トウモロコシ
トウモロコシ(玉蜀黍、学名 Zea mays)は、イネ科の一年生植物。穀物として人間の食料や家畜の飼料となるほか、デンプン(コーンスターチ)や油、バイオエタノールの原料としても重要で、年間世界生産量は2009年に8億1700万トンに達する。世界三大穀物の一つ。
日本語では地方により様々な呼び名があり、トウキビまたはトーキビ(唐黍)、ナンバ、トウミギ、などと呼ぶ地域もある(詳しくは後述)。
コーン (corn) ともいう。英語圏ではこの語は本来穀物全般を指したが、現在の北米・オーストラリアなどの多くの国では、特に断らなければトウモロコシを指す。ただし、イギリスではトウモロコシを メイズ(maize) と呼び、穀物全般を指して コーン(corn) と呼ぶのが普通である。
目次
植物の特徴
イネ科の一年草で、高さは 2m に達する。イネ科としては幅の広い葉をつける。
発芽から3ヶ月程度で雄花(雄小穂)と雌花(雌小穂)が別々に生じる。雄小穂は茎の先端から葉より高く伸び出し、ススキの穂のような姿になる。雌小穂は分枝しない太い軸に一面につき、包葉に包まれて顔を出さず、長い雌しべだけが束になって包葉の先から顔を出す。トウモロコシのひげはこの雌しべにあたる。
花粉は風媒され、受粉すると雌花の付け根が膨らみ可食部が形成される。イネ科では珍しく、種子(果実)が熟すと穎の中から顔をだす。種子の色は黄・白・赤茶・紫・青・濃青など。
熱帯起源のため、薄い二酸化炭素を濃縮する為のC4回路をもつC4型光合成植物である。
品種分類
トウモロコシは長い栽培の歴史の中で用途に合わせた種々の品種が開発されている。雑種強勢(異なる品種同士を交配すると、その子供の生育が盛んとなる交配の組み合わせ)を利用したハイブリッド品種が1920年頃からアメリカで開発され、以後収量が飛躍的に増加した。また、近年では遺伝子組換えされた品種も広がりつつある。以下に示すスイートコーンやポップコーンとは種子の性質による分類であり、品種名とは異なる。従ってスイートコーンという品種は存在しない。
- 甘味種(スイートコーン)
- 食用の品種。茹でる、焼く(焼きトウモロコシ)、蒸すなどの調理方法がある。
- 加工食品用の材料でもあり、例えばコーンフレークやコーンミールなどの材料にもなる。種子に含まれる糖分が多く強い甘味を感じるが、収穫後の変質や呼吸による消耗が激しく、夏季の室温では数時間で食味が落ちる。対策は低温管理の徹底か、収穫後直ぐに加熱して呼吸を止めるなどである。
- ベビーコーン(ヤングコーン)
- 生食用甘味種の2番目雌穂を若どりして茹でたもの、サラダや煮込み料理などに用いられる。
- 甘味黄色種
- 実が黄色の甘味が多い品種。
- 甘味バイカラー種
- 実が白、黄色系など色が混ざった混合品種。
- ハニーバンタム
- アメリカより伝来、日本で初めに食された品種。その後、品種改良により「ピーターコーン」が登場して以来、生産が減少し市場流通より姿を消しつつある。
- ピーターコーン
- 粒皮がやわらかく、糖度の高い品種。ハニーバンタムより軟らかく甘味がある。
- ゆめのコーン
- 実が柔らかく糖度の高い品種。生食可能。
- カクテルコーン
- テンプレート:節スタブ
- 甘々娘(かんかんむすめ)
- 糖度が高く、生でも食べられる品種。時間経過による糖度の低下が遅い。しかし発芽率が低く、栽培の難しい品種でもある。
- 甘味白色種
- 実が白色で甘味が多い品種。
- ピュアホワイト
- 甘味が強い品種で生食も可能。
以上に示されているのは色や食味による分類であるが、それらに関る遺伝子については多くが特定されている。甘味に関る遺伝子ではsu遺伝子・se遺伝子・sh2遺伝子などが特に重要で、それらの組み合わせによってはスイート種・スーパースイート種・ウルトラスーパースイート種などのタイプがある。遺伝子の組み合わせによって、糖の含有量や糖の種類(風味)の違いが生まれる。スイート種は缶詰などの加工用で、青果として流通することは殆ど無い。青果としてはスーパースイート種やウルトラスーパースイート種などであるがウルトラスーパースイート種では甘過ぎると感じる人もいる。
- 爆裂種(ポップコーン)
- 菓子のポップコーンを作るのに使用する。
- 馬歯種(デントコーン)
- 通常食用にはしない。主に家畜用飼料やデンプン(コーンスターチ)の原料として使用。
- 硬粒種(フリントコーン)
- 食用・家畜用飼料・工業用原料に主に使用される。
- 糯種(ワキシーコーン)
