日本の便所

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日本の便所(にほんのべんじょ)では日本便所について述べる。

日本の便所は大きく分けて3つに分類される。そのうち最も古くからあるものはしゃがんで用を足すもので、和式(わしき)と呼ばれる。第二次世界大戦後には西ヨーロッパから座って用を足す便器洋式(ようしき)と呼ばれている)や男性用小便器が輸入され、一般的になった。

また、これらの便器には、それぞれ水が流れるタイプと流れないタイプがあり、大便器に関しては水が流れるものは水洗式便所、流れないものは落下式便所(ボットン便所)と呼ばれる。簡易水洗式便所トンネル式便所はこの中間型で、トンネル式便所は水洗式便所ではあるが落下式便所の範疇に、簡易水洗式便所は汲み取り式便所ではあるが水洗式便所に含めることもできる。

歴史

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平安時代。路地で用を足す民衆。餓鬼草紙より。
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江戸後期の長家の共同便所(深川江戸資料館)

日本人が便所を使い始めた正確な時期は不明であるが、古くから便所と見られる構造が遺跡によって見ることができる。考古学で糞石調査がおこなわれ、各時代人の食性調査が判明してきている。

弥生時代の遺跡には下水道のような構造が見られることから、遅くともこの時代には排泄専門の施設として「便所」が成立したとされる。

古事記』『日本書紀』の記述には、古墳時代皇族が厠に入ったところを狙われる例がいくつかあり、武器を持たずに入り、出たところで捕えられたり、墨江仲皇子の例では、隼人である曽婆訶理に矛で暗殺されたことからも、視覚的に死角となっていたことがわかる。

平安時代貴族樋箱というおまるを使用していた。また、餓鬼草紙などの絵巻物には野外で糞便する光景が描かれているように庶民は便所を使用しなかった。後に穴を掘って作る汲み取り式便所が登場し、設置が簡単であることから長い間主流となった。しかし排泄物を目視して健康状態を確認することが難しいことから、皇族や高い身分の武士が用いる便所は引き出し式になっており、あとで健康を管理する者が確認できるようになっていた。 鎌倉時代戦国時代、京都の様な都市部や、京都に倣った朝倉氏一乗谷遺跡の様な都市部では厠が一般化し、各家庭に厠が付いていた事が知られている。 この頃の厠は、武家では襲撃に備えて人間の正面に扉が、それ以外では背中側に扉が作られていた。 江戸時代においては、農村部で大小便(し尿)を農作物を栽培する際の肥料としても使うようになり、高価で取引されるようになった。そこで江戸、京都、大坂など人口集積地の共同住宅である長屋などでは、共同便所が作られ収集し商売するものがあらわれた。

加賀百万石金沢)では家を建てる際やトイレの工事を行う際に、素焼きした夫婦一対の人形を「厠の神さん」として地中に埋める習わしが今も残っている。

農村部では、居住空間である母屋とは別に、独立して便所が建てられる(母屋には便所はないので、一度外へ出ないと便所に行けない)形態が戦後まで行われていた。 この頃の便器は大型の瓶であり、その上に大きな木枠、木の板を乗せ用を足す事が多かった。

また、小さな川の上に便所を設置することもあり、厠(かわや)の語源になったとも言われているテンプレート:誰2

西澤一鳳の『皇都午睡』三には、「雪隠に板囲ひ多くもと下に壺をふせし所はなく大方船板にて拵へし箱也上り段低く戸は肘壺を打しはなく其上厠へ這入り居る者外よりよく見える計裙の方少し隠るゝ計也小便所稀にあれ共只はちきの板計にて地内へしみこますなれは其辺に散乱して嗅気甚し百姓下屎は取りに来れとも小便は取りに来らすそれゆへ(仮名づかいは ゑ とあるべきところ。原文のまま)自然と垂れ流し也故に男子は往来の透を見て格子先あるひは裏口とおほしき所なとへする事也それも(鳥居を書きたり)此所へ小便無用の張札有つてはつみし折は甚だ迷惑する事也」とある。 また、「大坂にても適々往来の小便桶へ婦人の小便する事老婆幼稚の者は人目も恥ねと若き女の小便するふりは余り見るへき姿にあらす江戸は下女に至る迄も小便たこなけれはよん所なくかはしらねと皆厠へ行くゆへ(仮名づかいは ゑ とあるべきところ。原文のまま)足だけは東都の女の方勝公事也」という。

