建築物管理
建築物管理(けんちくぶつかんり、英:Building Maintenance)とは、建築物を使用し、維持・管理するために、清掃・点検・修繕などの各種業務を行うこと、またはそれを請け負う事業のこと。 ビルメンテナンス 、ビル管理とも。略称はビルメン。
目次
概要
業界の特徴
建築物の所有者(ビルオーナー)が直接雇用する場合は少なく、専門事業者に請け負わせることが多い。
市場の約3割を官公庁物件が占めるため、官公庁の発注の形態や仕様などが業界に与える影響が大きい。
売上高の約半分が東京に集中する都市型産業である。
初期投資が軽微ですむアウトソーシング業務であり新規参入がしやすく、事業者の大半は中小企業である。
原価構成のうち約7割が人件費となる労働集約型である。したがって、受注価格の変動が労働条件や雇用に直接的な影響を及ぼす。
市場規模とは裏腹に、労働者にとって魅力的なイメージに乏しく、ブルーカラーの3Kイメージを払拭できず、常に人材不足である。
各業務の概要
これらの業務を請け負うには、ビルクリーニング技能士・清掃作業監督者・病院清掃受託責任者・建築物環境衛生管理技術者(通称:ビル管理士)・統括管理者・電気主任技術者などの資格が必要である。
特に、電気工事士・ボイラー技士・危険物取扱者をビルメン資格3点、冷凍機械責任者を追加したのをビルメン資格4点セットという。
清掃・衛生管理
建築物の内部やその周辺を清潔に保つとともに、廃棄物を分別回収する。詳しくはビルクリーニングを参照。
また、衛生害虫害獣の侵入を防ぎ、利用者の健康を守る。(ゴキブリ・ハエ・ネズミ等の駆除など)
設備管理
電気設備・空気調和設備・給排水・衛生設備・防災防犯設備・搬送設備・通信情報設備などの総合管理、運転監視、定期点検を行い、異常の早期発見・緊急対応を行う。また、故障箇所の補修を行う。
常駐警備・防災
事件や事故・火災などの災害を未然に防ぐために監視・巡回をする。
また、鍵やセキュリティーカード、駐車場の管理業務を行う。
さらに、万一、事件や事故、災害が発生した場合は、利用者の避難誘導・負傷者の救護・警察機関や消防機関等への通報・初期消火などを行う。
管理サービス
- 入口での受付・電話応対
- エレベーター管理
- 郵送物管理
- 食堂運営
- 自販機・給湯器の管理
- 屋内・屋外・屋上の植物の管理
- ホテルや病院のベッドメーキング
- 改修・改造:法規などの社会情勢・用途の変更などに対応するための工事を行う。
- 不動産契約管理・料金回収:不動産賃貸などの契約管理、料金回収を行う。
日本での沿革
戦前までは、大規模な建築物はほとんど無く、そういった建築物もビルオーナーが管理要員を直接雇用していた。
戦後の1940年代後半に、GHQが丸の内地区の建築物を数多く接収し、その清掃を日本人に組織的に行わせたのが始まりといわれる。
1950年代も、サンフランシスコ講和条約締結後にアメリカ合衆国大使館の清掃を外部委託したことから、徐々に日本の官公庁や一般建築物も、清掃を外部委託し始めた。
1960年代においては、高度経済成長に伴う建築物の増加により大きく成長し、清掃のみならず、常駐警備・防災、設備管理、業務サービスなど総合的に行う事業者が現れた。
その後、1965年起工、1968年にオープンした霞が関ビルを皮切りに、大都市(特に東京)を中心に日本は高層ビル建築ラッシュを迎えた。
1970年代に入り、新宿新都心の開発が始まり京王プラザホテル、新宿住友ビルの竣工、また池袋にはサンシャイン60が建設されるなど、ますます高層ビル建築が進んだ。
1980年代に入ると一旦円高不況で景気が低迷するも、バブル景気に突入し、土地神話による大都市の再開発プロジェクトなども進んだ。そのような中で、建築物管理業はさらに多様化して発展し、事業者数・売上高ともに拡大していった。
しかし、バブル崩壊により、1990年代以降はさまざまな問題を抱え、2010年現在においても、業界全体の低迷が見られる。
日本の業界の課題
- 管理費の低下 - 長期不況下で賃料収入が低迷し、請負原資となる管理費が低下
- ビルマネジメント事業者の登場 - 不動産証券化などにより、個別建築物ごとの金融・会計・営業・労務・監査などの収益・資産管理業務を専門的にビルオーナーから請け負い、ビルメンテナンスはその下位に位置づけられるようになった。
- 賃金低下 - 事業者の乱立により品質を無視した値下げ合戦が後を絶たず、非正規雇用も増大している
- 品質管理の不備 - 事業者が乱立し、事業者によって品質がまちまちであるため、業界全体が外部より信頼を失っている
事業者の種類
日本における主な建築物管理業者は、不動産会社(ビルマネジメント)系列、ゼネコン系列、電機メーカー系列、鉄道会社系列、独立系などに分類される。
具体的な事業者については、Category:建築物管理業を参照。
- 不動産会社(ビルマネジメント)系列 - 親会社である不動産会社が所有・運営している建築物を主な顧客とし、一般的な建築物管理業務のみならず、親会社と連携し、営業・経理・事務・対外交渉・収益確保などの、いわゆるビルマネジメント事業も行っている。
- ゼネコン系列 - 親会社であるゼネコンが施工した建築物を主な顧客とする。一般的な建築物管理業務のみならず、親会社と連携して改修・改造工事も行っている。
- 鉄道会社系列 - 親会社の持つ列車・駅ビルなどを主な顧客とする。
大企業の子会社である事業者については、親会社が持つ信頼性・ブランドを活かしたり、スケールメリットを発揮し、品質面や技術面の得意分野を強みにして差別化している。また、グループ会社などの固定客を持ち、請負価格も安定していることから、労働条件や賃金等の待遇についても親会社に準じるなど、経営・雇用が比較的安定している。
独立系事業者については、品質面や技術面は千差万別で差が激しく、特定の顧客を持たないことから、比較的経営が不安定で、価格競争による労働条件の悪化を招きやすい。
関連文献
- 書籍
- 論文・記事
- 雑誌
- 月刊『ビルメンテナンス (月刊誌)』(全国ビルメンテナンス協会刊)
- 月刊『設備と管理』(オーム社刊)
関連項目
関連組織
関連資格
関連設備
その他