大阪市交通局66系電車
大阪市交通局66系電車(おおさかしこうつうきょく66けいでんしゃ)は、1990年(平成2年)に登場した大阪市交通局の高速電気軌道(大阪市営地下鉄)堺筋線用の通勤形電車。
堺筋線と、直通運転先の阪急電鉄(阪急)千里線・京都線で使用されている。製造時期によって第1 - 第12編成の前期車と第13 - 第17編成の後期車に分けることができる。
概要
従来堺筋線で使用されていた60系は非冷房であり、一部編成については冷房装置を搭載することとしたが、内装が直通相手の阪急の車両に比較すると見劣りするとされていた。そこで、非冷房で残された60系の置き換えと内装の向上を目的として、1990年(平成2年)より新型車両の投入が開始された。これが66系である。
堺筋線初のVVVFインバータ制御車であり、同じくVVVFインバータ制御が採用された第三軌条方式各路線用の新20系と同じ年に登場したことから、当系列は「新20系の堺筋線版」と言われることがある。ただし、車体外観は新20系が直線的なデザインで片側に4か所の客用扉が設けられているのに対し、66系は曲線を多用したデザインで客用扉は片側3か所であるなど、使用路線の違いで異なる部分も多い。
編成構成は以下の通り。
- 車両番号の表記体系は新20系に準じている。すなわち、万の位の「6」と千の位の「6[1]」で系列名を表し、百の位で車両形式、十と一の位で製造番号(編成番号と一致)を表す。
- 両制御車の運転台側は自動連結器、4 - 5両目の連結器は密着連結器、それ以外は半永久連結器が搭載されている。
- 「e」は蓄電池搭載車を表す、大阪市交通局独自の記号。
↑天下茶屋 | |
66600形 (Tec1) | 静止形インバータ (SIV) や空気圧縮機 (CP) 、蓄電池などの補機類を搭載する制御車。 |
66000形 (Ma1) | パンタグラフや主制御器などの走行機器を搭載する中間電動車。 6両編成では天神橋筋六丁目方の車端部に簡易運転台(営業時は扉の中に封印)が設置されていた。 |
66100形 (Mb1) | 66000形からパンタグラフを取り除いた構造を持つ中間電動車。 6両編成には組み込まれていなかった。 |
66700形 (Tp') | CPを搭載する付随車。 天神橋筋六丁目方の車端部に簡易運転台が設置されている。6両編成には組み込まれていなかった。 |
66800形 (T') | 主要機器を搭載しない付随車。 天下茶屋方の車端部に簡易運転台が設置されている。 |
66300形 (Mb2) | 66100形と同様の中間電動車。 |
66200形 (Ma2) | 66000形と同様の中間電動車。 |
66900形 (Tec2) | 66600形と同様の制御車。 |
↓天神橋筋六丁目・阪急線 |
1990年落成の第1編成から1992年(平成4年)落成の第5編成までは6両編成で製造された。1992年から1993年(平成5年)にかけて8両編成とするために66100形と66700形が連結され、また、第6編成から第8編成までの3本が当初から8両編成で製造され、1994年(平成6年)には8両編成12本(96両)の陣容となった。この時点で60系非冷房車は消滅し、増備は中断された。
1999年(平成11年)1月から車端への転落防止幌の取り付けが進められ、2000年(平成12年)10月までに全車への施工が完了した。
2002年(平成14年)より、老朽化が進んできた60系冷房改造車の置き換えを目的として製造が再開された。2003年(平成15年)までに第13編成から第17編成までの8両編成5本(40両)が製造され、現在の8両編成17本(136両)の陣容となった。これにより60系は全廃となり、堺筋線所属車は66系で統一された。
当系列の製造メーカーは川崎重工業(第1 - 第10編成、第13 - 第15編成および第1編成 - 第5編成の増結車)・近畿車輛(第11・12編成、第16・17編成)の2社が存在する。