また、琉球王国などにおいては中国と同じ方式の便所の穴の下でウワー(ブタ)を飼い、餌として直接供給する豚便所も存在した。

大正時代から昭和にかけて、トイレ後の手洗いがそれまでの水盆式手水(ちょうず)から、軒下につるされた陶器ブリキホーロー製等の手水を使用する形式になった。「手水」は、トイレに行くを意味する暗喩「お手水に行く」や「ご不浄」、「御手洗」等の現代にも使用される言葉として残っている。

農業へのし尿の利用は、日本を占領した連合国軍のアメリカ軍兵士により持ち込まれたサラダ等野菜の生食の習慣のため、回虫など寄生虫感染防止という衛生上の理由が生じた事や、化学肥料など他の肥料の普及などから利用価値が低下し、高度経済成長期には取引は行われなくなった。そのため、汲み取ったし尿は周辺の海域に投棄されることが多かったが、国際条約によってし尿の海洋投棄が禁止されることになり、下水道の整備や浄化槽の設置に対する補助金制度の拡充などの施策が進められている。

下水道に関しては、最古の下水が弥生時代より建造されており、これらは便所の排水の役割を果たしていたものと考えられている。安土桃山時代には豊臣秀吉によって太閤下水と呼ばれる設備が大阪城付近に造られ、現在でも使用されている。1884年江戸(現在の東京都)の神田では煉瓦陶器を使用した設備が造られたが、1923年関東大震災で壊滅的な被害を受けた。その後全国で下水道の整備が進められるようになり、2000年の地点では日本の人口の約60%に普及している。まだ普及していない地域においては浄化槽の設置に補助金を出しているところもある。

呼称

日本においては古くは「はばかり」や「雪隠(せっちん)」「厠(かわや)」「手水(ちょうず)」などと呼ばれていたが、昭和以降は「お手洗い」「化粧室」と言い替えたり、外国語(あるいは和製英語)を使い「トイレ」「W.C」「ラバトリー」などと表記したりするようになった。また今日では公衆便所において男女を示すピクトグラムのみで表したりすることが多い。

今日でも様々な形で呼ばれているが、そのなかでも「トイレ」と呼ばれる場面が最も多く、広い場面で使用することができる。トイレという単語は英語のトイレット (toilet) の略であり、「化粧室」といった意味合いを持っている。現在日本語で使用される「化粧室」といった呼称もここからきてるとされる。

便器の種類

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平面床に埋め込んで施工される一般的な和式便器フラッシュバルブ式)
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一般住居で多く普及した大小兼用の段差式 和風両用便器水洗便所

和式

和式の便器は日本に古くから存在する。特に陶器で作られるようになったことからスリッパのような形をしていて、先端の丸みを帯びた突起部分は金隠し(きんかくし)と呼ばれる。足を便器の左右にそれぞれ平行に置き、便座がないためそのまましゃがんだ姿勢で用を足す。古いものは穴の開いた汲み取り式のものが一般的であり、定期的にバキュームカーに汲み取ってもらう必要があったが、水洗式が登場してから汲み取り式は減少した。

汲み取り式の場合、汚物が下の便槽に筒抜けになっており、その汚物の臭いで便所がくさくなるため、便器に蓋をしたり排気口を作ってファンによって屋外へ送風するなどの対策が取られる場合がある。また古くから怪談話にも用いられ、便器の穴から手が出てきたり穴の中に人がいたりといった話などがよく知られる。

和式便器は平面床に埋め込んで施工される一般の和式便器と和式便器を一段(20~30cmほど)高くした床に設置し、便器後部を段違い部に張り出させて男子小用を兼ねる両用便器(兼用便器、段差式とも呼ばれる)が存在し、後者は小便器の設置空間が取り難い日本の住宅環境もあり、一般住居で広く採用された。