- 完熟種子表面がワックスしたようにツルツルしているので、この名が付けられた。
- モチトウモロコシの名のとおり、若いトウモロコシは蒸すとモチモチした食感となる。東アジアに多く、日本在来種には白、黄、赤紫(紫モチトウモロコシ:下記外部リンク参照)、黒色などの7種類のモチトウモロコシがある。若いモチトウモロコシの実は蒸して食べると美味だが、完熟させると固くなる。
- 軟粒種(ソフトコーン)
- 子実が軟質澱粉により形成されている。
- ポッドコーン
- 粒がひとつずつ頴に包まれている。
- ジャイアントコーン
- テンプレート:Main
歴史
起源
トウモロコシは他のイネ科穀物と違い、祖先野生種が見つかっていない。トウモロコシの起源には2つの主要な説があるが、どちらにせよ、作物化は他のイネ科穀物よりは困難だったと思われる。
- メキシコからグアテマラにかけての地域に自生していたテオシント(teosinte)[1]、トウモロコシの亜種とされる Zea mays mexicana または Euchlaena mexicana、和名ブタモロコシ)が起源だとする説。ただし、テオシントは食用にならない小さな実が10個程度生るのみで、外見もトウモロコシとは明らかに違う。
- 2つの種を交配させて作り出されたとする説。祖先の候補としては、絶滅した祖先野生種とトリプサクム属 (Tripsacum)、トリプサクム属とテオシントなどがある。
紀元前5000年ごろまでには大規模に栽培されるようになり、南北アメリカ大陸の主要農産物となっていた(ただし、キャッサバを主食としたアマゾンを除く)。新大陸においてはアマランサスやキノアなどの雑穀を除くと唯一の主穀たりうる穀物であり、マヤ文明やアステカ文明においてもトウモロコシが大規模に栽培され、両文明の根幹を成していた。南アメリカのアンデス山脈地域においてもトウモロコシは重要であり、インカ帝国では階段状の農地を建設しトウモロコシの大量栽培をおこなっていた。
伝来
1492年、クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見した際、現地のカリブ人が栽培していたトウモロコシを持って帰ったことでヨーロッパに伝わった。ほぼ即座に栽培が始まり、1500年にはセビリアにおいて栽培植物としての記録が残っている[2]。伝播は急速であり、16世紀半ばには地中海沿岸一帯に広がり、16世紀末までにはイギリスや東ヨーロッパにも広がってヨーロッパ全土に栽培が拡大した。ヨーロッパにおいては当初は貧困層の食料として受け入れられ、それまでの穀物に比べて圧倒的に高い収穫率は「17世紀の危機」を迎えて増大していた人口圧力を緩和することになった[3]。また、大航海時代を迎えたヨーロッパ諸国の貿易船によってこの穀物は世界中にまたたくまに広がり、アフリカ大陸には16世紀に、アジアにも16世紀はじめに、そしてアジア東端の日本にも1579年に到達している。この伝播は急速なもので、1652年にアフリカ南端のケープタウンにオランダ東インド会社がケープ植民地を建設した際には、すでに現地のコイコイ人には陸路北から伝播したトウモロコシが広まっていた。[4]アフリカにおいては伝播はしたものの、19世紀にいたるまではソルガムなど在来の作物の栽培も多かった。しかし19世紀後半以降、鉱山労働者の食料などとしてトウモロコシの需要が増大し、また労働者たちは出稼ぎを終えて自らの村に戻ってきた後も慣れ親しんだトウモロコシの味を好むようになった。さらに、トウモロコシはソルガムよりも熟すのが早いため、従来の端境期においても収穫することができた[5]。このため、特に東アフリカや南部アフリカにおいてソルガムからトウモロコシへの転換が進んだ。しかしトウモロコシはソルガムに比べて高温や乾燥に弱かったため、サヘル地帯などの高温乾燥地帯では旧来の雑穀を駆逐するまでにはいたらなかった[6]。
日本には1579年にポルトガル人から長崎または四国にフリント種が伝わった。本格的に栽培されるようになったのは、明治初期にアメリカから北海道にスイートコーン、デントコーンが導入されてからである。
生産と流通
2009年のトウモロコシ生産量上位10ヶ国 | ||||
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国 | 生産量 (トン) | 備考 | ||
テンプレート:Flag | 333,010,910 | |||
テンプレート:Flag | 163,118,097 | |||
テンプレート:Flag | 51,232,447 | |||
