厚生年金

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テンプレート:Ambox 厚生年金(こうせいねんきん)とは、厚生年金保険法に基づき、主として日本の民間企業の労働者が加入する公的年金制度である「厚生年金保険」から支給される年金である。

  • 厚生年金保険法について、以下では条数のみ記す。

概要

厚生年金保険は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする(第1条)。健康保険とは異なり業務上・通勤途上の災害によるものをも給付対象とするが労働者災害補償保険による給付との間に調整がある。

「厚生年金保険は、政府が、管掌する」と定められ(第2条)、厚生労働大臣がその責任者となるが、実際の運営事務のほとんどは日本年金機構(以下、機構と略する)に委任・委託されている。また、厚生年金基金に係る権限、機構が滞納処分を行う場合の認可等については地方厚生局長等に委任されている。

厚生年金は、基礎年金たる国民年金(1階部分)にさらに上乗せして支給される(2階部分)ものであり、その保険料の一部は、自動的に国民年金へ拠出されている。したがって一般的には、厚生年金加入者は、国民年金にも自動的に加入していることにになる(国民年金第2号被保険者となる)。そのため、財政の均衡、財政の現況と見通しの作成、積立金の運用、年金原簿[1]、併給調整、受給権の保護、給付制限については、国民年金と同趣旨の規定が厚生年金についても置かれている。

適用事業所

法人事業所は、常時使用する従業員の人数・業種に拘わらず、必ず加入することが求められる。個人事業形態においても、適用業種である事業の事業所であって常時使用する労働者が5人に達すれば強制加入となる。5人未満でも、労働者の要求や事業主の同意があれば、加入することができる(第6条)。ただし、いずれの場合も個人事業主本人は厚生年金保険に加入できない。

厚生年金の強制適用事業所は、健康保険強制適用事業所と共通であるが、厚生年金ではさらに、「船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶」も強制適用事業所とされる。

強制適用事業所以外の事業所の事業主は、厚生労働大臣の認可を受けて、当該事業所を適用事業所(任意適用事業所)とすることができる。この認可を受けようとするときは、事業主は当該事業所に使用される者(適用除外者を除く)の2分の1以上の同意を得て厚生労働大臣に申請しなければならない。また、船舶以外の強制適用事業所が強制適用の要件を欠くに至ったときは、自動的に任意適用事業所の認可があったものとみなされる(第7条)。認可があったときは、任意加入に不同意であった者も含めて被保険者の資格を取得する。

任意適用事業所が当該事業所を適用事業所でなくするためには、当該事業所に使用される者(適用除外者を除く)の4分の3以上の同意を得て厚生労働大臣に申請しなければならない(第8条)。

船舶以外の、2以上の適用事業所の事業主が同一である場合には、事業主は厚生労働大臣の承認を受けて、当該2以上の事業所を一の適用事業所とすることができる(一括適用事業所、第8条の2)。一方、2以上の船舶の船舶所有者が同一である場合は、厚生労働大臣の承認を受けることなく、自動的に一の適用事業所とされる(第8条の3)。

被保険者

適用事業所に使用される70歳未満の者は、適用除外に該当しない限り、厚生年金の当然被保険者となる(第9条)。法人の代表者、業務執行者、法人でない組合の70歳未満の組合長についても、労働の対価として報酬を受けている場合は、原則として被保険者となる。

適用事業所以外の事業所に使用される70歳未満の者は、適用除外に該当しない限り、厚生労働大臣の認可を受けて、厚生年金の任意単独被保険者となる。この認可を受けるには、当該事業所の事業主の同意を得なければならない(第10条)。被保険者期間の長短は問わない。また任意単独被保険者は厚生労働大臣の認可を受けてその資格を喪失することができるが、その場合は事業主の同意は不要である(第11条)。

被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を1ヶ月として被保険者期間に算入する。但し、その月にさらに被保険者の資格を取得したときは、この限りでない(第19条)。

70歳に達した時の被保険者の扱い

当然被保険者は70歳に達したときは、その日にその資格を喪失するが、以下の要件を満たした場合は、「70歳以上の被用者」として、在職老齢年金の対象となり、老齢厚生年金の支給停止の対象となる。該当する場合は当該事実があった日から5日以内(船員は10日以内)に事業主は厚生年金保険70歳以上被用者該当届と被保険者資格喪失届を機構に提出しなければならない。

  • 70歳以上であること。ただし1937年昭和12年)4月1日以前に生まれた者を除く。
  • 70歳以上であることを除き、当然被保険者に該当する要件を満たす者。
  • かつて厚生年金保険の被保険者であったことがある者。

