信長 KING OF ZIPANGU

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テンプレート:基礎情報 テレビ番組信長 KING OF ZIPANGU』(のぶなが キング オブ ジパング)は、NHK1992年1月5日から12月13日に放送された30作目の大河ドラマ

概要

安土桃山時代が舞台となるのは1989年の『春日局』以来3年ぶり。織田信長は大河ドラマにおいても『太閤記』(1965年)や『国盗り物語』(1973年)をはじめとする安土桃山時代を扱った作品において度々クローズアップされて数多くの役者によって演じられてきたが、単独のテーマとして扱われるのは本作が初めて(『国盗り物語』でも主演扱いだったが、斎藤道三との途中主役交代であったため、完全な単独主人公ではなかった)。脚本は『武田信玄』(1988年)と同じ田向正健

主演に抜擢されたのは緒形直人で、大河ドラマ出演は1990年の『翔ぶが如く』以来。『太閤記』(1965年)『峠の群像』(1982年)において主演を務めた緒形拳の二男で、親子2代での大河ドラマ主演となった。主役が若いこともあり、菊池桃子仲村トオル的場浩司中山美穂など若手俳優を多数起用した(また、そのキャスティングが少年漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」における読者投稿企画「ジャンプ放送局」で採用された葉書のキャストとほぼ同じ内容)。

緒形直人は『予備校ブギ』などに代表されるように繊細でナイーブな青年役を多く演じてきたため、配役が決定した際は多くのメディアで役柄への懸念が伝えられた[1]。緒形本人も最初オファーをもらった際に、織田信長といえば強くて豪快な人物で、それまで自分がやってきた役と照らし合わせてもイメージが違うのではないかと思ったようである[2]。しかしヒゲをつけかつらをかぶった緒形の信長像は「歴代の信長を演じてきた俳優の中で、歴史の教科書に載っている肖像画に最も似ている」と評された[3]

ポルトガル人のイエズス会宣教師であるルイス・フロイスの視点から織田信長を描くという手法がとられ、劇中でのフロイスをフランス人モデルのフランク・ニールが、日本語によるナレーションをランシュー・クリストフが務めた。ナレーションでは「聞くところによると」というフレーズが特に多用された。また、数多い戦国時代を舞台とした大河ドラマの中でも、とりわけキリシタンの描写に重点が置かれた作品である[4]

時代設定にリアリティを出すため、屋内のシーンは照明を抑えて撮影されていたが、視聴者から「見づらい」「場面が暗すぎる」とのクレームが相次いだこともあり、中盤より通常の明るさに変更された。

またこのドラマのロケのために岐阜県岐阜市に作られた広大なオープンセットも話題になった。1万2千坪の敷地の中に、戦国時代の城郭さながらに長大な土塁や堀や塀をめぐらせ、その内部に那古屋城清洲城岐阜城の大手門や主殿などの建物が配され、城の外には町屋の建物が作られた。これら建物は全て木材で作られるという本格的な仕様で、当時としてはNHK大河ドラマ史上最大規模のオープンセットとなった[5]。 一般公開もされ人気を集めたが、当初から期間限定の公開と決まっていたため、ドラマ終了後に予定通りに取り壊された。

音楽は毛利蔵人が担当。歌詞のあるオープニングテーマは今作が初めてである(作詞は田向正健)。

このドラマの制作にはNHKエンタープライズが関わっており、以後『花の乱』まではNHKエンタープライズと合同で大河ドラマを制作していた。

平均視聴率は24.6%、最高視聴率は33.0%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)[6]

エピソード

テンプレート:出典の明記

  • 台詞の言葉遣い、特に助詞を抜く表現(「戦起これば…」など)は、国語学的にも戦国時代の話し言葉としてはあまりに古めかしく不自然だと指摘されたが、これは訂正される事はなかった。同じ田向脚本の『武田信玄』『徳川慶喜』でも同様の傾向が見られる。
  • 各放送回の最後にはルイス・フロイスがポルトガル語で“Ate breve! Obrigado!”(「また会いましょう。ありがとう」の意。劇中テロップでは「また近いうちに ありがとうございました」と訳されていた)と挨拶した。
  • 明智光秀を演じたマイケル富岡は、台詞こそは日本人レベルの流暢な日本語を話すが、アメリカ人である為出演当時は正座はもちろんのこと、あぐらもかくことができず、苦労していたこともあった。また、本人は、「最初はフランシスコ・ザビエルルイス・フロイス、といった宣教師役が回ってくる」と思っていたことがあり、光秀役に決まったとき、喜びと驚きでいっぱいだった、とコメントしていたことがあった
  • フランク・ニールは、出演が決まったとき、日本語の特訓を開始。そして、クランクアップまで欠かさずに日本語を勉強していたほどだった。
  • ポルトガル語指導担当の安部井シルビアは指導に厳しく、少しでも発音がおかしかったりすれば、中々OKを出さなかったほどだった。本人は当時、貿易商社OLであった。
  • 加納随天を演じた平幹二朗は、ドラマの後半期に失明した随天の気迫や異様さを表現するために、コンタクトレンズを片目に2枚ずつ入れて芝居をした。これは平本人のアイディアであったが、目の痛さは尋常ではなかったようで、過酷な撮影の連続になってしまったという。

