個人タクシー
個人タクシー(こじんタクシー)とは、正式には1人1車制個人タクシー事業といい、普通二種または大型二種運転免許、或いは中型二種運転免許を持つ運転者が、道路運送法に基づく一般乗用旅客自動車運送事業経営許可を取得し、自ら1台のタクシー車両を用いて経営するタクシー事業のことである。個人タクシーの事業者数は、約46,000であり、タクシー車両全体の16.8%を占めるとされている[1]。
目次
「個人タクシー」と「法人タクシー」
いわゆる個人タクシー(1人1車制個人タクシー事業)に対比して、経営者が、1名以上の運転者を使用し複数台のタクシー車両を用いて経営する形態を「法人タクシー」と呼ぶことがある。いわゆる「法人タクシー」の呼称は、1人1車制個人タクシー事業との対比上の表現に過ぎず、法人タクシーといっても、経営者の法人・個人の別を問わない。よって、個人事業として(法人を設立せずに)経営許可を取得しいわゆる法人タクシーを経営することは可能である。
国土交通省各運輸局の公示においては、いわゆる個人タクシーを指す場合には、「1人1車制個人タクシー事業」との呼称を使用している。
以下、本稿では、特に注記なき限り「個人タクシー」という場合は「1人1車制個人タクシー事業」を指すこととし、「法人タクシー」という場合は、経営者が法人・個人を問わず1人1車制個人タクシー事業以外の一般乗用旅客自動車運送事業を指すものとする。
現況
民間団体の個人タクシー協会が存在しており、更に支部に分かれ、各個人タクシー事業者の管理等の事務を行っている。開業にあたっては2種免許が必要になるほか、事業区域内で運転を職業としている期間、運転資金、営業拠点の確保、法令及び地理試験の合格など多くの制限がある。
東京23区やさいたま市、川崎市、横浜市、京都市、大阪市、名古屋市、札幌市、仙台市、福岡市などの政令指定都市や、全国の県庁所在地や主要都市で多く見られる。現在全国78都市で個人タクシーが営業している。茨城県、山梨県、鳥取県、島根県には個人タクシーが存在しない。
- 事業区域は行政区域とは必ず一致するとは限らない。例えば東京23区と武蔵野市、三鷹市が『東京特別区及び武三地区』の事業区域となる。
特徴
車両
- ドア開口部寸法や窓ガラスの厚さ、トランク容量などの車両規定は法人タクシーに比べて緩やかであり、使用される車種はバラエティーに富んでいる。
- 使用燃料はLPG仕様車よりもガソリン仕様車が主流である。自動車メーカーの商品ラインナップの変化もあり、近年では地方でもディーゼル車は少ない。
- アウターリアビューミラーに関しては、フェンダーミラーは少数派でドアミラーが多い(稀に日産・ティアナのように元々フェンダーミラーの設定が無い車種にフェンダーミラーを装着するケースもある)。
- 1970年代まではメーカー生産のLPG仕様車の高級グレード車やオートマチック車の設定が無く、クラウンやセドリック/グロリア、マークII、ローレルのガソリン車を整備業者でLPGに改造して運用するドライバーも存在した。
- 輸入車も多く、一部車種には自動ドアを敢えてつけていない車両もある。特殊な車両では自動ドアの装置の取り付け費用が40万円以上するのも一因ではある。
- 自動車の大きさや排気量により中型車・小型車(地域によっては大型車・普通車)の料金区分が存在するのは法人タクシーと同一である。しかし、中型車の料金区分と車体の規定は各地域により異なり、東京特別区や横浜市、千葉市などの首都圏、大阪市や京都市、神戸市などは、排気量の上限を問わず「全長:4600mm以上、全幅:1700mm以上の車両は普通車」とされる。そのため、中型車(或いは普通車)では3ナンバー車が非常に多い。これらについては一般乗用旅客運輸法を参考のこと。
東京都
- 東個協(東京都個人タクシー協同組合:でんでん虫グループ)加盟の車両は基本色を白とし、これに統一デザインとして赤で縁取られた青ラインが入る(カッティングシートによる貼付)。基本の白色にも、メーカー毎の協会指定色(カラーコード)があり、一部車種には東個協用特別色がメーカーオプション設定されている。メーカー対応による指定塗色がない車種の場合は、白色に全塗装を行った上で統一のストライプを入れて使用する。
