西瀬戸自動車道
西瀬戸自動車道(にしせとじどうしゃどう)は、本州四国連絡道路の尾道・今治ルートを成す道路である。
広島県尾道市の尾道福山自動車道(国道2号松永道路)西瀬戸尾道ICを起点とし、向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島などを経て愛媛県今治市の今治ICに至る、延長59.4kmの高規格幹線道路(国道317号の自動車専用道路)である。本州四国連絡橋に本州四国連絡道路である西瀬戸自動車道を通しているという形をとっており、本州四国連絡高速道路が管理している。
一般には、西瀬戸自動車道周辺地域振興協議会が公募した愛称である瀬戸内しまなみ海道または、単にしまなみ海道と呼ばれる。なお、「しまなみ街道」という誤記もたまに見られる[1]。「しまなみ」の呼称は、本道路の開通後、広島県東部や愛媛県北部の複数の団体・企業等の名称に用いられている[2]。なお、橋自体の名前は「瀬戸内海大橋」であるが、完成記念イベント[3]を最後に殆ど使われなくなった。
目次
概要
海峡部の橋梁として新尾道大橋、因島大橋、生口橋、多々羅大橋、大三島橋、伯方・大島大橋(伯方橋、大島大橋)、来島海峡大橋(来島海峡第一大橋・来島海峡第二大橋・来島海峡第三大橋)の10本(尾道大橋を含めて11本とすることもある)がある。
総事業費7,464億円。
1999年5月1日に橋梁すべての整備が完了し、一般的にはこの時点がしまなみ海道の開通と見なされている[4]。ただし、この時点では島嶼部での自動車専用道路が一部未整備で既存の生活道路を利用する区間[5]が存在した。それらの区間は2006年に開通した。
来島海峡大橋区間の通行料金は普通車で1km当たり約232.88円で、それまでの日本一だった瀬戸中央自動車道海峡部に代わり日本一の高額料金区間となっている。また、通行料金の収受業務は広島県内は本四バス開発に、愛媛県内は瀬戸内しまなみリーディング[6]・芸予開発[7]・大三島道路サービス[8]の3社に委託されている。
サイクリングロードとしての人気が高く[9][10]、定期的にサイクリングイベントが行われている[11]。国際的な注目も集まってきており[12]、2014年10月には国際サイクリング大会[13]が開催される予定である。
道路機能
尾道福山自動車道、今治小松自動車道を介して山陽自動車道福山西インターチェンジと松山自動車道いよ小松JCTを直結する道路だが、今治小松自動車道に未開通区間(2016年以降開通予定)があるため、現在は直結していない。なお、西瀬戸尾道ICから北伸し、尾道JCTで尾道自動車道に接続する広域道路の検討区間もある。[14]
広島県と愛媛県との間の風光明媚な芸予諸島を島伝いにつなぐ自動車専用道路であるが、自転車歩行者専用道路も併設されているのがもう一つの特徴となっている。沿線には観光地も多いが、観光だけでなく、通勤・通学や通院など、沿線住民の生活のための道路でもある。反面、両端都市やその背後地の経済規模や経済力は京阪神大都市圏などを擁する神戸・鳴門ルート(大鳴門橋・明石海峡大橋)に遠く及ばないほか、本州と四国を最短で結ぶという点では児島・坂出ルート(瀬戸大橋)に劣後する。さらに、ほぼ全線が片側一車線という道路構造も両ルートに比べるとインフラ面でハンディがあり、物流・商流ルートとしては効果を発揮し切れていない。通行量も低迷している。ただし、個々の橋の規模が他3ルートに比べると小さいこと、鉄道などの付属施設も弱いことから、最も遅くに完成したにもかかわらず建設費は3ルートの中で最も安くすんだ。総事業費は着工を遅らせたことによる物価の上昇の影響を受け、当初の5850億円より大きく膨らんだが、それでも7,464億円に留まった。これは神戸~鳴門ルートの半額以下である。
なお、鉄道道路併用橋とする構想はこのルートに関しては当初から存在しなかったテンプレート:要出典。
自転車歩行者専用道路の併設
新尾道大橋以外の各橋には歩行者、自転車、原動機付自転車(125cc以下の自動二輪車を含む)の専用道路(広島県道466号向島因島瀬戸田自転車道線・愛媛県道325号今治大三島自転車道線)が併設されている。これらの橋と尾道大橋を通行することにより、本州・四国間を徒歩で渡ることが可能となっている[15]。通行料金は、自転車と原付が9本の橋の合計で500円[16]、歩行者が無料となっている。橋の出入口に料金所(料金箱)と通行制限時などに交通を遮断する遮断機が設置されている。
