JR西日本キハ120形気動車
テンプレート:鉄道車両 キハ120形気動車(キハ120がたきどうしゃ)は、西日本旅客鉄道(JR西日本)のローカル線用の小型気動車である[1]。
JR西日本の地方交通線向け標準型気動車として、1991年(平成3年)に製造が開始された。
目次
概要
新潟鐵工所の地方鉄道向け車両「NDCシリーズ」の第一世代モデルによる16m級軽快気動車で、ワンマン運転にも対応している。本形式の200番台は松浦鉄道MR-100形とほぼ同形式となっている。新潟鐵工所での製造の他、一部は自社の後藤総合車両所でもライセンス生産された。
国鉄から承継されローカル線区で運用されていた一般型気動車のキハ20系・キハ35系・キハ45系や急行型気動車のキハ58系などの老朽化対策(置換え)や鉄道部に移管された線区の活性化を図るため、山陰東部エリアを除くJR西日本管内の非電化区間ほぼ全域に投入された。基本設計が新しいため省力化や投入線区のスピードアップなどに寄与した反面、キハ120形自体が従来車より小型車体である上に編成両数が削減されたため、着席率の低下や混雑率の上昇を招いた。
各社に投入されたNDCシリーズ第一世代モデルが次々に運用を離脱する中、2013年現在も休廃車が発生することなく、製造された89両全車が運用されている。 テンプレート:-
構造
キハ120形は製造時期別に3つの番台区分に分かれるが、本項では各番台共通事項について記す。
車体
車体幅 2,700 - 2,800 mm 、全長 16.3 m の両運転台の車両で、出入り口は両運転台の直後、片側2か所にバス用の2枚折り戸が採用されている。 始発駅など長時間の停車の際、キハ40系などで可能な半自動扉にはできないので、とってなどを利用して、人力により明け閉めする方法がとられている。 このほか、冷房装置にはバス用の汎用品を使用している。
エンジンはコマツ製SA6D125-H1形が採用されている。変速機は直結2段式である。
運転室は半室構造となっており、助士側は出入口とドアスイッチがあるのみ。乗務員扉は設けられておらず、助士側の客用扉横に車掌用の前方後方安全確認のための小窓が設置されている。主幹制御器は横軸式とされたが、操作部自体は従来車両と同一品が採用されており、国鉄キハ32形気動車に類似する。主幹制御器は221系電車に準じた前後操作式だが、ブレーキハンドルは着脱可能な構造である。
車体塗装は配置区所によって異なっている。
車内
座席は、セミクロスシートまたはロングシート。エンジン直結式の冷房装置を採用していることから、運転台後ろの1枚目と2枚目の窓の間で空調用のダクトが車内に張り出す構造となっており、この部分には座席がなく、窓の配置間隔が異なる。
車内収受式ワンマン運転を前提にしていることから、妻面にデジタル式の運賃表示器、運転台横に運賃箱、運転台直後に整理券発行機が備え付けられている。
新製時にはトイレがなかったが、後からユニット式のトイレが備え付けられた(後述)。
形式
本系列は基本的に「キハ120形」の1形式だが、製造時期により番台区分がなされ、番台ごとに構造上の差異が見られる。
1次車(200番台)
JR西日本発足後初めての新製気動車として、1991年(平成3年)に登場し、8両が製作された。
車体は普通鋼製で、車体幅は 2,700 mm。車体塗色は配置区所によって異なる(後述)。座席はセミクロスシート。エンジンはコマツ製SA6D125-H1形 (250PS/2,000rpm) を搭載している。側面は2段式ユニット窓・バス用2枚折戸の乗降扉採用など、国鉄キハ32形気動車に類似する。
2次車(0番台)
1992年(平成4年)に登場。200番台より後に登場したが、こちらが基本系列となっている。22両が製作された。200番台との差異は以下の通り。
- 車体が普通鋼製からステンレス製(車体前面は普通鋼製)に変更となった。配置区所ごとの塗り分けは前面と車体の帯で行われており、車体の大部分は無塗色。
- 車体幅が100 mm 広がって 2,800 mm となる。
- 窓ガラスがユニットサッシから1枚ガラスのはめ込み式になり、窓を開けることが出来なくなった。
- エンジンは200番台と同じコマツ製SA6D125-H1形だが、出力が 330PS/2,000rpm に強化されている。
- 車内配置がセミクロスシートからバケットタイプのロングシートとなった。
3次車(300番台)
1993年(平成5年)から1995年(平成7年)にかけて製造されたグループで、59両が製作された最大グループとなっている。
0番台との差異は車内が200番台同様のクロスシートに戻された程度で、他の仕様は0番台と同じ。
改造
