爆撃機
テンプレート:参照方法 爆撃機(ばくげきき)は、大量の爆弾類を搭載し強力な破壊力を持たせた軍用機。戦略爆撃や戦術爆撃に使用される。
目次
概要
爆撃機は、より多くの爆弾類を搭載し強力な破壊力を持たせた航空機であり、搭載量が小さいものは攻撃機と呼ばれる[1]。
爆撃機の代表的な任務は前線後方の戦略目標(司令部、生産施設、発電所など)の破壊である。爆撃機の大きな特徴は大量の爆弾類を一度に投下することで大きな破壊力を有していることである。ただ核兵器のような大量破壊兵器を使用する場合にはこういった搭載量は必ずしも必要なくなり、爆撃機部隊を維持するコストもかかるため一定規模の爆撃機部隊を有しているのは2005年時点でアメリカ、ロシア、中国だけである[2]。
種類・呼称
- 爆撃機の代表的な任務である前線後方の戦略目標(司令部、生産施設、発電所など)の破壊に使用される爆撃機の呼称。次第に戦略爆撃機のみになったが、戦術爆撃にも使われる。戦略目標の爆撃に戦術機の戦闘攻撃機で核兵器を投入できるようになり、戦略爆撃と戦術爆撃の区別が難しくなり冷戦後は明確な戦術機と戦略機の区別がなくなっている[3]。
機体性能
- 兵装搭載能力
- 爆弾やミサイルを目的地まで携行する能力。胴体下面や主翼下面に吊り下げる場合や胴体内(B-2では主翼内)の爆弾倉に収める場合がある。爆弾倉は通常胴体の前後方向に細長く設けられるが、現在の米国大型爆撃機はリボルバーやグレネードランチャーの回転弾倉のようなロータリーランチャー複数基を胴体内に収めている。
- 爆弾を正確に命中させる能力
- 第二次世界大戦終了までは自由落下の爆弾が主体で、もっぱら爆撃照準機が使用された。第二次世界大戦中は、爆弾の命中率を上げるために誤差が小さく、目標の近くまで爆弾を抱えて急降下する急降下爆撃機も多用された。大戦中ドイツは無線誘導爆弾を実用化し、敵の対空砲火に接近しなくても正確に命中させることができるようになった。2010年現在、航空機から投下された爆弾やミサイルは、レーザーやGPSで誘導されて正確に目標に命中するものも多い。
- 自立した航法能力
- 敵地上空を飛行する関係上、広範囲のレーダー照射や通信は自分の居所を敵に知らせる原因となるため、使用できない。そこで爆撃機には外部に頼らない自立した航法能力が求められる。爆撃機の誕生以来しばらくの間は、もっぱら太陽や星の角度を測定して、自機の位置を推定する天測航法で飛んでいた。第二次大戦時にナチス・ドイツで慣性誘導装置が実用化されミサイルV2に使用されたが、この技術は戦後各国で使われた。現在はGPSが活用される。
- 敵に捕捉されにくいこと
- 重い爆弾を抱えた爆撃機は、空中戦では敵の戦闘機にかなわない。そこで極力見つからないように、見つかっても追いつかれないような性能や運用が求められる。以前は、高空を高速で飛ぶ能力や夜間航法能力が重要視されたが、現在ではステルス性や低空侵攻能力が重要視されている。
- 防御能力
- 第二次大戦までは防御用機関銃と重要部を保護する防弾板が最重要装備であった。しかし、冷戦期以降の戦闘機は高速で、遠距離からのミサイル攻撃を可能としており、このような防御策は有効ではない。最新のB-2では『敵に見つからないから攻撃されない』ので、防御火器類は装備されていない。
- 速力・航続力
- 一般的には高速で遠くまで飛べるほうが良い。ただし同時代の戦闘機などと比べると速力ではそれには及ばない例が多い。一方で爆撃の命中率を上げるためには低速で飛行可能なほうが都合がよく、アメリカのA-10のように、移動する地上目標を爆撃するために、最高速度を犠牲にして低速時の安定性を優先させた機体もある。
歴史
第一次世界大戦
第一次世界大戦以前の航空用法は一部に爆撃の準備もあったが、主体は地上作戦協力の捜索目的、指揮の連絡、砲兵協力など航空戦略、航空戦術には値しないものだった[5]。第一次世界大戦が開始すると爆撃が逐次試みられた[6]。
第一次世界大戦開始時の飛行機はその性能から偵察のみに使われ、戦闘には使用されなかった。しかし戦争の進展に従って、特に西部戦線で膠着する塹壕戦を打破する手段を必死に模索していた軍が、防御側の優位を覆す方法を見つけようと、偵察のついでに手りゅう弾や小口径砲弾を改造した手製爆弾を落として敵を攻撃し、次にもっと大きな爆弾を落とせるような機体が製作されるようになった。