テンプレート:Flag | 20,202,600 | |||
テンプレート:Flag | 17,629,740 | |||
テンプレート:Flag | 17,300,000 | |||
テンプレート:Flag | 15,299,900 | |||
テンプレート:Flag | 13,121,380 | |||
テンプレート:Flag | 12,050,000 | |||
テンプレート:Flag | 10,486,300 | |||
テンプレート:NoflagWorld | 817,110,509 | [A] | ||
無印=公的数字, A = 総計 (公的、半公的、推計データを含む).[7] |
トウモロコシの世界全体の生産量は、2009年に約8億1700万トンで、うち米国が3億3000万トン以上を生産し、4割程度を占め世界最大の生産国となっている。またアメリカは世界最大の輸出国でもあり、シェアは6割を越える。このため、アメリカの主要生産地帯の天候により世界の在庫量・価格が左右される。先物取引の対象ともされている。近年では、病虫害に強くなるように遺伝子組換えを行った品種が広がっている。トウモロコシは雑種強勢であり、これを利用したハイブリッド品種の開発によって収量が急増したが、一代雑種であるため栽培農家は収穫から翌年用の種を準備することができず、種は種苗会社から毎年購入しなければならない。これによって種苗会社は毎年巨大な収益を上げることができるようになり、アグリビジネスが巨大化していくきっかけとなった[8]。20世紀中頃になると、品種改良されたハイブリッド品種による収量増加は先進国から発展途上国へと広がっていった。いわゆる緑の革命である。これによりトウモロコシの生産はさらに増加したが、新品種開発は飼料用トウモロコシが中心であり、穀物として使用される主食用トウモロコシにおいてはさほど進まなかった。このため、トウモロコシを主食とするメキシコやアフリカ諸国においては、トウモロコシの生産性はさほど向上していない。[9]
日本はトウモロコシのほとんどを輸入に依存している。農水省や総務、財務省などの統計上の分類ではトウモロコシとは穀類の事であり、その殆どは飼料として、一部が澱粉や油脂原料として加工されるものである。その量は年間約1600万tで、これは日本の米の年間生産量の約2倍である。日本は世界最大のトウモロコシ輸入国であり、その輸入量の9割をアメリカに依存している。また、日本国内で消費される75%は家畜の飼料用として使用されている。飼料用としては「青刈りとうもろこし」が国内の酪農家などで生産されており、年間450~500万t程の収量があるが、その殆どは自家消費され「流通」していないので統計上自給率は0.0%となる。一方未成熟状態で収穫する甘味種で一般的に小売され家庭や飲食店で消費されるものは統計上「スイートコーン」と呼び、野菜類に分類される。年間国内生産量25~30万tに対し輸入量は2000t前後で推移しており、こちらの自給率は99.9~100%となる。平成22年度のスイートコーン国内総生産量は234700tであり、都道府県別にみると最も生産が多かったのは北海道で107000tにのぼり、国内総生産量の約40%を占めている。次いで生産量が多いのは千葉県の16900t、茨城県の14500t、群馬県の10400t、長野県の9400tの順となっている[10]。
国内で生産されているものは、缶詰めやそのまま食用にされるものがある。遺伝子組換えトウモロコシは、スーパーなどで一般的に市販されている食品に含まれる、植物性油脂、異性化液糖、アルコール、香料、デンプン、果糖などの原料として日本国内で流通している。(表示義務はない)
消費
2007年度のトウモロコシの世界消費は、家畜の飼料用が64%で最も多く、ついでコーンスターチ製造などに用いられる工業用が32%を占め、直接の食用はわずか4%にすぎない[11]。トウモロコシの直接食用としての消費量は、上図のように国によって大きく偏りがある。アメリカや中国のように、大生産国でありながらあまり食用に用いない国も多い。最も食用としての消費が大きいのは、トウモロコシから作るトルティーヤを常食とするメキシコや、サザやウガリといったトウモロコシ粉から作る食品を主食とするアフリカ東部から南部にかけての地域である。
