福岡市地下鉄七隈線
|} 七隈線(ななくません)は、福岡県福岡市西区の橋本駅から同市中央区の天神南駅までを結ぶ福岡市交通局が運営する地下鉄路線である。「福岡市交通事業の設置等に関する条例」による路線名は3号線、鉄道要覧記載の路線名は3号線(七隈線)。ラインカラーはテンプレート:ColorboxDIC-2568(系統色名:青みの緑)[1]。
2012年現在、天神南駅から博多駅までの区間が事業中であり、2020年度に開通する予定である。
概要
これまで軌道系交通機関が無かった福岡市西南部と同市の都心部を結ぶ路線として計画され、日本で4番目に開業した鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄である。都心部では1975年に廃止された西鉄福岡市内線が走っていた城南線の地下を通っている。沿線に中村学園大学、福岡大学などの大きな大学があり、朝夕のラッシュ時に都心へ向かう通勤客と反対の方向にも通学客を中心に利用が多い路線である。沿線の大学への通学利用が多く、講義開始時・終了時には、七隈線車内が混雑(天神南 - 福大前間)している。
開業時からすべての駅にホームドア(三菱電機製[2])が設置されている。また、券売機や改札機など駅の諸施設に徹底したユニバーサルデザインが取り入れられている。2005年には、「地下鉄七隈線トータルデザイン」に対して日本サインデザイン協会のSDA大賞が、同「音サインシステム」に同SDA賞奨励賞が与えられている。2006年には、七隈線車両に対して鉄道友の会からローレル賞が与えられている。2010年には、同「トータルデザイン」に対して土木学会デザイン賞優秀賞が与えられている[3]。
リニアモーターミニ地下鉄では車両基地も含めて全線地下にするケースが多いが、当線の橋本車両基地は地上に設置され、非営業区間ながら初の地上区間となった。
愛称について
「七隈線」の愛称は一般公募されたもので、公募順位第1位は「城南線」(886件)、公募順位第2位「福大線」(731件)、公募順位第3位「七隈線」(263件)だった[4]。
公募で第3位であった「七隈線」が選ばれた理由としては、「七隈」が鎌倉時代から続く歴史的な地名であること、七隈が路線の中央に近いことなどが挙げられている[4]。
路線データ
運行形態
平日は朝ラッシュ時4分間隔、昼間7.5分間隔、夕方6分間隔で、土曜・休日は終日7.5分間隔で運転される。
車両
急曲線・急勾配に対応した鉄輪式リニアモーターを採用しているテンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。自動列車運転装置(ATO)によるドライバーレスシステムを採用しているため、乗務員は不要となっているが、緊急時のための運転装置は装備している。車内には、走行位置をランプで示す電子式路線図や、次の停車駅名を表示する電光掲示板、動画映像を放映する液晶テレビモニターが備え付けられている。
なお、進行方向と逆の運転席は開放されており、自由に座ることができるテンプレート:Sfn。ただし運転装置はカバー内に収納されるテンプレート:Sfn。
利用状況
1994年度(平成6年度)の鉄道事業免許申請時に実施した需要予測調査では、目標年次2006年度(平成18年度)において1日14万9806人の乗車人員を想定していた[5]。その後、沿線開発の状況変化やパーソントリップ調査の結果を踏まえて、2002年度(平成14年度)には目標年次2005年度(平成17年度)において1日11万0957人へと下方修正し[5]、開業から10年後にあたる2015年度(平成27年度)には単年度黒字に転換する計画に修正した[6]。
しかし、開業翌年度の実績値は約4万4千人と、見直し後の予想乗車人員の半分にも満たず、沿線の住宅開発も当初予想ほど進まなかったことなどから利用は低迷している[6]。これを受け福岡市では収支計画の見直しを進め、それまで2009年度(平成21年度)に11万8千人、ピーク時の2034年度(平成46年度)に15万3千人としていた1日の乗車人員数の予測を、2009年度(平成21年度)に6万5千人、ピークは1年早くなり2033年度(平成45年度)で9万1千人へと、下方修正した[6]。
見直しに伴い、七隈線の単年度黒字の達成は2015年度(平成27年度)から2029年度(平成41年度)に、累積赤字の解消時期は2026年(平成38年度)から2069年(平成81年度)へと43年間先送りすることとなった[6]が、変更後、2009年度(平成21年度)に1日6万5千人とした乗車人員数の計画も実際には達成できていない状況である[7]。
