メカゴジラの逆襲

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テンプレート:Infobox Filmメカゴジラの逆襲』(メカゴジラのぎゃくしゅう)は1975年(昭和50年)3月15日に公開された日本映画で、「ゴジラシリーズ」第15作。製作は東宝映像カラーシネマスコープ。上映時間は83分。観客動員数は97万人。

概要

前作『ゴジラ対メカゴジラ』で初登場し人気となったメカゴジラをメインタイトルに据えて再登場させた作品。前作では敵怪獣はメカゴジラのみで、さらにゴジラにはアンギラスキングシーサーという味方怪獣もいたが、本作ではゴジラだけで強化改造されたメカゴジラとチタノザウルスの2体を相手にする。

ゴジラ映画でタイトルにゴジラ以外の怪獣のみが入るのは『ゴジラ FINAL WARS』までの28作品のうち、本作のみである[1]。公開当時のポスターではメカゴジラシリーズ第2弾とも記述されている[2]。前作と併せ、メカゴジラ関連の玩具やキャラクター商品も多数販売され、当時のメカゴジラの人気がうかがい知れる事例となっている。

シリーズを追うごとに子供向けのヒーロー路線をたどっていき、特に本作の「チタノザウルスに踏みつぶされそうになる子供がゴジラに助けを求めるというシーンがそれを如実に表している。本作の劇場パンフレットで監督の本多猪四郎はその要因として、子供のファンからの「悪者にされてゴジラがかわいそうだ」、「ヒーローのゴジラを観たい」との多数の意見があったことを挙げている。

敵役であるメカゴジラとチタノザウルスの街を襲撃するシーンなどが目立っているが、その一方で主役であるゴジラは若干影が薄い存在となっている。これらは当時怪獣映画が斜陽期に差し掛かっていたことを象徴している。実際に、本作が公開された1975年は、洋画興行収入が邦画興行収入を越えた年であり[3]、怪獣ブームも海外のSF映画の影響で下火になり始める。

一方で、本作は田中友幸が観客動員を増やそうとして、大人向きに「初期のゴジラシリーズの雰囲気」を再度描くことを試みた[3]。そのため、リアリティを追求した本多猪四郎が監督に復帰。サイボーグ少女・桂の、人間としての感情と冷たい機械の挟間での葛藤が盛り込まれた、全体的に重い人間ドラマの部分を強調した作劇がなされた。

本多猪四郎による特撮映画の監督は『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』以来5年ぶりの作品となる。本作は本編班と特撮班とに分けずに、一班体制で制作が行われ、円谷組特撮カメラマンだった富岡素敬が、本編カメラマンを兼任している。脚本はコンテストによって高山由紀子の脚本が選ばれ[3]、本作はゴジラシリーズで初めて主要スタッフに女性が加わる作品となった。本作は本多が監督した最後の映画作品となり、これ以降は黒澤明監督に請われ、黒澤作品の演出補佐を務めた。

特撮面では、予算不足から前作ではほとんど描かれなかった都市破壊シーンが復活し、本多監督の巨大怪獣映画では必ずと言っていいほど見られる、群衆の避難シーンも描写された。自衛隊の出動、怪獣との交戦シーンも復活したが、メーサー光線車などのいわゆる「超兵器」の類はほとんど登場しない。架空の兵器としては対チタノザウルス用の超音波発信器が登場するが、搭載するプラットフォーム深海探査艇ヘリコプターなど、実在、または実在する機体をモデルとした機材となっている。

キャスティングでは、前作に引き続き平田昭彦が出演。前作の宮島博士や、第1作『ゴジラ』の芹沢博士とは対極に位置するマッドサイエンティスト的な役柄で登場した。

劇中音楽は、第1作ほか数多くのゴジラシリーズ作品を担当した伊福部昭。本作では、第1作目(1954年)のメインタイトルとして使われた曲が、かなりの編曲はなされているがメロディはほぼそのままでゴジラのテーマ曲として使われている[4]

本作はゴジラシリーズ観客動員数のワースト記録である97万人[5]を記録し、これを受けた東宝は、莫大な製作費を必要とする『ゴジラ』シリーズを一時休止させることを決定した。本作を最後にこの「昭和ゴジラシリーズ」は終了し、1979年に一度、映画「ゴジラの復活」が企画され[6]、紆余曲折を経て1984年に公開された『ゴジラ』に始まる「平成ゴジラシリーズ」まで、9年間の休止となった。