当然被保険者は70歳に達したときはその資格を喪失するが、その者が老齢年金の受給資格期間を満たしているとは限らない。そこで、所定の要件を満たした者については、この受給資格期間を満たすまで(年齢制限なし)厚生年金に加入することができる(高齢任意加入被保険者)。適用事業所に使用される場合は厚生労働大臣に申し出て、適用事業所以外の事業所に使用される場合は事業主の同意(この同意は後で撤回できない)と厚生労働大臣の認可を受けて、高齢任意加入被保険者となることができる(受給権を有しないからといって自動的に高齢任意加入被保険者となるわけではない)。なお、適用事業所に使用される高齢任意加入被保険者の場合は、事業主が折半負担の同意をした場合を除いて、被保険者が保険料を全額負担し、かつその納付義務を負う。事業主のこの同意あるいは同意の撤回は、10日以内に機構に届出なければならない。高齢任意加入被保険者が保険料を滞納し、督促状の納期限までに納付しない場合、適用事業所に使用され、かつ事業主の折半負担等の同意がない場合に限り、納期限の属する月の前月末日にその資格を失う。ただしその保険料が初めて納付すべき保険料であった場合は、当初から高齢任意加入被保険者とならなかったものとみなす。

1985年昭和60年)改正前の旧法においては、10年以上の加入期間を有する者は、退職後も「第4種被保険者」として、旧老齢年金の受給資格期間(原則20年)を満たすまで加入することを認めていた。この制度は1985年(昭和60年)に改正によって廃止されたが、以下の要件をすべて満たす者については経過措置として現在でも第4種被保険者となることができる。なお、第4種被保険者は、高齢任意加入被保険者となることはできない。

  • 1941年(昭和16年)4月1日以前生まれ[2]で、1986年(昭和61年)4月1日(新法施行日)に厚生年金保険の被保険者であること。
  • 1986年(昭和61年)4月から資格喪失日(退職日)の属する月の前月までのすべての期間、厚生年金保険等に加入していたこと。
  • 厚生年金保険の被保険者期間が10年以上20年(特例の場合は15〜19年)未満であること[3]
  • 資格喪失日から起算して6ヶ月以内に厚生労働大臣に申し出ること。

経過措置により、1932年(昭和7年)4月2日以降に生まれた者であって、かつ2002年平成14年)3月31日において第4種被保険者であった者であって、同年4月1日において適用事業所に使用される者については、同日に当然被保険者の資格を取得し、第4種被保険者の資格を喪失する。

被保険者等に関する届出等

被保険者資格を取得したときは、直ちに年金手帳を事業主に提出しなければならない。事業主は、年金手帳の確認後、これを被保険者に返付しなければならない。

被保険者又は70歳以上被用者は、同時に2以上の事業所に使用されるに至ったとき、その2以上の事業所に係る機構の業務が2以上の年金事務所に分掌されている場合は年金事務所を選択し所属選択届を、分掌されていない場合は2以上事業所勤務届を、それぞれ10日以内に機構に提出しなければならない。

適用除外者

次の各号のいずれかに該当する者は、上記の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない(第12条)。

  • 国、地方公共団体又は法人に使用される者であって、恩給法第19条に規定する公務員及び同条に規定する公務員とみなされる者(現在該当者はいない)、共済組合の組合員、私立学校教職員共済制度の加入者
  • 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く)であって、日々雇い入れられる者
但し、その者が1月を超えて引き続き使用されるに至った場合は、その超えた日から、当然被保険者となる。
  • 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く)であって、2月以内の期間を定めて使用される者
但し、その者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は、その超えた日から、当然被保険者となる。
  • 所在地が一定しない事業所に使用される者
この場合は、その者が長期にわたって使用されたとしても、当然被保険者とはならない。
  • 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く)
但し、その者が、当初から継続して4月を超えて使用される予定である場合は、その当初から当然被保険者となる。
  • 臨時的事業の事業所に使用される者
但し、その者が、当初から継続して6月を超えて使用される予定である場合は、その当初から当然被保険者となる。
  • 厚生年金に相当する外国の法令の適用を受ける者であって政令で定めるもの(現在、当該政令は未制定)

費用負担

保険料

第3種被保険者の厚生年金保険料率
時点 保険料率
2012年(平成24年)9月 17.192%
2013年(平成25年)9月 17.44%
2014年(平成26年)9月 17.688%
2015年(平成27年)9月 17.828%
2016年(平成28年)9月 17.936%
2017年(平成29年)9月 18.3%
一般の厚生年金保険料率
時点 保険料率
2012年(平成24年)9月 16.766%
2013年(平成25年)9月 17.12%
2014年(平成26年)9月 17.474%
2015年(平成27年)9月 17.828%
2016年(平成28年)9月 18.182%
2017年(平成29年)9月 18.3%

第3種被保険者(坑内員・船員)以外の被保険者に係る保険料率は、被保険者の標準報酬月額・標準賞与額の17.12%(2013年9月現在の料率。2004年10月以降2017年9月まで、毎年9月に0.354%ずつ引き上げられる)である。第3種被保険者については17.44%(2013年9月現在の料率。2017年9月まで、毎年9月に0.248%ずつ引き上げられる)となる。2017年9月以降は、被保険者種別にかかわらず18.3%に統一される予定である。また、厚生年金基金加入者は、前記の保険料率から2.4%~5.0%(免除保険料率)を控除した率となる。

