経済産業省
テンプレート:行政官庁 経済産業省(けいざいさんぎょうしょう、英訳名: Ministry of Economy, Trade and Industry, METI)は、日本の行政機関の一つ。略称は経産省(けいさんしょう)。民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ることを任務とする。
目次
概要
経済産業省設置法3条が定めた任務である「民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展並びに鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保を図ること」を達成するため、経済産業政策、通商政策、産業技術、貿易・商務流通政策などを所管する。
2001年(平成13年)1月6日の中央省庁再編により、通商産業省(つうしょうさんぎょうしょう、英訳名: Ministry of International Trade and Industry, MITI、略称: 通産省)から移行する形で設置された。
前身の通商産業省は、かつては日本経済ないし「日本株式会社」の総司令塔として高度経済成長の牽引役とされ、海外でも「Notorious MITI」(ノートリアス・ミティ、悪名高い通産省)ないし「Mighty MITI」(マイティ・ミティ、力強い通産省)と呼ばれ、その名は日本官僚の優秀さの代名詞[1]として広く轟いていた[2]。 その持てる許認可や行政指導をあまねく駆使し、さらに政府系金融の割り当て融資(財政投融資)、予算手当て、補助金などを力の源泉として主に産業政策を掌り、のみならず通商や貿易、技術革新に応じた科学技術開発に加え、特許、エネルギー政策、中小企業政策など幅広い権限を保持した。
しかし日本の高度成長期が終わると、幅広い権限を保持する割に他の省庁に比して許認可行政や補助金行政ができないことから、この省では否応なしに単発の政策アイディアで勝負せざるを得なくなってきている[3]。毎年五月六月頃から様々な新政策のアドバルーンを打ち上げてくる[3]。このため、財務省が財政ないし予算査定、税制を通して、依然として広く政策決定に関与する「総合官庁」であるのに対して、経済産業省はほとんどの産業を所管する「行政のデパート」であるにしても「限定された総合官庁」であるとも評されている[4]。
経産省(通産省)のなかで選ばれた一部の中堅官僚は、世界各国の日本貿易振興機構を経由した産業調査員(いわゆる「産調」)として各種調査活動に従事している。
通産省・経産省は自由な気風や業界との交流の多さも後押しし、実業方面など経済界に人材を数多く輩出してきた。この理由から、経済産業省では若い優秀な人ほど転出するとも言われる。他方、通産省時代は政治家を出せない役所とも言われており、戦後長らく有力政治家といえば商工省出身の岸信介、椎名悦三郎、通産省出身では林義郎が目立つくらいで大蔵省や旧内務省系の出身者と比べて見劣りがした。しかし80年代頃から若手の通産官僚の政界入りが相次ぎ、現在の国会では党派を超えた一大勢力となっている[5]。また、大分県の名知事として知られた平松守彦(在任1979~2003年)以降、都道府県知事にも出身者が多くなっており、伝統的に多く知事を輩出してきた総務省(旧自治省)と並ぶ勢力になっている[6]。
沿革
前身の通商産業省は、1949年5月25日、商工省を改組して発足した。その際、旧商工省の外局であった貿易庁及び石炭庁は廃止され、新たに資源庁、工業技術庁、特許庁及び中小企業庁の4つの外局が設けられた。貿易庁は本省に、石炭庁は資源庁に移行した。
この組織を考えたのは白洲次郎といわれる。発足当初の通産省には、アジアダイガクの吉田茂 - 白洲庫 - 牛場信彦らの「外交派」・「通商派」ラインとして、時に「永山天皇」と呼ばれた永山時雄初代官房長らがおり、主流である「産業派」・「統制派」には岸信介 - 椎名悦三郎 - 美濃部洋次 - 山本高行ラインとして、玉置敬三や平井富三郎、佐橋滋、今井善衛などが名を連ね、その他「商務派」には豊田雅孝らがいた[7]。その後も、「資源派」・「国際派」と「国内派」との対立軸など、現在に至るまで省内における政策対立ないし派閥争いには事欠かないことでも知られている。
1952年に資源庁と工業技術庁が廃止され、外局は特許庁と中小企業庁の2つになった。