水洗式の場合給水方式は床上給水式と床下給水式があり、給水機器は施工面や配管の取り廻し、便器との相性の関係で、床上給水式は主にロータンク給水で、床下給水式の場合フラッシュバルブにより給水される。

洋式と比べた場合の和式の利点としては

  • 清掃が容易(便器を床に面一施工した場合、床洗いした清掃時の汚れた水を直接便器に流し込める)
  • 便器そのものの価格と設置費用が安い
  • 糞が1次的に溜まる槽を浅く作ってあるので、排便時に水が跳ねにくい
  • 1回ごとの洗浄水の必要量が少ない(ただし、最近では和式よりも少ない水量で洗浄できる節水型洋式便器も出回っている)
  • 便座への接触がないため清潔[1]な印象を与える(ただし洋式の該当箇所も参照)
  • 排泄時に長時間しゃがむことで下半身への肉体的負担を受けるため、利用者の占有する時間が短くなる(そのため、駅や公園など大半の公衆便所でいまだに和式のみが採用されていることが多い)

といった点がある。しゃがみこむ姿勢は骨盤底筋群の発達を促し、特に高齢女性にとっては尿漏れを予防できるとする意見がある、背筋を直立させる姿勢のため直腸からの便の排出がしやすい、痔瘻・痔核にも優しい[2]、とする意見もある(ただし、洋式の方が優しいとする意見の方が多い)。

  • 尿や便(特に便)の状態を目視確認しやすい。


和式の欠点としては

  • 糞が1次的に溜まる槽を浅く作ってあるために悪臭が強いことがある(この悪臭は小用レバーを使って糞を早めに2次槽に落とすことである程度は軽減できる)。
  • 完全に便器を埋め込んでしまうため、詰まりが発生してその障害が除去できない場合、便器を取り壊して撤去しなければならず、その間便所は使用不可能となり多額の費用もかかる。
  • 排泄で便器や便器の周囲が汚れやすくなるため、見た目が不衛生な印象を与える。
  • 洗浄時に水跳ねが発生しやすい。温水洗浄便座との相性も悪い。
  • しゃがみこむ姿勢は脚の筋力を鍛えるとも言われているもののテンプレート:誰2身体障害者や高齢者がその姿勢を保つのには肉体的に大きな負担がかかる。
  • 和風便器の殆どは洗い出し式で、この方式は水勢のみを利用して汚物を排出する方式であり、吸引作用がないために、便器に流したトイレットペーパーは、水流の状態次第によっては、便器に洗浄水を流しても、便器の水封トラップの水溜りでクルクルと回るだけで便器に残ることがある。


不慣れな外国人旅行者向けのアドバイスとしては次のものがある

  • 用便中または用便後に立ち上がるときにバランスを崩しやすい。不安がある場合は備え付けの手すり、または右上写真のような配水管(俗称grunt bar、ただし十分な強度がある場合に限る)につかまるといい。
  • 腰から下の衣服をすべて脱げばバランスを維持しやすい。公共トイレでは上着や手荷物を掛けるためのフックが個室内にあることが多く、ズボン等を吊るすのに使える。
  • 女性のストッキングは大腿までの高さのものが推奨される。腰まで覆う、いわゆるパンストは取り回しに不便を伴う。

洋式

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日本初の国産サイホンゼット便器。東洋陶器(現、TOTO)が製造。2013年現在、箱根富士屋ホテルで稼働中。
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ウォシュレット一体型便器ネオレスト

洋式便器と男性用小便器は20世紀になってから日本に登場し、イギリス軍アメリカ軍などの欧米諸国を中心としたGHQが日本を占領していた頃に劇的に日本各地に広まった。1977年には洋式便器の販売が和式便器の販売数を超え、スイスアメリカにあったビデ付の便器を東陶機器(現・TOTO)が取り入れ、拡張機能を加えた温水洗浄便座として「ウォシュレット」のブランド名で販売して以来さまざまな会社が製造するようになった。

