LPG自動車

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トヨタ・コンフォート(XS11系)用ガスミキサー式LPGエンジン
トヨタ・3Y-PE型
ファイル:LPG tank equipped on Honda Accord CF4.jpg
LPG改造車に搭載される日本国内規格のLPGタンク
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LPG改造車に搭載される日本国内規格のLPGタンク
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燃料充填口
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LPG充填中の様子

LPG自動車(エルピージーじどうしゃ)は、LPG(液化石油ガステンプレート:Lang-en-short)を燃料とするオットーサイクルエンジン原動機とした自動車である。LPG車プロパン車LPガス自動車とも呼ばれる。

概要

LPG自動車は燃料にLPGを利用する自動車で、エンジンの基本構造はガソリンエンジンと差異はなく、燃料タンクや燃料と空気を混合する装置が大きく異なる。LPG自動車の製造あるいは製作を大きく分類すると、はじめからLPG自動車として自動車メーカーで製造される場合のほか、ガソリン車として製造、出荷された車両を自動車整備事業者等が改造する場合や、ディーゼル車として設計、製造された車両を製造元や改造施工業者が改造する場合に分けられる。

LPG自動車用の燃料として販売されるLPGはプロパンブタンの混合物で、オートガス(テンプレート:Lang-en-shortとも呼ばれる。プロパンの割合は地域や季節に応じて30%から99%の範囲で混合される[1]。常温において1MPa以下の比較的低い圧力で液化[2]体積が250分の1となることからガス燃料としては可搬性に優れる[3]圧縮天然ガス車(NGV・CNG車)の200気圧と比較しても積載性で有利である。オクタン価ブタンが約90RON、プロパンが130RONである。実際に流通しているLPGはブタン・プロパン比が8:2で約105RONと、ハイオクガソリン(プレミアムガソリン)並みのオクタン価である。

燃焼時の発熱量当たりのCO2排出係数は0.0590tCO2/GJで、ガソリン(0.0671 tCO2/GJ)や軽油(0.0686 tCO2/GJ)よりも低く[4]、 LPG利用を推進する団体により「化石燃料の中ではクリーンな燃料」として紹介されている[1][5]。同一の車種で同一の積載量という条件の下で走行距離当たりのCO2を比較すると、ガソリン車よりも約6 - 13%、ディーゼル車よりも約7%、CO2排出量が少ないという調査結果も公表されている[6]

煤煙がほとんど排出されず、PM (粒子状物質)が測定限界以下であることや、NOx排出量が低いことも特徴である[7]

最初の排出ガス規制である昭和47年排出ガス規制では、ガソリンとLPGは分類されLPGの方が厳しい排出ガス規制となっている日本の排出ガス規制経緯テンプレート:リンク切れ。オランダやフランス、イギリスなどではLPG車は「代替燃料車」として区別されている。

メーカー生産LPG車

2008年時点におけるLPG車のメーカーは次のとおりである。

ボルボのV70とS80はLPGが入手困難な地域でも運用できるように、床下にガスタンクと予備のガソリンタンクを備え、スイッチにより燃料を切り替えて走行できるバイフューエル車である[8]。LPG普及国を中心に年間4,000台が市販され、全世界に拡大する予定で仕様やサービスツール、部品供給、取扱説明書などのドキュメントまで整備されたが2005年後半に計画は中止された。

日本では2004年に、エルピーガス振興センターの構造改善調査事業として、ボルボのV70ワゴンとS80セダン、ヒュンダイのXG(グレンジャー)セダンが試験的に輸入された[9]。国外からLPG車を輸入することで日本のLPG車市場とインフラ事業の活性化を図る目的で行われ、日本での使用が困難とされてきた国外製のLPG車について、欧州規格(ECE基準67号)や韓国規格で製造された燃料容器の技術的調査が行われた[9]。これらの車両は日本の公道で走行できるように登録を行われ、試乗会や展示会に用いられたが、日本国外製の量産LPG乗用車が輸入、登録された前例はこのときまで無かった[9]。その後の2006年10月に日本での輸入量産LPG車として初めてグレンジャーLPIが販売開始された[10][11]。個人タクシーやマイカー用途として約400台が短期間に販売された。

ガソリン車改造LPG車

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改造車のエンジンルーム
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改造車のエンジンルーム