なお、上記のように主食用トウモロコシと飼料用・工業用トウモロコシとは品種が違うため、飼料用トウモロコシの消費を減らして主食用に転用することは一概に可能とも言えない。(主食用を飼料用や工業用に転用することはできる)。かつてケニアで大旱魃が起きた際、アメリカ合衆国がトウモロコシ粉の食料援助を行ったが、その粉がケニアでウガリなどにする食用の白トウモロコシではなく、ケニアでは食用に用いない黄色トウモロコシであったため、ケニア政府が援助をアメリカに突き返したこともあった[12]。
近年、最大の生産国であるアメリカにおいてトウモロコシを原料とするバイオマスエタノールの需要が急速に増大し、エタノール用のトウモロコシ需要は1998年の1300万トンから2007年には8100万トンにまで急拡大した[13]。これによりトウモロコシの需要は拡大したが、一方で生産がそれに追いつかず、これまでの食用・飼料用の需要と食い合う形となったために価格が急騰し、2007年-2008年の世界食料価格危機を引き起こした原因のひとつとなった。
用途
項目 | 分量 |
---|---|
炭水化物 | 16.8 g |
食物繊維総量 | 3.0 g |
水溶性食物繊維 | 0.3 g |
不溶性食物繊維 | 2.7 g |
食用
料理法
トウモロコシの栽培化が行われた中米では、トウモロコシは古来重要な主食作物であった。乾燥した種子は石灰を加えた水で煮てアルカリ処理してからすり潰し、マサという一種のパン生地に加工して、各種の調理に用いられた。代表的なものが、薄く延ばして焼いたメキシコのトルティーヤである。南米のアンデス地域では、アルカリ処理せずに粒のまま煮て食べることが多いが、この地域での主食作物はジャガイモなどの各種芋類がより重要で、トウモロコシは先述したような煮て食べる以外に、発芽させたものを煮て糖化させ、さらに発酵させてチチャという酒にすることが多い[17]。
古くから小麦、雑穀などを製粉して利用してきたヨーロッパやアジア、アフリカなどにトウモロコシが導入されると、やはり製粉して調理されるようになった。米国のコーンブレッドのように水でこねて焼くもの、イタリアのポレンタや東欧のママリガ、東アフリカのウガリやンシマなどのように煮立った湯の中に入れて煮ながらこねあげ、粥や固形状にするもの、中国のウォートウ(窩頭)のように蒸しパン状にするものなどがある。現代の日本ではこうした穀物としての利用はあまりなじみがないが、高度経済成長以前には、山梨県の富士北麓地方など[18]米の収穫量の少ない寒冷地や山間地では、硬粒種のトウモロコシの完熟粒を粒のまま、あるいは粗挽きにしたものを煮て粥にしたり、石臼で製粉して利用していた地域も少なくなかった。ただ、各種製菓会社の販売するスナック菓子には生地にトウモロコシ粉を用いているものがいくつもある。
未熟な穂は、焼いたり茹でたりすることで野菜として利用される。こうした用途には甘味種が供されることが多い。海水浴場の海の家や、縁日の屋台などでは、焼きとうもろこしの名前で醤油をかけて味付けして焼いたトウモロコシを販売している事がある。収穫時の新鮮な味わいは、収穫後数時間しかもたないともいわれる。NHKで2005年に放送されたためしてガッテンによれば、水の状態でトウモロコシを入れて加熱し沸騰後3分から5分茹でるのがもっともおいしいゆで方とされている。
生食については、近年にいたるまで、非常に新鮮な場合に稀に食べることができるという状況であって、それも人が食べて大変おいしいとされる味をだすにいたる品種はなかった。しかし、1990年代後半に現れたパイオニアエコサイエンスの味来(みらい)は糖度が当時の平均的なメロンと同じ12度と同等かそれ以上になる品種もある。
野菜として少々特殊なものにベビーコーン(ヤングコーン)がある。これは生食用甘味種の2番目雌穂を若どりして茹でたもので、サラダや煮込み料理などに用いられる。さらに特殊なものとして、メキシコでは担子菌門に属するクロボキン類の一種であるトウモロコシ黒穂病菌(Ustilago maydis)に感染した穂を「ウイトラコチェ(Huitlacoche)」と呼んで食用としている。
そのほか、食材としての利用は多岐にわたり、コーンスープ(西洋料理のコーンポタージュ・中華料理の玉米羹・粟米羹)、バターコーン、ポップコーン、 コーンフレークなどにする。またコーンパフとしてスナック菓子の原料としても多く用いられている。
トウモロコシの種実には、体内で合成できない必須アミノ酸のひとつトリプトファンが少ない。そのため、古来よりトウモロコシを主食とする地域の南アメリカ、米国南部、ヨーロッパの山間地、アフリカの一部などでは、トリプトファンから体内で合成されるビタミンB群のひとつナイアシンの欠乏症であるペラグラ(pellagra、俗にイタリア癩病)が蔓延し、現在でもこれが続いている地域がある。