2009年(平成21年)12月5日・6日には堺筋線と阪急京都線との相互直通運転開始40周年を記念し、阪急嵐山線への臨時直通列車が天下茶屋 - 嵐山間で各日1往復運転された。この臨時列車には第1編成が6両編成に減車の上充当された[2]。また2011年(平成23年)5月14日・15日には直通特急として天下茶屋と嵐山の間で各日1往復で運行された[3]。2009年に運転された臨時列車と違う点は方向幕表示が2009年の時は「臨時」で、2011年に運転された列車では白表示で、堺筋線内でも特急運転が行われた。
デザイン
車体外観・電装品
車体はステンレス鋼の地肌を生かした無塗装で、窓上に茶色、腰部に上から橙色、白色、茶色の細い帯が入れられている。側面の窓配置は60系を踏襲したドア間3枚・車端部に1枚(中間車の場合)[4]であるが、形状は60系の角ばった2段式から、阪急車両に類似した、角が丸みを帯びた1枚下降式に変更された。
前面は60系の切妻形状から、窓が大きく傾斜がつけられたものに変化した。帯は窓下と尾灯・標識灯の間に入り、それより上は黒色に塗装されている。上部中央に前照灯2灯が、その左隣に行先表示器が、右隣にVVVFインバータ制御車であることを示す「VVVF 66 SERIES CAR」のシンボルマーク(新20系のそれとは図案が異なる)が配置された。また、窓下の帯部分には角型で、外側が尾灯・内側が標識灯となった灯具ユニットが2組設置された。形状は大きく異なるものの、灯具配置は阪急車と同様である。
2002年の第13編成以降は若干の仕様変更が行われた。従来金属塗装だった窓上部は従来より拡大されたガラスで覆われ、側面上部の帯は茶色単色から、茶帯の下側に白色の細帯が追加されたツートンに変更された。また、屋根上のクーラー外キセがFRP製からステンレス製に変更され、側面ルーパー形状も変更された。また、第14編成以降は第13編成と比べ前面上部と運転台に微妙な違いが見られる。
従来終着駅名のみの表示であった行先表示器は、列車種別が併記されたものとなった。既存編成についても種別表記入りに順次交換されている。種別は急行[5]の表示もあるが、使用されたことはない。
VVVFインバータ装置の素子は第12編成以前はGTOサイリスタ[6]、第13編成以降はIGBTが採用された。また、製造メーカは東芝および三菱電機の2社が存在する[7]。
台車は大阪市営地下鉄では初めてボルスタレス式が採用された。第13編成以降は空気バネの改良で床面高さが前期車より4cm低い115cmとされ、ホームとの段差が軽減されている。
内装
第12編成以前は座席モケットはローズ色、ドア開閉時には開時と閉時で音程が違うブザー音が鳴る仕様であった。1992年に製造された第3編成以降は各車両に1か所ずつ車椅子スペースが設けられ、1991年(平成3年)までに製造された車両にも1999年に設置された。
第13編成以降は交通バリアフリー法が施行されたことに伴い、LED式客室案内表示器が車内扉上に千鳥配置され、ブザーはドアチャイム[8]に変更され、ドア開閉時にドアチャイムとリンクして点滅するLED灯が設置されるなど、バリアフリー化が図られたものとなった。ちなみに、客室案内表示器搭載車で案内表示がない箇所にも、ドアの開閉を知らせる(こちら側・反対側)ランプがある。また、乗り入れ先の阪急線内でも、開閉案内が一部の駅(待避可能駅・終着駅)を除いて行われている。
また、座席はバケット式に変更され、1人あたりの座席幅が拡大された分、着席人数が減った(10人→9人)。座席モケットは茶系のものになった。座席上部の荷棚も金網からステンレス製のパイプ式のものに変更され、バリアフリー化の一環として、ドア間の座席中央では荷棚から座席下部にかけてスタンションポール(握り棒)が1本ずつ設置された。第12編成以前にも、張替え(第1・2・4・8編成、左記は工事順)によって第13編成以降風の茶系の座席モケットとなった車両が発生している。第3 - 12編成には客室案内表示器が取り付けられている。
台車直上に、台車点検蓋が設置されている。
- 大交66系前期室内.jpg
前期車の室内
- 大交66系後期室内.jpg
後期車の室内
- 大交66系前期室内R.jpg