LPG車の製作手法のひとつとして、市販されているガソリン車をディーラーや架装メーカーで改造するレトロフィット(テンプレート:Lang-en-short)と呼ばれる方法がとられる場合がある。この場合、国や地域によっては申請を行ったり認可を受けたりする必要がある。ヨーロッパでは輸入業者が改造し、販売地域の事情に応じて改造後の保証も含めて輸入業者の責任で行い、OEMモデルとして市販するケースも多くある[12]。日本ではLPG化改造を行う事業者の業界団体としてLPG内燃機関工業会があり、LPG改造認定工場によって改造が行われる。

エンジン本体の構造は同じ火花点火内燃機関であることから、燃料供給装置を変更して点火時期などを調整する程度で改造でき、韓国Hana Engineering社や伊Landi Renzo社などから改造用の部品が販売され、日本へも輸入されている[13][14]。date=2014年1月|また、LPG内燃機関工業会が開発したイタリアロバート社(ランディレンゾ傘下)では、現在は「FAST内工会方式」による改造や、各社の独自開発のシステムによる改造が行われている。

燃料供給装置には従来はガスミキサーと呼ばれる装置が用いられていたが、電子制御燃料噴射方式に移行しつつあり、欧州では気体噴射方式と液体噴射方式、日本では気体噴射方式が主流となっている[15][16]。LPG噴射装置の制御用として、別途コンピュータ(サブコン)が増設される。

レトロフィット向けとして販売される燃料タンクは搭載する車両に応じて形状の異なる製品が製造されていて、欧州ではトランク内のスペアタイヤのスペースに収まるように円錐曲線回転体の形状をしたタンク(トロイダルタンク、テンプレート:Lang-en-short)や分割して複数の小型容器を組み合わせたタンクが流通している[17]

LPGはガソリンに比べて燃焼温度が高く、排気温度が高くなるため排気バルブに問題を生じる場合があり、関連する部品を対策品に交換する場合もある。タクシー等長距離走行(生涯25–50万キロ)をする車両では、ガソリンエンジン用のバルブ、バルブシートでは、潤滑性の低いLPG燃料による磨耗、熱劣化が大きく、バルブクリアランスが取れなくなる。日本国外の改造車ではバルブとバルブシートの対策品への交換が行われたり、同様な性質を持つCNG車やアルコール燃料使用車と同じ強化エンジンバルブ、バルブシートに対応するケースも多い。日本の自動車メーカーの国内向けのガソリン車を改造すると動弁系の問題が出るが、輸出向けのガソリン車ベースではそのまま改造を行っている。日本国内では走行距離を10万キロ程度と判断し、長距離走行や燃料品質の一定しない日本国外向けには強化タイプのバルブ・バルブシートを使用している。日本国外のBMWボルボヒュンダイキア等では、もともと地域毎に異なるガソリン品質での課題や、北米南米でのアルコール混合ガソリン使用の問題から、ガソリンエンジンであっても対策バルブが使用されており、問題が発生しないと言われる。このため欧州を中心としたマーケットではレトロフィットによる改造が盛んで、ディーラー等でカーステ取付並みに純正部品があり改造されている。

日本でのLPG改造事業者の例

ディーゼル車改造LPG車

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ディーゼル改造LPIエンジン
スロットルバルブとサージタンクが付いたインテークマニホールドはレトロフィット

ディーゼルエンジンからの改造はオットーサイクルへの改造を伴い、タンクや燃料供給系統をLPG用とするだけでなく、点火プラグを追加して圧縮比を変更するなど、エンジン本体への改造が必要である[18]。具体的にはシリンダーヘッド、ピストン、コンロッドなどを新たに設計し直し、事実上エシリンダーブロックのみを利用するような形態となる。2006年にエルピーガス振興センターによって行われた調査によると改造費は1台あたり50万円以内であるとされる[18]

日本での実例としては、いすゞ(4HG1型ベース)、三菱ふそう(4D34型ベース)、トヨタ(2代目B型エンジンベース)により開発、販売されたことがある[19][20]。北米でも同様な改造が盛んでスクールバスの改造が行われている。韓国ソウル市では市の清掃車や規制に適合しないディーゼルトラックをLPG化する改造が行われており、2005年度に6,000台が改造された[18]