一般家庭においては便所の大半が洋式になっており、近年では温水洗浄便座が増えている。その一方で、公共施設の便所や公衆便所などでは和式のみ、または和式と洋式を一部併設している場合が多い。これは、和式便所は洋式に比べて便器の設置で手間と費用がかからないことや、清掃が簡単であるうえ洋式便所では便座に直接肌を密着させなければならず、不特定多数で共用される便所では不潔感を与えるためである。そのため、消毒薬やシートペーパーが設置されることもある。ただし、洋式便所の便座が現実的な衛生上の問題を引き起こすことはない。また、便座に無理な力を加えると破損することがある(但し、これは利用者のモラルや掃除の仕方の改善によって解決できる)。

和式と比べた場合の洋式の利点は、便座に腰掛けて排便するので、身体に肉体的な負担がかかりにくい。和式だと、高齢者の場合 力み過ぎて脳出血などの病気になり命を落とすことが少なくない。そのため、身体障害者や高齢者には洋式の使用が推奨される。他には、暖房便座や温水洗浄便座の設置が可能であり、快適な排便が出来る、汚物が溜水面に直接落ちるため悪臭が発生しにくい、痔に優しいとする意見も多い、便器や便器の周囲が汚れにくいなどの点がある。

万一、便器の内側で詰まりが発生して簡単に取れなくなっても給水管と床面に取り付けられているネジをはずすことで便器そのものを取り外せるため、便器を交換するほどの作業になることは稀である。また和式便器に簡易的に取り外すことの出来る「簡易洋式便座・リフォームトイレ」もある

小便器(男性用)

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JRタワー札幌市)の38階展望トイレにある小便器
ミラーグラスになっていて外からは見えない
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尿石防止の薬剤供給装置サニタイザーが連結された自動フラッシュバルブ内蔵新型小便器

男性用の小便器は前述のように明治以降に登場したが、それまでは男性の場合でも大便器を使用して小便を行っていた。

小便器が設置されている部分は仕切りで区切っていない場合が多く、同じ広さの空間でも設置台数を多くすることができる。

  • 床置型(ストール)型小便器- 縦長の床置型小便器で大型、中型、小型に分類される、公衆便所に並んで設置される場合、ささやかな仕切り板が付けられることがある。 以前の水洗便所用の製品ではトラップがなく、別に地中に埋め込まれた鉛管のトラップと組み合わせて設置される方式であったが、現在の製品は大方が施工が容易な便器作り付けのトラップであり、尿石付着時の清掃を容易にするためにトラップが脱着式になった製品がほとんどである。 また、トラップがない製品は汲み取り便所で使用される場合もある。
  • 壁掛け型小便器 - 戦前からあり、俗に朝顔と呼ばれる楕円形の普及品であったが、最近は、大型、中型の様々な形状の製品が存在する。成人男性の股間の高さに設置されていることが多く、このタイプは子供には使いにくい。このため、低めの高さに設置されたり、踏み台を設けたり、床置型(ストール)型小便器と併設されたりすることもある。
  • 低リップ型小便器-壁掛け型と床置(ストール)型の折衷型の小便器で壁掛け型ながら床置(ストール)型同様の縦長の小便器で子どもから大人まで楽に使える形状で床清掃も容易で最近新設される小便器の主力になっている小便器。、
  • 筒型小便器 - 和風の飲食店のトイレで使われることが多く、はね返りと臭気防止のためを投入してある(尿素アンモニアへの酸化分解による臭気発生を低温にすることで防ぐ)場合もある。
  • 省スペース型小便器 - 一般住宅でも取り付けが可能な細身のデザインとなっている。TOTOでは「スリムU」の愛称がある。(ただし、2005年6月に生産終了した。現在では発売されていない)
  • 女性用小便器(サニスタンド)- アメリカで1930年代に当時は高級品のナイロンストッキングが普及した際、腰掛式では座った際に伝線などの恐れがあったが、中腰ならそれが防げるとして発売された女性の立ち小便用の便器。日本では1951年に東洋陶器(現:TOTO)が製造・販売を開始したが、まだ和服が多く、女性が座らず小用をするとは奇妙な製品だと一般に受け取られ、その結果普及せず、1971年に製造中止となった。なお、1964年東京オリンピックの際には、女子選手用として国立霞ヶ丘陸上競技場内に設置された[3]
  • 幼児用小便器 - ストール型小便器を幼児(男児)が使いやすいようにサイズを小さくしたもの(通常のストール型を幼児用として設置する場合もある)。幼稚園保育所及び公共施設(近年(百貨店ではかなり前から)、母親と共に訪れた幼い男児向けに、このタイプの小便器が女子トイレや多目的トイレに設置されていることが多い)で用いられる。INAX製のものはミニチュア版ストール型小便器といった形だが、TOTO製のものは丸型の独特の形をしている。
  • 筒型小便器 - 竹筒のような形状の便器で和風の飲食店のトイレで使われることが多い。
  • 壁式小便器 - 公園などの公衆便所鉄道駅の構内など小便器の場合、古い施設では混雑時に複数人同時に並んで用が足せるように、、個別に便器が無く、タイルコンクリートの壁、あるいはFRP製の壁のような便器があり、その場合人の立つ場所が一段高くなって、向かい側の溝に流す形で、水洗式の場合でも、その壁に水を流す管が付いているだけのトイレが多用されていた。しかしこのタイプは水洗式であっても、小便の跳ね返りや尿石からの悪臭、などの衛生害虫が発生しやすい等、利用者から臭くて不潔な印象としてかなり不評であり、近年では個別に小便器を設置したトイレに改修された場所も多く、急速に減少している。
  • スカイトイレ - 高層ビル等の工事現場などで、トイレを設置出来ないような場所に設置したり、災害時に使用する小便器タイプの簡易トイレ。上部が朝顔、下部がポリタンクになっており、溜まった小便をトイレあるいは汚水舛に流す。