アメリカでは、1978年にUPAの手で89分のテレビ映画として配給された。桂の乳房が写るシーンがカットされた他、過去作品の映像で構成されたダイジェストが追加された。その後、ボッブ・コーン・エンタープライズによって劇場公開されたが、子供向け映画にしようとした同社がPG指定をおそれて拳銃が写るシーンも全てカットした[3]

ストーリー

ゴジラに敗れ、海に沈んだメカゴジラの残骸を調査していた潜水艦「あかつき号」が「恐龍」という言葉を残して消息を絶った。それは15年前に学会を追放された真船信三博士が操るチタノザウルスだった。海洋学者の一之瀬は、乗組員の最期の言葉から、15年前に「自らが発見した恐龍を、自由にコントロールしてみせる」として学会から異端と睨まれ、学会を追われたのみならず人間社会からも迫害された真船博士の娘・桂(かつら)と接触を持つが、桂は「父(真船博士)はもう死んだ」と答える。しかし、真船博士の唱えた説と研究に感銘を受けた一之瀬は、その後も桂と出会いを重ねる。そうしていく内に二人の間には、ほのかな恋愛感情が芽生えていく。だが、遅すぎた理解者と社会からも迫害された研究者の娘、この二人の出会いが新たな災いの火種となる事を、当の二人は知る由も無かった。

ブラックホール第3惑星人は真船博士と手を組み、博士の協力のもと天城山中の秘密基地でメカゴジラを修復し、メカゴジラIIとして蘇らせていた。そして恐龍コントロール装置実験中の事故によって死んだ桂をサイボーグとして蘇らせてメカゴジラと同調させ、真船親子を追放した人間社会に対する怒りをそのままメカゴジラの怒りとして利用しようとする。

翌日、横須賀に上陸したチタノザウルスと戦うゴジラだが、チタノザウルスの尻尾の起こす強風に苦戦を強いられる。さらにメカゴジラIIまで現れ、圧倒的に不利な戦いになり、メカゴジラの新必殺兵器・回転ミサイルの威力に前に、ついにゴジラは生き埋めにされてしまう。一方、インターポールは真船博士の足跡を追い、ついに宇宙人の基地を突き止めた。一之瀬は真船邸へ向かい、桂を説得しようとする。果たして戦いの結末は……。

登場キャラクター

登場怪獣はゴジラメカゴジラチタノザウルス

キングギドララドンマンダキングシーサーが過去の映像の流用で登場した。

ブラックホール第3惑星人

前作にてメカゴジラを操り地球征服を企んだ宇宙人だが、素顔は猿ではなくケロイド状の顔となっており、ユニフォームは前作と異なりアンテナのようなものが付いたヘルメットを被っている。隊長ムガールは地球人に変装した顔は前作の黒沼とほぼ同じだが、黒沼にあった左目尻のアザがない。彼等によれば「ブラックホール第3惑星の破滅が近づいている」とされ、それが地球侵略の理由と思われる。捕えた地球人の喉を潰し、強制労働をさせている。「あかつき1号」の乗組員と「あかつき1号」に搭乗していたインターポールの捜査官・草刈も捕え、労働させていたが、草刈は逃走したために殺害された。

新天城に地底基地を建造し、前回ゴジラに破壊されたメカゴジラの残骸を改修して2号機(メカゴジラII)を造り上げた。さらに地球人に恨みを持つ真船博士を利用するべく近づき、かつて事故死した真船博士の娘の桂をサイボーグとして再生させて博士の信用を得、さらに桂にメカゴジラIIのコントロールシステムを埋め込み、メカゴジラをより完璧な存在にしようとした。そして真船博士の操る怪獣チタノザウルスと共にメカゴジラで横須賀への攻撃(その際、天城の基地を捨て真船邸に拠点を移した)を手始めに地球侵略作戦を実行に移す。計画は当初こそ上手く行き、両怪獣の猛攻で自衛隊とゴジラを徹底的に追い詰めるが、津田副官が一之瀬に倒され、博士はインターポール捜査官の村越に銃殺され、メカゴジラの機能を停止しようとする桂が自決し、地球人を奪還されるなどの要因によりメカゴジラとチタノザウルスが次々と戦闘不能に陥り、計画は土壇場で頓挫する。侵略が失敗したムガールは相模湾の海底に隠していた3機の円盤に乗って宇宙へ逃げようとしたが、ゴジラの放射熱線ですべて撃墜された。