保険料は被保険者と事業主とが折半して負担し(規約等で定めても事業主負担を増やすことはできない)、事業主が被保険者の分も含めて納付義務を負う。ただし事業主の同意のない高齢任意加入被保険者及び第4種被保険者は、保険料を全額自己負担し、その納付義務を負う。毎月の保険料は、翌月末日(第4種被保険者はその月の10日。ただし前納可)までに納付しなければならない。事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬・賞与を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額・標準賞与額に係る保険料を報酬から控除することができる。事業主の同意のない高齢任意加入被保険者又は第4種被保険者は、初めて納付する保険料を滞納した場合、当初より高齢任意加入被保険者又は第4種被保険者とならなかったものとみなされる。

被保険者が、船舶に使用され、かつ、同時に事業所に使用される場合においては、船舶所有者以外の事業主は保険料を負担せず、保険料を納付する義務を負わないものとし、船舶所有者が当該被保険者に係る保険料の半額を負担し、当該保険料及び当該被保険者の負担する保険料を納付する義務を負うものとする。

育児休業等をしている被保険者が使用される事業主は、厚生労働大臣に申出ることにより、育児休業開始月から終了の前月までの当該被保険者に係る保険料の免除が行われる。ただし第4種被保険者はこの対象外である。当該免除期間は、免除されていない通常の期間と同様の被保険者期間として扱われ、年金額は減額されない。一方、労働基準法上の産後休暇期間については免除されない。当該被保険者が、休業等終了予定日を変更したときは、速やかに機構に届け出なければならない。

以下の場合においては、保険料は納期前であっても、すべて徴収することができる(繰上徴収)。船舶については厚生年金独自の、ほかは健康保険と共通の規定である。

  • 納付義務者が国税地方税その他公課の滞納によって、滞納処分を受けるとき
  • 納付義務者が強制執行、破産手続きの開始決定を受けるとき、企業担保権の実行手続きの開始、競売の開始があったとき
  • 法人たる納付義務者が解散した場合
  • 被保険者の使用される事業所が廃止された場合、船舶所有者の変更があった場合、又は当該船舶が滅失・沈没・運航に全く堪えなくなるに至った場合

厚生労働大臣は、納付すべき保険料額を超えて被保険者が保険料を納付した場合、その超えた部分の額を、その納付の日の翌日から6月以内の期日に納付されるべき保険料について納期を繰り上げてしたものとみなすことができる。

保険料その他厚生年金保険法の規定による徴収金を滞納する者があるときは、厚生労働大臣は保険料を繰上徴収する場合を除き、期限を指定してこれを督促しなければならない。この期限は、督促状を発する日から起算して10日以上を経過した日でなければならない。督促をした場合は、やむをえない事情がある場合を除き、納期限の翌日から年14.6%(納期限の翌日から3ヶ月以内に納付した場合は年7.3%)の延滞金が課せられる。

保険料その他の徴収金は、別段の規定がある場合を除き、国税徴収の例により徴収する。

保険料を徴収する権利が時効により消滅したときは、当該保険料に係る被保険者であった期間に基づく保険給付は行わない。ただし、当該被保険者であった期間に係る被保険者の資格の取得について事業主からの届出または被保険者もしくは被保険者であった者からの確認の請求があった後に、保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものであるときは、保険給付は行われる。

国庫負担

国庫は、毎年度予算の範囲内で、厚生年金事業の事務の執行に要する費用を負担する。また、国庫は、毎年度、政府が負担する基礎年金拠出金の額の2分の1に相当する額を負担する。また昭和36年4月1日前の期間に係る給付費についても国庫負担が行われている(第3種被保険者期間の25%、それ以外の期間の20%)。

標準報酬月額・標準賞与額

標準報酬月額は、保険料の算出の基礎となる。健康保険とほぼ同様の仕組みがある(第20条)。

  • 第1級98,000円(報酬月額が101,000円以下)〜第30級620,000円(報酬月額が605,000円以上)の30等級。
  • 毎年3月31日における全被保険者の標準報酬月額を平均した額の2倍に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、健康保険法に規定する標準報酬月額の等級区分を参酌して、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができる。

産前産後休業終了日の翌日に育児休業等を開始している被保険者については、産前産後休業終了時の標準報酬月額の改定は行わず、育児休業等を終了したときに所定の要件を満たしていれば育児休業等終了時改定が行われる。

船員たる被保険者又は船員たる70歳以上の使用される者の標準報酬月額の決定・改定については船員保険法の標準報酬月額の規定を用いて行い、第4種被保険者の各月の標準報酬月額は、原則としてその被保険者の資格を取得する前の最後の標準報酬月額を用いる。被保険者又は70歳以上被保険者が船舶に使用され、かつ同時に事業所に使用される場合は、船舶に係る報酬のみで報酬月額を算定する(事業所で受ける報酬は無視する)。

標準賞与額は、賞与を受けた月において、その額が150万円を超えるときは、これを150万円として計算する。なお、賞与が年4回以上支給される(と客観的に定められている)場合においては、当該賞与は、原則として「報酬」に該当する。

報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によつて、厚生労働大臣が定める(第25条)。この権限は機構に委任されていない。

