JR九州815系電車
815系電車(815けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の交流近郊形電車。1999年(平成11年)10月1日の豊肥本線(熊本駅 - 肥後大津駅)の電化開業にあわせて営業運転を開始した。
車両解説
1999年10月1日、豊肥本線熊本 - 肥後大津間の電化開業および鹿児島本線熊本地区・日豊本線大分地区でのワンマン運転開始に伴い製造された。熊本・大分地区でのワンマン運転開始は、423系および457系・475系の置換えも兼ねたものである。
JRグループでは初めて日立製作所のA-trainシステムを用いて製造された車両である。デザインは、キハ200系以降のJR九州の新製系列と同様、水戸岡鋭治率いるドーンデザイン研究所が手掛けている。
811系、813系および817系との相互連結運転が可能となっている。このうち、813系および817系とは、貫通幌を使用することで編成間貫通とすることが可能である。
2001年(平成13年)、グッドデザイン賞およびブルネル賞を受賞した。最高速度は120km/hである。
車体
A-trainシステムの特徴の一つである、摩擦撹拌方式 (FSW) により製造されたダブルスキン構造のアルミ合金車体となっており、従来の813系よりさらに軽量化が図られた。片側3箇所に両開き扉が設置されている。客室側窓は同系と異なり、扉間に1枚の固定式大窓を設けた。車端部の窓も固定式であり、開閉可能な客用窓はない。窓ガラスはUVカットガラス (UV96) を使用し、カーテンは省略された。
813系同様、前面部中央に貫通扉を設けたが、前照灯と尾灯は、同系よりも高い位置に上げられた。
塗装も同系と似ており、無塗装を基本に扉部分が赤色に塗装されたが、前位側については、同系のようにステンレス構体に鋼製の前頭部を接合する車体構造ではないため、前面の縁および貫通扉のみが赤く塗装された。
行先表示器は字幕式で、811系および813系の表示に、豊肥本線系統の駅名を追加した内容である。側面表示器の駅名表記は、前2系列と同様に白地に黒文字で日本語と英語の並記だが、設置箇所は第4エンド端の1箇所のみで、編成単位での片側面では1箇所に集約された。また、正面の表示器もキハ200系と同様に列車種別表示器が設置されるとともに、黒地に白文字の駅名表記も日英並記となった。
台車・機器
台車は軽量ボルスタレス台車のDT404K(電動車)、TR404K(制御車)で、車輪には810mm径の小径車輪が採用された。ただし、813系と異なり、ヨーダンパは省略された。
制御方式はVVVFインバータ制御であるが、同社の電車としては、初めてIGBT素子を用いた交流回生ブレーキと逆相ブレーキ(後の全電気ブレーキ)が使用可能な主変換装置が採用された。
運転台の主幹制御器は、同社の電車としては、初めてワンハンドル式が採用された。運転台手前より、力行5段、中立、抑速ブレーキ、常用ブレーキ7段および非常ブレーキとなっている。また、定速制御機能も、普通列車用としては初めて採用された。さらに、乗務員支援モニタは、813系と同等のものが採用されているが、同系列2ハンドル車のものとは異なり、画面右上にブレーキノッチ表示が追加されている。この表示は、817系および813系1000番台車以降でも踏襲されている。
パンタグラフは、JR九州の電車として、初めてシングルアーム式が採用された。この方式は、本系列以降の同社のすべての新製電車系列に採用されるとともに、883系もこの方式に交換された。
車内設備
車内設備がユニット化され、製造工程の合理化が図られている点も、A-trainシステムの特徴の一つである。運転室および車椅子対応便所(クハ814形第3エンド端に設置)が、独立したユニットとして設置された。座席は、JR九州発足以降の新系列電車として、初めて全席ロングシートが採用され、背もたれと座布団が一人分ずつ独立した形状とされた。
車内収受式ワンマン運転を行うため、運賃箱、運賃表示器および整理券発行器を備えた。
また、813系と同様に、下り列車で進行方向右側となる客用扉の上部に、一行表示のLED式車内案内表示器が設置された。ただし、同系では日本語のみの表記であったのに対し、本系列では、日本語と英語による表記が交互に表示されるようになった。