女性用トイレでも母親と共に訪れた幼い男児向けに小便器が設置されているトイレもある。

かつて、小便器は便器上部にあるフラッシュバルブまたは蛇口で便器を洗浄することが多かったが、排泄後に自動的に洗浄水が流れる赤外線センサー付きの便器が増えている。

さまざまな便所

公衆便所

テンプレート:Main 現在日本では公衆便所は大型小売店百貨店スーパーマーケットなど)、公園公共施設鉄道駅など様々な場所にあり、数も多いため容易に見つけることができる。日本の公衆便所の密度は国際的に見た場合非常に高く、充実しているといえる。公衆便所は男性用、女性用のふたつの空間が準備されていることが多いが、1990年代よりバリアフリーの観点から高齢者車椅子の人にも配慮した広い空間の便所が別に造られるようになってきている。

公衆便所は不特定多数の人間が使用するため、様々な問題が発生することがある。公衆便所は汚れるのが非常に早いため、掃除が重要になってくる。このことから、専門の清掃業者を雇って掃除を行っている場合もあり、消耗品などと共に維持に費用が掛かる。また一部の公園などのトイレでは長期間掃除が行われていないために不潔であったり、落書きなどで汚されている場合などもあり公衆便所が存在していても利用し辛い場合もある。また、公衆便所は時に未成年喫煙の場になったり、個室にカメラなどを設置して盗撮覗きを行う者もいるほか、強姦が起こることもあるなど犯罪の場になることもある。

共用便所

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日本の店舗等でよく見られる男女共用和式トイレ
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一個室に小便器和式大便器が併設された男女共用トイレ

大規模の店舗の便所では男女各々の性別専用便所が設置されているのが通常であるが、個人商店等の小規模店舗の便所では単に敷地面積の節約から家庭用のようなトイレをひとつだけ男女共用のものとして供している場合も少なくない。

また男性用トイレにおいても敷地面積の関係で小便器を個別で設置できないトイレでは、洋式大便器和式大便器を一段(20〜30cmほど)高くした床に設置し、便器後部を段違い部に張り出させて男子小用を兼ねる和風両用便器を1基のみを設置したトイレも多い。