- 組合規定で後席プライバシーガラスの装着は禁止とされており、クラウン及びマークXには、これらに対応した「Tパック(タクシーパッケージ)」の設定があり、東京トヨペットから調達する。
- 但し、プライバシーガラスとカラーコードについてはハイブリッドカーとEV、福祉車両、ユニバーサルデザイン採用の車両(日産・NV200バネットなど)は一定の条件を満たしていれば規定の免除(除外)対象となる。また、免除対象でなくとも使用できる規定もあり(中古車を架装して使用、あるいは標準設定の無い車両を使用するなど)、車両調達の関係でプライバシーガラス装着車を使用する場合、組合に申請を行う(有料)事で使用できる。許可された場合、後部窓左側に、車両登録番号が記されたプライバシーガラス罰則猶予車のシールが貼られる。
- 日個連都営協(東京都営業協同組合:提灯グループ)加盟の車両は純正白系統単色。銀色等の車両も極少数存在。2006年10月より黒色の車両も認められ、現在約100台が稼動している。なお、どの塗色も車両メーカー毎の純正カラーコード指定がある。
組合員費や交通共済(自動車保険)、前出の車種・塗色選定や無線配車の関係で、組合を鞍替えする者も少なくない。
東京特別区以外では、指定のボディカラーを設けている協会と、そうでないものとがある。
京阪神
- 大阪市や京都市、神戸市などは排気量の上限を問わず、全長:4600mm、全幅:1700mm以上の車は全て中型車とされる。→大阪、神戸は2L超過すると大型料金。
地方都市
- 関東・関西圏以外の大都市(名古屋市、札幌市、仙台市、福岡市等)、およびその他多くの地方都市では、3ナンバー車で営業する個人タクシーは非常に少ない。その理由は、これらの都市では、台数が非常に少なく乗客が事実上小型車を選ぶことが難しい東京などとは異なり、逆に料金の割高な中型車が敬遠されることによる。
また、中型車の料金区分と車両規定が首都・京阪神圏とは異なり、中型車は全長および全幅の上限はないが、排気量が2000cc未満という制限があることも一因である。そのため、自ずと選択できる車種が限られ、中型車はほぼ5ナンバーのクラウンやセドリックに限られる。また名古屋都市圏以外では小型車(排気量2000cc以下、全長:4600mm以下、全幅:1700mm以下、かつ4人乗り)の割合が高く、殆どがコンフォートやクルーで占められていたが、近年ではプリウスなどのハイブリッド車を使用する個人タクシーも増えている。
首都圏等で使用される車種
主に地方都市で使用される車種
個人タクシーの行灯について
個人タクシーは、所属する組合により屋根上についている行灯の形状が異なっている。
- でんでん虫グループ:全国個人タクシー連合会(略称:全個連)かたつむり形の行灯
- ちょうちんグループ:日本個人タクシー連合会(略称:日個連・NKR)ちょうちん形の行灯
- 独立系:全個連と日個連どちらにも加入していない団体(かまぼこ形、ながれ星形などさまざま)
マスターズマーク
一部の個人タクシーには、三ツ星の行灯を装備している(本項目上の全個連グループの個人タクシー写真参照)。マスターズマークとも呼ばれるこの行灯は、1998年に制定された優良個人タクシー事業者認定制度に合格したタクシーにのみ取り付けが許されている。三ツ星を取得するには、まず一ツ星、二ツ星の順に認定を受ける必要がある。さらに申請を出し、有識者によるマスター認定委員会の厳しい審査を受けなければ認定されない。現在、マスターズマークの表示をタクシー組合の行灯に一体的に表示する方式に移行しており、2013年に完了予定である[2]。
個人タクシーの組織について
個人タクシーはほぼすべて社団法人全国個人タクシー協会に加入している。
- 社団法人全国個人タクシー協会(略称:全個協) - 全個連・日個連・独立系の全ての団体をとりまとめている全国組織。
- 京都では組合に加入していない個人タクシーの割合が組合に加入しているタクシーよりも多くなっている。
脚注
関連項目
外部リンク
テンプレート:Taxi-stub- ↑ 『交通年鑑2008』p.117
- ↑ マスターズ制度 - 社団法人全国個人タクシー協会