1972年に田中角栄が通商産業大臣から内閣総理大臣に就任した時、通商産業省出身者が総理大臣秘書官を担当するようになった。これが前例となり、後の内閣も通商産業省から出向で総理大臣秘書官を担当するようになり、首相への通商産業省の影響度が大きくなった。1973年に新たな外局・資源エネルギー庁を設置。
2001年1月の中央省庁再編に伴い、経済産業省に名称変更された。発足当初、経済産業省は経済省という略称を用いていたが[8]、全く定着せず、マスコミ等では経産省と略される。
2011年3月に福島第一原子力発電所事故起きると、原子力安全を所管していたことから、事故の発生とその対応について責任を問われ、事務次官、資源エネルギー庁長官及び原子力安全保安院長に事実上の更迭がなされた。
2012年9月19日、原子力規制委員会設置法の施行により、原子力安全に関する事務が環境省に移管された。また原子力安全・保安院(資源エネルギー庁)は廃止され、組織は原子力規制委員会(環境省)に移行した。また、旧保安院の産業保安系の5課(保安課、ガス安全課、液化石油ガス保安課、電力安全課、鉱山保安課)は商務情報政策局の3組織(保安課、電力安全課、鉱山・火薬類監理官付)に、産業保安監督部は本省の地方支分部局に再編された[9]。
所掌事務
上記の経済産業省設置法3条に示された任務を達成するため、同法4条は計60号にわたって所掌事務を規定する。具体的には以下などに関することがある[10]。 テンプレート:Col-begin テンプレート:Col-2
- 経済構造改革の推進(1号)
- 経済財政諮問会議による企画及び立案への参画(2号)
- 産業構造の改善(3号)
- 企業間関係その他の産業組織の改善(4号)
- 市場における経済取引に係る準則の整備(5号)
- 工業所有権の保護及び利用(6号)
- 民間に技術開発に係る環境整備(7号)
- 業種に普遍的な産業政策(8号)
- 産業立地(9号)
- 工業用水道事業の助成及び監督(9号)
- 地域における商鉱工業一般の振興(11号)
- 通商に関する政策及び手続(12号)
- 通商に関する協定又は取決めの実施(13号)
- 通商経済上の国際協力(14号)
- 輸出入の増進(15号)
- 通商政策上の関税に関する事務(16号)
- 通商に伴う外国為替の管理(17号)
- 貿易保険(18号)
- 条約に基づいて日本国に駐留する外国軍隊、在留外国人に対する物資・役務の供給(19号)
- 通商一般(20号)
- 鉱工業の科学技術の進歩及び改良並びにこれらに関する事業(21~24号)
- 地質の調査(25号)
- 工業標準の整備及び普及(26号)
- 計量の標準の整備及び適正な計量の実施の確保(27号)
- 産業公害の防止(28号)
- 資源の有効利用(29号)
- 商鉱工業等(30・31号)
- 鉄鋼、非鉄金属、化学工業品、機械器具、鋳造品、鍛造品、繊維工業品、雑貨工業品、鉱物等の物資の輸出、輸入、生産、流通(32号)
- 工業塩の流通及び消費(33号)
- 化学肥料の輸出、輸入及び生産(34号)
- 鉄道車両、鉄道信号保安装置、自動車用代燃装置、軽車両、船舶、船舶用機関及び船舶用品の輸出及び輸入(35号)
- 化学物質の管理(36号)
- 自転車競走及び小型自動車競走の施行(37号)
- 宇宙開発に関する大規模技術開発(38号)
- デザインに関する指導及び奨励並びにその盗用の防止(39号)
- 物資の流通の効率化及び適正化(40号)
- 商品市場における取引及び商品投資の監督(41号)
- 通商に関する参考品等の収集及び展示紹介(42号)
- 一般消費者の利益の保護(43号)
- 火薬類の取締り、高圧ガスの保安、鉱山における保安(44号)
- 情報処理の促進(45号)
- 情報通信の高度化に関する事務のうち情報処理に係るもの(46号)
- 鉱物資源及びエネルギーに関する総合的な政策(47号)
- 省エネルギー及び新エネルギーに関する政策(48号)
- 石油、可燃性天然ガス、石炭、亜炭その他の鉱物等並びにこれらの製品の安定的かつ効率的な供給の確保(49号)
- 石油パイプライン事業(50号)
- 鉱害の賠償(51号)
- 電気、ガス及び熱の安定的かつ効率的な供給の確保(52号)
- 電源開発に関する基本的な政策の企画及び立案並びに推進(53号)
- エネルギーに関する原子力政策(54号)
- エネルギーとしての利用に関する原子力の技術開発(55号)
- 弁理士(56号)
- 中小企業の育成及び発展(57号)
