年金

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年金(ねんきん、テンプレート:Lang-en-short)とは、毎年定期的・継続的に給付される金銭のことである。また、年金を保障する仕組み(年金制度)も指す。制度の運営手法によって、公的年金私的年金に分類される。また個人年金は私的年金とは別に分類する場合が多い。

概説

年金制度は、高齢期の生活の基本的部分を支える年金を保証する仕組みである。

受給者が掛け金や保険料を負担しない、拠出を条件としない年金を無拠出制年金という。これに対して、保険の仕組みを取る年金制度を年金保険と呼び、被保険者が掛け金や保険料を負担(拠出)し、年金財政はこの収入によって確立されることになる。このような受給者にとって有償な年金を拠出制年金という。この場合には、掛け金や保険料、加入期間(保険料納付期間)、受給者の所得・資産などに応じて、支給される年金額も異なることが多い。

強制加入の年金保険は世界で初めてドイツ帝国初代首相オットー・フォン・ビスマルクが始めたとされるテンプレート:要出典

今日、多くの国の公的年金は、年金保険の形を取っている。公的年金において保険制度ではなく税方式を取っている国としてはニュージーランドがあるテンプレート:要出典。また、民間保険会社信託銀行、その他の会社や私的団体によって運営される年金においても、拠出制年金が採用される。

各国の年金制度

日本

国民年金も参照

概要

1959年昭和34年)11月1日施行の「国民年金法」においては、「養老年金」は、一定の年齢に達した者の中で、一定の所得以下の者に限定して支給するものであった[1]。その財源は国庫から賄われた。1961年(昭和36年)4月から国民年金法の適用(保険料の徴収)が開始され、国民皆年金制度が確立された。その後、1985年(昭和60年)の年金制度改正により、基礎年金制度が導入され、現在の年金制度の骨格ができた。

産業構造が変化し、都市化、核家族化が進行してきた日本では、従来のように家族内の「私的扶養」により高齢となった親の生活を支えることは困難となり、社会全体で高齢者を支える「社会的扶養」が必要不可欠となっており、公的年金制度は、安心・自立して老後を暮らせるための社会的な仕組みを目指して導入されたが、近年の少子化、財政危機の中において、逆に国民の不安を助長する仕組みになりつつある。[2]

日本における年金に関しては工業規格JAS規格などと違い、一般的に使われる言葉、社会保険庁日本年金機構をはじめ、社会保険労務士など専門家が使う言葉、公式書類に記載される言葉、年金拠出者や年金受給者が理解しているとして使う言葉に微妙に違いがあるテンプレート:要出典

正式名称が長いだけに略して使われることが多い。年金は個人個人が国やその機関に働きかける申請主義を採っている社会システムであるが、年金が持つ加入義務と受給権利の立場からそれぞれの言葉意味する事の正しい理解が必要とされるテンプレート:要出典

また、段階によって呼称が変わる一例として「国民年金保険料」として25年間以上掛け続けたものが、一旦受給者となると「老齢基礎年金」として受給するもので、受給の段階では「国民」の表記は消えてしまう。 一方、厚生年金保険の場合は「老齢厚生年金」と呼ばれるものを受給し、「厚生」の表記は無くならない。

巷で使われる「年金を払う(払い続ける)」は正しくない。例えば公的年金は国が個人に支給するものであり、個人が現役時代に支払うのは「年金保険料」であるテンプレート:要出典

年金制度の歴史

日本で最も古い年金は、軍人への恩給であり、1875年明治8年)に「陸軍武官傷痍扶助及ヒ死亡ノ者祭粢並ニ其家族扶助概則」と「海軍退隠令」、翌1876年(明治9年)に「陸軍恩給令」が公布された。その後、公務員を対象に別々に作られた恩給制度を一本にまとめ、1923年大正12年)に「恩給法」が制定されたテンプレート:要出典

日本初の企業年金鐘淵紡績(クラシエブランドやカネボウ化粧品などの源流となる、後年カネボウとして知られた紡績会社)の経営者、武藤山治ドイツ鉄鋼メーカの従業員向け福利厚生小冊子1904年(明治37年)に入手し、研究後翌年1905年(明治38年)に始め、その後三井物産なども始めたテンプレート:要出典

民間労働者の年金は、1939年(昭和14年)に船員保険の年金保険が公布され、そして厚生省の設置や国民健康保険法の制定など社会保障政策を進めいていた当時の近衛内閣で厚生省官僚だった花澤武夫らによりナチス・ドイツの年金制度を範として労働者年金保険法(1944年(昭和19年)に適用対象を拡大し、「厚生年金保険」に改称)を1941年3月11日に公布、1942年(昭和17年)6月に施行したテンプレート:要出典。導入の際には戦時中ということで大蔵省及び大日本帝国陸軍から反対があったものの、支払いは数十年先のことであり、当面は戦費調達を目的として日本の国民皆年金制度は始まった。

戦後は、1958年(昭和33年)に国会議員互助年金1959年(昭和34年)に「国民年金」というように職域ごとに年金制度が制定されていった。産業構造の変化等により財政基盤が不安定になったことや加入している制度により給付と負担の両面で不公平が生じていたことから、1984年(昭和59年)、職域集団ごとに分立していた制度を見直し、全国民共通の基礎年金制度を導入する大改正を行うことが閣議決定され、1985年(昭和60年)に実施されたテンプレート:要出典1997年(平成9年)には旧三公社(JRNTTJT)の共済年金、2002年(平成14年)には農林共済が厚生年金へ統合された。

加入と受給

日本の年金制度は3階建てとなっている。原則として、20歳以上60歳未満の日本に居住するすべての国民は、国民年金給付または受給段階では老齢基礎年金と言う)に義務として強制加入し、資格期間が25年以上ある人が65歳になった時に1階部分として老齢基礎年金受給できる。

民間サラリーマン公務員等には、厚生年金共済年金に企業や組織が義務として強制加入しなければならず、自動的に加入していると見なされる1階部分の老齢基礎年金に加えて2階部分の老齢厚生年金や退職共済年金を受給できる。

このほか、任意の選択として個人では国民年金基金確定拠出年金に、企業では従業員のために各種の企業年金に任意に加入して掛金を拠出し、老後に給付することができる。
更に勤務先に関係なく、全くの個人の選択として個人年金とされる年金保険なども有る。