事業主は、毎年7月1日~7月10日までに、報酬月額算定基礎届を機構に提出し、定時決定対象者の報酬月額を届出なければならない。また、賞与を支払ったときは5日(船舶所有者は10日)以内に賞与支払届を提出しなければならない。

厚生労働大臣は、被保険者の資格、標準報酬又は保険料に関し必要があると認めるときは、官公署に対し、法人の事業所の名称、所在地その他必要な資料の提供を求めることができる。市町村長は、厚生労働大臣又は受給権者に対して、当該市町村の条例の定めるところにより、被保険者、被保険者であった者又は受給権者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。

年金種類・年金積立金等

厚生年金は国民年金に相当する固定部分(基礎年金部分)と報酬比例部分に分けられる。第3種被保険者(坑内員又は船員)であった期間については、原則として1986年(昭和61年)3月31日以前の期間については3分の4倍、1986年(昭和61年)4月1日から1991年(平成3年)3月31日までの期間は5分の6倍して計算する。1991年(平成3年)4月1日以降の期間については実期間で計算する。

老齢厚生年金

65歳以上の者で、老齢基礎年金の受給資格期間を満たす場合(保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間とを合算した期間が25年以上)であり、かつ1月以上の厚生年金の被保険者期間を有することを要件に支給される(「本来の」老齢厚生年金)。年金額は、「報酬比例部分」「経過的加算」「加給年金額」の合計である。

男性は1961年(昭和36年)4月1日以前、女性及び坑内員・船員の特例適用者は1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれた者で厚生年金の加入期間が1年以上の者に対しては65歳より前に経過措置として特別支給の老齢厚生年金が65歳まで支給される。支給額は「定額部分」「報酬比例部分」「加給年金額」の合計である。特別支給者も「本来の」老齢厚生年金を受給するときは改めて裁定請求を行う。

対象となる生年月日範囲とそれに対する支給内容一覧表
生年月日(男性) 生年月日(女性) 支給詳細
1941年(昭和16年)4月1日以前 1946年(昭和21年)4月1日以前 60歳から「定額部分」及び「加給年金額」が加算された特別支給の老齢厚生年金が支給される。65歳から本来の老齢厚生年金が支給される。
1941年(昭和16年)4月2日から1949年(昭和24年)4月1日まで 1946年(昭和21年)4月2日から1954年(昭和29年)4月1日まで 60歳から「報酬比例部分」のみの特別支給の老齢厚生年金が支給され、生年月日によって61〜64歳に達したときから「定額部分」及び「加給年金額」が加算された特別支給の老齢厚生年金が支給される。65歳から本来の老齢厚生年金が支給される。
1949年(昭和24年)4月2日から1953年(昭和28年)4月1日まで 1954年(昭和29年)4月2日から1958年(昭和33年)4月1日まで 60〜65歳まで「報酬比例部分」のみの特別支給の老齢厚生年金が支給される(定額部分は支給されない)。65歳から本来の老齢厚生年金及び「加給年金額」が支給される。
1953年(昭和28年)4月2日から1961年(昭和36年)4月1日まで 1958年(昭和33年)4月2日から1966年(昭和41年)4月1日まで 生年月日によって61〜64歳に達したときから「報酬比例部分」のみの特別支給の老齢厚生年金が支給される(定額部分は支給されない)。65歳から本来の老齢厚生年金及び「加給年金額」が支給される。
1961年(昭和36年)4月2日以降 1966年(昭和41年)4月2日以降 特別支給の老齢厚生年金は支給されない。

被保険者でない報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、障害等級3級以上に該当し初診日から1年6ヶ月経過(その期間内に治癒したときは、その治癒した日)した場合は、特例で定額部分が加算された特別支給の老齢厚生年金が障害状態にあると判断されるときにさかのぼって支給される。被保険者期間が44年以上ある者についても同様である。

定額部分

1,628円×改定率×生年月日に応じて定める率(1.0~1.875)×被保険者期間の月数(上限は480月)

  • 被保険者期間の月数については、中高齢者の特例が適用される者については被保険者期間が240月未満のときは240月として計算する。

報酬比例部分

  • 平成15年3月までの期間の平均標準報酬月額×給付乗率×平成15年3月までの被保険者期間の月数
  • 平成15年4月以後の期間の平均標準報酬額×給付乗率×平成15年4月以後の被保険者期間の月数

の合計である[4]

  • 給付乗率は、
    • 平成15年3月までの期間分については、昭和21年4月1日以前生まれの者は0.723%~0.95%、昭和21年4月2日後生まれの者は一律0.7125%。
    • 平成15年4月以後の期間分については、昭和21年4月1日以前生まれの者は0.5562%~0.7308%、昭和21年4月2日後生まれの者は一律0.5481%。
  • 被保険者期間の月数については、中高齢者の特例が適用される者であっても実期間で計算する(最低保障はない)。また上限はない。なお平成3年4月1日前の第3種被保険者期間については特例を用いる。

加給年金額

定額部分が加算される特別支給の(65歳未満の者に支給される)老齢厚生年金の受給者または「本来の」老齢厚生年金の受給権者が以下のすべての要件を満たしたときは、年金額に加給年金額が加算される。