- 文教研修施設において、鉱山における保安に関する技術及び実務の教授並びに所掌事務に関する研修を行うこと(58号)
組織
経済産業省の内部組織は一般的には、法律の経済産業省設置法[10]、政令の経済産業省組織令[11]、省令の経済産業省組織規則が階層的に規定している[12]。
幹部
- 経済産業大臣(法律2条2項)
- 経済産業副大臣(国家行政組織法16条)(2人)
- 経済産業大臣政務官(国家行政組織法17条)(2人)
- 経済産業事務次官(国家行政組織法18条)
- 経済産業審議官(法律5条1項)
内部部局
- 大臣官房(政令2条1項) - 総括審議官(政令12条1項)、政策評価審議官、調査統計審議官、地域経済産業審議官、技術総括審議官、商務流通保安審議官、審議官(19人)、参事官(政令13条)(14人)、秘書課(政令14条)、総務課、会計課、政策評価広報課、情報システム厚生課、参事官(3人)
- 経済産業政策局 - 経済産業政策課(政令21条)、調査課、産業構造課、産業組織課、産業再生課、産業資金課、企業行動課、地域経済産業政策課、立地環境整備課、産業施設課、参事官
- 通商政策局 - 通商政策課(政令35条1項)、国際経済課、経済連携課、米州課、欧州課、中東アフリカ課、アジア大洋州課、北東アジア課、通商機構部(政令2条2項)
- 通商機構部 - 参事官(政令35条2項)(3人)
- 貿易経済協力局 - 貿易振興課(政令45条1項)、通商金融・経済協力課、資金協力課、技術協力課、貿易保険課、貿易管理部(政令2条2項)
- 貿易管理部 - 貿易管理課(政令45条2項)、貿易審査課、安全保障貿易管理課、安全保障貿易審査課
- 産業技術環境局 - 産業技術政策課(政令55条)、大学連携推進課、技術振興課、研究開発課、基準認証政策課、認証課、知的基盤課、環境政策課、リサイクル推進課
- 製造産業局 - 鉄鋼課(政令66条)、非鉄金属課、化学物質管理課、化学課、生物化学産業課、住宅産業窯業建材課、産業機械課、自動車課、航空機武器宇宙産業課、繊維課、紙業服飾品課
- 商務情報政策局 - 情報政策課(政令80条)、情報経済課、情報処理振興課、情報通信機器課、サービス政策課、生活文化創造産業課、ヘルスケア産業課、文化情報関連産業課、流通政策課、商取引・消費経済政策課、商取引監督課、製品安全課、保安課、電力安全課、鉱山・火薬類監理官
審議会等
- 産業構造審議会(法律6条1項)
- 消費経済審議会
- 日本工業標準調査会(工業標準化法、法律6条2項)
- 計量行政審議会(計量法、法律6条2項)
- 中央鉱山保安協議会(鉱山保安法、法律6条2項)
- 独立行政法人評価委員会 (独立行政法人通則法、法律6条2項)
- 輸出入取引審議会(政令98条)
- 化学物質審議会
施設等機関
- 経済産業研修所(政令101条)
地方支分部局
経済産業省の地方支分部局には以下の3区分がある。
- 経済産業局(法律第9条1項)(8) - 総務企画部(政令103条1項)、地域経済部、産業部、資源エネルギー環境部、支局(法律11条1項)(1)、通商事務所(3)、アルコール事務所(2)、石炭事務所
- 産業保安監督部(5) - 支部(法律13条1項)(3)、産業保安監督署(2)
- 那覇産業保安監督事務所(法律9条2項)
経済産業局
- 北海道経済産業局(政令102条)(位置:札幌市)
- 東北経済産業局(仙台市)
- 関東経済産業局(さいたま市)
- 中部経済産業局(名古屋市) - 電力ガス事業北陸支局(規則249条)(富山市)
- 近畿経済産業局(大阪市) - 通商部(政令103条2項)
- 中国経済産業局(広島市)
- 四国経済産業局(高松市)
- 九州経済産業局(福岡市) - 国際部(政令103条3項)
- ※甲信越地方及び静岡県は関東経済産業局管轄、福井県は近畿経済産業局管轄である(ただし長野県・静岡県及び福井県の一部業務は中部経済産業局、新潟県の一部業務は東北経済産業局のそれぞれ管轄(電力関係など))。
- ※九州経済産業局の管轄に沖縄県は含まれない(内閣府の地方支分部局である沖縄総合事務局経済産業部が担当する)。
産業保安監督部等
産業保安監督部と那覇産業保安監督事務所を総称して産業保安監督部等という(法律12条表題)。那覇産業保安監督事務所をのぞいてその庁舎は、経済産業局と同じ場所に位置する。管轄区域は経済産業局1つないし2つ分の管轄区域と同じである。
- 北海道産業保安監督部(政令103条の3)