また、障害者になった場合には障害年金が、死亡した場合には遺族年金が受給できる。

1階部分(公的年金
最低限の保障を行う国民年金基礎年金老齢基礎年金(保険料は定額)
2階部分(公的年金)
現役時代の収入に比例した年金を支給する厚生年金共済年金(保険料は収入の一定割合)
3階部分(私的年金
企業年金厚生年金基金確定給付年金等)、確定拠出年金(企業型、個人型)、国民年金基金(国民年金に2階部分に当たる公的年金が存在しない為、本基金を「2階部分」に分類する場合がある)
公的年金制度
2階部分   厚生年金受給時の正式呼称は老齢厚生年金 国家公務員共済 地方公務員共済 私立学校教職員共済
1階部分 国民年金基礎年金受給時の正式呼称は「老齢基礎年金」)
加入者 個人事業主、無職者及び
パート・アルバイト等
厚生年金加入基準を
満たさない給与所得者
第2号被保険者の
被扶養配偶者
民間サラリーマン 公務員等
  第1号被保険者 第3号被保険者 第2号被保険者

加入者数の推移

  • 2006年3月末現在の公的年金の加入者数。[3]
    • 第1号被保険者 自営業者:400万人、無業者:700万人、パートなど:600万人、その他:600万人
    • 第2号被保険者 厚生年金:3300万人、各種共済年金:500万人
    • 第3号被保険者 第2号被保険者の被扶養配偶者:1100万人

保険料

国民年金保険料は、平成17年(2005年)4月から毎年280円ずつ引き上げ、平成29年(2017年)度には月額16,900円に固定する計画。厚生年金保険料は、平成16年(2004年)10月から保険料率(労使折半)を毎年0.354%引き上げ、平成29年(2017年)9月から18.3%に固定する計画。

  • 平成25年(2013年)度保険料
第1号被保険者の国民年金保険料は、月額15,040円(定額)。
第2号被保険者の厚生年金保険料率は、標準報酬月額の16.766%(9月現在)の労使折半。(坑内員・船員は17.192%(9月現在)の労使折半)
第3号被保険者の保険料本人負担はなく、配偶者の加入している年金の保険者が負担。

関連項目

標準的な年金額

2004年改正では、標準的な年金受給世帯における受給し始めた(65歳)時点の年金額(夫婦の基礎年金と夫の厚生年金)の現役世代の平均手取り収入に対する比率(所得代替率)で見て、50%を上回る給付水準を確保することとされた。

  • 標準世帯
夫が平均的収入で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯
年金額の見通し

年金を受給し始めた年(65歳)以降の年金額(名目額)は物価の上昇に応じて改定されるが、通常は物価上昇よりも賃金上昇率の方が大きいため、その時々の現役世代の所得に対する比率は低下していく。マクロ経済スライドによる調整期間においては、新たに年金を受給し始める者だけでなく、既に年金を受給し始めている者についても年金改定が緩やかに抑制され、年金額の現役世代の所得に対する比率は低下する。ただし、名目の年金額は、物価や賃金が下がる場合を除き、下がる事はない。

老齢基礎年金を参照。

2006年度見通し

平成19年(2007年)3月に公表された「厚生年金の標準的な年金額(夫婦二人の基礎年金額を含む)の見通し【生年度別、65歳時点】-暫定試算-」の経済前提基本ケースで出生中位場合は、昭和16年(1941年)度生まれ(65歳)の月額22.7万円(所得代替率59.7%)から所得代替率は徐々に下がり、昭和61年(1986年)度生まれ(20歳)では月額37.3万円(所得代替率51.6%)となる。

  • 経済前提基本コース
最近の経済動向を踏まえた設定
  • 出生中位
2055年の合計特殊出生率を1.26に設定

財政運営

財政の均衡

日本の年金制度は、現役世代の保険料負担で高齢者世代の年金給付に必要な費用を賄うという世代間扶養の考え方を基本に「賦課方式」により運営されているが、近年、経済の長期的停滞の下で人口少子高齢化が急速に進行している。

世代間扶養の考え方に基づく財政運営方式では、保険料負担の急増や給付水準の急激な抑制が不可避となることから、従来から一定規模の積立金を保有することにより、将来の保険料負担の上昇及び給付水準の低下を緩和することとされている。2004年改正前の年金額の改定は、給付水準維持方式により原則として5年ごとに行う財政再計算に合わせて、賃金消費支出などを総合的に勘案して行われ、保険料負担は段階的に保険料を引き上げる段階保険料方式がとられていた。また、財政再計算が行われなかった年度は、完全自動物価スライドにより年金額の改定が行われていた。

  • 給付水準維持方式
年金額の給付水準を将来にわたり維持するために必要な費用を賄うための財源(保険料等)を確保する方式。
  • 財政再計算
将来推計人口(出生率や平均余命、予定死亡率)、積立金の予定運用利率や経済情勢(賃金や消費支出の変動)を勘案し、今後の年金額やその給付水準を将来にわたり維持するために、今後必要な負担(保険料額)を5年ごとに見なおすこと。
有限均衡方式

2004年法改正においては、厳しい年金財政状況を踏まえ、社会経済と調和した持続可能な年金制度を構築するために、給付と負担のあり方の見直しが行われた。

将来のすべての期間について給付と負担の均衡を図り(永久均衡方式)将来にわたって一定の積立金を保有することを改め、おおむね100年間で給付と負担の均衡を図り、その財政均衡期間の最終年度に給付費の1年分程度の積立金を保有すること(有限均衡方式)とし、積立水準の圧縮分を次世代、次々世代の給付に充てることとした。

  • 有限均衡方式
すでに生まれている世代の一生程度(概ね100年間)の期間(財政均衡期間)について、収入(基礎年金拠出金・国庫負担・積立金)と支出(給付費)の均衡を図っていく財政運営で、定期的な財政検証ごとに財政状況の現況分析と財政状況の見通しを立て、その見通しの期間を徐々に移動させていく財政運営。この場合、積立金の水準は、財政均衡期間の最終年度2100年(2004年財政再計算)において支払準備金程度(約1年分の給付費)とすることとされている。
  • 財政均衡期間
すでに生まれている世代の一生程度(概ね100年間)の期間における収入(基礎年金拠出金・国庫負担・積立金)と支出(給付費)の均衡を図ることとし、そのため定期的に財政検証(財政状況の現状分析)と財政の見通しを立てることとされている期間。
マクロ経済スライド(少子化と長命化に伴う年金の減額率)

