徳川慶喜 (NHK大河ドラマ)

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テンプレート:基礎情報 テレビ番組徳川慶喜』(とくがわよしのぶ)は、NHKにおいて1998年1月4日から12月13日に放送された大河ドラマ第37作目。原作は司馬遼太郎。脚本は田向正健。主演は本木雅弘

概要

原作は司馬遼太郎が、1960年代に執筆した中編小説『最後の将軍 徳川慶喜』(文春文庫ほか)。司馬の原作が短いので、本作では他に、渋沢栄一らが編んだ基礎史料たる『徳川慶喜公伝』(平凡社東洋文庫[1] 全4巻)を参考に、随所で原作以上に用いた。

大河ドラマで、幕末を題材にしたのは、同じ司馬遼太郎原作、1990年の『翔ぶが如く』以来の8年ぶりであった。主演・本木雅弘は、1991年の『太平記』以来で、二度目の大河ドラマ出演で主役抜擢された。脚本は『武田信玄』(1988年)や『信長』(1992年)などを手がけた田向正健

江戸幕府最後の征夷大将軍徳川慶喜が主人公で、主に幕府側の視点から幕末の政治劇を描く。ナレーションを担当したのは大原麗子で、大原演じる新門辰五郎の妻れん(架空人物)が当時を回顧する体で物語を進めていた。江戸っ子のれんが江戸弁で砕けたナレーションを行なうという設定のため、慶喜を「ケイキさん」と呼んだり[2]「これは後から判ったことなんだけど」「ここだけの話なんだけど」「わっちら下々の者は知らなかったんだけど」といったフレーズがよく用いられた。

菅原文太若尾文子杉良太郎らベテラン勢の他、石田ひかり深津絵里ら若手女優を起用して人気確保に努め、また架空人物のエピソードや多面的表現を盛り込むなどしたが、幕末の対立構造の複雑さや、主人公の慶喜の動きの乏しさ、そして数多く登場する架空人物の存在意義の低さなどから、視聴率は伸び悩んだ。一方で、主演の本木は、常にポーカーフェイスで通しクールで聡明、策謀にも長けた慶喜を表現し、その演技に好評価を得た。また慶喜の家臣で、幕末の動乱に巻き込まれていくなど準主役格の活躍を見せる村田新三郎(架空の人物)を、当時はまだ無名に近かった藤木直人が演じている。

慶喜の孫にあたる宣仁親王妃喜久子や、曾孫の徳川慶朝がロケの見学に訪れたことも話題になった。

本作放送以前の1995年12月17日放送の特別番組「さればでござる・全て見せます大河ドラマ」で、「徳川慶喜の生涯をドラマ化して欲しい」という視聴者の要望が伝えられていた。

また大河ドラマの総集編は放送年の年末に放送されるのが恒例だが、この作品に限っては翌年・1999年3月に放送された。VHSビデオ化やDVD化はされていない。再放送は2010年11月から2011年2月にかけてCS時代劇専門チャンネルで行われたのが初めて。なお、総集編はNHKアーカイブスで、本編はNHKオンデマンドの配信で視聴が可能となっている。

題字は主演の本木雅弘が書いたものもあるが、実際の放送では隷書体の題字を使用。本木による題字は番組のガイドブックなどで見ることができる。手製の題字が使用されないのは極めて異例。他には『山河燃ゆ』『北条時宗』の事例がある。

またオープニングでは幕閣などの役名は全て「井伊掃部頭直弼」など、官名を入れて表示している。

平均視聴率は21.1%、最高視聴率は29.7%[3]

テーマ音楽、タイトル映像

音楽に合わせ、農村地帯や下町の情景、庶民の暮らしぶりなどが当時そのままの姿で再現され、写真撮影されて収まるという映像。

一方で、ドラマの最後に主人公・慶喜が家族と写真撮影をしたあと、その後に起こった出来事が明治維新の諸制度改革や西南戦争から平成に至るまで、テーマ音楽に沿って資料写真や映像でフラッシュされ、社会性あるラストとなっており興味深い。因みに最後は「平成大不況」で終わっている。

あらすじ

水戸藩主・徳川斉昭の七男として産まれた七郎麿(後の慶喜)は斉昭による徹底した英才教育を受けたくましく育ち、第12代将軍・家慶の要望を受け、11歳の時、御三卿一橋家を相続する。