この時代の機体は複葉で木製骨組に帆布張り構造が主体。200~250馬力の水冷式エンジンを使用していた。単発(エンジン1基)の小型爆撃機は200 kgほどの爆弾を積み、戦場の高空を高速(200 km/h以上)で飛んで敵戦闘機の捕捉から逃れていた。双発(エンジン2基)の爆撃機は敵の都市を爆撃したが、速度が100 km/hを少し上回る程度で、敵戦闘機の目を逃れるために主に夜間爆撃を行った。ロシアで世界初の4発の大型重爆撃機が製作されたのを皮切りに、大戦後半にはドイツで4発~6発の重爆「R級」も各種製作された。爆撃機は誕生すぐに防御用機銃を装備していた。イギリスでは飛行機からの魚雷発射が実用化された。
長距離爆撃機による夜間爆撃は 戦線よりはるか後方にある都市を攻撃して非戦闘員である一般市民を戦闘に巻き込むという新しい戦争の形態を生む。
1920年代まで、軍用機といえども複葉帆布張りが主体であった。このころの最優秀機としてイギリス「ホーカー・エアクラフト社」の「ハート」がある。複葉ではあるがスマートな機体に500馬力水冷エンジン1基を装備し、200 kgの爆弾を積んで300 km/hで飛んだ。
第二次世界大戦
1921年航空戦力の本質を攻勢とし空中からの決定的破壊攻撃を説いたジュリオ・ドゥーエ(イタリア)の『制空』が発刊され、1927年ころには世界的反響を生んだ[7]。ドゥーエやミッチェルに代表される制空獲得、政戦略的要地攻撃を重視するには戦略爆撃部隊の保持が好ましく、1930年代には技術的にも可能となり、列強は分科比率で爆撃機を重視するようになった。[8]。
第2次世界大戦では爆撃機が戦争の行方を決定するのに大きな役割を果たした。当時は約8トン搭載のB17Gや約9トン搭載のB29Aが最大級の搭載量であった[9]。
1930年代に、機体はアルミ合金の全金属製で翼は単葉、エンジンは水冷式または空冷星型で1,000馬力を超え、脚も引き込み式に近代化していった。またこの時代に爆弾命中率を飛躍的に高めた急降下爆撃機が開発された。
この時代各国とも軽快な単発または双発の高速機(400 km/h前後)を製作していたが、アメリカのボーイング社だけは将来の爆撃機として4発重爆撃機「B-17」を開発した。各国海軍は雷撃が得意な機体を開発したが、日本の陸上攻撃機は遠い海上にいる敵艦を攻撃するために4発機並みの4,000 kmを超える航続距離を持っていた。ヨーロッパの爆撃機は想定される戦場が近いため、航続距離は2,000 km程度であった。
大規模な航空母艦を含む艦隊を擁する日・米・英では、第二次世界大戦初期に活躍する艦上爆撃機と艦上攻撃機が実用化された。
第二次世界大戦は航空機を主体とした総力戦となった。戦争初期は十分な戦争準備をしていたドイツ空軍(ルフトバッフェ)がヨーロッパ上空を席巻し、同様に準備の整った日本陸海軍の航空隊が太平洋の米英戦艦や地上基地、港湾や工場群といった主要目標や重要施設を壊滅させた。その後圧倒的生産力を持つアメリカが多数の爆撃機を生産し、米国機がヨーロッパと太平洋の上空を覆うようになった。イギリスとソ連も特徴ある機体を多数製作し、ドイツを東西から締め付けた。
陸戦において、単発の軽爆撃機は対地支援に必要不可欠なものとなったが、敵戦闘機の前にはあまりに無力で、戦闘機を爆装した戦闘爆撃機へと取って代わられていった。
英米は大量の爆弾を搭載できる4発重爆撃機を次々に製作し、日独の都市や工場を爆撃して両国の継戦能力を奪った。また日本近海への空中投下機雷による海上封鎖で生じた国内航路船舶の被害は、潜水艦による通商破壊と共に日本の体力を奪った。これに対し枢軸側は4発重爆撃機を本格生産できないまま敗戦を迎えた。
海では航空母艦から発進した爆撃機や攻撃機が海上戦力として最も有効である事が明らかになり、更に地上攻撃にも柔軟に対応できた結果、制空権=制海権という状況になった。従来の主力であり制海権を担ってきた戦艦は価値が低下し以後建造されなくなった。また潜水艦を探知し攻撃する機能を備えた対潜哨戒機が生まれた。