2004年法改正では、給付と負担の見直し方については、最終的な保険料の水準を法律に規定し(保険料水準固定方式)、その保険料の範囲内で年金給付を行うことを基本とした。年金額改定は、新規裁定者(68歳未満)は名目手取り賃金の伸び率(変動率)によるスライド、既裁定者(68歳以上)は物価の伸び率(変動率)によるスライドにより行われる。このため、これまでのように5年ごとの財政再計算(保険料の改定)は行わず、財政状況を検証するため、少なくとも5年に一度、「財政の現況及び見通し(財政検証)」が行われる。(初回は平成21年までに実施)

また、財政均衡期間において、必要な積立金が確保できないなど財政の不均衡が見込まれる場合には、賃金や物価の変動と合わせて、少子化(公的年金加入者の減少)や高齢化(平均余命の伸び)といった経済情勢や社会情勢などの変動に応じて、給付の水準を自動的に調整する仕組み(マクロ経済スライド)が導入された。マクロ経済スライドによる調整期間における年金額改定は、新規裁定者(68歳未満)は名目手取り賃金の伸び率(変動率)×スライド調整率、既裁定者(68歳以上)は物価の伸び率(変動率)×スライド調整率により行われる。

  • スライド調整率=公的年金加入者の変動(減少)率×平均余命の伸び率(0.997)
  • 公的年金加入者の変動率=3年度前の公的年金加入者総数の変動率(3年平均)
  • 平均余命の伸び率(0.997)=65歳時の平均余命の伸び率(平均的な受給期間の伸び率は0.3%)
財政検証
  • 年金事業の収支

保険料、国庫負担、給付に要する費用など年金事業の収支について、今後おおむね100年間における見通しを作成し公表する。

  • マクロ経済スライドの開始

今後おおむね100年間において財政の均衡を保つことができないと見込まれる場合には、マクロ経済スライドの開始年度を定める。(現在、この開始年度は政令で平成17年度と定められ、マクロ経済スライドは発動し得る状態となっているが、平成12~14年度の物価スライドの特例が解消していないため、マクロ経済スライドによる給付費の調整は行われていない。)

  • マクロ経済スライドの終了

マクロ経済スライドを行う必要がなくなったと認められる場合には、マクロ経済スライドの終了年度を定める。

  • 調整期間

マクロ経済スライドによる調整期間中に財政検証を行う場合には、マクロ経済スライドの終了年度の見通しを作成し公表する。

影響を与える要素

年金財政(所得代替率)に影響を与える主な要素は人口関連と経済関連があり、この2つを勘案して将来の給付水準を設定する。

人口関連

  • 出生率
出生率が低下すると、その世代が被保険者となる約20年後以降に被保険者が減少するため、将来の保険料収入が減少し、所得代替率が低下する。
  • 寿命
寿命が延びると年金給付費が増大し、所得代替率が低下する。

経済関連

  • 運用利回り
実質的な運用利回りが上昇すると、運用収入が増加し、所得代替率は上昇する。
  • 賃金上昇率
実質賃金上昇率が上昇すると、保険料収入はその分上昇するが、年金給付費の延びはそれ以下(物価により改定)のため、所得代替率は上昇する。
  • 物価上昇率
物価上昇率が低下すると、マクロ経済スライドの調整効果が減殺される(年金の名目額が減少しない範囲で調整する)ため、所得代替率は低下する。
  • 厚生年金被保険者数・労働力率
被保険者数、労働力率が増加すると、保険料収入が増加し、所得代替率は上昇する。
  • 積立金の水準
積立金が増加すると、運用収入が増加し、所得代替率は上昇する。
関連項目

年金制度の課題

年金制度に関する国民の関心は高く、制度の持続可能性の確保世代間・世代内の不公平の是正が求められている。2004年(平成16年)の年金改正法の附則に「社会保障制度全般についての一体的な見直し」が明記されたことにより、同年7月「社会保障の在り方に関する懇談会(内閣官房長官主宰)」が、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくために、税、保険料等の負担と給付の在り方も含めて議論を開始し、計18回の審議を行った。2006年5月、同懇談会は、社会保障の給付と負担の将来見通しを示し、「今後の社会保障の在り方について」の議論を取りまとめた。

世代間格差

自由民主党阿部俊子衆議院議員は、第177回国会 衆議院厚生労働委員会 第3号(平成23年3月8日(火曜日))で、年金すべてに関し、社会保障の世代間格差は70歳代は納めた額の8倍、20歳代は納めた額の2倍もらえるかどうか?と質問した。

阿部俊子の質問に対して、厚生労働副大臣大塚耕平は、世代会計で世代間の負担と受益を比較すると、大体40歳ぐらいを境に、それより若い世代は、生涯の世代会計計算をすると、受益よりも負担の方が大きい傾向が顕著であると答え[4]、事実上、高齢者層へ納付額の何倍も支給するために、低年齢者層への支給が削られている状況が浮き彫りになっている。

急速な少子高齢化

急速な少子高齢化の進展により、国民の間で年金制度の持続性への不安が高まっている。2004年の年金改正法時における2005年出生率の前提は1.39であったが、実際の出生率は予測を下回り1.25となり少子化がさらに進んだ。超高齢社会においても持続可能な年金制度の構築が急務である。

新人口推計

2006年12月に発表された新人口推計(中位推計)では、女性の生涯未婚率を23.5%に見直して合計特殊出生率を1.26に下方修正した結果、20歳~64歳の現役世代の人口と65歳以上の高齢者の人口との比率は、2055年には、1.3:1になると修正された。

負担と給付のバランスを確保するためには、高齢者、女性、若者、障害者の就業を促進し、制度の担い手を拡大してゆくことが重要である。高齢者の就業機会の確保は、高齢者の高い就業意欲に応えつつ、制度の担い手としての役割が期待されることから、増加する年金給付の抑制や高い年金依存度の緩和につながる。また、女性や若年者の無業状態、失業を改善することが、少子化対策と併せて将来の支え手を増やしていくことになる。