ストーリー

尾張国の小領主・織田家の嫡男に産まれた吉法師(後の信長)は、父・信秀の方針により母・るいと引き離されて成長した。母親の愛情に飢え、孤独の中に成長した信長は、周囲からは「うつけ」と見られ、家臣達からは排斥されそうになる。

ライバルであった弟・信行を廃し、桶狭間の戦いで今川義元に奇跡的な勝利を遂げた信長は、新進気鋭の戦国大名として周囲も驚く急成長を遂げ、舅・斉藤道三の敵討ちとして美濃を征服した後に「天下布武」の印を掲げ、「美しき流れを絶やさず新しき国を作るため」、キリスト教や木下藤吉郎(後の羽柴秀吉)のような”新参者”を取り立てる一方、足利将軍家を排斥し、比叡山を初めとする神社仏閣を弾圧、朝廷公家を無視し、家族や古くから仕えてきた家臣すら切り捨てる。

自ら定めた50年の人生が迫るにつれ、天下を統一して世界にも乗り出し「新しき国を作る」目標に燃えた信長は、「自らは神である」という”ふり”すら行うが、その傲慢な振る舞いは次第に心服していた家臣達に不審を抱かせ、思いもかけない終焉を遂げることになったのだった。

キャラクター設定

テンプレート:出典の明記 「美形の」秀吉や家康という異色のキャスティングで臨んだ大河は、登場人物の性格設定も異色であった。

  • 信長正室・帰蝶は、第二の正室として迎えられたしのの存在から、次第に信長とのすれ違いを感じ、に別居。甲州征伐の前、病を潮に信長のもとへ帰って来るも、程なくして本能寺の変を迎える。信長とは相思相愛ながら最後まで分かり合えないと言う微妙な間柄として描かれた。それまでの大河ドラマでは「濃姫」という役名で登場していたが、「帰蝶」という名で登場したのは本作が初めてである。オープニングのクレジットタイトルでも最終回まで「帰蝶」を用いており、役名が「帰蝶」で統一された大河ドラマは本作が唯一となっている。
  • 信長の妹・市は、若き日は信長の子供達をいじめたり、気ままに櫓に上ったりする「驕慢で奔放な美女」、浅井長政死後は兄を猛烈に非難する人物として描かれた。また、お市の方を演じた鷲尾いさ子がモデル出身でかなりの長身だったため「大女のために結婚話がまとまらない」という設定になっていた。
  • 信長側室・なべは、言葉少なに楚々として振る舞う女性として描かれる一方、信長を愛するあまり、長島一向一揆の大量殺戮すら擁護し、信長こそ本当の神だと言い切る人物に設定されていた。またなべは、信長が足利義昭を奉じ上洛する頃に登場し、随天に「織田家を滅ぼす死神」と呼ばれ、特に信長包囲網が結成された時期になると随天は彼女を排除するよう信長に何度も進言するが、信長が窮地を脱するとそのことには触れられなくなった。
  • 明智光秀は、信長から過大な期待を寄せられ、それに応えようとする余り次第にノイローゼに陥り、それが原因となって本能寺の変を起こす、という設定になっていた。そのため本作では、有名な巷説であり、大河ドラマでもたびたび使われる「徳川家康を接待したときに出した料理に信長が難癖を付け、人々が居並ぶ中で体罰をふるわれる」というシーンを始め、信長が光秀を冷遇する描写が出てこなかった。
  • 加納随天は「織田信長の祖父・信定の代から仕える神頼み」という架空人物で、平幹二朗の迫真の演技によって強烈な印象を残す役となった。信長は母・るいとの不倫の関係を罪に問い成敗するが、随天は生存していた。そして信定の「織田家の美しき流れのために必要な人物」という説得を聞き入れ、助命した。以後は、逆に信長にとってその言葉にあえて逆らうことにより乗り越えるべき人物として位置付けられ、信長の興隆と反比例するように失明し、更に足を切断、最期は本能寺で運命を共にした。このドラマの裏の主人公とも言えるキャラクターであった。信長にとって最も敵対する人物とも言えたが、尾張時代からの家臣たちを遠国にやらなければならなかった晩年の信長は、随天を貶めつつも唯一本音で物事が語れる人物として扱うようになっていった。
  • 信長の家臣・内藤勝介は信秀が那古屋城主になった吉法師につけた傅役の1人であるが、本ドラマで若かりし信長が最も心を寄せ、信頼した老臣として描かれている。劇中の内藤は桶狭間の戦いで今川義元の首をあげようと敵陣に斬りこみ、壮絶な最期を遂げているが、実際の内藤は生没年がわからないなど経歴に不詳な点があり、こういった点をふまえてキャラクター設定などがされたと考えられる。
  • 信長の叔父・織田信次は誤って信長の弟を射殺した廉で逐電された人物として知られている。このエピソードも描かれているが、信長に許されて帰参した後も劇中に登場し、織田一族を代表する人物として甥を支える有力な家臣として描かれている。織田家臣が列席する場では信長の叔父らしく、筆頭家老の林通勝などよりも上位にある人物として位置づけられ、周囲からも尊重される立場にあった。史実の信次は天正2年(1574年)、長島一向一揆を殲滅した戦闘で討死にしており、ドラマでもその時期を境に登場しなくなっている。上述の内藤や信次、宇津井健が演じた林通勝など尾張時代の家臣をクローズアップさせた描写は、信長が登場する他の作品ではあまり見られない本ドラマの特徴でもある。