料金の支払いは、通路に設置された料金箱に直接投入するようになっており、釣り銭が出ない。なお、料金箱には係員が常駐しておらず監視カメラによる管理がなされている[17]。
なお、2014年(平成26年)7月19日から2015年(平成27年)3月31日までの期間限定で、自転車(原動機付を除く)の通行料金無料化を実施している[18]。
橋梁部だけしまなみ海道を利用し、そのほかの部分は一般道路を利用する。そのため、各橋を渡るたびに前後に設けられたスロープを通行することになる。
サイクリングルート
海上を自転車で渡ることができる珍しい道路であることから、サイクリストや自転車愛好家には特に人気の高いルートであり、地元住民だけでなく遠方からの自転車旅行者が目立つ。また、尾道から今治までの間には、自由に相互の乗り捨てが可能なレンタサイクルのターミナルが14箇所設置されている。
- サイクリングターミナル
- 尾道駅(駅前港湾駐車場)
- 尾道市民センターむかいしま
- 尾道市マリン・ユース・センター
- 重井西港
- 土生港(尾道市営中央駐車場)
- 因島市民会館
- 瀬戸田町観光案内所
- 尾道市瀬戸田サンセットビーチ
- 上浦レンタサイクルターミナル(道の駅今治市多々羅しまなみ公園)
- 大三島レンタサイクルターミナル(道の駅しまなみの駅御島)
- 伯方レンタサイクルターミナル(道の駅伯方S・Cパーク)
- 宮窪レンタサイクルターミナル(宮窪観光案内所)
- 吉海レンタサイクルターミナル(道の駅よしうみいきいき館)
- 中央レンタサイクルターミナル(サンライズ糸山)
- JR今治駅臨時レンタサイクルターミナル
その他、今治港や今治市役所本館などに乗り捨てポイントが設置されている。
生口島道路
生口島道路(いくちじまどうろ)は、広島県尾道市の生口島にある自動車専用道路(全長6.5km)である。道路管理者は国土交通省。
概要
- 起点 : 尾道市瀬戸田町荻
- 終点 : 尾道市因島洲江町
- 延長 : 6.5km
- 規格 : 第1種第3級(自動車専用道路)
- 設計速度 : 80km/h
- 道路幅員
- 車線幅員 : 3.5m
- 車線数 : 暫定2車線(完成4車線)
- 最高速度 : 70km/h
無料区間の両端インターチェンジが有料区間と出入りできるハーフインターチェンジのため、無料区間のみの通行は出来ない。
西瀬戸自動車道の一部を構成するこの道路の完成によって、全線約60kmが自動車専用道路で結ばれた。大部分が暫定2車線による供用のため対面通行となっているが、渋滞することは少ない。
大島道路
大島道路(おおしまどうろ)は、愛媛県今治市の大島にある自動車専用道路(全長約6km)である。道路管理者は国土交通省。
概要
- 起点 : 愛媛県今治市吉海町名
- 終点 : 愛媛県今治市宮窪町宮窪
- 全長 : 6.3km
- 規格 : 第1種第3級
- 設計速度 : 80km/h(最高速度70km/h)
- 道路幅員 : 22.0m
- 車線幅員 : 3.5m
- 車線数 : 暫定2車線(完成4車線)
無料区間の両端インターチェンジが有料区間と出入りできるハーフインターチェンジのため、無料区間のみの通行はできない。
インターチェンジなど
- 路線名の特記がないものは市道。
IC番号 | 施設名 | 接続路線名 | 起点から (km) |
BS | 備考 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
山陽自動車道・尾道自動車道へ接続構想あり[14] | |||||||
1 | 西瀬戸尾道IC | 国道2号(松永道路) | 0.0 | 広島県 | 尾道市 | ||
2 | 尾道大橋出入口 | 尾道大橋 | 3.1 | 尾道方面出入口 | |||
- | 向東BS | - | 4.4 | ○ | 旧向東仮出入口 | ||
3 | 向島IC 向島料金所 |
国道317号 | 6.6 | ○ | |||
- | 大浜PA | - | 11.0 | ○ | |||
4 | 因島北IC | 広島県道367号中庄重井線 | 13.3 | 尾道方面出入口 | |||
- | 重井BS | - | 14.1 | ○ | |||
5 | 因島南IC | 国道317号 | 16.5 | 今治方面出入口 | |||
6 | 生口島北IC | 広島県道81号生口島循環線 | 18.0 | 尾道方面出入口 | |||