また、人口予測は外れ続けているため、財政再計算のたびに修正を施さなければならないという事態が起きており、人口予測を当てることなどが必要だと主張するところもある[5]

合計特殊出生率の予測と結果
2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2020年 2030年 2040年 2050年 2055年
低位予測 1.2662 1.1626 1.1185 1.0980 1.0806 1.0425 1.0384 1.0504 1.0591 1.0630
中位予測 1.2942 1.2467 1.2297 1.2232 1.2184 1.2289 1.2382 1.2517 1.2604 1.2640
高位予測 1.3243 1.3170 1.3179 1.3214 1.3282 1.4783 1.5264 1.5368 1.5429 1.5461
結果 1.32 1.34 1.37 1.37
関連項目
公的年金一元化

公的年金制度の一元化は、財政の安定性、ライフスタイルに対する中立性、制度間の公平性、制度の利便性(分かりやすさ)などのメリットがある。転職を繰り返したり、脱サラをして自営業に転職した場合、あるいは自営業からサラリーマンに転職した場合など、現在の多様なライフスタイル・キャリア形成に対応した仕組みにする必要がある。また、正社員非正社員との均衡処遇を図り、雇用保険と年金で共通の適用ルールにすることにより、雇用形態の選択に対して中立的な仕組みにする必要がある。これは、共助のシステムである本来の機能の在り方という観点からも、非正社員のウエイトが高い産業・企業と低い産業・企業の間において生じている社会保険料負担の不均衡、更には未納・未加入問題や適用範囲の是正の観点からも、重要である。

被用者年金一元化

一元化の議論には「財政単位の一元化」と「情報の一元化」がある。財政単位の一元化とは、報酬比例部分の財政単位を一元化して制度設計し、給付と負担を調整する。情報の一元化とは、被保険者情報と受給者情報を一元化し、職業や住所を変えるという移動があったときに一元化された情報をもとに確認する仕組みである。

  • 2006年4月、「被用者年金制度の一元化等に関する基本方針について」が閣議決定された。公的年金制度の一元化を展望しつつ、民間被用者、公務員を通じ、将来に向けて、同一の報酬であれば同一の保険料を負担し、同一の公的年金給付を受けるという公平性・安定性を確保する。また、職域部分を廃止し、民間準拠の考え方を踏まえながら、衆参両院の国会議員、公務員の職務や身分の特殊性など公務員制度との関連から新たな仕組みを設けるとした。
  • 2007年4月、共済年金の1・2階部分の保険料率を厚生年金の保険料率(18.3%上限)に統一し、給付を厚生年金制度に合わせる「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
パートの厚生年金適用の拡大
  • 2007年4月、上記「被用者年金制度の一元化法案」の中に、パートタイム労働者の厚生年金(社会保険)の適用の拡大が盛り込まれた。
  • 2011年9月1日からの新しい適用基準は、(1) 週所定労働時間が20 時間以上 (2) 賃金が月額98,000 円以上 (3) 勤務期間が1年以上の条件をすべて満たす人である。
  • 従業員300 人以下(現在、厚生年金の適用対象とされている従業員の人数で算定)の中小零細事業所の事業主は、新しい適用基準を猶予する。
  • 以上は「案」として2007年10月現在、国会提出審議中である。
国民年金と被用者年金の一元化
  • 高齢(退職)所得リスクの違い、所得形態及び納付形態の違い、保険料賦課基準所得の定義の違いといった被用者と自営業者等との相違点を解消するという条件整備が不可欠である。ただし、仮に納税者番号制度が導入されたとしても、自営業者等の所得把握には限界がある。
  • 事業主負担をどうするか、自営業者等に所得比例保険料負担を求めることに賛同が得られるかどうか。
  • 特に、被雇用者は雇用主負担分があるが、その分を自己負担とすると自営業者等は2倍の負担を強いられることになり、政治の力で反対を押し切ることができるかどうか。
  • 現行制度と比べ給付と負担が大きく異なることとなると考えられるため、これについての十分な分析が必要となる。
  • そもそも被用者と自営業者は定年の有無やリスクなど全くライフスタイルが異なるのに、政府の都合で同じ制度を押し付けることが公平と言えるのか。
国民年金の空洞化

国民年金は、創設当初の完全積立方式から修正積立方式による財政運営に移行した。その後、年々の年金給付に必要な費用を、その時々の被保険者が納付する保険料で賄われる部分が徐々に拡大し、1985年の基礎年金制度導入を含め年金制度全体が世代間扶養の性格を強めてきたため、現在では賦課方式に移行したと言える。しかし、近年、国民年金の納付率が低下してきたことで、賦課方式における不公平感が大きくなっている。

納付率の低下

近年の国民年金保険料の納付率は、1992年(平成4年)度の85.7%をピークに年々低下し、2002年度は大きく低下した。2003年度からは若干上昇したが2006年には66.3%、2007年度上半期61.1%と再び低下している。テンプレート:要出典 また、納付を免除、猶予された人の分を除外せずに算出した国民年金保険料納付率の全国平均は2006年度は49%である。

  • 近年の低下要因 ― 1995年度から、20 歳到達者で自ら資格取得の届出を行わない者に対して、職権適用を実施したが、職権適用者には、年金制度への関心や保険料納付の意識が薄い者が多い。経済の低迷、就業形態の多様化 により、離職等による第1号被保険者の増加や保険料負担能力の低下。
  • 社会保険庁の年金記録の不備による年金制度への信頼の低下
  • 2002年度の低下要因 ― 免除基準を改正したことで、免除から外れた者が多く、これらの者の納付率が極めて低かった。保険料収納事務が市町村から国へ移管したが、収納体制の整備が遅れ、納付組織を活用できなかった。
国庫負担2分の1への引上げ

年金給付に必要な費用の財源は、負担対象者や負担方法により社会保険方式と税方式がある。国民年金は他の公的年金と同じ社会保険方式を採用しているが、保険料の他に国庫負担もあり、2004年の年金法改正で基礎年金の国庫負担の割合を3分1から2分の1へ引上げることになった。2007年度を目途に、所要の安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上で、2009年度までに実施することになっているが、まだ、財源の目途は立っていない。