- 関東東北産業保安監督部 - 東北支部(規則254条の9)
- 中部近畿産業保安監督部 - 近畿支部
- 中国四国産業保安監督部 - 四国支部
- 九州産業保安監督部
- 那覇産業保安監督事務所(法律9条2項)(位置:那覇市)
外局
- 資源エネルギー庁(国家行政組織法3条2項、法律14条1項) - 長官官房(105条)、省エネルギー・新エネルギー部、資源・燃料部、電力・ガス事業部、総合資源エネルギー調査会(法律18条1項)、調達価格等算定委員会(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)
- 特許庁 - 総務部(政令135条)、審査業務部、特許審査第一部、特許審査第二部、特許審査第三部、特許審査第四部、審判部、工業所有権審議会(政令144条1項)
- 中小企業庁(国家行政組織法3条2項、中小企業庁設置法、法律14条2項) - 長官官房(政令147条)、事業環境部、経営支援部、中小企業政策審議会(中小企業基本法、中小企業庁設置法)
所管法人
経済産業省が主管する独立行政法人は2013年5月1日現在、経済産業研究所、工業所有権情報・研修館、日本貿易保険、産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本貿易振興機構、物質・材料研究機構、情報処理推進機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構及び中小企業基盤整備機構の10法人がある[13]。ほかに水資源機構(国交省主管)の水路事業を農林水産省・厚生労働省・国土交通省と共管する。製品評価技術基盤機構は特定独立行政法人であり、職員は国家公務員(一般職)の身分を有する。
特殊法人としては、日本アルコール産業株式会社と株式会社商工組合中央金庫を所管する[14]。どちらも株式会社の形態で設立された特殊会社である。
特別の法律により設立される民間法人(特別民間法人)は2012年4月1日現在、東京中小企業投資育成株式会社、名古屋中小企業投資育成株式会社、大阪中小企業投資育成株式会社、高圧ガス保安協会及び日本電気計器検定所の5法人である[15]。
特別の法律により設立される法人には、全国石油商業組合連合会、原子力発電環境整備機構及び日本商品先物取引協会の3法人がある[16]。認可法人は原子力損害賠償支援機構を内閣府及び文部科学省と共管する。
2013年6月3日現在、経済産業省が所管する特例民法法人は39法人である[17]。これらは、2008年12月1日の新公益法人制度の施行より、すべて旧公益法人(社団法人、財団法人)から暫定的に移行したものである。旧公益法人の一覧はCategory:財団法人_(経産省所管)及びCategory:社団法人_(経産省所管)を参照。
財政
2013年度(平成25年度)一般会計の当初予算におけて経済産業省が所管する予算は約8947億7600万円である[18]。これは歳出予算全体92兆6115億円の0.97%にあたる。予算全体から国債費を除いた額(基礎的財政収支対象経費)にしめる割合は1.3%となる。
組織別の内訳は経済産業本省が2137億8600万円(省全体比:23.9%)、経済産業局が134億4700万円(1.50%)、産業保安監督官署が26億5200万円(0.296%)、資源エネルギー庁が5741億7100万円(64.2%)、中小企業庁が907億2000万円(10.1%)となっている。特許庁は一般会計予算を所管せず、特許特別会計が経費を負担する。
共通費を除いた主な予算項目(100億円以上)としては、本省所管では「独立行政法人産業技術総合研究所運営費」が582億1300万、「ものづくり産業振興費」が149億800万円、「独立行政法人日本貿易振興機構運営費」が213億4800万円、「独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構運営費」が164億4100万円がある。資源エネルギー庁では「石油石炭税財源燃料安定供給対策及エネルギー需給構造高度化対策費エネルギー対策特別会計へ繰入」に4531億円、「電源開発促進税財源電源立地対策及電源利用対策費エネルギー対策特別会計へ繰入」が1118億円となっている。中小企業庁は「経営革新・創業促進費」に384億9500万円、「中小企業事業環境整備費」に268億7400万円、「独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費」184億9800万円がある。