キャスト

織田家

信長の家臣とその関係者

諸大名・武将

その他

架空人物

スタッフ

放送日程

※7月26日は第16回参議院議員通常選挙開票速報のため、休止。

放送回 放送日 演出
第1回 1月5日 ジパング 重光亨彦
第2回 1月12日 親父の死
第3回 1月19日 抗争のはじまり
第4回 1月26日 切腹
第5回 2月2日 まむしの道三
第6回 2月9日 大名への一歩 小松隆一
第7回 2月16日 目には目を
第8回 2月23日 鬼の栖 柴田岳志
第9回 3月1日 道三敗死 重光亨彦
第10回 3月8日 骨肉の争い 小松隆
第11回 3月15日 弟よ 重光亨彦
第12回 3月22日 尾張統一 小松隆一
第13回 3月29日 桶狭間の戦い(前) 重光亨彦
第14回 4月5日 桶狭間の戦い(後)
第15回 4月12日 家庭の問題 柴田岳志
第16回 4月19日 神の戦士たち 重光亨彦
第17回 4月26日 妖怪のクリスマス 小松隆一
第18回 5月3日 和平同盟
第19回 5月10日 信長北上 重光亨彦
第20回 5月17日 伴天連フロイス 小松隆一
第21回 5月24日 将軍暗殺 重光亨彦
第22回 5月31日 美濃攻略 加賀田透
第23回 6月7日 京への道 小松隆
第24回 6月14日 天下布武 重光亨彦
第25回 6月21日 野望 岡田健
第26回 6月28日 信長を見た 重光亨彦
第27回 7月5日 対決
第28回 7月12日 人の恨み 小松隆
第29回 7月19日 姉川の合戦 重光亨彦
第30回 8月2日 死神 小松隆
第31回 8月9日 比叡山焼き打ち 柴田岳志
第32回 8月16日 随天 重光亨彦
第33回 8月23日 信長包囲作戦 古川邦夫
第34回 8月30日 四面楚歌 小松隆
第35回 9月6日 足利幕府滅亡 重光亨彦
第36回 9月13日 浅井朝倉攻め 岡田健
第37回 9月20日 天下を取る 重光亨彦
第38回 9月27日 長篠の戦い
第39回 10月4日 家督譲与 小松隆
第40回 10月11日 夢の城 重光亨彦
第41回 10月18日 伴天連決死行
第42回 10月25日 悪い噂 小松隆
第43回 11月1日 家康の悲劇
第44回 11月8日 余は神である 重光亨彦
第45回 11月15日 地球は丸い
第46回 11月22日 安土山神学校
第47回 11月29日 全国平定作戦
第48回 12月6日 キングオブジパング
最終回 12月13日 本能寺の変
平均視聴率 24.6%(視聴率は関東地区ビデオリサーチ社調べ)[6]

総集編

放送回 放送日
第1部 12月20日 ジパング
第2部 12月21日 天下布武
第3部 12月22日 本能寺の変

脚注・出典

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

外部リンク

NHKオンデマンド 大河ドラマ 信長 KING OF ZIPANGU (2015年6月30日まで)

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  1. 時代劇専門チャンネル特別番組「研究・織田信長~NHK大河ドラマにみる信長の魅力~」内・緒形直人インタビューより。
  2. NHK大河ドラマ・ストーリー「信長」(日本放送協会出版、1992年)p10-11、緒形のインタビューより
  3. 時代劇専門チャンネル特別番組「研究・織田信長~NHK大河ドラマにみる信長の魅力~」内・市川森一他の発言より。
  4. 例えば九州のキリシタンが苦難に遭うシーン、信長死後15年目に起こった二十六聖人の処刑などが描かれたが、これらの話は全く主人公・信長が関係しないエピソードである。
  5. NHK大河ドラマ・ストーリー「信長」(日本放送協会出版、1992年)を参照。
  6. 6.0 6.1 ビデオリサーチ NHK大河ドラマ 過去の視聴率データ
  7. 2002年大河ドラマ利家とまつ〜加賀百万石物語〜』でも同役を演じる
  8. 2011年の大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』でも同役を演じる。