出力は元のディーゼルエンジンを凌ぐが、最大トルク発生回転がガソリンエンジンなみに高くなるため、トラックのようにパワーウェイトレシオが大きい場合、発進時にはディーゼル車に比べ、力不足となる。そのため、好みや使用状況によっては最終減速比を下げる等チューニングする必要がある。

このほかに、DDF(ディーゼル・デュアル・フューエル)システムと呼ばれる、軽油とLPGを同時に利用する方式も実用化され、改造用の部品が販売されている[21]。DDFシステムはLPGやCNGといったガス燃料と空気の混合気を燃焼室に送り、圧縮行程で高温になったシリンダー内の混合気に軽油を噴射して、軽油の自己着火により点火する方式である[22][23]。点火プラグの追加を必要とせず、ディーゼルエンジン本体の構造はそのまま使えることから、オットーサイクルに転換するLPG改造よりも低コストである[21]。過去に日本でも環境省を中心に東京都営バスで走行試験を行った事例がある。

LPG車固有の構成部品

ガスタンク

LPGは圧力をかけて貯蔵されることから、常温常圧で液体のガソリンや軽油のタンクとは異なり、燃料容器は圧力に耐え、気密性を保つ構造とされている。注入口は弁機構が設けられ、充填の際にノズルと密着する構造となっている。

欧州では、国際連合欧州経済委員会による法規(ECE Rgulation)で基準が定められ、LPG車の構造装置の基準は67号、レトロフィットシステムの基準は115号として、燃料容器も包括して一本化されている。日本では、車両構造が国土交通省管轄の「道路運送車両の保安基準」で定められているのとは別に、ガス容器は経済産業省管轄の「高圧ガス保安法容器保安規則」に分かれて基準化されている。そのため自動車検査登録制度とは別に、ガス容器の検査を6年毎に受けなければならない[24]。日本では、スペアタイヤ位置に設置するような省スペース型の燃料タンクは、経済産業大臣特認されたサンプル(1999年にヴィアーレLPI用に輸入されたドーナツ型)を除き、認可されていない。

燃料供給装置

ガスミキサー
LPGを空気と混合してエンジンに送る方式の1つであるガスミキサーは古くから用いられている方式である。ガスミキサー方式の主要構成は燃料遮断弁(テンプレート:Lang-en-short)、気化・調圧弁(テンプレート:Lang-en-short)、キャブレター(テンプレート:Lang-en-short)からなり、燃料遮断弁はエンジン停止中に液体のLPGが流出しないように止める弁機構、気化・調圧弁はLPGを気化させて、一定圧力に保つ装置、キャブレターはエンジンへの吸入空気の流量に応じてLPGを混合する装置である[25]気化の際の蒸発熱(気化熱)を与えるために、気化器には冷却水流路を設けられ、エンジンの廃熱を利用して温められている[25]。後述の電子制御された方式と比較すると運転状況に即した燃料供給の精度が低く、燃費や出力の点で不利である[25]
ガス・インジェクション
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レトロフィットインテークマニホールドと液状噴射用インジェクター
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ベーパライザー(強制気化器)
ファイル:Gas delivery module and injector.jpg
LPGデリバリーモジュールと気体噴射用インジェクター
ガソリンエンジンと同様に、マルチポイントインジェクションを採用することでガスミキサーと比較して性能向上が図られている。テンプレート:要出典範囲
LPGを液状のまま噴射する液体噴射方式(LPI)と、LPGを一度液体から気化させる気体噴射方式(VPI)がある。液体噴射は、シリンダー内で気化する際の膨張圧力を出力として利用できる点や、蒸発潜熱によって吸入空気が冷却されて空気密度が高くなり、燃焼効率が向上する点が利点である[26]。気体噴射では、タンクから送り出されたLPGをベーパライザーと呼ばれる装置で冷却水の熱を利用して温めて強制的に気化させ、インジェクターで噴射する[27]。LPG車とCNG車で共通設計の噴射装置を利用できることから量産効果が高く低価格化が見込める点が利点である。スウェーデンのボルボではLPG車とCNG車を同一システムで構築し量産効果を上げている。
イタリアロバート、AG、日本のニッキが開発している。液体噴射ではオランダ・ヴィアレ社と韓国モトニック社、日本の愛三工業が開発している。
液体噴射方式(LPI)の主要サプライヤーとして次の各社が挙げられる。
気体噴射方式(VPI)の主要サプライヤーとしては次の各社が挙げられる。