大戦後半は各機とも2,000馬力級のエンジンを装備した。機体はアルミニウム合金(ジュラルミン)が主体であったが、モスキートのような木製機や、防御力を考慮し鋼製構造を採用したIL2のような異端もいた。また戦況に影響を及ぼすほどにはいたらなかったが、ドイツは世界初のジェット爆撃機Ar234を実戦投入している。
冷戦
第二次世界大戦が終わった後、米・ソ・英・仏・中国で核兵器が実用化されると同時に、東西陣営に分かれて冷戦時代に突入した。爆撃機には仮想敵国の主要部に核爆弾を落とす能力が求められるようになった。この長距離侵攻作戦を実施できる機体は戦略爆撃機と呼ばれ、当然のことながら大型の機体に核爆弾を搭載した。別途局地的な紛争への対応や、仮想敵国周辺部への攻撃を担当する戦術爆撃機が作られたが、こちらは核爆弾運用能力の無いものも多かった。エンジンは終戦直後に作られた機体以外はジェット化され、超音速機も多数制作された。
戦闘攻撃機トーネードIDSが9トン以上、F/A-18Cは7トン以上の爆弾類を搭載できるようになり、第2次世界大戦時の爆撃機並みの搭載量を持つようになったが、爆撃機もB-52Hは27トン、B-1Bは34トン、B-2Aは22トンと搭載量が増加している[10]。
冷戦後
核兵器のような大量破壊兵器を使用する場合には、爆撃機のような搭載量は必ずしも必要なくなり、爆撃機部隊を維持するコストもかかるため一定規模の爆撃機部隊を有している国家は激減した。戦略目標の爆撃に戦術機の戦闘攻撃機で核兵器を投入できるようになり、明確な戦術機と戦略機の区別もなくなった。ただ戦略目標攻撃の爆撃機の価値が下がったわけではなく、大陸間弾道ミサイル、潜水艦発射弾道ミサイルとともに戦略核兵器の3本柱の一角であることに変わりはない。爆撃機は、核弾頭付き巡航ミサイルを発射する能力があり、発射後に機体を呼び戻せる柔軟性も持ち、前方に展開し戦力を誇示し威嚇にも使える。[11]。
主な爆撃機
- 第一次世界大戦
単発爆撃機
- テンプレート:UK
- デ・ハビランド D.H.IV
- イギリスの高速爆撃機
- ショート184水上偵察機
- 世界最初の雷撃機
- テンプレート:Flagicon イタリア王国
- SVA(ズバ)
- 大戦末期に対戦国オーストリアの首都ウィーン上空へ飛んで停戦勧告ビラを撒いた逸話が有名な高速機
- テンプレート:DEU1871
- テンプレート:UK
- フェアリー ソードフィッシュ
- 第二次大戦全期を通して使われた複葉羽布張りの艦上攻撃機。イタリアのタラント港奇襲やドイツ戦艦「ビスマルク」追撃戦で大活躍した。旧式で低速のため、戦闘機に対する防御力は弱く、インド洋では日本の戦闘機と遭遇しないように運用された。
- テンプレート:Flagicon ドイツ国
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- ダグラス SBD ドーントレス
- ミッドウェー海戦で日本の空母4隻を沈めた艦上急降下爆撃機。小型軽量ながら爆弾搭載量が大きかった。運動性に優れていたため、空中戦を行うこともあった。
双発爆撃機
- テンプレート:DEU1871
- テンプレート:UK
- ハンドレページ O/100
- ゴータのお返しにドイツを夜間爆撃した。
- ハンドレページ O/400
- ハンドレページ O/100の改良型。
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- テンプレート:UK
- ブリストル ブレニム
- "世界一速い旅客機"として試作された機体から発展した軽爆撃機。大戦が始まるころになると特に高速でもなくなっていたが、爆撃、偵察、夜戦など様々な任務に従事した。
- テンプレート:Flagicon ドイツ国
- ハインケル He111
- 大戦初期のドイツ重爆撃機。イギリスへの侵攻を目指した航空戦バトル・オブ・ブリテンのドイツ側主役。開発当時は高速だったがバトル・オブ・ブリテン時点では既に旧式化の兆しがあり、イギリス戦闘機に多数撃墜され、イギリス侵攻は断念された。
4発爆撃機
- シコルスキー イリヤー・ムーロメツ