1853年黒船来航により日本中が騒然とする中、慶喜は幕閣の期待を一心に集め、第13代将軍・家定の後継として候補に上がる。しかしある一人の男の出現により、慶喜の人生は激変した。大老・井伊直弼である。井伊による安政の大獄において、慶喜は蟄居謹慎に処せられ、将軍後継者は徳川家茂に決定する。

しかし桜田門外の変において井伊が頓死すると (島津久光の建策を受けた)勅命により、慶喜は家茂の後見職に就任。上洛後は宮廷工作に力を発揮し、尊皇攘夷の嵐が吹き荒れる混沌とした時代をその英知によって切り抜けていく。

そんな中、家茂が死去し、秘密裏に結ばれた薩長同盟を中核とする倒幕派が幕府を追い詰める中、慶喜は幕閣からの度重なる将軍就任要請と(孝明天皇から)将軍宣下を受け、遂に第15代将軍に就任。しかし、将軍就任直後に天皇が崩御。幕府、そして日本の命運は慶喜の双肩にかかることになっていく。

登場人物

徳川将軍家・水戸徳川家

主人公。
慶喜の正室。おっとりとした性格で、不安になると気絶してしまうほど気が弱い。
慶喜の父。慶喜を厳しくも温かく見守る。井伊直弼と対立し、隠居謹慎を命じられる。
の名門宮家有栖川宮家出身。斉昭の正室。慶喜の生母。
斉昭の長男。慶喜の同母・長兄。
慶喜の年が離れた異母弟。万国博覧会に参加する。前年の大河ドラマの主演俳優が登場するのは、1990年代の作品では本作が唯一であるが、上記の通り過去の作品の流用であり、公式には中村は出演者としてカウントされていない。
一橋慶寿の後室。慶喜の6歳上の養祖母。の名門宮家伏見宮家出身。慶喜を弟のように可愛がる。
第12代征夷大将軍。
第13代征夷大将軍。
家定の継室。薩摩藩島津家の分家出身。高慢な性格で、慶喜と対立する。
第14代征夷大将軍。
孝明天皇の異母妹。家茂の正室。
和宮の生母。
徳川宗家第16代当主。

慶喜側近

開明論者。慶喜に重用される。

幕閣

反対派の粛清を行う(安政の大獄)が、水戸派の浪士に桜田門外で殺される

諸大名

幕臣

開明論者。官軍の江戸総攻撃・中止に尽力する。
新選組局長。
新選組副長。
新選組隊士。小澤は本作がデビュー作。

各藩藩士

斉昭の腹心。安政の大地震で落命する。
東湖の子。天狗党の乱を起こす。

皇室・公家

各国公使

フランス公使。ナレーションによると「大のおしゃべり」とのこと。

その他

ナレーションも担当。ドラマでは武蔵国生麦の旅籠屋出身。
辰五郎の娘。辰五郎が遊郭でなじみになった遊女との間に生まれた子だが、引き取られて「れん」が我が子同然に育てた。慶喜の妾となって京に同行するが、慶喜が新政府軍に敗れて上野に謹慎すると、辰五郎の元に戻る。

架空人物

幼少期から慶喜に仕える側近。旗本・早川重吉を殺して「みよ」と駆け落ちする。辰五郎の元に身を寄せる。その後に天狗党の乱に加わり、敗走する途中に重吉の弟・良介と戦い相討ちする。
新三郎の妻。出奔した夫を追い続ける。
みよが新三郎との間にもうけた赤子を、略奪してしまう。新三郎死去ののち、みよが後を追おうとするのを阻止。
新三郎の恋人。新三郎とは、橋で佇んでいたところ知り合う。重吉の妾だったが、暴力を振るわれているところを新三郎に救われ、彼と運命を共にする。
新三郎が死亡すると後を追おうとしたが、たみに阻止された。
慶喜付きの老女。毒舌家で、しばしば直子や美賀に意地悪をする。
吉子の側近。水戸藩内の政争を嫌い、中立を保つ。実は人情本の売れっ子作家として名を馳せているが、周囲には伏せている。天狗党の乱で吉子が襲われた時に吉子をかばって負傷。その後本編から姿を消すが、最終回に登場した。
辰五郎の部下。およしに片想いしており、慶喜をあまり快く思っていない。
辰五郎の部下。安政の大地震で義経が片足を失う重傷を負い、間もなく三人揃って暇乞いを出す。
辰五郎の親友。その日の生活にも困っているほど貧しい下級武士。なにかと慶喜に関わり続ける。
れんの兄。生麦村の旅籠の主人。
弘道館の下働き。
幸吉の孫娘。慶喜の侍女で幼馴染同然に育ったが、言われた事を鵜呑みにしてしまう性格が最大の難点。さくらの存在を嫌う直子やその同調者の策略で使いに出され失踪。後に京で芸者となり慶喜と再会する。
旗本。妾・みよを虐待し、これを阻止した新三郎に殺される。
重吉の弟。
吉子の侍女
一橋家用人