新造後、以下の改造が行われた。下記のほか、スカートの延長工事、気笛の変更、ウィンドウォッシャーの取り付け、列車接近警報装置の取り付けなどが一部の車両で行われている。
トイレ設置工事
コスト削減のため、新製時からトイレが設置されなかった。乗客に対しては行き違い待ちなどでの停車中に駅トイレを利用するように促す策が取られた(実際に当時の車内では『トイレのある駅』の掲示があった)が、乗り通すと長時間の乗車となる上に運行本数が少ない路線が多く、苦情が絶えなかったことから2004年6月より順次トイレ設置改造が行われ、2007年3月末までに、全車両に洋式トイレが設置された。汚物処理装置は床下への取り付けができなかったため、床上に設置されている。このトイレは鍵をかけるとゆっくりと泡が流れていき、センサーに手をかざすと水で洗浄する仕組み[2]となっている。また、車内とを隔てる壁を取り外せば側面からもトイレに進入できる構造としているため、比較的壁が薄くなっている[3]。そのためトイレ用擬音装置も設置されている。
トイレ設置により、客室内に死角ができることから運転室後方にルームミラーが取り付けられた。また、トイレが設置された場所にあった窓はステンレス板(ステンレス製車両)または鋼板(普通鋼製車両)で塞がれた。
このうち越美北線用の車両は、福井豪雨からの復旧工事中に設置されてトイレ設置改造後も運用区間が短いことや孤立区間にある越前大野駅構内に汚物抜き取り設備がないことを理由に「このトイレは使用できません」と表記された貼り紙がされて使用できなかったが、2007年6月30日の全線復旧以降は使用可能となった。
運転記録装置取り付け工事
JR福知山線脱線事故の調査報告書に対する建議の対策として、運転状況記録装置の取り付けが行われている[4]。装置本体は冷房ダクトとの位置関係から、トイレ前に床置きされている。配線を引き通すためトイレ設置工事の際と同様に窓が塞がれている。
なお、この工事に関連して車掌用のドア開閉スイッチがこの装置内に移設されている。
ドア誤扱防止システムの取り付け工事
超音波センサーでホームを検知して、ワンマン運転中に運転士がホームと反対側のドアを誤って開扉しないようにするための装置で、スカートの裏側にセンサーを左右両側、計4か所取り付けられている。2009年2月より亀山鉄道部に所属しているすべての車両に装備される工事が行われ[5]、2011年以降は他線区の車両でも順次取り付け工事が行われている。
- DC120-22.jpg
トイレが追加された0番台。板でふさがれた窓の部分にトイレがある。
- キハ120系300番台の運転台.JPG
300番台の運転台
- JRW kiha120 208 cockpit.jpg
200番台の運転台周辺
- Kiha120 208 interior 20070321.jpg
200番台の車内
- Kiha120 sensor.JPG
ドア誤扱い防止システムのセンサー
車両配置と運用線区
2012年4月1日現在の車両配置は下記のとおり[6]。岡山気動車区所属の車両を除いて基本的に鉄道部単位での運用となっている。国鉄キハ40系気動車などの従来型気動車とは、総括制御を行うことができないため、従来車とは完全に分離された運用が組まれている。
近畿統括本部管内
亀山鉄道部に0番台8両と300番台6両が配置され、関西本線亀山駅 - 加茂駅間で運用されている。2001年3月までは木津駅を経由して奈良駅まで入線していたこともあった。基本的に1両であるが、一部の列車が2両編成で運転されている。
塗色は前面と屋根・裾部に紫。
- WestJapanRailwayCompanyType120Kameyama.jpg
300番台
金沢支社管内
敦賀地域鉄道部に200番台5両が、富山地域鉄道部富山運転センターに300番台14両が配置されている。
敦賀地域鉄道部所属の車両は越前大野鉄道部から福井地域鉄道部を経て移管された車両で、越美北線全線と、北陸本線越前花堂駅 - 福井駅間で運用されている。平日の上り列車1本のみ3両で、そのほかは基本的に1両であるが、一部の列車が2両編成で運転されている。車体塗装は、もともとの塗色は白地に緑のグラデーションのブロックパターンであったが、3両はラッピング車両となっており、それ以外の車両は朱色5号に塗装変更され[7]、越美北線のオリジナルカラーが消滅した。
富山運転センター所属の車両は富山地域鉄道部管内の高山本線猪谷駅 - 富山駅間と、糸魚川地域鉄道部管内の大糸線糸魚川駅 - 南小谷駅間で運用されており、高山本線用11両と大糸線用3両に区別されている。2011年3月12日以降、JR西日本高山本線の普通列車は基本的にこの車両で運転されている。
