基準により顕彰馬選考委員会の審議(委員の4分の3の賛成)により決定されていた。この方式で最後に選出されたのは1999年のタイキシャトルである。 選定条件は以下の通り
- 競走成績が特に優秀であると認められる馬(原則としてGI競走に格付けされた重賞競走において3勝以上の成績を収めたもの)
- 競走成績が優秀であって、種牡馬または繁殖牝馬として、その産駒の競走成績が特に優秀であると認められる馬(上記に準ずる成績を収めた馬であって、GI競走において優勝した産駒が種牡馬にあっては5頭以上、繁殖牝馬にあっては2頭以上のもの)
- その他、中央競馬の発展に特に貢献があったと認められる馬(国際的に活躍し、中央競馬の評価を高めたもの、又は記録性、話題性、大衆性において中央競馬の発展に特に貢献のあったもの)
1990年には過去の競走馬に対する再度の選考を実施しテンポイント、コダマ、スピードシンボリ、メイジヒカリが選ばれている。これは制度制定時にトウショウボーイを選出したにも関わらず、その宿敵であったテンポイントが選出されなかった事に対して関西圏を中心とする競馬ファンやマスコミ・関係者から批判がずっと繰り返されていた事が大きいとされるが、他にも産駒の活躍、他の選出馬との比較などで最初期の選考の時点と状況が大きく異なる馬が発生していたためである。
また、ダイナナホウシュウ(皐月賞、菊花賞、天皇賞)、タケホープ(日本ダービー、菊花賞、天皇賞)、グリーングラス(菊花賞、天皇賞、有馬記念)のように上記の条件を満たしながら顕彰入り出来なかった馬もいる。特にダイナナホウシユウは今と違いGI数も少なく天皇賞が勝ち抜け制度だった時代に八大競走3勝、29戦23勝(うち60キロ以上の斤量で8勝)さらに11連勝という中央競馬の連勝記録も保持する時代を代表する名馬だったが、1984年の最初の選考時に選出濃厚とされながら、選考委員のひとりが小柄な馬格を指摘しサラブレッドとしての品格に欠けるとして強硬に反対したため選出されなかった。
2001年からは現在と同じく競馬マスコミによる投票になったが、当初は競走馬登録抹消20年を経過した馬も対象であったため、タケシバオーら競走馬登録抹消20年以前の馬を推す古参の記者と、エルコンドルパサー、スペシャルウィークら最近の馬を推す中堅の記者との間で票が分散する傾向にあった。そして2003年には当年より投票対象となったテイエムオペラオーが古馬中長距離GI完全制覇、最多タイのG17勝、賞金世界記録などの実績を持ってしても落選するに至り、競走馬登録を抹消してから20年も経過しているとその当時を知る人間が少なくなること、繁殖馬としての評価が定まることなどから、競走馬登録抹消後長い年月を経ている馬を投票対象とする選定方法の見直しが行われ、2004年より投票対象が登録抹消から20年以内の馬(1984年1月1日以降に登録抹消した馬)と制限されることとなり現在に至る。現在の選考方法となってからは、2004年にテイエムオペラオー、2008年にディープインパクト、2011年にウオッカが顕彰馬に選出されている。
それ以外の選出例としては、2004年のJRA50周年事業(JRAゴールデンジュビリーキャンペーン)と2014年のJRA60周年に、事業の一環として選考方法に特例を設けた。2004年は、当年から選定対象が登録抹消から20年以内になった事を踏まえて、投票対象から外れた登録抹消後21年以上が経過した馬(1983年12月31日以前に登録抹消した馬)についての選考が1名2頭まで連記式投票にて行われ、総投票者の4分の3以上の票を獲得したタケシバオーが顕彰馬に選出された。60周年の2014年は1人につき最大4頭まで投票可能にすることにより、エルコンドルパサーが選出された。当馬は選定対象になった2001年から、選出馬が出た年以外は全て高い得票率で1位の得票を集めていたものの選出に至らなかったが、ようやく晴れて顕彰馬入りを果たした。
顕彰馬一覧
馬名 | 性 | 生年 | 選出年 | 主な戦績など |
---|---|---|---|---|
クモハタ | 牡 | 1936年 | 1984年 | 1939年 - 東京優駿競走 1952年~1957年 - リーディングサイアー |
セントライト | 牡 | 1938年 | 1984年 | 1941年 - 横濱農林省賞典4歳呼馬、東京優駿競走、京都農商省賞典4歳呼馬 |
クリフジ | 牝 | 1940年 | 1984年 | 1943年 - 東京優駿競走、阪神優駿牝馬、京都農商省賞典4歳呼馬 |
トキツカゼ | 牝 | 1944年 | 1984年 | 1947年 - 農林省賞典、優駿牝馬 |
トサミドリ | 牡 | 1946年 | 1984年 | 1949年 - 皐月賞、菊花賞 八大競走勝ち馬7頭の父 |
トキノミノル | 牡 | 1948年 | 1984年 | 1951年 - 皐月賞、東京優駿 |
メイヂヒカリ | 牡 | 1952年 | 1990年 | 1954年 - 朝日杯3歳ステークス 1955年 - 菊花賞 1956年 - 天皇賞・春、中山グランプリ |
ハクチカラ | 牡 | 1953年 | 1984年 | 1956年 - 東京優駿 1957年 - 天皇賞・秋、有馬記念 1959年 - ワシントンバースデーハンデキャップ |