  • 年金額計算の基礎となる厚生年金の被保険者期間が20年(特例の場合は15年~19年)以上あること
    • 受給権取得時に20年未満であっても、退職時改定により20年以上となった場合、その改定規定により当該年数が20年以上となるに至った当時の、以下の生計維持関係を確認する。
  • 受給権取得時にその者によって生計を維持していた65歳未満の配偶者(厚生年金の被保険者であってもよい)、又は子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満で所定の障害の状態にある子)があること
    • 受給権取得時とは、定額部分の支給開始年齢に達した時をいい、報酬比例部分のみの受給権が発生した段階ではない。
    • 加算対象者の年収が850万円以上の場合は加算の対象から外れるが、概ね5年以内に850万円未満になると認められるときは加算の対象となる。
    • 大正15年4月1日以前生まれの配偶者であれば、65歳以上であってもよい。
      • 大正15年4月2日~昭和41年4月1日生まれの配偶者は、配偶者が65歳に達したときは加給年金額の加算は無くなり、これに相当する金額は「振替加算」として配偶者自身が受給する老齢基礎年金に加算される。一般的には妻のほうが夫よりも年上の場合、夫が加給年金を受給できるようになったときには妻はすでに老齢基礎年金を受給しているので、夫には加給年金は加算されず、相当額が振替加算としてその時点より妻に支給される。

加給年金額は、配偶者、第1子、第2子については一人につき224,700円×改定率、第3子以降は一人につき74,900円×改定率となる。また配偶者のある受給権者が昭和9年4月2日以後の生まれの場合、受給権者の生年月日に応じて33,200円×改定率~165,800円×改定率が特別加算される。

なお、配偶者が240月以上の被用者老齢年金を受けることができる場合(一の制度で240月の場合のみで、通算して240月の場合は含まない)、もしくは障害年金を受けることができる場合は、当該配偶者の加算分は支給停止される。また老齢厚生年金と障害基礎年金とが併給されている場合、障害基礎年金に子の加算が行われている場合は、加給年金額の子の加算は支給停止される。

経過的加算

合算対象期間が含まれるために定額部分額よりも老齢基礎年金額が低くなる場合がある。これによる年金受給総額の減少を防止する目的で、その差額相当額が支給される。

  • 780,900円×改定率×昭和36年4月1日以後で20歳以上60歳未満の厚生年金の被保険者期間の月数÷480(加入可能年数の12倍)
    • 月数は実期間で計算し、第3種被保険者等の特例は用いない。

働きながら老齢厚生年金を受け取る

  1. 60歳から65歳に達するまでの間、厚生年金保険に加入しながら勤務
  2. 70歳以上で厚生年金保険適用事業所に勤務

この2つのケースであっても、老齢厚生年金を受け取ることが出来る。但し、年金額と賃金+賞与額に応じて年金額の一部又は全額が支給停止になる[5]老齢基礎年金#在職老齢年金も参照。

支給の繰上げ・繰下げ

国民年金と同様の支給繰上げ・繰下げの請求・申出をすることもできる。

老齢基礎年金の繰上げは、老齢厚生年金の繰上げと同時に行わなければならず、繰り上げると定額部分については老齢基礎年金相当額が支給停止され、老齢基礎年金については全額が減額の対象となり、65歳になっても増額されることはない。

老齢厚生年金の受給権を有する者(平成19年3月31日までに当該受給権を所得した者を除く)であってその受給権を取得した日から起算して1年を経過した日前に当該老齢厚生年金を請求していなかったものは、厚生労働大臣に当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出をすることができる。ただし、その者が当該老齢厚生年金の受給権を取得したときに、障害基礎年金以外の障害年金又は遺族年金の受給権者であったとき、又は当該老齢厚生年金の受給権を取得した日から1年を経過した日までの間において障害基礎年金以外の障害年金又は遺族年金の受給権者となったときは、この申し出はできない(第44条の3)。1年を経過した日後に障害基礎年金以外の障害年金又は遺族年金の受給権者となった者が、障害基礎年金以外の障害年金又は遺族年金を支給すべき事由が生じた日以後に繰下げの申出をしたときは、原則として当該受給権者となった日において、繰下げの申出があったものとみなす。

雇用保険との調整

特別支給の老齢厚生年金は、その受給権者が雇用保険法の規定による基本手当の支給を受けることができる場合、原則として基本手当に係る求職の申し込みがあった月の翌月から、当該受給期間が経過するに至った月、又はその支給を受け終わったときに至る月まで支給停止される。求職の申し込み後に老齢厚生年金の受給権を取得した場合も同様である。また「本来の」老齢厚生年金を繰り上げ受給する場合も、基本手当(65歳以降に支給されるものを除く)と調整される。

失権

老齢厚生年金の受給権(特別支給、「本来の」とも)は、受給権者が死亡したときに消滅する。また、特別支給の老齢厚生年金の受給権は、受給権者が65歳に達したときは消滅する。