- | 瀬戸田BS/緊急進入路 | 広島県道372号林御寺線 | 21.3 | ○ | 一般車進入禁止 | ||
- | 緊急進入路 | 一般車進入禁止 | |||||
7 | 生口島南IC | 国道317号 | 24.5 | 今治方面出入口 | |||
- | 瀬戸田PA/瀬戸田PABS | - | 26.0 | ○ | |||
8 | 大三島IC | 国道317号 | 29.5 | ○ | 愛媛県 | 今治市 | |
- | 上浦PA | - | 31.9 | ○ | PAは今治方面 | ||
9 | 伯方島IC | 国道317号 | 36.3 | ○ | |||
10 | 大島北IC | 国道317号 | 40.6 | 尾道方面出入口 | |||
- | 大島BS/緊急進入路 | 42.1 | ○ | 一般車進入禁止 | |||
- | 緊急進入路 | 一般車進入禁止 | |||||
- | 緊急進入路 | 一般車進入禁止 | |||||
11 | 大島南IC | 国道317号 | 46.9 | 今治方面出入口 | |||
- | 馬島BS/(IC) | 51.2 | ○ | 一般車進入禁止 | |||
12 | 来島海峡SA 今治北IC |
国道317号 | 54.2 | ○ | 尾道方面出入口 | ||
13 | 今治IC | 国道196号 | 59.4 | ||||
今治小松自動車道(事業中) |
- ハーフICが多い(上表の備考欄を参照)。
- しまなみ海道のSA・PAには給油施設がないため、給油のさいは山陽自動車道福山SA、小谷SA(いずれも24時間営業)、松山自動車道石鎚山SA(7時-22時。繁忙期は24時間営業)や尾道市内、今治市内などのガソリンスタンドを利用する必要がある。
- 通行料金は西瀬戸尾道IC - 因島北IC・因島南IC - 生口島北IC・生口島南IC - 大島北IC・大島南IC - 今治ICで区切られているため、全線を通して走行する場合はこの4区間の料金を併算することになる。
島民専用の出入口
来島海峡大橋の第二、第三大橋の間にある馬島には島民専用のインターチェンジが設置されているが、島民と緊急自動車等の通行用であり、専用カードを持つ利用者以外は通行できない。インターチェンジには無人ゲートが設けられている。徒歩および自転車では専用エレベーターによって自由に馬島に入ることができる。
歴史
- 1945年11月6日 - 伯方島木浦港沖で第十東予丸沈没事故が発生(死者397名)。地元で架橋運動が始まるきっかけとなる。
- 1957年4月12日 - 瀬戸田港出港直後に第五北川丸沈没事故が発生(死者113名)。架橋運動は悲願のものになる。
- 1970年7月1日 - 本州四国連絡橋公団が発足。
- 1973年10月 - 大三島橋・因島大橋、神戸・鳴門ルートの大鳴門橋、児島・坂出ルートの南・北備讃大橋の起工式を1973年11月25日と決定。
- 1973年11月20日 - オイルショックの影響で、5日後に予定されていた大三島橋・因島大橋など5橋の着工を無期延期。
- 1975年12月21日 - 大三島橋起工。
- 1979年5月13日 - 大三島IC-伯方島IC(大三島橋)開通。
- 1983年12月4日 - 向東出入口-因島IC(因島大橋)開通。
- 1987年12月 - 道路名を西瀬戸自動車道とする。
- 1988年1月17日 - 伯方島IC-大島北IC(伯方・大島大橋)開通。
- 1991年12月8日 - 因島南IC-生口島北IC(生口橋)開通。
- 1998年4月1日 - 因島北IC-因島南IC開通。
- 1998年6月10日 - 今治市の馬島で来島海峡大橋橋桁落下事故が発生し作業員7人が死亡。
- 1999年度 - 生口島道路工事着手。
- 1999年3月13日 - 西瀬戸尾道IC-尾道大橋出入口開通。
- 1999年5月1日 - 尾道大橋出入口-向東出入口(新尾道大橋)、生口島南IC-大三島IC(多々羅大橋)、大島南IC-今治IC(来島海峡大橋)開通。同時に向東出入口を廃止。
- 2000年5月 - 大島道路着工。
- 2005年10月1日 - 日本道路公団等民営化関係法により、本州四国連絡橋公団が解散し日本高速道路保有・債務返済機構・本州四国連絡高速道路に承継。
- 2006年4月24日 - 大島北IC-大島南IC(大島道路)が暫定2車線で開通(途中に追越車線あり)。