ホテル旅館宿泊施設の各部屋にある客室のトイレにおいても同様に、洋式大便器和式大便器を一段(20〜30cmほど)高くした床に設置し、便器後部を段違い部に張り出させて男子小用を兼ねる和風両用便器を1基のみを設置したトイレが殆どとなっている。他にユニットバス式のトイレになっている事も多い。これらの客室の個別のトイレを敬遠する宿泊客の為に各フロアーに男女各々の性別専用のトイレが設置された宿泊施設も多い。

簡易便所

建設現場やイベント会場、山頂といった場所や、災害時の避難所などには電話ボックスほどの四角い小さな簡易の便所が設置されることがある。これは排泄物を溜めるタンクが下に存在していることから、汲み取り式便所とよく似た原理であったりするが、近年では水洗式のものもある。また、「携帯便所」と呼ばれる使い捨ての携帯製品も存在し、非常用として使われる。

多機能トイレ

多目的型トイレとも呼ばれる。公共交通機関その他では、バリアフリー対策の一環として、車椅子の使用者、高齢者、障害者、乳幼児連れ等のために、ベビーカーや車椅子、介助者などもはいることの出来る十分な広さ、手すり、おむつ交換シート、ベビーチェア、フィッティングボード、オストメイトのパウチ洗浄のための汚物流し、非常ボタン、聴覚障害者のための非常用フラッシュライトその他の設備がある、多機能トイレが設置されている。

健常者が長時間、占用することもあり、利用者のマナーの向上が叫ばれている。

幼児施設のトイレ

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小型の幼児用床下給水和風便器(フラッシュバルブ給水用)

幼稚園保育園では、幼児が安全で使いやすく台座の幅のサイズを小さくした幼児用便器が大便器、小便器が共に存在する。手動フラッシュバルブも最近の製品では通常品よりも長いハンドルで軽い力で操作でき幼児でも簡単に洗浄できるように出来ている。 幼児用大便器は和風便器(和式便器)洋式大便器ともに発売されているが、近年の大幅な洋式化の時代の流れで、新設や改修の場合、幼児向けの小型の洋式便器が設置されることが殆どで、幼児の成長期にあわせて様々な高さや長さロータンク式や、フラッシュバルブ式の幼児用洋式大便器が各メーカーより発売されている。和風便器(和式便器)の場合、新設では採用される事は減っているものの、古い施設で未改修のトイレでは幼児用和風便器(和式便器)のみ設置された施設も多く残っている。新設の場合でも和風便器(和式便器)の使い方がわからない幼児の教育を兼ねて幼児用の小型の和風便器が設置される場合がある。(幼児用和風便器は大人用を小振りにしただけの形状となっている)

幼児用の和風便器(和式便器)においても一般向けの和風便器(和式便器)同様に床上給水式と床下給水式があり、給水方式は施工面や配管の取り廻し、便器との相性の関係で、床上給水式は主にロータンク給水で、床下給水式の場合フラッシュバルブにより給水される。

また詰まりが発生した時に容易に異物を取り除けるように掃除口の付いた製品も存在する。

小便器は以前の製品では大人用を小振りにしただけの幼児用小便器が発売されていたが現行の製品では幼児の成長期にあわせて様々な高さの製品や小便器に手摺りグリップ)が付いた、さらに幼児が使い易い便器が発売されている。

幼児用便器は最近では百貨店や大型スーパーマーケット等の商業施設のキッズスペースの子供用トイレや、親子トイレにも設置されることも多くなっている。

百貨店や大型商業施設においては一般のトイレ内の便器同様、幼児用便器(大便器・小便器共に)においても衛生面や快適性からフラッシュバルブサニタイザーを連結して、一定の濃度希釈された尿石付着防止薬剤が含まれる洗浄薬剤、消毒薬剤を便器に常時供給させて、悪臭や便器の汚損を防止、、排水管の詰まり防止およびトイレ内の芳香をする事が多い。