障害厚生年金・障害手当金

障害の原因となった傷病ではじめて医師または歯科医師の診察を受けた日(初診日)に被保険者であった場合で、その日から1年6月(あるいはそれより早く障害が固定した場合はその日)に所定の障害(1級から3級)にある場合、その障害の程度に応じ年金または一時金が支給される(所定の保険料納付要件を満たしていることも必要)。障害年金を参照。

遺族厚生年金

被保険者が死亡したとき、被保険者であった者が被保険者期間中に初診日のある傷病により傷病の日から5年以内に死亡または障害等級が1級若しくは2級の障害厚生年金受給者が死亡したとき、あるいは老齢厚生年金の受給権者または老齢厚生年金の受給資格要件を満たした者が死亡したときに、対象となる生計維持関係のあった遺族に支給される(所定の保険料納付要件を満たしていることも必要)。遺族年金を参照。

脱退一時金

厚生年金の被保険者期間が6月以上である日本国籍を有しない者(国民年金の被保険者でないものに限る)は、以下の要件を満たすことにより脱退一時金の支給を請求することができる。なお、支給回数に特に制限はない。脱退一時金の支給を受けると、その額の計算の基礎となった期間は被保険者でなかったものとみなされる。

  • 老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていないこと
  • 日本国内に住所を有しないこと
  • 障害厚生年金又は障害手当金の受給権を有したことがないこと
  • 最後に国民年金の被保険者の資格喪失日から起算して2年を経過していないこと
  • 厚生年金に相当する外国の法令の適用を受けない者

支給額は、被保険者であった期間に応じて、その期間の平均標準報酬額に支給率を乗じて得た額となる。「支給率」は、最終月の属する年の前年10月(最終月が1月~8月の場合は、前々年の10月)の保険料率に2分の1を乗じて得た率に、被保険者期間の区分に応じて定められた数を乗じて得た率である。また平成15年3月までの各月の標準報酬月額は1.3倍して計算する。

昭和16年4月1日以前生まれの者で被保険者期間が5年以上ある者等については、経過措置として旧法の脱退手当金が支給される。

離婚分割の特例

離婚(事実婚の解消を含む。以下同じ)した夫婦が、離婚分割の請求をすること及びその按分割合について合意しているとき(協議が整わずに家庭裁判所がそれを定めたときを含む)は、離婚のときから2年以内に限り、厚生労働大臣に対し離婚分割の請求をすることができる。平成19年4月1日以後に離婚した夫婦に適用されるが、分割の対象期間はそれ以前の期間も含まれる。

第1号改定者(対象期間標準報酬総額の多い者、一般的には夫)と第2号改定者(対象期間標準報酬総額の少ない者、一般的には妻)との按分割合については、

  • 第2号改定者の持ち分は第1号改定者の持ち分を超えてはいけない。
  • 分割により第2号改定者の持ち分が減少してはならない。

離婚分割により、対象期間の間は第2号改定者も厚生年金の被保険者であった者とみなされる(離婚時みなし被保険者期間)。この期間は、老齢厚生年金の受給資格期間や加給年金額の支給要件となる被保険者期間としては扱われず、障害厚生年金の最低保障の対象(300月)にも含まれないが、遺族厚生年金については同様の被保険者期間として扱われる。

被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者に該当する者、一般的には妻)がその配偶者(特定被保険者という。一般的には夫)と離婚した場合、平成20年4月1日以後の期間について、離婚のときから2年以内に限り、厚生労働大臣に対し3号分割の請求をすることができる。この請求に特定被保険者の同意は不要である。この場合、特定被保険者の標準報酬を両者で50%ずつ等分して分割する(協議の余地はない)。3号分割により被扶養配偶者も厚生年金の被保険者であった者とみなされる等は上記と同様である。

離婚分割の請求時に、その対象期間内に3号分割の対象となる特定期間が含まれているときは、離婚分割の標準報酬改定請求をしたときに3号分割の請求があったものとみなされる。なお、請求日に障害厚生年金の受給権者たる特定被保険者が当該障害厚生年金の額の計算の基礎となっている期間があるときは、その期間を除いて3号分割を行い、特定期間の全部を計算の基礎とする場合は、3号分割は行われない。

離婚分割の制度は、年金額の計算の基礎となる被保険者期間を分割するものであって、年金額そのものを分割する制度ではない。したがっていかに分割しようとも配偶者本人に老齢厚生年金の受給権が生じなければ、分割に基づく年金は受け取れない。また離婚分割をしたからといって過去にさかのぼって保険給付が発生したり年金額が改定されたりすることもない。

なお、厚生労働大臣は標準報酬の決定・改定を行ったときは事業主にその旨を通知することになっているが、離婚分割による改定はこの例外となっているので、離婚分割を行って標準報酬が変化しても事業主には通知されない。

時効

保険料その他厚生年金による徴収金を徴収し、又はその還付を受ける権利は、2年を経過したとき、保険給付を受ける権利(当該権利に基づき支払期月ごとに又は一時金として支払うものとされる保険給付の支給を受ける権利を含む。)は、5年を経過したときは、時効によって消滅する(第92条)。ただし年金たる保険給付を受ける権利の時効は、当該年金たる保険給付がその全額につき支給を停止されている間は、進行しない。