- 2006年4月29日 - 生口島北IC-生口島南IC(生口島道路)が暫定2車線で開通により、西瀬戸自動車道が全通。
- 大島道路は2005年度内に供用が開始される予定だったが、工事の遅れのため翌年度初めに延期となり、4月24日に供用を開始した。また、5日後の同月29日に開通した生口島道路の開通により、しまなみ海道は一本につながった。
交通量
24時間交通量(平成17年度道路交通センサス)
愛媛県
|
広島県
|
日平均交通量(平成24年度JB本四高速)
|
参考文献
- 財団法人えひめ地域政策研究センター『しまなみ海道物語』(アトラス出版、2006年)
- 藤川寛之著、財団法人交通研究協会発行『本州四国連絡橋のはなし-長大橋を架ける-』(成山堂書店、2002年、ISBN 4-425-76111-1)
- 『愛媛県史 社会経済3 商工』(愛媛県、1986年) - 一 瀬戸内海大橋
構想
脚注
関連項目
外部リンク
- 西瀬戸自動車道 - 本州四国連絡高速道路
- SHIMAP しまなみ海道観光マップ - 瀬戸内しまなみ海道振興協議会
- しまなみ海道サイクリング
テンプレート:西瀬戸自動車道 テンプレート:本州四国連絡高速道路 テンプレート:日本の高速道路
テンプレート:本州四国連絡橋尾道・今治ルート- ↑ ポータルサイトや観光ガイドおよび個人ブログなど、様々な事例がある。※参考:しまなみ街道(西瀬戸自動車道) - 四国ネット(四国政経塾)、今治・しまなみ街道 旅行記・観光情報 - @nifty旅行日和、「しまなみ街道」の検索結果 - So-net検索ウェブ検索
- ↑ しまなみ信用金庫(三原市)、しまなみ交流館、しまなみ球場(共に尾道市)、しまなみ造船(今治市)など。また、広島市にはしまなみ債権回収(広島銀行系の債権回収会社)がある。廻鮮寿司店の店舗ブランドにもなっている。
- ↑ 完成記念イベントは『瀬戸内海大橋完成記念イベント「しまなみ海道'99」』という名称で行われた
- ↑ http://www.pref.ehime.jp/050keizairoudou/040kankou/00003858030722/shimanami/
- ↑ 大島北IC-大島南ICと生口島北IC-生口島南IC。これらの区間及びインターチェンジでは、本線としての利用を想定していないため、混雑が発生した。
- ↑ 今治・今治北・大島南の3料金所。
- ↑ 大島北・伯方島の2料金所。
- ↑ 大三島料金所のみ。
- ↑ http://www.excite.co.jp/News/society_g/20140528/Newsphere_16565.html
- ↑ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40192
- ↑ 瀬戸内しまなみ海道サイクリング尾道大会やスタンプラリーなど http://www.city.onomichi.hiroshima.jp/www/info/detail.jsp?id=3025
- ↑ 2013年2月にミシュランで1つ星に選定(詳細は「歴史」の項)、2014年5月にはCNNで「世界で最も素晴らしい自転車道の1つ」として紹介された( http://edition.cnn.com/2014/05/18/travel/hiroshima-shimanami-kaido-cycling/ )。
- ↑ 瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」 https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/125989.pdf
- ↑ 14.0 14.1 14.2 テンプレート:PDFlink
- ↑ ただし尾道大橋の歩道は狭く、徒歩、自転車での安全な通行には向かない。詳しくは、尾道大橋を参照。
- ↑ かつては尾道大橋も有料(10円)だったが、2013年4月より無料開放された。
- ↑ ちなみに、支払いを免れた場合は道路整備特別措置法に基づき、免れた金額の3倍の徴収および30万円以下の罰金を課せられることがある。
- ↑ 「しまなみサイクリングフリー」について - JB本四高速プレスリリース(2014年7月3日)
- ↑ 「しまなみ海道」、ミシュラン旅行版一つ星 - 日本経済新聞(2013年2月20日)、2013年2月20日閲覧。