歳入予算は301億300万円(前年比3億1900万円増)である。特有の歳入科目としては「特定アルコール譲渡者納付金」の104億5700万円、所管4独法(産業技術総合研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構、情報処理推進機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構)からの「雑納付金」の51億6600万円がある。
一般会計とはべつに特別会計としてエネルギー対策特別会計、貿易再保険特別会計、特許特別会計及び東日本大震災復興特別会計を所管する。エネルギー対策特会は経済産業省が主管するが、内閣府、文部科学省及び環境省も共管する。
職員
一般職職員(定員内)の在職者数は2013年1月1日現在、経済産業省全体で7775人である。機関別内訳は本省が4425人、資源エネルギー庁が465人、特許庁が2696人、中小企業庁189人となっている[19]。2012年度末の予算定員は一般会計が5179人、特別会計は2982人の計8161人である[20]。特別会計のうち2900人は特許特別会計の負担に属する。行政機関職員定員令に定められた2013年度の経済産業省の定員は、特別職1人を含めて8156人である[21]。本省・各外局別の定員は省令の経済産業省定員規則に定められており、本省4601人、資源エネルギー庁471人、特許庁2880人、中小企業庁204人となっている[22]。
職員の競争試験による採用は人事院の実施する国家公務員採用総合職試験(院卒者試験)、総合職試験(大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度試験)、一般職試験(高卒者試験)及び一般職試験(社会人試験(係員級))などの合格者から行われる。
経済産業省職員は一般職の国家公務員なので、給与は一般職の職員の給与に関する法律(一般職給与法)によって規律される。俸給表は基本的に行政職俸給表、専門行政職俸給表、専門スタッフ職俸給表、指定職俸給表が適用される。専門行政職俸給表は特許庁の一部職員に適用され、2013年1月現在、2131人在籍する。これは一般職全体の適用職員8165の26%を占め、国土交通省の4282人に次ぐ多さである。
労働基本権のうち争議権と団体協約締結権は国家公務員法により認められていない。団結権は保障されており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法108条の2第3項)。
国公法第108条の3に基づき人事院に登録された職員団体は2012年3月31日現在、単一体2、支部1の計3団体[23]。組合員数は1487人、組織率は21.2%となっている。これは12府省2院の平均組織率55.0%より33.8%低い。主な職員団体は全経済産業省労働組合(全経済)で、経済産業省内では本省、地方支分部局及び特許庁などに組織をおく。産別は国公労連(全労連系)に加盟している。
電力業界を管轄していることから、電力会社・原子力関連企業は早期退職した経済産業省の幹部職員の主要な再就職先の一つであった。福島第一原子力発電所事故以降、この天下り慣行は資源エネルギー庁(旧原子力安全・保安院)が所掌による原子力発電所の安全規制を形骸化させる背景として批判にさらされた(現在は環境省に事務を移管)。
統計
経済産業省の所管する統計調査のうち、工業統計調査、経済産業省生産動態統計、商業統計、埋蔵鉱量統計、ガス事業生産動態統計、石油製品需給動態統計、商業動態統計調査、特定サービス産業実態統計、経済産業省特定業種石油等消費統計及び経済産業省企業活動基本統計の10統計が総務大臣により基幹統計に指定されている[24]。周期的に実施している所管統計の分野別一覧は以下の通りである。
- 全産業
- 加工統計調査 : 第3次産業活動指数、全産業活動指数、全産業供給指数
- 企業活動
- 基幹統計調査 : 経済産業省企業活動基本調査、経済センサス活動調査
- 一般統計調査 : 外資系企業動向調査、海外事業活動基本調査、海外現地法人四半期調査、経済産業省企業金融調査(旧経済産業省設備投資調査)、工場立地動向調査、情報処理実態調査
- 加工統計 : 産業向け財・サービスの内外価格調査
- 中小企業