保険料その他厚生年金による徴収金の納入の告知・督促は、時効中断の効力を有する。

また厚生労働大臣は、厚生年金の受給権者又は受給権者であった者(未支給の給付の請求権者を含む)について、記録の訂正がなされたうえで裁定(裁定の訂正を含む)が行われた場合においては、その裁定による当該記録の訂正に係る受給権に基づき支払われる保険給付の支給を受ける権利について消滅時効が完成した場合においても、保険給付を支払うものとされる(年金時効特例法第1条)。

不服申立て

厚生年金における被保険者の資格、保険料については健康保険とセットになっていることから、不服申立てについても健康保険と手続が一元化されていて、国民年金における不服申し立て手続きとは一部異なっている。

被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、各地方厚生局に置かれる社会保険審査官に対して審査請求をすることができる。この審査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。また、被保険者の資格または標準報酬に関する処分に対する審査請求は、原処分のあった日の翌日から起算して2年を経過したときは、することができない。

社会保険審査官の決定に不服がある者は、厚生労働省に置かれる社会保険審査会に対して再審査請求をすることができる(二審制)。この再審査請求は、正当な事由がない限り、社会保険審査官の決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して60日以内にしなければならない。また、審査請求をした日から60日以内に決定がないときは、審査請求人は、社会保険審査官が審査請求を棄却したものとみなして、社会保険審査会に再審査請求をすることができる。いずれの場合であっても、当該再審査請求は口頭で行うことができる。

保険料の賦課もしくは徴収の処分又は滞納処分に不服がある者は、社会保険審査会に対して直接審査請求をすることができる(一審制)。この処分についても二審制をとる国民年金とは異なっている。また脱退一時金に関する処分についても社会保険審査会に対して直接審査請求をすることができる。

以上の処分については、当該審査請求・再審査請求に対する社会保険審査会の裁決を経た後でなければ、取消の訴えを提起することはできない(審査請求前置主義)。

審査請求・再審査請求は、時効の中断に関しては裁判上の請求とみなされる。

厚生年金の平均受給額

厚生年金は所定の年齢に達して受給する段階では「老齢厚生年金」(2階部分)と呼ばれ、国民年金の受給分である老齢基礎年金(1階部分)を含めて老齢厚生年金と呼ばれる。2004年3月末現在、男女共通の平均月額は約16万9,000円、男子だけでは平均約19万6,000円、女子だけでは平均約11万円となっていると社会保険庁は発表している[6]

厚生年金の加入者数・受給者数
加入者数 受給者数 年度
3265万1000人 1191万1000人 1993年度末
積立金は約91兆1134億円(1992年度まで)。

厚生年金制度の歴史

一般の労働者に対する厚生年金の起源は、第二次世界大戦下の1942年に施行された民間企業の現業男子を対象とした「労働者年金保険」である(それ以前にも、企業における福利厚生事業の一としての年金や、対象者を限定する船員年金等はあった)。これは、戦時下における労働力の増強確保と強制貯蓄的機能を期待する目的があったとされているが、手っ取り早い戦費調達手段として導入されたとする見方もある。

その後の1944年に、対象を女子労働者及び事務系労働者に拡大すると共に、名称も現行の「厚生年金保険」に変更された。

戦後の1947年の改正においては、それまでは厚生年金保険で行っていた業務上災害による廃疾や死亡に対する給付が、労災保険に移行した。

さらに1954年には、「年金給付を、定額部分と報酬比例部分に分割する」「老齢年金の開始支給年齢を、男性60歳、女性及び坑内員を55歳とする」「厚生年金の財政は修正積立方式とする」などの改正が行われた。

それ以降、2012年現在に至るまで継続している制度等の実施、導入及び開始は、次のとおりである(厚生年金保険に特に関連するものに限る)。

2004年年金制度改正

自由民主党公明党による与党年金制度改革協議会は、2004年2月4日に厚生年金保険料の引き上げについて合意文書を交わした。

厚生年金保険料は、2004年9月までは年収(総報酬)の13.58%(労使折半)であるが、2004年10月から毎年0.354%(労使折半)ずつ引き上げ、2017年度には年収の18.30%(労使折半)まで引き上げられ13年間で段階的に4.72%引き上げられることになる。ボーナスを含めた平均年収が570万円である場合、2017年度の保険料は年額52万1,550円となり、2004年度よりも13万4,520円の負担増額となる。

厚生年金の支給額については、標準的な年金受給世帯[7]において、現役世代(働いている時)の平均収入の50%以上の水準を確保する。

年齢別の保険料負担と年金給付額についての推計

厚生労働省は、2004年(平成16年)に国会で成立した年金改革案関連法案に基いた世代別の給付と負担の関係、給付と負担の見通しについての推計を公表した[8]