財源方式を巡る議論

公的年金制度の土台である国民年金(基礎年金)の空洞化を解消し、無年金・低年金者をなくすため、また、保険料の負担についての世代間の不公平感を解消するためにも、基礎年金を全額税で賄う必要がある(税方式)という意見に対しては、以下の意見がある。

賛成論
  • 社会保険方式は強制貯蓄の側面を有し(積立方式)、もしくは人口構成の変動に脆い(賦課方式)など制度的な問題点が大きい。低所得者層を中心とする納付率の低下や世代間の負担給付バランスの著しい不公平など、実際に問題が生じている。
  • 基礎年金はそもそも老後の生活維持のための基礎的な給付を行うものである。現役時代に十分な積立が出来なかった対象者に支給する簡素な基礎年金制度で十分であり、それにより被保険者及び納税者全体の平均的な負担も軽く出来る。
  • 社会保険方式の維持コスト(行政費用、社会保険庁の運営等)が被保険者の負担もしくは納税者に転嫁され、社会全体からみて無駄が生じている。税方式に完全に移行するかはともかく、制度や財源について効率化が必要である。(→小さな政府政府の失敗
反対論
  • 社会保険方式は、自立・自助を基本とする日本の経済社会に整合的であるのに対し、税方式は、給付と負担の関係が明確ではなく、生活保護との違いが不明確になり、日本の経済社会に相応しくない。
  • 社会保険方式による年金制度が定着している中での税方式化は、これまで保険料を納付してきた者と、保険料を納付せず税方式の年金を受ける者との公平が図られなくなるなど、国民の不公平感を増す。
  • 高齢者に所得格差がある中で、一律に給付を行う基礎年金を全額税財源で賄う仕組みとすることは、税財源による再分配政策としての公平性の観点から、適当ではない。
関連項目
第3号被保険者

主婦(第3号被保険者)に対しては、基礎年金という形で受給権を個人化し女性の年金権を確立したが、保険料負担はまだ世帯単位になっている。無業の配偶者の扱い(受給権の個人化と負担の世帯単位という食い違い)をどうするかの方法は2つあり、世帯単位の負担を、みなし個人負担という考え方で受給権の個人的な単位との間で調整する方法(所得の2分の2乗法や消費税)と保険料の拠出単位を個人化する方法がある。

第3号被保険者不整合記録問題

サラリーマン(第2号被保険者)の配偶者(第3号被保険者)は、夫が退職などで被用者年金制度の資格を喪失した場合、夫ともども第1号被保険者となる。この切り替え手続きは、市役所や町村役場経由で厚生労働大臣への届け出が義務づけられている[6]。この手続きを怠ると年金未加入・保険料未納扱いとなり、結果として年金の受給額が減額され、加入期間が不足する場合は無年金となる。しかし第3号被保険者となる際は事業主経由で手続きが行われたため、多くの元第3号被保険者が切り替え手続きに無知・無関心であり、届け出を行わないため、実際は第1号被保険者の立場にありながら、記録上第3号被保険者のままである不整合が多数発生している。

この記録の不整合問題は昭和60年の国民年金制度開始時より懸念されていたことであり、旧社会保険庁時代から会計検査院により繰り返し適正化を求められてきたが[7][8][9][10]、根本的な是正がなされることなく放置され続けてきた。しかし、2010年1月頃、社会保険機構が簡易調査を行った時点で約100万件の不整合が確認できた[11]ことで、民主党政権内部で問題視されるようになった。

これを受け厚生労働省年金記録回復委員会で検討された結果、以下の措置が厚生労働省年金局事業企画課長・厚生労働省年金局事業管理課長名で通知された[12]。この課長通知の実施は2011年1月1日とされた。

通知の概要は以下の通り。

  • すでに受給している者=現状に変更なし(本来受給資格がなかったり、本来より受給金額が多い場合でも、それらは不問に付す)
  • これから受給する者=本来1号被保険者であった期間もすべて3号被保険者と見なす

この運用により3号を適用した期間を「運用3号」期間と呼称するが、運用3号を適用すると、以下のような不都合が生じる。

  • 正しく切り替えを行っていた者は保険料の払い損となる
  • 未納期間がすでに発覚してそれに対して年金の減額等の裁定を受けている者は、未発覚の者より不利な扱いを受ける

運用3号は「法的に問題がある可能性が高い」として2011年2月16日総務省年金業務監視委員会が調査に入った[13]ことで問題が表面化した。厚生労働省は2月24日、運用3号による救済手続きを停止し[14]、3月8日通知を廃止した[15]。厚生労働省は社会保障審議会内に第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会を立ち上げ対応を検討した結果、2011年5月20日報告書が提出された[16]

報告書の概要は以下の通り。

  • 記録訂正後保険料未納となる期間を「カラ期間」として、これを年金の受給資格期間に繰り入れる
  • 未納分の保険料は過去10年(年金受給者の場合は60歳までの10年間)分の後納を認める
  • 年金受給者の過払い分は過去5年分の返還を求める
  • すでに期間訂正を受けた分に対しても、今回の特別措置の対象とする
  • 運用3号の下で受けた裁定は再裁定を行う
  • 過去10年分の追納額は当時の保険料に国債利回り等を考慮した額とし、追納措置も3年の期間限定とする
  • 障害・遺族年金受給者については、受給権が失われないよう特別措置を講ずる
  • 今後同じような不整合を生じさせないため、以下のような方策が求められている
    • 制度の周知や啓発を行うとともに、被保険者が不整合の事実により容易に気付くことができるようにするための改善が必要
    • 費用対効果にも留意しつつ、新たな不整合期間が生じないようにするための更なる対策を講ずる必要がある
    • 検討が進められている社会保障・税に関わる番号制度が導入された後は、当該制度も活用し、被保険者資格のより適正な管理等を進めていく必要がある

本件に関して2011年11月22日の閣議において国民年金法改正案が決定された[17]。この法案では

  • 保険料未納期間を受給資格期間に算入
  • 3年間に限り、過去10年分の保険料未納分を追加納付を認める
  • 未納状況に応じ年金額を10%以内で減額する
  • すでに支払い済みの過払い分に関しては返還を求めない

と、社会保障審議会第3号被保険者不整合記録問題対策特別部会報告書よりも受給対象者の負担が軽くなっている。しかし、一般の年金記録の不整合記録・誤記では、年金の減額や過払い分の返還を求めているため、「なぜ主婦のみ優遇されるのか」という非難されている[18][19]。この法案は2012年8月10日に成立、2012年10月1日より施行された。