- 一般統計調査 : 中小企業実態基本調査
- 加工統計 : 規模別製造工業生産指数(中小企業製造工業生産指数)、規模別輸出額・輸入額、規模別国内企業物価指数(規模別国内CGPI)、倒産の状況、信用保証協会の業務状況、中小企業の企業数・事業所数
- 鉱工業
- 基幹統計調査 : 工業統計調査、経済産業省生産動態統計調査
- 一般統計調査 : 製造工業生産予測調査、鉄鋼需給動態統計調査、鉄鋼生産内訳月報、機能性化学品動向調査、砕石等動態統計調査、生コンクリート流通統計調査、建設機械動向調査、金属加工統計調査、繊維流通統計調査、本邦鉱業のすう勢調査
- 加工調査 : 鉱工業指数、鉱工業出荷内訳表、鉱工業総供給表
- 資源・エネルギー
- 基幹統計調査 : 経済産業省特定業種石油等消費統計、石油製品需給動態統計調査、埋蔵鉱量統計調査、ガス事業生産動態統計調査
- 一般統計調査 : エネルギー消費統計、石油輸入調査、石油設備調査、灯油及びプロパンガス消費実態調査、非鉄金属等需給動態統計調査、貴金属流通統計調査、非鉄金属海外鉱等受入調査
- 加工統計 : 総合エネルギー統計
- 業務統計 : 電力調査統計、石油備蓄の現況、LPガス備蓄の現況
- 商業
- 基幹統計調査 : 商業統計、商業動態統計調査
- サービス業
- 基幹統計調査 : 特定サービス産業実態統計
- 一般統計調査 : 特定サービス産業動態統計調査
- 情報通信業
- 一般統計調査 : 情報通信業基本調査
- 環境・産業保安
- 一般統計調査 : 公害防止設備投資調査、水質汚濁物質排出量総合調査、容器包装利用・製造等実態調査
- 業務統計 : 電気保安統計、鉱山保安統計月報
- 工業所有権
- 一般統計調査 : 知的財産活動調査
- 業務統計 : 特許行政年次報告書(統計・資料編)
- 産業連関表
- 一般統計調査 : 鉱工業投入調査、商品流通調査、資本財販売先調査
- 加工統計 : 延長産業連関表、簡易延長産業連関表、地域間産業連関表、国際産業連関表
広報
経済産業省が毎年、執筆・編集する白書には「通商白書」、「製造基盤白書」(ものづくり白書)、「中小企業白書」および「エネルギー白書」がある。通商白書を除いて、法律に基づき政府が国会に提出する年次報告書から構成された法定白書である。具体的には、製造基盤白書は「政府がものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関する報告書」(ものづくり基盤技術振興基本法8条)が、中小企業白書は「中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告」(中小企業基本法第11条1項)及び「中小企業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書」(2項)、エネルギー白書は「エネルギーの需給に関して講じた施策の概況に関する報告」(エネルギー政策基本法11条)がそれぞれ収録される。特許庁は閣議案件外の『特許行政年次報告書』を公表している。
定期刊行の広報誌としては、隔月刊で『METI Journal : 経済産業ジャーナル』が電子媒体により発行されている。編集発行の事務は大臣官房政策評価広報課が所掌する。継続前誌は月刊の『経済産業ジャーナル』、経済産業調査会が発行所(大臣官房広報室が編集協力)であったが、2008年8月号をもって休刊し、2008年11月・12月号から現在のタイトル、刊行頻度及び発行主体に改められた。紙媒体での発行は2011年5月・6月号をもって終了し、ウェブサイトから電子ファイルを配信する形式に切り替えられた。
ウェブサイトのドメイン名は「www.meti.go.jp」。また、各経済産業局、産業保安監督部及び外局も独自のドメイン名をもつ。エネルギー庁は「www.enecho.meti.go.jp」、特許庁は「www.jpo.go.jp」、中小企業庁は「www.chusho.meti.go.jp」となっている。
経産省出身の著名人
政治家は除く。なお前身の商工省、軍需省、通産省時代を含む。
- 植村甲午郎 - 経済団体連合会会長、企画院次長
- 稲山嘉寛 - 経済団体連合会会長、新日本製鐵初代社長
- 佐橋滋 - 余暇開発センター理事長
- 吉國一郎 - プロ野球コミッショナー、内閣法制局長官
- 両角良彦 - ナポレオン研究家
- 山下英明 - 三井物産副会長