便器のシェア

日本において日本の便器はTOTOINAX(現・LIXIL)の2社による製造(伝統的な焼き物産業)が大半を占め、ジャニス工業アサヒ衛陶ネポンなどがこれに続いている。そのなかでも最もシェアが高いのは約50%のシェアを持つTOTOであり、約25%を持つINAXがこれに続く。便器は重く嵩張るため、製造コストが安い中国などの発展途上国からの輸送では引き合わず日本市場はほぼ国内メーカーで占められ、将来的にもこの傾向は変わらないとみられている。同様の理由で日本の便器が輸出されることもなく、需要地での海外生産が主なものとなっている。日本の便器メーカーは海外でも積極的に販売を行っており、最も日本のメーカーの便器が販売される国は中国であり、TOTOだけで毎年100万台以上販売される。

近年では、温水洗浄便座の普及によりパナソニック電工(現・パナソニック)、東芝日立アプライアンス等、家電品メーカーの参入が盛んであるが、焼き物の製造は出来ず「便座」部分への参入に留まっていた(ただしパナソニックはOEMで陶器製便器を発売)。しかし最近ではパナソニックが樹脂製や有機ガラス系の便器を開発しシェアを伸ばしている。逆に便器のトップシェア2社は、エレクトロニクス制御技術や陶器以外の新素材導入では家電品メーカーに水を空けられており、温水洗浄便座では苦戦している。

水洗トイレにおけるサニタイザー

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女性用トイレではサニタイザーが大便器に連結され薬剤が供給される
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大便器に溶出して滞留するサニタイザーからの洗浄薬剤
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施行中の和風便器に連結されたサニタイザー

尿石は尿中に溶けているカルシウムイオンが炭酸などと反応し、カルシウム化合物として、便器および便器のトラップ、便器からの配水管の内部に付着する。尿石には尿中の有機物も含まれており、これが腐敗分解すると、トイレ独特の臭気が発生する。トイレにおける悪臭の主たる原因になっており、尿石が便器〜排水管への付着、蓄積が進むと悪臭がさらにひどくなり、やがて排水管の詰まりが起こる。このため各業者から尿石除去及び防止の薬剤が発売されており、古くからトイレボールと呼ばれる球状の尿石防止薬剤を男性用小便器排水口付近に投入されることが多かったが、最近は洗浄水を電気分解し生成した機能水を流しバクテリアの繁殖を抑制してアンモニアの発生や尿石付着を防止する機能がある小便器が発売されているほか、公共の施設の水洗式トイレでは水洗便器の洗浄水に尿石防止や消毒薬剤を添加する装置であるサニタイザーディスペンサーなどが設置されることが多い。主にデパート、駅、ホテル、劇場、病院などの衛生面や快適性を重視する施設の、男性トイレでは小便器に、女性トイレでは和式大便器洋式大便器の便器洗浄管(便器への給水管)に組込み連結して設置される。

サニタイザーディスペンサーが設置されている男性トイレでは、概ね小便器のみに設置され、和式大便器・洋式大便器には設置されないことが多いが、同一箇所の女性トイレにはほとんどの和式大便器・洋式大便器にサニタイザーディスペンサーが設置されている。これは同じ大便器でも男性トイレの大便器に比べ女性トイレの便器(大便器)は実質上、小便器の役割も兼ねている為に排尿に供される頻度が極端に高いためである(男性トイレの大便器にもサニタイザーディスペンサーが設置されているトイレも存在する)。

サニタイザーディスペンサーの作動原理は、水洗フラッシュバルブを操作して便器に水を流すと、水は水圧により給排水管(便器の給水管からサニタイザーディスペンサーに連結した管)を通り、フロート弁を経由してサニタイザーディスペンサー内に流入する。サニタイザーディスペンサー内の水量が増えるにつれて、フロートが上昇していき、やがてフラッシュバルブの流水がピークに達する頃、サニタイザーディスペンサー内が満水になると同時にフロートが最上昇点に達し、フロート弁が閉鎖される。このためにサニタイザーディスペンサーへ流入する水の量は、常に一定となる。サニタイザーディスペンサーに流入した水は、薬剤本体と接触して薬剤を溶解する。便器へ流れる水流の強さが弱まると、フロートが降下してフロート弁が開き、サニタイザーディスペンサー内の薬剤を溶解した水は給排水口を経由して便器に流れ込む。一回フラッシュバルブのの操作により便器に流れる水の量はほぼ一定であり、水流の強さの時間的変化も一定した状態が繰り返されるので、サニタイザーディスペンサーに水が流れ込み、薬剤を溶解して便器へ流れる過程も一定した状態が繰り返され、常にほぼ一定量の薬剤が溶解して便器に供給される。便器への流水が終了する間際に薬剤を溶解した水が便器に供給されるので、薬剤を溶解した水はほとんど希釈されることなく、常に安定した薬剤量及び薬剤濃度の溶液(使用水に対し100ppmの濃度の溶液)が便器内に留まり、大腸菌黄色ブドウ球菌などの菌を消毒して、脱臭、尿石の付着防止に効果的に作用させることができる。