テンプレート:-

燃料の単価比較

日本でのLPG単価をガソリンや軽油と比較すると、一例として、2007年11月時点でレギュラーガソリンは145円、軽油は121円であるのに対し、LPGは84.1円である[28]。2010年3月時点ではレギュラーガソリンは131.3円、軽油は110.5円に対し、LPGは85.0円(店頭現金価格)である[28]。価格には国税である石油ガス税が9.8円/L(17円50銭/kg)が含まれている(地方税はない)。天然ガスと比較すると、道路財源(道路特定財源制度)としての燃料課税は無税で、2007年4月の時点における東京地区の価格は71.03-84.68円/Nm3となっている[29]

欧州やアジアの非産油国では円換算でガソリン250円/L、軽油は200円/L程度が一般的であり、現地価格で70–100円のLPG、30–50円のCNGに転換する人々が多い最大の原因ともなっている。

普及状況

2011年の世界におけるLPG自動車の普及台数は2,100万台で、2000年の730万台から3倍以上に増えている[30]。国別の普及台数は、第1位がトルコの334万台、第2位がポーランドの248万台、第3位が韓国の246万台、第4位がイタリアの179万台、第5位がインドの171万台、第6位がロシアの140万台となっている[30]テンプレート:要出典範囲

車種構成は国によって異なり、日本や韓国ではタクシーや小型貨物車がオートガス需要の多くを占め、欧州では自家用車が多くを占める[31]テンプレート:要出典範囲

年代による変化は、1990年代にはオランダフランスイタリアが中心となったが現在は飽和状態にある。2000年代に入るとイギリスポーランドトルコオーストラリア韓国で急激に増加している。イギリスでは、政府のパワーシフトプログラムにより普及が進んでいる。燃料税の優遇の他、ロードプライシングでの通行税免除や、バスレーン通行許可等の多数の優遇があり、エネルギー分散化の一手として行われており、周辺のオランダなどからLPG改造した車両の輸入も多い。欧州でのLPG車のシェアは、どの国でも全保有台数の約5%程度である[32]。最近ではポーランドトルコハンガリー等の東ヨーロッパオーストラリアフィリピン等では急速にLPG車が増加している。世界LPG協会(WLPGA)は、協会内に委員会(GAIN)を設置してLPG車の積極的な普及活動を行っている[33]。|日本では、昭和40年前後から、ガソリン代替としてLPGが利用されてきた。日本での改造LPG車の主な需要は、個人タクシー事業者が長年主流を占めていたが、近年、ネット上での情報流通により、自家用車、タクシー以外の事業用車両もLPGに改造されるようになり、燃料代削減、CO2排出削減といったメリットが認知されつつある。

脚注

テンプレート:Reflist

関連項目

外部リンク

テンプレート:Sister テンプレート:Alternative propulsion

テンプレート:自動車nl:LPG (brandstof)
  1. 1.0 1.1 テンプレート:Cite web
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite web
  6. テンプレート:Cite web
  7. テンプレート:Cite web
  8. テンプレート:Cite web
  9. 9.0 9.1 9.2 テンプレート:Cite web
  10. テンプレート:Cite web
  11. テンプレート:Cite web
  12. [1]テンプレート:リンク切れ通常はLPGキット汎用品で使われる切替スイッチがSI-DRIVEセレクタ-の上に専用で設けられる。
  13. テンプレート:Cite web
  14. テンプレート:Cite web
  15. テンプレート:Cite web
  16. テンプレート:Cite web
  17. テンプレート:Cite web
  18. 18.0 18.1 18.2 テンプレート:Cite web
  19. テンプレート:Cite web
  20. テンプレート:Cite web
  21. 21.0 21.1 テンプレート:Cite web
  22. テンプレート:Cite web
  23. テンプレート:Cite web
  24. テンプレート:Cite web
  25. 25.0 25.1 25.2 テンプレート:Cite web 引用エラー: 無効な <ref> タグ; name "streamline"が異なる内容で複数回定義されています
  26. テンプレート:Cite web
  27. テンプレート:Cite web
  28. 28.0 28.1 テンプレート:Cite web
  29. テンプレート:Cite web
  30. 30.0 30.1 テンプレート:Cite web
  31. テンプレート:Cite web
  32. ロンドンでのLPG車優遇措置テンプレート:リンク切れ
  33. [2]テンプレート:リンク切れ