まだ若かりし日の真船博士に接近して桂を再生するなど、前作とあわせて相当長期間、地球に潜入・活動していた気配がうかがえる。ムガールも部下も、そろって地球人の原始的な文明や交通機関、東京の町並みの汚さを嘲笑しており、既に占領後の都市計画すら用意していた。真船博士には協力の見返りとして、占領・再開発後の「新しい東京1番地」に親子で暮らす豪邸を用意すると約束していた。

  • ラストで登場する宇宙円盤は、1尺サイズのミニチュアが作られた。劇場ポスターにはこの円盤ではなく、『怪獣大戦争』に登場したX星人の円盤が描かれている。
  • DVD特典の「これがブラックホール第三惑星人だ!!」では、黒沼とムーガルや前作に登場した柳川(R1号)が、睦五朗草野大悟に酷似していることをムガール(声:倉敷保雄)自らが述べている。

サイボーグ少女・桂

恐龍(チタノザウルス)へ超音波を送る実験を行った際(時期は前作以前)に事故死した直後、ブラックホール第3惑星人の手によってサイボーグへ改造された真船博士の娘。当初はチタノザウルスを操る目的のみであったが、メカゴジラIIの完成と同時に再改造を施され、そのコントロール装置を埋め込まれた。

本公開時の宣材写真では、銀ラメの衣装を着けた桂がゴジラやチタノザウルスの横で鞭を手に構えているものがあるが、劇中ではこのような鞭を使う描写は無かった。本作のオーディション当時、藍とも子は特撮テレビドラマ『ウルトラマンレオ』(TBS円谷プロ)にMACの松木晴子隊員役で出演中であったため[7]、MAC隊員服のままでオーディションを受けている。

桂の手術シーンでは特殊造形による彼女の乳房が映るが、作り物とはいえ女性の乳房が映るのは、ゴジラ映画では唯一である。『EXテレビ』でゴジラ特集が組まれた際には、これを当時の他社のロマンポルノ路線の影響ではないかとの説が唱えられていた。1955年6月に海上日出男による初の総天然映画を予定していた検討用脚本『ゴジラの花嫁』にも、同様のシーンが存在する[8]

登場メカニック

あかつき号
海洋開発研究所所属の海洋調査艇。海底調査用の音波測定器を搭載している。1号は沖縄に沈んだメカゴジラの残骸を調査している最中にチタノザウルスに襲われて沈没した。その後チタノザウルスを調査するために、改良した音波測定器を搭載した2号が開発された。

スタッフ

本編

特殊技術

キャスト

テンプレート:要出典範囲

映像ソフト化

  • DVDは前作『ゴジラ対メカゴジラ』とともに、『ゴジラ×メカゴジラ』の公開時期に合わせて2002年11月21日発売。字幕表示では、差別用語の部分を使わないよう配慮されている。真船博士の「私をキチガイ扱い…」というセリフが「私のことを信じず…」に変えられている。
    • 2008年3月28日発売のトールケース版「ゴジラ DVDコレクションIII」に収録されており、単品版も同時発売。
    • 2005年4月22日発売の「GODZILLA FINAL BOX」に収録されている。

脚注

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同時上映

漫画化作品

関連項目

参考文献

  • 『大ゴジラ図鑑1・2』(ホビージャパン)
  • 『特撮魂 東宝特撮奮戦記』(洋泉社)
  • 『東宝特撮怪獣映画大鑑』(朝日ソノラマ)

外部リンク

テンプレート:ゴジラ テンプレート:本多猪四郎監督作品

テンプレート:Asbox
  1. タイトルに「ゴジラ」の3文字こそ入っているものの、ゴジラ自身のことではない。
  2. テンプレート:Cite
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 デビット・キャリシャー「社会的に観たゴジラ映画 -日米を通して-(上)」 『福岡市総合図書館研究紀要』第4号 2004年
  4. 本来のテーマ曲「ゴジラの猛威」は未使用。
  5. 第1作『ゴジラ』の約10分の1の動員数である
  6. テンプレート:Cite
  7. チタノザウルスのスーツアクターであった二家本も、同じく『ウルトラマンレオ』でウルトラマンレオのスーツアクターを担当している。
  8. 2010.新・東宝特撮未発表資料アーカイヴ
  9. オープニングクレジットでは「メカゴジラ」と表記。