また便器洗浄後のサニタイザーから便器への管路や便器内の管路に残留した薬剤は次回の洗浄開始直後に便器から出てきて消毒剤による便器内の消毒と、洗浄剤よる便器内の防汚洗浄がなされる。便器洗浄水を流す度にサニタイザーから便器への薬剤溶出の一連の動作が繰り返され、使用待機状態の便器は常に表面や管路は除菌消毒され、トラップ等の便器内の水溜りには一定量の、濃度の薬剤の溶液(約100ppmの濃度の溶液)が常時滞留している状態となる。

サニタイザーディスペンサーに内蔵されている薬剤はメーカーや種類により様々であるが、殺菌、尿石防止剤としてのカチオン系界面活性剤(スルファミン酸)、洗浄剤としてのノニオン系界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、メチルビニルエーテル・マレイン酸共重合体液)、成形助剤としてのホウ酸、及び防錆剤としてのイビット155Kを含有したを主成分とする強力な便器洗浄薬剤が、液体またはゲルゼリー)状の薬剤としてカートリッジ式の耐薬性容器ボトルタンクに入っており、その薬剤ボトルタンク底にある蓋部の薬剤溶出部は、海綿体の合成樹脂製のスポンジになっており、その海綿体の無数に開いた小さな穴から薬剤が滲み出るようになっており、サニタイザーディスペンサー内には常に少量の水が残り、絶えず薬剤を溶出させる仕組みなっている。これらは、水を流す度に尿石防止、消毒薬剤と共に強力な洗浄剤等の化学物質が便器から出てきて便器をコートし、便器内~排水管までが絶えず防汚される。さら香料が含まれる芳香効果も併せ持っている薬剤もあり、便器から出てきた薬剤でトイレ内を芳香する他、一部にはトイレボールと同じ薬剤であるパラジクロロベンゼンを主成分とした薬剤やティーバッグ状の薬剤が内蔵されている物もあり、液体状、ゼリー状の薬剤が内蔵されている場合、薬剤の溶解による泡立った水や芳香効果がある泡立っ水が便器から出てくるのに対し、パラジクロロベンゼン系の固形の薬剤が内蔵されている場合、トイレボールと同様のナフタレン(ナフタリン)系の独特な匂いの薬剤の溶液が水に混ざって便器から出てくる。

それぞれのサニタイザーディスペンサーの薬剤は、夏用と冬用の薬剤があり、その時の水温に応じた薬剤がセットされ、常に一定した濃度に溶解されるようになっている。

最新のサニタイザーディスペンサーではサニタイザーディスペンサー本体に赤外線人感センサと薬剤供給用輸液ポンプが内蔵されており、便器の使用人数や使用頻度を感知し、適量の薬剤が自動滴下し、便器の使用状況に応じた薬剤量及び薬剤濃度の溶液が便器に供給される機構を持つ機器も増えている。

いずれもサニタイザーはメーカーから一定周期で定期的に薬剤交換、薬剤補充され、同時にサニタイザーの作動状況の確認点検と便器に出てきた薬剤の濃度をpHメーター等で測定し、便器の状態をカルテにて管理される。

References

  1. [1]
  2. [2]
  3. TOTOきっず:トイレなんでもアラカルト

関連項目

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外部リンク

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