開業以降の輸送実績を下表に記す。乗車人員には空港線・箱崎線との乗継人員を含む[8]。また、2004年度(平成16年度)の輸送実績は2005年(平成17年)2月3日の開業から同年3月31日まで計57日間の平均値である[9]。
年度 | 輸送実績 (人/日) |
当初予測 (人/日) |
2009年度見直し予測 (人/日) |
出典・注釈 |
---|---|---|---|---|
2004年度(平成16年度) | 47,784 | - | - | [9] |
2005年度(平成17年度) | 43,697 | - | - | [10] |
2006年度(平成18年度) | 51,909 | - | - | [11] |
2007年度(平成19年度) | 56,530 | - | - | [11] |
2008年度(平成20年度) | 59,683 | - | - | [12] |
2009年度(平成21年度) | 60,976 | 約11万8千 | 65,200 | [7][6][13] |
2010年度(平成22年度) | 62,917 | - | 69,112 | [14][13] |
2011年度(平成23年度) | 66,659 | - | 71,876 | [15][13] |
2012年度(平成24年度) | 68,183 | - | 72,868 | [15][13] |
2013年度(平成25年度) | - | - | 73,874 | [13] |
2014年度(平成26年度) | - | - | 74,893 | [13] |
2015年度(平成27年度) | - | - | 75,927 | [13] |
2016年度(平成28年度) | - | - | 76,831 | [13] |
2017年度(平成29年度) | - | - | 77,745 | [13] |
2018年度(平成30年度) | - | - | 78,670 | [13] |
2023年度(平成35年度) | - | - | 83,092 | [13] |
2028年度(平成40年度) | - | - | 87,088 | [13] |
2029年度(平成41年度) | - | - | 87,854 | [13] |
2033年度(平成45年度) | - | - | 90,988 | [13] |
2034年度(平成46年度) | - | 約15万3千 | 以降前年の水準を維持 | [6][13] |
歴史
- 1971年(昭和46年)3月:都市交通審議会答申第12号において「高速鉄道路線の新設」答申[16]。
- 1986年(昭和61年)3月:第2回北部九州圏パーソントリップ調査において「西南部公共交通施設」提案[16]。
- 1988年(昭和63年)4月:福岡市総合計画において「都心部と西南部を結ぶ新しい交通機関の早期導入を図る。」と記載[16]。
- 1989年(平成元年)10月:九州地方交通審議会答申第4号において「西南部中央部と都心部とを結ぶ都心放射状の鉄軌道系輸送機関の導入について、地元自治体を含め検討を図る。」答申[16]。
- 1992年(平成4年)4月 - 1994年(平成6年)3月:地下鉄3号線に関する本格的な導入計画調査を実施[16]。
- 1994年(平成6年)12月:橋本駅 - 天神南駅間新規補助事業採択[16]。
- 1995年(平成7年)
- 1996年(平成8年)
- 12月:橋本駅 - 天神南駅間着工[16]。
- 1997年(平成9年)1月:橋本駅 - 天神南駅間起工式[16]。
- 2005年(平成17年)
- 1月:橋本駅 - 天神南駅間竣工。
- 2月3日: 橋本駅 - 天神南駅間開業。
- 2009年(平成21年)3月7日: ICカードはやかけん、全駅で導入。
- 2012年(平成24年)6月11日:天神南駅 - 博多駅間鉄道事業許可取得。
- 2013年(平成25年)
- 2014年(平成26年)
- 2月12日:天神南駅 - 博多駅間起工式。
- 2020年度(平成32年度): 天神南駅 - 博多駅間開業予定。
延伸計画
博多駅方面への延伸や、天神南駅から中洲川端駅を経て築港方面を結ぶ計画があり、博多駅方面へは薬院駅(渡辺通一丁目交差点付近)から分岐して結ぶ計画であった[17]テンプレート:Sfnテンプレート:Sfn。博多駅方面への延伸は利用客からも要望が多く、天神南駅から集客力の高いキャナルシティ博多付近を経由して博多駅とを結ぶ構想[18]も浮上した。