セイユウ | 牡 | 1954年 | 1985年 | 1957年 - 読売カップ・春、セントライト記念、読売カップ・秋 |
コダマ | 牡 | 1957年 | 1990年 | 1960年 - 皐月賞、東京優駿 1962年 - 宝塚記念 |
シンザン | 牡 | 1961年 | 1984年 | 1964年 - 皐月賞、東京優駿、菊花賞 1965年 - 宝塚記念、天皇賞・秋、有馬記念 |
スピードシンボリ | 牡 | 1963年 | 1990年 | 1967年 - 天皇賞・春 1969年 - 有馬記念 1970年 - 宝塚記念、有馬記念 |
タケシバオー | 牡 | 1965年 | 2004年 | 1967年 - 朝日杯3歳ステークス 1969年 - 天皇賞・春、英国フェア開催記念 |
グランドマーチス | 牡 | 1969年 | 1985年 | 1974年 - 中山大障害・春、中山大障害・秋、京都大障害・秋 1975年 - 中山大障害・春、京都大障害・春、中山大障害・秋、京都大障害・秋 |
ハイセイコー | 牡 | 1970年 | 1984年 | 1973年 - 皐月賞 1974年 - 宝塚記念 |
トウショウボーイ | 牡 | 1973年 | 1984年 | 1976年 - 皐月賞、有馬記念 1977年 - 宝塚記念 |
テンポイント | 牡 | 1973年 | 1990年 | 1975年 - 阪神3歳ステークス 1977年 - 天皇賞・春、有馬記念 |
マルゼンスキー | 牡 | 1974年 | 1990年 | 1976年 - 朝日杯3歳ステークス |
ミスターシービー | 牡 | 1980年 | 1986年 | 1983年 - 皐月賞、東京優駿、菊花賞 1984年 - 天皇賞・秋 |
シンボリルドルフ | 牡 | 1981年 | 1987年 | 1984年 - 皐月賞、東京優駿、菊花賞、有馬記念 1985年 - 天皇賞・春、ジャパンカップ、有馬記念 |
メジロラモーヌ | 牝 | 1983年 | 1987年 | 1986年 - 桜花賞、優駿牝馬、エリザベス女王杯 |
オグリキャップ | 牡 | 1985年 | 1991年 | 1988年 - 有馬記念 1989年 - マイルチャンピオンシップ 1990年 - 安田記念、有馬記念 |
メジロマックイーン | 牡 | 1987年 | 1994年 | 1990年 - 菊花賞 1991年 - 天皇賞・春 1992年 - 天皇賞・春 1993年 - 宝塚記念 |
トウカイテイオー | 牡 | 1988年 | 1995年 | 1991年 - 皐月賞、東京優駿 1992年 - ジャパンカップ 1993年 - 有馬記念 |
ナリタブライアン | 牡 | 1991年 | 1998年 | 1993年 - 朝日杯3歳ステークス 1994年 - 皐月賞、東京優駿、菊花賞、有馬記念 |
タイキシャトル | 牡 | 1994年 | 1999年 | 1997年 - マイルチャンピオンシップ、スプリンターズステークス 1998年 - 安田記念、ジャック・ル・マロワ賞、マイルチャンピオンシップ |
エルコンドルパサー | 牡 | 1995年 | 2014年 | 1998年 - NHKマイルカップ、ジャパンカップ 1999年 - サンクルー大賞 |
テイエムオペラオー | 牡 | 1996年 | 2004年 | 1999年 - 皐月賞 2000年 - 天皇賞・春、宝塚記念、天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念 2001年 - 天皇賞・春 |
ディープインパクト | 牡 | 2002年 | 2008年 | 2005年 - 皐月賞、東京優駿、菊花賞 2006年 - 天皇賞・春、宝塚記念、ジャパンカップ、有馬記念 |
ウオッカ | 牝 | 2004年 | 2011年 | 2006年 - 阪神ジュベナイルフィリーズ 2007年 - 東京優駿 2008年 - 安田記念、天皇賞・秋 2009年 - ヴィクトリアマイル、安田記念、ジャパンカップ |
顕彰馬に関する記録
親子での顕彰馬選出
組 | 親馬名 | 選出年 | 仔馬名 | 選出年 |
---|---|---|---|---|
1組目 | トウショウボーイ | 1984年 | ミスターシービー | 1986年 |
2組目 | クモハタ | 1984年 | メイヂヒカリ | 1990年 |
3組目 | シンボリルドルフ | 1987年 | トウカイテイオー | 1995年 |
兄弟での顕彰馬選出
組 | 馬名 | 選出年 | 馬名 | 選出年 |
---|---|---|---|---|
1組目 | セントライト | 1984年 | トサミドリ | 1984年 |
平成16年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:テイエムオペラオー、タケシバオー
- 選考対象馬:
- 昭和58年以前に競走馬登録を抹消された馬
- 昭和59年1月1日から平成15年3月31日の間に競走馬登録を抹消された馬
2つの区分に分け、それぞれ2頭まで投票可能
- 得票数内訳(選出馬のみ)
平成17年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 投票者数:182名(137票以上で選出)