スタッフ

放送

放送日程

放送回 放送日 演出
第1回 1月4日 母の不在 富沢正幸
第2回 1月11日 新しい母
第3回 1月18日 黒船が来た
第4回 1月25日 将軍候補 竹林淳
第5回 2月1日 日米和親条約
第6回 2月8日 安政の大地震 谷口卓敬
第7回 2月15日 公家の花嫁 富沢正幸
第8回 2月22日 新婚生活 竹林淳
第9回 3月1日 恋の闇路 富沢正幸
第10回 3月8日 抗争のはじまり
第11回 3月15日 台風の目 谷口卓敬
第12回 3月22日 日米通商条約 竹林淳
第13回 3月29日 幕府の権威
第14回 4月5日 押しかけ登城 富沢正幸
第15回 4月12日 密勅 谷口卓敬
第16回 4月19日 大獄のはじまり 富沢正幸
第17回 4月26日 安政の大獄 竹林淳
第18回 5月3日 桜田門外の変 富沢正幸
第19回 5月10日 父の死 谷口卓敬
第20回 5月17日 慶喜変身 富沢正幸
第21回 5月24日 兄と弟 竹林淳
第22回 5月31日 母と子 吉田雅夫
第23回 6月7日 和宮下向 富沢正幸
第24回 6月14日 久光上洛 竹林淳
第25回 6月21日 将軍後見職 吉田雅夫
第26回 6月28日 生麦事件 富沢正幸
第27回 7月5日 幕政改革 太田光俊
第28回 7月19日 上洛への道 富沢正幸
第29回 7月26日 将軍名代 吉田雅夫
第30回 8月2日 奇策 富沢正幸
第31回 8月9日 孝明天皇の立場 竹林淳
第32回 8月16日 慶喜の悪酔い 太田光俊
第33回 8月23日 池田屋騒動 富沢正幸
第34回 8月30日 御所突入
第35回 9月6日 母の苦悩
第36回 9月13日 仇討ち 吉田雅夫
第37回 9月20日 慶喜の頭痛 訓覇圭
第38回 9月27日 条約勅許 富沢正幸
第39回 10月4日 将軍急死 谷口卓敬
第40回 10月11日 徳川家相続 富沢正幸
第41回 10月18日 将軍慶喜
第42回 10月25日 孝明天皇の死 高橋練
第43回 11月1日 議題草案 富沢正幸
第44回 11月8日 倒幕
第45回 11月15日 大政奉還 篠原圭
第46回 11月22日 小御所会議 富沢正幸
第47回 11月29日 朝敵
第48回 12月6日 恭順謹慎
最終回 12月13日 無血開城
平均視聴率 21.1%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)[3]

総集編

  1. 黒船が来た
  2. 安政の大獄
  3. 蛤御門の変
  4. 大政奉還
  • 総集編はNHKアーカイブスで視聴可能(2024年現在、映像媒体の中で唯一視聴できる)。

ソフトウェア

2010年現在、総集編、完全版ともにソフトウェア化されていない。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目


テンプレート:前後番組 テンプレート:大河ドラマ

テンプレート:司馬遼太郎
  1. 同じ東洋文庫には『昔夢会筆記 徳川慶喜公回想談』(渋沢栄一編・大久保利謙校訂)がある。
  2. 慶喜を「けいき」と読むのは当作品のオリジナルではなく歴史的に根拠がある。
  3. 3.0 3.1 ビデオリサーチ NHK大河ドラマ 過去の視聴率データ
  4. 総集編では篤君