2010年1月には福岡市が各ルートについて開業後30年の費用対効果を試算した結果、天神南駅から中洲、キャナルシティ博多付近経由で博多駅まで延伸する案が最大となったことが明らかになった。2月の市議会本会議で報告され、その後事業化が決定された。早ければ国への事業許可申請から10年後の2020年度の開業を見込んでいる[19][20]。2011年7月11日には地元経済界を中心とした「福岡市地下鉄七隈線延伸促進期成会」が結成されている[21][22]。
2011年11月7日の福岡市発表では、延伸線はキャナルシティ博多付近を通り博多駅までの1.4kmの計画とされた。途中駅はキャナルシティ博多近くの祇園町西交差点に、また、博多駅・博多口駅前広場の、地下25メートルの深度に新駅が、それぞれ建設される予定。また、延伸線の開業予定は2020年とされた[23]。同年24日に閣議決定された2012年度政府予算案で延伸のための調査費が盛り込まれ事業化に一定のめどが付き[24]、2012年6月11日に鉄道事業許可を取得した[25]。
駅一覧
- 全駅福岡県福岡市に所在。
- 開業時より現場的業務は委託され、正規職員は助役以上の職員のみであるテンプレート:Sfn。
- シンボルマークの由来については各駅の記事を参照。
- 駅ナンバリングは、2011年3月上旬までに順次導入。
駅番号 | 駅名 | 駅間営業キロ | 累計営業キロ | 接続路線 | シンボルマーク | 駅識別カラー | 所在地 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
N01 | 橋本駅 | - | 0.0 | 飯盛山とモミジ | テンプレート:ColorDIC-121 | 西区 | |
N02 | 次郎丸駅 | 1.0 | 1.0 | ホタル | テンプレート:ColorDIC-641 | 早良区 | |
N03 | 賀茂駅 | 0.7 | 1.7 | ナマズ | テンプレート:ColorDIC-455 | ||
N04 | 野芥駅 | 0.9 | 2.6 | 水上に浮かぶツバキ | テンプレート:ColorDIC-2486 | ||
N05 | 梅林駅 | 0.8 | 3.4 | 梅の花とつぼみ | テンプレート:ColorDIC-50 | 城南区 | |
N06 | 福大前駅 | 0.9 | 4.3 | トンビと学生帽 | テンプレート:ColorDIC-641 | ||
N07 | 七隈駅 | 0.6 | 4.9 | 六角形の車7つ | テンプレート:ColorDIC-455 | ||
N08 | 金山駅 | 0.8 | 5.7 | 三角形(「金」の図案化)と虹 | テンプレート:ColorDIC-121 | ||
N09 | 茶山駅 | 0.8 | 6.5 | 茶の新芽 | テンプレート:ColorDIC-2554 | ||
N10 | 別府駅 | 1.0 | 7.5 | 別府大橋跨線橋と雲 | テンプレート:ColorDIC-641 | ||
N11 | 六本松駅 | 0.8 | 8.3 | 松の木 | テンプレート:ColorDIC-2554 | 中央区 | |
N12 | 桜坂駅 | 0.9 | 9.2 | 桜の花びら | テンプレート:ColorDIC-50 | ||
N13 | 薬院大通駅 | 1.0 | 10.2 | ゾウと花 | テンプレート:ColorDIC-121 | ||
N14 | 薬院駅 | 0.6 | 10.8 | 西日本鉄道:天神大牟田線 | 乳鉢と乳棒 | テンプレート:ColorDIC-2554 | |
N15 | 渡辺通駅 | 0.5 | 11.3 | チンチン電車 | テンプレート:ColorDIC-2486 | ||
N16 | 天神南駅 | 0.7 | 12.0 | 福岡市地下鉄:テンプレート:Color空港線(天神駅) 西日本鉄道:天神大牟田線(西鉄福岡(天神)駅) |
「通りゃんせ」で遊ぶ子供 | テンプレート:ColorDIC-50 | |
未開業区間 | |||||||
新駅(名称未定) | 博多区 | ||||||
博多駅 | 13.6 [25] |
福岡市地下鉄:テンプレート:Color空港線 九州旅客鉄道:九州新幹線・鹿児島本線・篠栗線(福北ゆたか線) 西日本旅客鉄道:山陽新幹線・博多南線 |
駅の業務は、天神南駅 - 薬院駅の各駅が日本通運福岡支店[26]、金山駅 - 橋本駅の各駅がジェイアール西日本福岡メンテック[27]に委託されている。
脚注
参考文献
関連項目
- 日本の鉄道路線一覧
- 和田毅 - 福岡ソフトバンクホークスの投手。七隈線のイメージキャラクター