後納制度の通知送付は2012年8月から始まったが、2013年12月末現在の発送総数20,094,890件に対して、実際に受け付けられた申し込みは969,688件とわずか4.8%であり、本問題に対する被保険者の関心の薄さが際立っている[20]

年金制度改革

1961年の国民年金制度の本格的な発足によって国民皆年金の体制が実現してから、公的年金制度は何度も改正されているが、1985年の改正は最も大きく、全国民共通で全国民で支える基礎年金制度が創設された。

これまでの改正
  • 1985年改正では、制度成熟期に加入期間が40年に延びることを想定して、給付単価・支給乗率を段階的に逓減する給付水準の適正化。サラリーマンの妻の国民年金への加入(第3号被保険者制度の創設)による女性の年金権の確立。20歳前に障害者となった者に対する障害基礎年金の保障。5人未満の法人に対する厚生年金の適用拡大。女性の老齢厚生年金の支給開始年齢を2000年までに段階的に55歳から60歳に引き上げ。
  • 1989年改正では、完全自動物価スライド制の導入。学生の国民年金への強制加入。国民年金基金の創設。
  • 1994年改正では、60歳代前半の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢を2013年までに段階的に60歳から65歳に引き上げ。在職老齢年金を賃金の増加に応じて賃金と年金額の合計額が増加する仕組みへの変更と失業等給付との併給調整。賃金再評価を税・社会保険料を除いた可処分所得の上昇率に応じた方式へ変更。育児休業中の本人負担分の厚生年金保険料を免除。
  • 1996年改正では、旧公共企業体3共済(JRJTNTT)の厚生年金への統合。
  • 2000年改正では、老齢厚生年金の報酬比例部分を2025年までに段階的に60歳から65歳に引き上げ。65歳以降の年金額は物価スライドのみで改定。厚生年金の報酬比例部分の給付を5%適正化、ただし従前額を保障。厚生年金加入を70歳未満まで拡大し、65歳~69歳の在職者に対する在職老齢年金を創設。賞与等にも同率(13.58%)の保険料を賦課し、給付に反映する総報酬制の導入。育児休業中の事業主負担分の厚生年金保険料の免除。国民年金保険料の半額免除制度と学生納付特例制度の創設。
  • 2001年改正では、農林漁業団体職員共済組合の厚生年金への統合。
2004年改正

2004年改正では、保険料負担と年金給付のバランスを図るため、保険料負担の上限を固定し、基礎年金の国庫負担割合を2分の1へ引上げる及びおよそ100年かけて積立金を取り崩して(最終的に年金給付費用1年分程度を残す)年金給付に充当させることにより、保険料の引上げをできるだけ抑制する。また、社会全体の所得・賃金の変動(経済変動)や平均余命の伸び・合計特殊出生率(人口変動)に応じて、年金額の改定率を自動的に設定し給付水準を調整するマクロ経済スライドの仕組みを導入して、年金給付をゆるやかに削減し、保険料上限による収入の範囲で給付水準50%以上を確保するとした。

この改正の背景には、少子高齢化による世代間の問題やグローバル化のなかで労働コストを抑制したいという理由から、保険料の引上げが極めて厳しくなっているという状況があった。

保険料
  • 厚生年金保険料は、2004年10月から保険料率(労使折半)を毎年0.354%引き上げ、2017年9月から18.3%に固定する。
  • 国民年金保険料は、2005年4月から毎年280円ずつ引き上げ、2017年度には月額16,900円に固定する。
  • 若年者納付猶予制度の創設。
  • 保険料の申請免除等の承認期間の遡及。
  • 多段階免除制度の導入。
年金給付
  • 60歳代前半の在職老齢年金の一律2割支給停止を廃止。
  • 65歳以降の老齢厚生年金の繰り下げ制度の導入。
  • 70歳以上の在職者に60歳代後半の在職老齢年金のしくみを適用。(ただし、保険料納付はなし)
  • 特別障害給付金制度の創設。
  • 障害基礎年金の受給権者は、65歳以降老齢厚生年金又は遺族厚生年金との併給が可能。
  • 離婚した時に婚姻期間の厚生年金の分割が可能。(ただし、夫婦間の合意または裁判所の決定が必要)
  • 離婚した時に第3号被保険者期間について厚生年金の分割が可能。
  • 子のいない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は5年間の有期年金とし、中高年寡婦加算の支給は夫死亡時40歳以上を対象とする。
  • 保険料納付実績や年金見込額等の年金個人情報の定期的な通知とポイント制の導入。

年金の不正受給

平成22年(2010年)には、高齢者の死を偽装して、家族が年金を不正受給する事件が発覚した。 テンプレート:Main

最低保障年金制度

民主党は2009年、マニフェストとして、「消費税を財源とする『最低保障年金制度』の創設」を主張した。

日本共産党は最低保障年金の財源を全額消費税で賄う案について「企業の保険料負担を軽減し、庶民負担に置き換えるものだ」として反対をしている[21]

年金関連の法律

日本における年金に関する特例法が成立されており、以下の特例法がある。(あいうえお順)

  1. 厚生年金特例法
  2. 障害年金加算改善法
  3. 遅延加算金法
  4. 年金確保支援法
  5. 年金時効特例法

アメリカ

テンプレート:Main アメリカ合衆国の公的年金は、職種などに関わらず「社会保障(social security)」に一本化されている。

  1. 社会保障: 強制加入 社会保障税を所得税と同時に徴収
  2. 個人年金: 任意 税制上の優遇措置あり
  3. 企業年金: 任意
  4. 私的年金: 任意

社会保障

社会保障は、アメリカ合衆国内で所得のある国民、永住外国人などすべての納税者が加入しており、所得の一定割合(年間上限額あり)を「社会保障税」として所得税などとともに内国歳入庁に納付しなければならない直接目的税方式なので、日本の国民年金保険料未納のような問題は起きにくい。納付された社会保障税は、国庫とは別会計の社会保障基金で運用・運営される。自営業者は社会保障税を100%自己負担(日本の国民年金に相当)、会社員は雇用者と折半(日本の厚生年金に相当)であるが、税率、年間納税上限、退職後の支給額との関係などに差はない。研修(J-1)ビザなどで一時的に滞在する外国人は、国内で所得を得ても社会保障税は免除される。