客室内は、ステップ部も含め段差はなく、編成内の車両間の仕切り扉もない。
客室内のうち、運転室および客用乗降扉は、黄色に塗装されている。
編成
全編成とも門司港側からクモハ815形 (Mc) - クハ814形 (T'c) の2両で組成されている。車両番号は編成ごとに同じ番号で揃えられ、編成自体にも「Nxxx」の編成番号が与えられている。「N」は815系であることを示し、「xxx」は車両の製造番号に対応している。
車両前面に表示される編成番号は「Nxxx」だが、正式な編成番号は熊本配置車は「NTxxx」、大分配置車は「NOxxx」である。編成記号の「N」は以前715系に使用されていた(N101 - 112編成)が、同系列は1998年(平成10年)までに全車廃車されており、本系列との記号重複は生じていない。
製造
N001 - N026の2両編成26本(52両)が一度に製造された。技術上の理由により、ほとんどが日立製作所製であるが、N026編成のみ小倉工場製である。N015編成は2000年(平成12年)頃にN027に改番されており、現在の編成番号はN001 - N014, N016 - N027である。
これ以降は同一の設計思想で転換クロスシートを採用した817系に移行し、本系列の増備は行われていない。
形式別概説
運用
現在の運用区間は、以下のとおりである。
熊本運輸センター所属車
1999年10月1日のダイヤ改正に併せて、熊本運転所(現・熊本鉄道事業部熊本車両センター、略号「熊クマ」)にN001 - N017の17本が配置された。このうちN007~N010は豊肥本線高速鉄道保有株式会社が保有している。その後、前述のとおりN015はN027に改番された。同時に、2両編成単独運転時は、車内収受式ワンマン運転を実施するようになった。
配置当初、運用線区は鹿児島本線銀水 - 八代間および豊肥本線熊本 - 肥後大津間が中心で、朝1本下りのみ鳥栖始発の運用があった。
2005年(平成17年)3月1日のダイヤ改正により、N016および017が大分鉄道事業部大分運輸センター(当時)に転出し、代わりに大分に配置されていた817系V012および013が当センターに転入した。また、同改正で鳥栖 - 銀水間でのワンマン運転が開始されたことから、熊本地区だけでなく、北部九州地域本社管内(現在は本社鉄道事業本部管内)でも常時運用されるようになった。これに伴い、南福岡電車区の運転士も本系列の乗務を担当するように改められた。更に、この改正で当センターに転入してきた817系も、同区間で使用されるようになったが、同系とは運用が分離されている。ただし、互いに代走することがあるほか、同系との併結運用もある。2012年(平成24年)3月17日のダイヤ改正より、当センターの同系が博多 - 鳥栖間にも乗り入れるため、代走で乗り入れることがある。
1区分番台1編成の717系900番台が当センターに在籍していた時期(2004年3月 - 2007年3月)は、本系列が代走に充当されていた。
2006年(平成18年)3月のダイヤ改正で、ワンマン運転が駅収受式に改められたため、運賃箱や整理券発行器を使用しなくなった(運賃表示器の駅名表示のみ使用)。
大分車両センター所属車
熊本配置の17本と同時に、大分鉄道事業部大分運輸センター(現・大分鉄道事業部大分車両センター、略号「分オイ」)にも、N018 - N026編成の計9本が配置された。
運用区間は前述のとおりだが、中津 - 佐伯間の運用が主体であり、2009年3月14日のダイヤ改正により、中津 - 柳ヶ浦間でのワンマン運転開始され、この区間でも815系電車2両編成で運用されるようになり、大分地区での列車車両数が不足する関係で毎日811系電車が大分地区でも運用開始された。 815系電車の大部分がワンマン運転を実施している。
2005年3月に熊本からN016およびN017編成が転入したことにより、N016 - N026の11本配置となった。
大分地区でも2006年3月の改正で、ワンマン運転が駅収受式に改められた。
ちなみにN018編成の運転台の後ろ(上り方向)にブルネル賞受賞プレートが掲出されている。