高山本線では、平日ダイヤの朝に3両・4両編成で運転される列車があり、日中は1 - 2両編成で運転されている。高山本線用の塗色は窓上に緑、腰部に赤と黄のストライプで前面は富山側が朱色、猪谷側が緑となっているが、このうち2両は観光用ラッピングが施されている。かつては東海旅客鉄道(JR東海)高山駅まで入線していたこともあった(JR東海区間は車掌乗務。テンプレート:要出典範囲)。また、富山ライトレールに移管される前の富山港線でもワンマン運転を実施するために日中に運用されていた。
大糸線ではキハ52形の老朽化に伴い、2010年3月13日のダイヤ改正から運用開始した[8]。1両で運転されている。大糸線用の塗装は岡山気動車区の車両と同様で、塗色は窓上下に黄色、腰部にピンクのストライプである。
- WestJapanRailwayCompanyType120Echizenono.jpg
200番台(福井所属・旧塗装)
- キハ120-203.jpg
200番台(福井所属・新塗装)
- JR DC Kiha120-318.jpg
300番台(富山所属・高山線向け)
- JRW kiha 120 20100325 kubiki-ono nechi.jpg
300番台(富山所属・大糸線向け)
- JRW DC kiha120-346 349 345 side.jpg
富山所属・観光用ラッピング(左)
米子支社管内
木次鉄道部に200番台3両と0番台5両が、浜田鉄道部に300番台の14両が配置されている。
木次鉄道部の車両は200番台・0番台の共通運用で木次線全線と、山陰本線松江駅 - 宍道駅間で運用されている。4両編成(このうち3両は回送)が最長で、このほかは基本的に1両であるが、一部の列車が2両編成で運転されている。塗色は、200番台がベージュ地に窓周りがオレンジ、腰部が緑の塗り分けである。0番台は200番台に準じた塗装で、前面ベージュ地にオレンジと緑のストライプである。
浜田鉄道部の車両は山陰本線出雲市駅 - 益田駅間および三江線全線で運用されている。塗色は窓上に赤、窓下に濃淡2色の青帯、前面が白。
- JRW kiha120 206.jpg
200番台(木次所属)
- Kiha120 kisuki1.JPG
0番台(木次所属)
- JR west-dc120 308.jpg
300番台(浜田所属)
岡山支社管内
岡山気動車区に300番台16両が在籍している。
で運用されている。 運用は、基本的に1両であるが、津山線など一部の運用では、2両編成である。 塗色は窓上下に黄色、腰部にピンクのストライプである。
- West Japan Railway - Series Kiha 120-300 - Tsuyama Color - 01.JPG
300番台
広島支社管内
下関総合車両所に0番台9両と300番台9両が配置されている。このうち0番台1両と300番台9両が広島支所に、0番台8両が新山口支所に配置されている。
広島支所の車両は三次鉄道部に常駐しており、芸備線広島駅 - 備後落合駅間(主に三次駅 - 備後落合駅間)および福塩線府中駅 - 塩町駅間で運用されている。基本的に1両であるが、広島駅 - 三次駅間は2両編成で運転されている。車体塗色は、前面は灰色がベースになっており、貫通扉の上部は黒、前照灯の周辺部は青紫と青色で、側面も同様である。テンプレート:要出典
新山口支所の車両は長門鉄道部に常駐しており、山陰本線益田駅 - 長門市駅、山陰本線仙崎支線長門市駅 - 仙崎駅間および美祢線全線で運用されている。基本的に1両であるが、一部の列車が2両編成で運転されている。車体塗色は、前面は灰色がベースになっており、貫通扉の上部は黒、前照灯の周辺部は青色・桃色・黒色で、側面も同様である。
- Kiha120-6-FukuenColor.jpg
0番台(広島配置)
- JRW DC kiha120-323.jpg
300番台(広島配置)
- JR West Kiha 120-20.jpg
0番台(下関配置)
脚注
参考文献
テンプレート:JR西日本の車両リスト- ↑ データで見るJR西日本 - 西日本旅客鉄道、p.119
- ↑ センサーに手をかざさなくても、開錠すると同時に便器洗浄される。ただし、使用前には施錠する必要がある。
- ↑ 故障時などでトイレを使用禁止とする際は、壁に付けられている鍵を開錠した上で壁を取り外し、室内から扉を施錠する。
- ↑ テンプレート:PDFlink - 西日本旅客鉄道 p.4
- ↑ テンプレート:PDFlink - 西日本旅客鉄道 p.27
- ↑ テンプレート:Cite journal
- ↑ 【JR西】越美北線キハ120-201、朱色塗装で出場 - 鉄道ホビダス ネコ・パブリッシング RMニュース 201年4月21日
- ↑ テンプレート:PDFlink - 西日本旅客鉄道金沢支社プレスリリース 2009年12月18日