満額支給年齢(Full Retirement Age、FRA)は2012年現在66歳であるが、生年が遅くなるにつれ二ヶ月単位で支給開始年齢が遅くなる(2012年現在、最高67歳まで)。満額支給年齢を待たずに62歳から繰り上げ減額受給(受給開始をFRAから1ヶ月繰り上げるごとに5/9%減額、36ヶ月を超える分は1ヶ月ごとに5/12%減額、最大30%減額)や、70歳まで受給開始を遅らせる繰り下げ加算受給制度(受給開始をFRAから1ヶ月遅らせるごとに2/3%受給額に加算、最大32%加算)もあるが、繰り上げ受給は減額が一生続く以外にもFRA以前に社会保障以外の所得(給与など)を得ている間は減額され、繰り下げ受給は加算分の累計が受給遅延分に追いつくのに繰り下げ期間の長短を問わず実際に受給開始から12年半を要するなどのデメリットがある。ただし、下記に示すように、勤労・事業所得やIRA401(k)からの引き出しなど社会保障以外に一定額以上の課税所得がある場合は、社会保障受給額の一部が連邦所得税の課税対象となり、また累進課税の効果、未来の税率が予測不可能など、損得勘定にはかなり曖昧で大胆な予想・仮定を含む面倒な計算が必要で、加算分の累積が繰り下げ期間中の得べかりし受給額に追いつく時間だけを以て一概に繰り下げ受給が損または得とは断定できない。

社会保障は、社会保障税を納税してきた本人が高齢になり退職した後の生活保障のための老齢年金が基本であるが、以下のような様々な保障も社会保障の一部である。

  • 本人が障碍者になったときの障碍年金
  • 本人が死亡した場合の配偶者と未成年遺族に支払われる遺族年金
  • 未成年(18歳未満)で未婚の実子・養子に対する養育年金(18~19歳の中等教育以下の教育課程にフルタイムで在籍の子、22歳以前に発症した18歳以上の障碍者の子を含む)
  • 夫婦の一方が少額あるいはゼロ社会保障受給の場合、他方の配偶者の社会保障受給額の半分と本人の受給額のどちらか高額を支給する配偶者年金(年齢、結婚期間などの条件あり。離婚した元配偶者にも一定の条件で適用)

日本の厚生年金の受給開始年齢の男女差のような性別にかかわる差別は一切ない。

老齢年金の受給資格を得るには、最低40クレジットの加入実績が必要である。社会保障税の対象となる利子・配当などを除く年間所得の一定金額(2014年現在1,200ドル)ごとに1クレジットが加算されるも、各年度で最大4クレジットまでしか得られないので受給資格条件である40クレジットを得るには10年かかるが、日本の公的年金の最低加入実績の25年よりはるかに短い。日米社会保障協定などで外国の公的年金の加入期間と合算できる場合は6クレジットの加入実績が必要である。1977年度までは所得申告は四半期毎だったので四半期=1クレジットだったが、1978年以降は通年の所得申告になったのでクレジットの計算も1年単位になった[22]。日本語で社会保障について解説している弁護士事務所などのサイトの多くには、未だに四半期=1クレジットであるような誤解が見られる。

支給金額(Primary Insurance Amount、PIA)は、過去に納付した社会保障税の対象所得金額と加入期間で計算される「平均補正月収(Average Indexed Monthly Earnings、AIME)」によって決まる。2013年現在の支給金額の計算方法の概要は以下のとおり。

  1. 受給開始前の35年間の社会保障税対象所得金額(所得を得た年が36年以上ある場合は上位金額の35年)を選ぶ(各年度の上限金額あり)
  2. 各年度の所得金額に物価上昇分を補正するための古い年ほど大きくなる重み係数(例えば1952年の所得は14.46倍)を乗じで合計する
  3. 上記合計金額を420カ月(35年)で除した金額がその人の「平均補正月収」(日本の厚生年金の「標準報酬額」に相当)になる
  4. 上記平均月収額の最初の791ドルの90%、次(791ドルを超える分)の3,977ドルの32%、4,768(791+3,977)ドルを超える分の15%を和したものが支給額(最初の「35年間の所得金額」の各年度に上限金額があるので「平均補正月収」も上限額があり、支給額が青天井になることはない)

日本の老齢基礎年金のように、所得に関係なく毎月一定の保険料を納付し続け、支給金額は保険料の支払い回数に完全正比例で決まる、言わば積み立て型の年金額計算とは違い、生涯労働年数35年をモデルとした所得保障指向である(ただし、日本の国民年金が40年で保険料の払い込み終了となるのとは異なり、35年を超えても社会保障税の対象所得がある限り、既に社会保障受給中でも社会保障税が徴収される)。また、上記の最後のステップで分かるように、平均補正月収が少ない人ほど実際の支給額の平均補正月収に対する割合が大きい。例えば、平均補正月収額791ドルの人の受給金額は712ドル(90%)、4,768ドルの人のそれは1,984ドル(42%)である。これは、社会保障が所得再分配の性格を持っていることを意味する。2013年現在66歳の人の受給額は最低1ドルから最高2,533ドル(月額)である(支給額は事務処理の都合で1ドル単位に丸められる)。

社会保障とその他一切の所得(給与、自営、利子、配当、課税繰り延べ資金からの引き出しなど)の合計収入が一定額(2013年現在、社会保障受給額の半分とその他の所得の合計が単身者で34,000ドル、夫婦の合算申告で年間44,000ドル)を超えると、社会保障の収入の最高85%も連邦所得税の対象となる[23](ただし非居住者の外国人については85%が課税対象――多くの国では租税条約により控除対象となる)。これらの所得には、401(k)や通常IRAのような課税繰り延べ老後資金の取り崩しも含まれる。他に所得があっても支給額そのものが減額されることはない[24]が、例外はWEP(Windfall Elimination Provision、タナボタ排除条項[25])と呼ばれる制度で、外国の公的年金など社会保障税の対象とならない過去の所得に起因する年金所得のある場合、一定額以上の社会保障税の対象となる所得を得た実績が30年未満であると、生年と社会保障税の対象となる所得を得た年数によって2013年現在最高月額395.50ドル減額される。例えば、日本の公的年金を併せて受給する場合、その受給額の一部が社会保障から減額されることがある。これは、前述のように社会保障の目的が老後の所得保障であり所得の再分配であるという理由による。社会保障収入そのものが社会保障税の対象になることはない。州の所得税は州により課税する州としない州がある。