- アメリカへの亡命後ヘリコプターの開発で有名になったロシア人イーゴリ・シコールスキイが設計した大型爆撃機。大戦中順次改良され後期の型では爆弾800 kgを搭載し8丁の機銃を装備した。速度135 km/hと鈍足ではあったが、制作75機中撃墜また不時着したのはわずか3機だった。当初は旅客機として開発され、実際戦後は旅客・郵便機として使用された。
- テンプレート:DEU1871
- ツェッペリン・シュターケン R.VI
- 重爆撃機R級のなかで唯一の成功作と言われ、18機が生産されてロンドン爆撃に使用された。左右に2基ずつのエンジンを前後串型に搭載した。しかし決定的な弱点もあった。何万立方メートルもの膨大な水素ガスを満載しており、銃撃もしくは引火するとたちまちのうちに燃え上がってしまうのだ。
- ボーイング B-17 フライングフォートレス(空の要塞)
- 1万機以上制作された第二次大戦初期のアメリカの主力爆撃機。4発の大型機体で、5 tに達する爆弾搭載量と4,000 kmに達する航続距離、充実した防御火器はこの頃の世界随一。排気タービン採用により高空での飛行性能がよく、迎え撃つ枢軸国を悩ませた。ドイツの工業地帯を昼間爆撃したため損害も多かった。
- 第二次世界大戦
単発機
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- 中島 九七式艦上攻撃機
- 日本海軍の主力攻撃機であり真珠湾攻撃にも参加。800 kg徹甲弾の水平爆撃により戦艦「アリゾナ」を撃沈し、雷撃により多数の戦艦を着底させた。
- 愛知 九九式艦上爆撃機
- ドイツのシュトゥーカと同じく固定脚を採用。大戦緒戦は250 kg爆弾を正確に投弾し連合国艦船を多数沈めたものの、後続機の信頼性の低さによる配備の遅れから使用され続け、大戦後期にはあまりの旧式化、劣勢状況から搭乗員達からは「九九式棺桶」などとまで揶揄された。
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- カーチス SB2C ヘルダイバー
- ドーントレスに次いで採用されたアメリカ海軍の急降下爆撃機。1,700馬力のエンジンと強力な火器をもつ。胴体下に900kg、翼下に225kgも搭載でき、爆弾だけでなく魚雷も搭載できた。欠点として操縦性に難があったにもかかわらず、魅力のある性能をもっていたため大量生産された。
- テンプレート:JPN1889
- 海軍空技廠 艦上爆撃機 彗星
- 太平洋戦争前期の主力艦上爆撃機である九九式艦上爆撃機に代わる機体として戦争後期に登場した。最初に量産された一一型と一二型は、水冷式のアツタエンジンを搭載し、500kg爆弾が搭載可能となりマリアナ沖海戦などで主力艦爆として使用されたが、故障が多く、整備員泣かせであったことから、エンジンを信頼性の高い空冷の金星六二型に換装した彗星三三型が登場し、フィリピン決戦や沖縄戦の際には、三三型が主力艦爆となった(実際には、日本海軍の空母機動部隊が壊滅状態になったため、実質的に陸上爆撃機として使用された)。のちに、三三型をベースにし、緊急時に一時的に増速するためのロケットを装備した彗星43型も生産された。また、彗星の一部は斜銃を装備し、夜戦として使われた。
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
双発機
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- ノースアメリカン B-25 ミッチェル
- 1万機以上生産され太平洋や地中海で枢軸国側の艦船を攻撃した。空母ホーネットに16機を乗せて日本近海で発進させ、ドーリットル空襲をした機体。
- テンプレート:UK
- デ・ハビランド モスキート
- 全木製の高速爆撃機。Ju-88と同様万能機と呼ばれ、夜間戦闘機バージョンも作られた。
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
- イリューシン DB-3/Il-4
- ソ連で唯一の、ドイツ軍に対抗し得る性能を持った比較的大型の爆撃機であった。
- テンプレート:JPN1889
- 三菱 四式重爆撃機 飛龍