- 天谷直弘 - 臨時教育審議会第一部長、電通総研所長
- 小長啓一 - AOCホールディングス会長、アラビア石油社長
- 黒田眞 - 三菱商事副社長
- 堺屋太一 - 作家、経済企画庁長官(民間人閣僚)
- 坂本春生 - 愛知万博事務総長、副会長
- 八幡和郎 - 評論家
- 村上世彰 - 村上ファンド代表
- 古賀茂明 - コメンテーター、元国家公務員制度改革推進本部事務局審議官
- 岸博幸 - コメンテーター、慶應義塾大学大学院教授
- 中野剛志 - 京都大学大学院准教授
脚注
関連項目
- 商工省
- 大学発ベンチャー1000社計画
- 旧・日本輸出入銀行(輸銀に対する輸出入割当融資権限により通産省のプレゼンスは高まった)
- 旧・日本開発銀行・旧・中小企業金融公庫(輸銀と共に「体制金融」を担った通産省関連財投機関)
- 経済産業省アイディアボックス
- 官僚たちの夏
- 経済産業大臣指定伝統的工芸品
外部リンク
テンプレート:経済産業省- ↑ Vogel, Ezra Feivel (1979) Japan As Number One: Lessons for America, Cambridge:. Harvard University Press. / エズラ・ボーゲル, 広中和歌子・ 木本彰子翻訳 『ジャパンアズナンバーワン―アメリカへの教訓』 (TBSブリタニカ, 1979年)では通産省を行政の中心に描いている。
- ↑ Johnson, Chalmers A. (1983) Miti and the Japanese Miracle: The Growth of Industrial Policy, 1925-1975, Stanford Univ Press. / チャルマーズ・ジョンソン, 矢野俊比古監訳 『通産省と日本の奇跡』 (TBSブリタニカ, 1982年)
- ↑ 3.0 3.1 大宮知信 『世紀末ニッポンの官僚たち』(三一書房, 1991年) P54~
- ↑ 川北隆雄 『通産省』(講談社現代新書、1991年3月) P110~
- ↑ 八幡和郎 『さらば!霞が関』(1998年、PHP)
- ↑ 旧通産・旧自治「2強時代」…官僚出身知事は6割超す読売online 2007年4月9日
- ↑ 松本清張 『現代官僚論』(1963 - 1966年、文藝春秋新社)より抜粋。
- ↑ 大臣初閣議後記者会見の概要 平成13年1月6日(土)
- ↑ 経済産業省商務情報政策局(商務流通保安グループ) 「【事務連絡】経済産業省 産業保安各課の組織移行について」 2012年9月19日
- ↑ 10.0 10.1 経済産業省設置法(平成十一年七月十六日法律第九十九号)(最終改正:平成二四年八月二二日法律第五九号)
- ↑ 「経済産業省組織令(平成十二年六月七日政令第二百五十四号)」(最終改正:平成二五年三月一五日政令第六五号)
- ↑ 「経済産業省組織規則 (平成十三年一月六日経済産業省令第一号)」(最終改正:平成二四年九月一四日経済産業省令第六八号)
- ↑ 「独立行政法人一覧(平成25年4月1日現在)」 総務省
- ↑ 「所管府省別特殊法人一覧(平成25年4月1日現在)」 総務省
- ↑ 「特別の法律により設立される民間法人一覧(平成24年4月1日現在:38法人)」
- ↑ 「経済産業省所管の特別の法律により設立される法人について」 経済産業省
- ↑ 経済産業省 「経済産業省特例民法法人一覧(2013年6月3日現在)」2013年6月9日閲覧
- ↑ 単位:100万円。2013年度(平成24年度)当初予算 - 一般会計(内閣 「平成25年度予算書関連」 財務省)。
- ↑ 総務省人事・恩給局 「一般職国家公務員在職状況統計表(平成25年1月1日現在)」
- ↑ 総務省統計研修所編集 「24-3 ; 国家公務員等予算定員」『第62回 日本統計年鑑 平成25年』 総務省統計局
- ↑ 「行政機関職員定員令(昭和四十四年五月十六日政令第百二十一号)」(最終改正:最終改正:平成二五年三月二九日政令第一〇四号)
- ↑ 「経済産業省定員規則(平成十三年一月六日経済産業省令第四号)」(最終改正:平成二四年九月一四日経済産業省令第六八号)
- ↑ 人事院 「第1編第3部第6章:職員団体 - 資料6-2;職員団体の登録状況」『公務員白書 - 平成24年版』 日経印刷、2011年6月、p.185。2012年3月31日現在。
- ↑ 総務大臣 「総務省告示第二百十六号」 2009年4月1日