個人年金

個人年金は、確定拠出型IRA(個人退職基金口座)、401(k)、403(b)などが代表的であり、いずれも課税繰延べ(拠出金額は所得から控除され、運用益とともに実際に口座から引き出されるまで課税されない)や運用益非課税などの税制上の優遇措置がある反面、原則一定年齢(59歳半)になるまで引き出せない(59歳半以前の生存中に引き出した場合は、引き出した額について繰り延べられていた所得税と罰金10%が課せられる)、口座間の資金の移動に制限がある、年間拠出額の上限がある、などの制約もあるが、年間拠出額の上限が比較的高く(2013年の401(k)の50歳以上拠出限度額は23,000ドル)、その分節税になることもあり、社会保障だけでは生活費を賄えない中間層の重要な老後資金である。資金の管理及び運用に政府は関与せず、民間の銀行証券会社などが開設する個人年金プログラムの下で口座を開き、複数の投資信託や個別株式などを組み合わせて個人の責任で運用するのが一般的である(複数口座、複数金融機関可)。

総じて言えば、アメリカの政策は、個人が自分で将来必要となる退職資金を貯蓄する自助努力に期待し、そのために解りやすく、影響が大きく、利用しやすい永続的で安定したタックス・インセンティブ(優遇税制)で個人年金を奨励して、退職者が公的年金(社会保障)に対する相対的な依存度を低く抑えようとしていると言える。

企業年金

企業年金は、伝統的には従業員が在職中に拠出した年金資金を元に企業が運用し、一定年齢に達した退職した従業員に終身支給する確定給付年金が主流であるが、近年は、より長生きする退職した従業員への巨額の年金支払いがGMなどの巨大企業の破綻の原因となり、また労働者の就職スタイルの変化(転職を繰り返す)などで、企業にとって負担額が予測可能で労働者にとってポータビリティがある確定拠出型個人年金にシフトしつつある。 またカリフォルニア州公務員カルパースのように、州ごとに公務員の年金基金がある。

その他

日本の「個人年金」に似た、保険会社などの民間会社が販売する、保険金を予め払い込んだ後、毎月一定額を有期契約期間または契約者が死亡するまで終身受け取る確定給付型の私的(個人)年金も存在し、アニュイティ(annuity)と呼ばれており、投資と保険の双方の特徴を兼ね備えている。

アニュイティ商品の形態は様々で、保険金額の支払方法だけをとっても以下の二種類の代表的な方法がある。

  • 保険金を受給開始前に長期間積み立てる
  • 契約時に保険金を一括し払いして即受給開始となる

また、受給期間については

  • 契約時に定める一定有期期間(5年、10年など)
  • 契約者が死亡するまでの終身期間

などがあり、さらに

  • 受給開始後最初の一定期間(5年、10年など)に契約者が死亡した場合は割増の一時金

のように生命保険を兼ね備えているものもある。

一定金額を契約期間あるいは終身受給できるので、契約者のリスクが少なく一見安心に見えるが

  • 「純粋終身」と呼ばれる商品は、受給開始後に契約者が死亡した場合、払込金と累積総支給額の差は全て運営会社のものとなり、遺族などが受け取ることはできない(その分、払込保険金額に対する毎月の受給金額の率が高い)
  • 固定受給金額の場合は物価上昇により受給金の価値が段々目減りする

などのリスクがある。

アニュイティの運営会社は、積立あるいは一括に関わらず、契約者から払い込まれた保険金を基にして契約者に長期間に渡って支払いをするので、形の上では契約者から借金をしてその分割返済をすると見ることもできる。払い込まれた保険金額に対する払い戻し率は、上記の契約期間、生命保険の有無、契約者の年齢など様々な条件によって異なり、当然、(アニュイティの運営会社にとって)リスクの低い契約ほど払い戻し率が高い傾向にある。

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大韓民国

大韓民国では、1988年に導入され、1999年に国民皆年金が実現した [26]

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脚注

  1. 世帯所得による支給制限の基準額を五十万円とした(第38回国会 参議院 本会議 第17号1961年(昭和36)年3月30日)。
  2. [http://www.nikkei.com/money/features/18.aspx?g=DGXNMSFK25008_25072012000000&n_cid=DSTPCS008 受け身ではやってこない 20代のバラ色老後 日経新聞]、追加テキスト
  3. 厚生労働省資料であるとして報道の読売新聞夕刊2007年(平成19年)10月18日2版4ページの記事から引用。
  4. http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009717720110308003.htm?OpenDocument
  5. テンプレート:Cite web
  6. 国民年金法第十二条5項
  7. テンプレート:Cite web
  8. テンプレート:Cite web
  9. テンプレート:Cite web
  10. テンプレート:Cite web
  11. テンプレート:PDFlink
  12. テンプレート:PDFlink
  13. テンプレート:Cite web
  14. テンプレート:Cite web
  15. テンプレート:Cite web
  16. テンプレート:Cite web
  17. テンプレート:Cite news
  18. テンプレート:Cite news
  19. テンプレート:Cite news
  20. テンプレート:Cite web
  21. 2011年5月2日の参議院財政金融委員会における大門実紀史参議院議員の発言
  22. pBenefits Planner: How Credits Are Earned 2014年2月24日閲覧
  23. http://www.irs.gov/pub/irs-pdf/p554.pdf
  24. Retirement Planner: Other Things To Consider 2014年2月24日閲覧
  25. http://www.ssa.gov/pubs/EN-05-10045.pdf
  26. テンプレート:Cite news

参考文献

テンプレート:参照方法

  • 『よくわかる年金制度のあらまし 平成19年度版』 サンライフ企画、2007年1月
  • 『年金相談の手引 平成19年度版 』 社会保険研究所 2007年4月
  • 『厚生年金保険制度回顧録』 財団法人厚生団編 1988
  • HMG(英国政府) (柏野健三訳) 『新福祉契約 英国の野心』帝塚山大学出版会、2008年

関連項目

外部リンク