- 日本陸軍の最後を飾る高速爆撃機。単発機に匹敵する程と謳われた秀逸な運動性能、長大な航続距離、急降下爆撃の可能、防弾装備も充実していた。日本における重爆撃機の運用思想から、従来の陸軍重爆・海軍陸攻と特に変わらず爆弾搭載量はわずかに800 kg。しかし、海軍の航空魚雷1本を搭載することも可能で、台湾沖航空戦やフィリピン決戦、九州沖航空戦、沖縄戦などでは、陸軍雷撃隊として、しばしば、米軍艦隊などに対する夜間雷撃も敢行し、劣勢状態の大戦末期ながらも活躍した。
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
4発機
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- コンソリデーテッド B-24 リベレーター
- 18,000機生産され、ヨーロッパや太平洋で活躍した重爆撃機。B-17より太い胴体を持ち汎用性に優れていた。ナチス・ドイツ支配下にあったルーマニアのプロエスチ油田などを爆撃した。
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
- 冷戦
- コンベア B-36 ピースメイカー
- 第二次大戦中に設計された非常に大きな機体。全幅70 mもある少し後退角を持つ主翼に、3,500馬力のレシプロエンジン6基を後ろ向けに取り付け、その外側にジェットエンジンを片側2基ずつ増設した10発機。爆弾最大32tを積み、爆弾を減らせば最大航続距離は16,000 kmに達し、世界中どこでも爆撃できる機体と宣伝された。しかし最大速度がB-29程度なので、目的地につく前にミグ戦闘機に撃ち落されるのは明白だった。
- ボーイング B-47 ストラトジェット
- スマートな後退翼にジェットエンジン6基を装備し亜音速で飛行した爆撃機。エンジンは内側が2基一組、外側が1基単独で主翼下にポッド式に吊り下げられていた。本機の後退翼はジェット戦闘機セイバーと同様、終戦時にドイツの研究所からアメリカが入手したデータをもとに設計された。当時のジェットエンジンは燃費が悪く、所要の航続距離が得られなかったので、空中給油(受油)システムが取り入れられた。
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
- ツポレフ Tu-95
- 35度の後退角を持った主翼に4基の巨大なターボプロップエンジンを備え、時速800 km/h以上の速度で飛ぶプロペラ機。現在も現役にあり巡航ミサイル発射母機の役を負っている。なお、Tu-142は対潜哨戒機型。また、1960年代に日本航空とアエロフロートとの共同運航でモスクワ-羽田間を飛んでいたターボプロップ旅客機Tu-114は本機の派生型。
- ミャスィーシチェフ 3M
- テンプレート:UK
- ツポレフ Tu-160
- アメリカのB-1に対抗して制作され、形状もよく似た可変後退翼の超音速爆撃機。現在のところ世界最大の実用爆撃機で最大速度はマッハ2。生産機数38機。
- テンプレート:Flagicon フランス
- ダッソー ミラージュIV
- ミラージュIIIをベースに双発・大型化した爆撃機で、核攻撃に特化していた。航続距離の短さや兵器搭載量の少なさなど、戦略爆撃機としての弱点は少なくないが、フランス国産の戦略爆撃機として長らく運用された。また、キャンベラなどと同様に偵察機型も開発されている。
亜音速
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- ダグラス A-4 スカイホーク
- 単発で小型の空母艦載機。飛行性能と兵器搭載量に優れ、長年にわたって改良を続けながら生産された。核兵器運用能力を持つタイプもあった。2006年現在でも使用している海軍・空軍がある。
- グラマン A-6 イントルーダー
- 艦上攻撃機としては大型の双発機。敵のレーダー網をかいくぐって超低空で侵攻することを目的に制作された。飛行性能は特に目立つ要素はないものの、電子機器の性能が高かったため各種改良を加えながら1990年代までアメリカ空母の主力攻撃機として使用された。搭乗員2名が横に並んで座る配置のため胴体は先頭部分が太く、よくおたまじゃくしと揶揄される。同型機にEA-6 プラウラー電子戦機がある。
- フェアチャイルド A-10 サンダーボルトII