- 選考対象馬:昭和59年4月1日から平成16年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 得票数内訳(10票以上)
平成18年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 投票者数:185名(139票以上で選出)
- 選考対象馬:昭和60年4月1日から平成17年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 得票数内訳(10票以上)
- エルコンドルパサー 108 (58.4%)
- スペシャルウィーク 77 (41.6%)
- アグネスデジタル 16 (8.6%)
- ミホノブルボン 16 (8.6%)
- シンボリクリスエス 12 (6.5%)
- 該当馬なし 83
平成19年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 投票者数:197名(148票以上で選出)
- 選考対象馬:昭和61年4月1日から平成18年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 得票数内訳(10票以上)
平成20年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:ディープインパクト
- 選考対象馬:昭和62年4月1日から平成19年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:186名(140票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
平成21年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 選考対象馬:昭和63年4月1日から平成20年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:197名(148票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
平成22年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 選考対象馬:平成元年4月1日から平成21年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:191名(144票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
平成23年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:ウオッカ
- 選考対象馬:平成2年4月1日から平成22年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:186名(140票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
- ウオッカ 157(84.4%)→顕彰馬に選出
- エルコンドルパサー 118 (63.4%)
- スペシャルウィーク 29 (15.6%)
- ダイワスカーレット 15 (8.1%)
- アグネスデジタル 7 (3.8%)
- 該当馬なし 29
- 無効票 1(ニホンピロウイナー 1)
平成24年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 選考対象馬:平成3年4月1日から平成23年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:185名(139票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
平成25年度顕彰馬選定結果
- 投票結果:対象馬なし
- 選考対象馬:平成4年4月1日から平成24年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:184名(138票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
平成26年度顕彰馬選定結果
出典:JRAホームページ
- 投票結果:エルコンドルパサー
- 選考対象馬:平成5年4月1日から平成25年3月31日の間に競走馬登録を抹消した馬
- 投票者数:195名(147票以上で選出)
- 得票数内訳(上位5頭)
- エルコンドルパサー 156 (80.0%)→顕彰馬に選出
- ブエナビスタ 140(71.8%)
- スペシャルウィーク 107(54.9%)
- ヴィクトワールピサ 93(47.7%)
- ダイワスカーレット 47(24.1%)
- 該当馬なし 133(68.2%)
当年はJRA60周年記念事業の一環として、投票者1人あたり最大4頭まで投票が可能だった[1]。
ギャラリー
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