食用外
果実(種子・胚芽)
トウモロコシの実は、人間の食用としての他、畜産業での飼料として大量に消費されている。そのほか、デンプン(コーンスターチ)や、サラダオイルなどに用いられるコーン油の供給源としても利用されている。2007年度には、家畜の飼料用が世界総消費の64%、コーンスターチ製造やコーン油などに用いられる工業用が32%を占めた。
トウモロコシからは効率よく純度の高いデンプンが得られるため、工業作物としても重要な位置を占める。胚乳から得られるデンプンは製紙や糊などに使用される他、発酵によって糖やエタノールなど、様々な化学物質へ転化されている。こうして作られるコーンシロップは甘味料として重要である。近年では環境問題や持続的社会への関心から、生分解性プラスチックであるポリ乳酸や、バイオマスエタノールとして自動車燃料などへの用途も広がりつつある。 また、アメリカ合衆国では、飼料用のトウモロコシの実を燃料にする暖房用ペレットストーブが、テンプレート:仮リンクと呼ばれて製造販売されている。
アメリカではバイオマスエタノール用に注目されて価格が急騰し、2008年にはアメリカ国内需要の3割を占めるようになり、ダイズからの転作も進んでいるが、大豆や小麦に比べて成長に水を消費するため、一部の地域で水資源の不足が問題になりつつある。また、エタノールの価格が高いのと対応する機種の少なさによりバイオマスエタノール用の需要が伸び悩み、供給過剰によって生産されたエタノールの価格がガソリン価格の暴騰にもかかわらず横ばいを続けているなどの問題もある[19]。
軸
実を取ったあとの軸(コブ)は、合成樹脂材料のフルフラールやフルフリルアルコール、甘味料のキシリトールなどの製造原料となる。粉砕した粉はコブミールと呼び、きのこの培地、建材原料、研磨材などにも利用されている。 芯が柔らかく円筒形に加工しやすいことから、喫煙具(コーンパイプ)として用いられたことがある。第二次世界大戦戦後処理で連合国軍最高司令官総司令部総司令官の任についたダグラス・マッカーサーの写真でしばしばコーンパイプを手にした姿を見ることができる。
茎・葉
イネ科の植物に言えることであるが、トウモロコシも茎や葉は堆肥の材料に適している。抜いた後放置し、枯れたものを裁断して土にすき込み、肥料として利用することもできる。
種子が硬く色彩の美しいものは包葉を取り除くかバナナ皮のように剥いて乾燥し、観賞用とする。取り除いた包葉も繊維、あるいは布の代用とされる事がある(包葉を使ったバスケットなど)。
花柱
めしべの花柱(ひげ)は、南蛮毛(なんばんもう、なんばんげ)という生薬で利尿作用がある。この利尿作用は、南蛮毛に含まれるカリウム塩による。南蛮毛は、初版の日本薬局方に収載されていた利尿薬「酢酸カリウム」の代用として考え出された[20]。
名称
日本語で標準的に用いられている呼称の「トウモロコシ」という名称は、トウは中国の国家唐に、モロコシは、唐土(もろこし)から伝来した植物の「モロコシ」に由来する。関西などの方言でいう「なんば」は南蛮黍(なんばんきび)の略称であり、高麗(こうらい)または高麗黍と呼ぶ地域もあるが、これらはいずれも外来植物であることを言い表している。これはヨーロッパにおいても同じ状況であり、フランスでは「トルココムギ」、トスカーナでは「シシリーコーン」、シチリア(シシリー)では「インディアンコーン」と呼ばれるなど、おおまかに「外国の穀物」という意味で共通する各種名称で呼ばれていた[21]。
『日本方言大辞典』には267種もの呼び方が載っており、主な呼び方には下記のものがある。
- あぶりき - 福井県大野郡
- いぼきび - 鹿児島県甑島
- うらんだふいん - 沖縄県竹富島(オランダのモロコシの意)[22]
- かしきび - 新潟県中越地方、佐渡など
- きび - 長野県南部、鳥取県、高知県など
- きみ - 北海道南部、青森県、岩手県など
- とっきみ - 秋田
- ときび - 秋田
- ぎょく - 千葉県の一部
- ぐしんとーじん - 沖縄本島南部など
- こうらい - 岐阜県の一部、福井県の一部、三重県の一部、滋賀県の一部
- こうらいきび - 愛知県尾張、岐阜県
- こーりゃん - 香川県大川郡
- さつまきび - 岡山県備前
- さんかく - 熊本県の一部
- せーたかきび - 新潟県の一部、和歌山県日高郡
- たかきび - 鹿児島県種子島
- とうきび・トーキビ - 北海道、山形県北部、石川県、福井県、香川県、愛媛県、山口県西部、九州、群馬県、埼玉県、愛知県奥三河地方など