- 戦場上空を低速で飛び敵戦車やトラックを見つけ次第破壊する目的で制作された。ジェット機には珍しい直線翼で、その任務ゆえ強力な装甲を持つ。湾岸戦争で活躍した。
- テンプレート:UK
- イングリッシュ・エレクトリック キャンベラ
- イギリス空軍の戦術爆撃機。同国のほか、発展途上国を中心に広く輸出され、印パ戦争など各地の紛争で活躍。アメリカ空軍でもB-57 キャンベラとして、アメリカナイズされたライセンス製造機が採用された。
- ブラックバーン バッカニア
- イギリス海軍の艦上爆撃機。イントルーダー同様、低空域を高速で侵入する事を得意とした。
- ホーカー・シドレー ハリアー
- 世界最初の実用垂直離着陸機。ヨーロッパ大陸での戦闘を想定し、滑走路が破壊された後でも戦闘が継続できる攻撃機として設計された。派生型BAe シーハリアーは軽空母に搭載され戦闘機としての能力も身に付けた。フォークランド紛争でアルゼンチン空軍に圧勝した結果、他国も軽空母とシーハリアーの組み合わせの有効性に注目するようになった
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
超音速
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- リパブリック F-105 サンダーチーフ
- 核戦力戦闘機として生産が開始された単発機。ベトナム戦争で最も多く出撃した機体として有名。
- ジェネラル・ダイナミクス F-111 アードバーク
- 3軍統合戦闘機として開発された筈の戦術攻撃機。ベトナム戦争から湾岸戦争まで幅広く活躍し、戦略爆撃機型や電子戦機型も生産された。
- 国際協同
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- パナビア トーネード
- イギリス・ドイツ・イタリアの3カ国が協同して開発した超音速攻撃機。地上レーダーの死角の超低空を高速で飛行して敵を襲撃する目的で作られ、超低空での安定性確保のため可変後退翼を採用した。戦闘機タイプの派生型をイギリスが採用している。
- テンプレート:Flagicon 日本
- テンプレート:Flagicon ソビエト連邦
- テンプレート:Flagicon 中国
- Q-5(強撃5/A-5)
- ソ連製の双発戦闘機MiG-19をベースとして独自に設計された戦闘爆撃機。奇しくもF-105同様に核攻撃任務を前提として機内に弾倉を備えていた。軽戦闘機といえるMiG-19からの発展型のため、兵装・燃料の搭載量が少ないが、コストが安いため旧式化した後も中国空軍で大量に採用され、「廉価かつ政治的条件が少ない戦闘爆撃機」としてパキスタン、ミャンマー、スーダンなど発展途上国にも輸出された。
- JH-7「フライング・レオパルト」
- Q-5では持ち合わせない対艦攻撃能力を中心任務とした双発複座の大型戦闘爆撃機。中国独自の設計であり、エンジンはイギリス製のスペイを用いるなど旧西側諸国の戦闘攻撃機の設計思想に近いスタンスを取っている。近年は、Q-5の後任として整備が進んでいるが輸出は実現していない。
- 冷戦後
- ロッキード F-117 ナイトホーク
- 世界最初の本格的ステルス実用機。レーダー反射を極力減らす形状と構造を採用し、赤外線排出を減らすために2基のエンジン排気口はスリット型にした。自分から電波を発するレーダーはステルスと相反するので装備していない。搭載する兵器は全て機体内に収める。等の徹底的な対策を施している。生産機数64機。戦闘機をあらわすFの記号がついているが、空戦能力は低く実質的には攻撃機である。
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- ノースロップ・グラマン B-2 スピリット
- 全翼機と言う特徴的な構造を持つ大型爆撃機。先に完成したF-117同様徹底したステルス性を追求している。イージス艦(タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦)よりも高価な価格とメンテナンスの難易度がネックとなり、生産機数21機に留まる。