座席張替えを受けた前期車の室内。後期車に準じたモケットとなったが、形状は従来と変わらない。
更新工事
66605Fがリフレッシュ改造の為に、2012年6月アルナ車両に入場した。 2012年12月3日に出場し、阪急電鉄に貸し出され4日から11日にかけて試運転を行った[9]。以下の大規模改造が施されている。
また、2013年1月8日から阪急線内(正雀~茨木市間)にて[10]、24日には阪急千里線にて日中時間帯での試運転も行われた[11]。
- スカートの取り付け。
- 識別灯・尾灯を阪急7300系更新車・9300系と同様のものに交換。
- 行先表示器を30000系と同様のフルカラーLEDに変更。(優等種別や嵐山や河原町も表示可能[12])
- 前面のVVVFマークを撤去し、車号表示をVVVFマークのあった場所へ移動。
- 帯が30000系や新20系改造車のようなデザインになり、茶⇒オレンジのグラデーションに変更された。
- シート端のポールの2本化、床面配色の変更、バケットシート採用になるなど、30000系に似た車内となった。
- VVVFインバータ装置と補助電源装置(SIV)のASSY交換を実施。いずれもIGBT素子を使用したものである。
- 種別表示設定機器に阪急京都線内の全種別を追加。行先表示設定機器に高槻市から先の長岡天神・桂・河原町・嵐山を追加。
- 66系改造車前面.JPG
更新車前面。
- 66605F改造車側面.JPG
更新車側面。(東吹田検車場敷地外より撮影)
- 66605F改造車内装.JPG
更新車内装。御堂筋線30000系に準じたものに。
営業運転復帰
リフレッシュ改造が施された66605Fは2013年2月1日より営業運転に復帰した[13]。
- Osaka66605F local tenjinbashisuji6chome.JPG
営業運転に復帰した66605編成。
その後、66602Fも更新、営業運転を開始している。
脚注
テンプレート:大阪市営地下鉄・ニュートラムの車両
- ↑ 投入線区の路線番号(堺筋線は6号線)に由来している。
- ↑ 「大阪市交66系,臨時直通列車で嵐山へ」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2009年12月7日
- ↑ 「大阪市交66系,臨時直通特急で嵐山へ」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2011年5月15日
- ↑ ドア間隔が均等になるように配慮(車両間では連結部が窓1枚分に相当)された設計が引き継がれたものの、ドア間3枚・車端部に2枚(中間車の場合)の阪急車両に比べて両端のドアが車端側に位置しているというずれも存置されることとなった。なおこの扉・窓配置は東京メトロ日比谷線などに類例がある。
- ↑ 相互直通先である阪急京都線の急行列車は堺筋急行も含め2007年3月をもって廃止されている。
- ↑ 磁励音は新20系より低めである。
- ↑ IGBT素子の場合。GTOサイリスタ素子はこの2社に加え、日立製作所製も存在する。
- ↑ 登場時は第三軌条方式各路線のドアチャイムとはパターンが異なっていたが2010年ごろに第三軌条方式各路線のドアチャイムと同パターンになった。詳しくはドアチャイムの項を参照。
- ↑ 「大阪市交66系リフレッシュ改造車、阪急へ貸し出し」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2012年12月18日
- ↑ 「大阪市交66系66605編成が日中試運転」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2013年1月8日
- ↑ 「大阪市交66系66605編成が阪急千里線で試運転」交友社『鉄道ファン』railf.jp 鉄道ニュース 2013年1月24日
- ↑ 「製品案内 大阪市交通局66系車両」 株式会社 交通電業社
- ↑ 「堺筋線 66系車両リフレッシュのご紹介」大阪市交通局 2013年1月24日