- (昭和前半期テンプレート:いつまではこの「とうきび」が全国で一般に使われていた。)
- とうきみ - 北海道南部(渡島地方)、山形県南部、福島県西部、群馬県北部など
- とうたかきび - 香川県高見島
- とうとこ - 島根県北部など
- とうなわ - 岐阜県、富山県
- とうまめ - 新潟県上越地方、長野県の一部など
- とうみぎ - 宮城県、福島県、栃木県、茨城県など
- とうむぎ - 栃木県南部
- とうもろこし - 関東地方、沖縄県、島根県東部など
- とっきび - 山形県・秋田県の一部
- なきぎん - 鳥取県の一部
- なんば - 近畿地方、三重県伊賀、岡山県、徳島県など
- なんばと - 愛知県三河
- なんばん・なんばんきび - 愛知県東部、京都府北部、山口県東部など
- はちぼく - 三重県伊勢、岐阜県の一部、滋賀県の一部
- ふくろきび - 長野県の一部、和歌山県の一部
- まごじょ - 宮崎県の一部
- まめきび - 新潟県の一部、岐阜県岐阜市、長崎県の一部など
- まるきび - 岐阜県の一部
- まんまん - 広島県、島根県南部など
- もろこし - 長野県、山梨県など
- やまととーんちん - 沖縄県首里(大和唐黍の意)
- 嫁女黍(よめじょきび) - 広辞苑に記載されている異称
脚注
関連項目
テンプレート:Commons&cat テンプレート:Sister
- ↑ 日本語名は英名の誤読(最後の e は発音しないと考えた)か。テンプレート:Lang-nah > テンプレート:Lang-es > テンプレート:Lang-en (ティオシンテイ、ティオシンティー) > テンプレート:Lang-ja。
- ↑ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p.43
- ↑ 『ヨーロッパの舌はどう変わったか 十九世紀食卓革命』 南直人 講談社選書メチエ 1998年2月10日第1刷 pp.63-66
- ↑ 『新編 食用作物』 星川清親 養賢堂 昭和60年5月10日訂正第5版 p310
- ↑ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p.45
- ↑ 「アフリカ経済論」p152 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
- ↑ テンプレート:Cite web
- ↑ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p.38
- ↑ 「図説アフリカ経済」(平野克己著、日本評論社、2002年)p42-43
- ↑ http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001085177 統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103 平成22年産野菜生産出荷統計内スイートコーン項 2013年2月27日閲覧
- ↑ 「絵で見る 食糧ビジネスのしくみ」p24-25 榎本裕洋、安部直樹著 柴田明夫監修 日本能率協会マネジメントセンター 2008年8月30日初版第1刷
- ↑ 「アフリカを食べる」p54 松本仁一 朝日新聞社 1998年8月1日第1刷発行
- ↑ 「絵で見る 食糧ビジネスのしくみ」p146-147 榎本裕洋、安部直樹著 柴田明夫監修 日本能率協会マネジメントセンター 2008年8月30日初版第1刷
- ↑ http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/
- ↑ [『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007]
- ↑ 五訂増補日本食品標準成分表
- ↑ 「ラテンアメリカを知る事典」p264 平凡社 1999年12月10日新訂増補版第1刷
- ↑ 「飲食事典」本山荻舟 平凡社 p410 昭和33年12月25日発行
- ↑ [1]
- ↑ 伊沢凡人ほか「中国医学の生薬療法と混同されやすいわが国・固有の生薬療法」『保健の科学』2001年、43巻、8号、p607
- ↑ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p43
- ↑ *『沖縄県竹富島の種子取祭台本集 芸能の原風景』全国竹富島文化協会編 2003年瑞木書房