- テンプレート:Flagicon アメリカ合衆国
- ボーイング F-15E ストライクイーグル
- ゼネラル・ダイナミクス F-16 ファイティングファルコン
- マクダネル・ダグラス F/A-18 ホーネット
- ボーイング F/A-18E/F スーパーホーネット
- ロッキード・マーティン F-35 ライトニングII
- テンプレート:Flagicon ロシア
- ミグ MiG-23 フロッガー
- ミグ MiG-29SMT ファルクラム
- スホーイ Su-30 フランカー F1/F2/G/H
- テンプレート:Flagicon 日本
- F-2主に敵の艦船を撃沈するための支援戦闘機。対空運用にも就く事が可能。
- テンプレート:Flagicon フランス
- テンプレート:Flagicon スウェーデン
爆撃機の機種名について
テンプレート:出典の明記 テンプレート:Main 開発・所有する飛行機の制式名に一貫して機種名、即ち爆撃機またはB(Bomberの頭文字)等を付したのは、日本とアメリカのみ。例えば第二次大戦初期にロンドンを空爆したドイツの爆撃機はハインケル社のHe111であり、ドイツ戦艦「ビスマルク」を雷撃したのはフェアリ社のソードフィッシュ、ロシアの超音速戦略爆撃機はツポレフTu-160。イギリスで開発された垂直離着陸機ハリアーはアメリカ軍に採用されると攻撃機としてAV-8の名を冠したが、本国では相変わらずハリアーのままである。日米の機種名についても時代によって変遷があるので列記する。
- 日本陸軍
- 日本海軍
- アメリカ陸軍
- 第二次大戦当時、比較的小型で運動性の良い爆撃機にA(攻撃機)、それ以外の機体にB(爆撃機)を付していた。
- アメリカ空軍
- アメリカ海軍
- 第二次大戦終了まで、水平・急降下を問わず爆弾を落とす機体をB(爆撃機)、魚雷を発射できる機体をT(雷撃機)、偵察に使用する機体をS(偵察機)として、複数目的に使用できる機体は併記していた。ミッドウェーで日本空母を葬った急降下爆撃機ドーントレスはSBD(偵察爆撃機ダグラス製)、「大和」・「武蔵」を撃沈した雷撃機アベンジャーはTBF(雷撃爆撃機グラマン製:急降下爆撃は不可能)だった。大戦後期に登場した雷撃と急降下爆撃の両方を行える機体にはBTという記号が用意されたが、ほどなく攻撃方法を特定しないA(攻撃機)の記号が使われることになった。
- 大戦後の主力攻撃機となった急降下爆撃と雷撃の両方ができるスカイレイダーの記号はAD(攻撃機ダグラス製)だが開発当初はBT2Dである(後にA-1)。その後海軍は対地・対艦攻撃を行う機体を全てAとしている(双発大型機A3Dスカイウォリアー(後にA-3)や超音速核爆撃機A3Jヴィジランティ(後にA-5)など)。
- なお名称に製造会社の記号を付す海軍の命名法は、1962年の三軍命名法統一の時に廃止された。
脚注
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』イカロス出版13頁
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』イカロス出版14頁
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』イカロス出版14頁
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』イカロス出版12頁
- ↑ 戦史叢書52陸軍航空の軍備と運用(1)昭和十三年初期まで57頁
- ↑ 戦史叢書52陸軍航空の軍備と運用(1)昭和十三年初期まで59-60頁
- ↑ 戦史叢書52陸軍航空の軍備と運用(1)昭和十三年初期まで233頁
- ↑ 戦史叢書52陸軍航空の軍備と運用(1)昭和十三年初期まで373頁
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』13頁
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』イカロス出版2005年14頁
- ↑ 青木謙知『ミリタリー選書1現代軍用機入門 (軍用機知識の基礎から応用まで)』イカロス出版2005年14頁