なお、以下の点に注意する必要がある。

  • 年金では負担時と受給時に大きな時間のずれが存在するため、経済成長や物価上昇により貨幣価値が変化する。(負担時の1円としての価値と、受給時の1円としての価値が違う)このため、比較のために何らかの換算を行う必要がある。本表では賃金上昇率(2.1%と想定)について換算されている。
  • 使用者負担の保険料(労働者負担と同額)は除いて計算している。
  • 基礎年金については国庫負担が存在する。
世代ごとの保険料負担額と年金給付額
2005年(平成17年)時の年齢 保険料(万円、賃金上昇率による換算) 給付額(万円、賃金上昇率による換算) 倍率
70歳(1935年生) 670 5,500 8.3
60歳(1945年生) 1,100 5,100 4.6
50歳(1955年生) 1,600 5,100 3.2
40歳(1965年生) 2,200 5,900 2.7
30歳(1975年生) 2,800 6,700 2.4
20歳(1985年生) 3,300 7,600 2.3
10歳(1995年生) 3,700 8,500 2.3
0歳(2005年生) 4,100 9,500 2.3

(厚生労働省推計) ※モデル世帯の夫婦(ただし妻は1986年度以降のみ国民年金に加入)がそれぞれの平均余命まで年金を受給した場合。
※保険料は本人負担分。
※金額は物価上昇率で2004年度時点の価値に換算。
※端数処理のため倍率が異なることがある。

世帯タイプ別の年金額と給付水準の試算
タイプ 現在の受給者 2025年度(平成37年)からの受給者
現役時の
平均手取り収入
世帯の年金額と
給付水準
現役時の
平均手取り収入
世帯の年金額と
給付水準
夫は40年間就労
妻は専業主婦
39.3万円 23.3万円
(59.3%)
47.2万円 23.7万円
(50.2%)
40年間夫婦で共働き 63.8万円 29.6万円
(46.4%)
76.6万円 30.1万円
(39.3%)
夫は40年間就労
妻は子育て後に再就職
55.3万円 27.4万円
(49.6%)
66.4万円 27.9万円
(42.0%)
夫は40年間就労
妻は出産後に専業主婦
43.4万円 24.4万円
(56.1%)
52.1万円 24.8万円
(47.5%)
男性独身者が40年間就労 39.3万円 16.7万円
(42.5%)
47.2万円 17万円
(36.0%)
女性独身者が40年間就労 24.5万円 12.9万円
(52.7%)
29.4万円 13.1万円
(44.7%)

※手取り収入は、世帯の合計で、ボーナスを含めた月額換算。2025年の金額は現在の価値に換算。()内は給付水準。

厚生年金保険法の改正

2004年2月10日に閣議決定された厚生年金保険法改正の主要な条項は次の通りである。

  • 政府は政令で年金給付額を調整する期間を定める。調整期間の年金額再評価改定は、原則として名目手取り賃金変動率に調整率をかけた率を基準とする(34条)。
  • 年金の受給権者が65歳に達した以降の年金額再評価率は、原則として物価変動率を基準とする(43条)。
  • 厚生年金保険料率は2004年から毎年、0.354%ずつ引き上げ、2017年9月以降、18.30%とする(81条)。
  • 3歳未満の子どもを育てる厚生年金加入者の月額賃金が、子育て以前の月額賃金を下回った場合は、以前の賃金を年金額計算の基礎とする。3歳未満の子どもを育てる厚生年金加入者の育児休業期間について保険料を免除する。2005年4月1日から実施する(26条、81条)。
  • 70歳以上で在籍者への厚生年金支給額について、賃金に応じて全部又は一部を支給停止する。2007年4月から実施する(46条)。
  • 30歳未満で遺族厚生年金の受給権を得た妻は、5年を経過すると受給権が無くなる。中高齢寡婦加算支給要件を見直す。2007年から実施する(63条)。
  • 65歳未満で在職者への厚生年金支給額について、2割停止する現行方式を改める(附則11条など)。
  • 離婚した場合、厚生年金の分割割合で合意しているか、裁判所の決定があれば、厚生年金の分割を請求することができる制度を創設する。2007年4月から導入する(3章)。

脚注

  1. 厚生年金原簿には、国民年金原簿の記載事項に加え、被保険者の「標準報酬」が記載される。
  2. 1941年昭和16年)4月2日以降に生まれた者については、新法施行日時点では第4種被保険者となることができたが、現在では1941年(昭和16年)4月1日以前生まれの者に限られる。
  3. 被保険者期間が20年(15〜19年)に達した場合は、老齢年金の受給権が発生していなくても、被保険者資格を喪失する。
  4. ただし平成25年度までにおいてマクロ経済スライドは発動されていないので、実際の給付額は物価スライド特例措置による年金額となる。またこの場合、調整期間においても名目手取り賃金変動率又は物価変動率に調整率は乗じられない。
  5. テンプレート:Cite web
  6. 厚生年金の受給額、実際は?2005年8月17日 読売新聞
  7. 夫が平均的な収入で40年間就業し、妻が専業主婦であるという世帯。
  8. テンプレート:Cite web

関連項目

年金の種類(老齢による給付の場合)
厚生年金基金 共済年金(職域加算) 3階部分
国民年金基金 厚生年金(受給時の正式呼称は老齢厚生年金) 共済年金 2階部分
国民年金(基礎年金、受給時の正式呼称は「老齢基礎年金」) 1階部分

外部リンク

テンプレート:就業