大怪獣バラン
テンプレート:Infobox Film 『大怪獣バラン』(だいかいじゅうバラン)は、1958年公開の東宝が制作した怪獣映画。モノクロ、東宝パンスコープ作品[1]。
目次
概要
原作は怪奇小説家として知られる黒沼健。後にゴジラシリーズの脚本に多く携わる関沢新一が最初に手がけた怪獣映画である。
当初、アメリカからの注文で全4部のテレビドラマとして制作が始まり、フィルムもスタンダードサイズだったが、途中から劇場公開が決まり、東宝特撮初のシネマスコープ版映画(東宝パンスコープ)となったテンプレート:Sfn。好評であればシリーズ化も予定されていたテンプレート:Sfn。準備稿でのタイトルは「東洋の怪物 大怪獣バラン」となっており、この副題は公開時のキャッチコピーや怪獣バランの二つ名としても用いられているテンプレート:Sfn。
あらすじ
東北地方、北上川上流の秘境でシベリア地方にしかいないはずのアカボシウスバシロチョウ[2]が発見された。ただちに杉本生物研究所の所員2人が調査に向かったが、原因不明の怪死を遂げる。
杉本博士の助手の魚崎、犠牲になった所員の妹で記者の由利子、カメラマンの堀口の3人は真相を解明すべく現地へ向かい、外部から隔絶された排他的で独自の神をあがめている岩屋村の人々と出会う。突如、彼等の前に湖から眠りを覚まされたバランが出現し、集落を破壊する。直ちに自衛隊が出動して攻撃を加えたが、バランは攻撃をものともせず、それどころか手足から皮膜を広げて飛び去ってしまう。
その後、銚子沖に現れたバランは東京湾から羽田空港に上陸。都心への侵攻を阻止すべく、自衛隊が羽田空港に布陣した。果たして人類はバランを倒せるのだろうか?
むささび怪獣 バラン
中生代の恐竜(劇中では単に怪獣としか呼ばれない)バラノポーダの生き残りで、北上川上流の湖に棲み、外部から隔絶された集落で婆羅陀魏山神(バラダギサンジン、「バラダギサマ」とも)として崇拝されていた。顔の周りの角と背筋に並ぶ透明な長いトゲが特徴で、通常は四足歩行だが二本足で立ち上がることや、ムササビのように飛膜を広げて滑空することもできる。研究員たちが襲われたことがきっかけで、その正体が判明した。眠りを覚まされて集落を破壊して空に飛び去った後、銚子沖から羽田空港に上陸して暴れるが、光る物を飲み込む習性を利用され、科学者の藤村博士が作った強力な爆薬が仕込まれた照明弾を飲み込み、内部から爆破し、倒された。
- 公開当時の資料や玩具によれば、「爬虫類ゴジラ属ラドン科バラノポーダ」に分類され、ポスターではゴジラ・ラドンをしのぐとされている。
- 体長は十数メートル〜100メートルと資料によってまちまちであるが、羽田空港出現時は、ゴジラのように巨大な生物として描かれている。
- スーツアクターは手塚勝巳、中島春雄。
- 別名は表題の「大怪獣[3]」のほか、「東洋の怪物テンプレート:Sfn」「東洋の大怪獣テンプレート:Sfn」「むささび怪獣[4]」「有翼膜竜[5]」など多数存在する。
造形
頭部は利光貞三、胴体は八木寛寿、八木康栄、表皮、背中のトゲは村瀬継蔵による。背中のトゲは、生物の一部らしい透明感を表現するため、村瀬のアイディアで切ったゴムホースの切り口にビニールテープを貼って作られたテンプレート:Sfn。目には電飾がなされている。体色は、数少ないカラースチールから茶系テンプレート:Refnestであることが確認できるが人工着色スチル写真では緑色となっている。
飛行シーン用の3分の1サイズの小型のバランは、1966年〜1967年に東宝倉庫に現存しているのが確認されていて、『週刊少年マガジン』などに写真が使われている。1966年7月19日に放送された『11PM』の大阪、よみうりスタジオで収録された「怪獣供養」ではバランの飛び人形が祭壇に飾られている[6]。
『怪獣総進撃』にはこの3分の1サイズのミニチュアも使用されており、富士のふもとのシーンで確認できる[7]。並行して『総進撃』には新造形の90センチモデルが使用されている。『総進撃』の90センチモデルは1980年代に同サイズのゴロザウルスやモスラ成虫、『ノストラダムスの大予言』の大コウモリなどとともに東宝特美倉庫に保存されていたのが確認されており、現在も首のみ現存し、関連イベントで展示されることがある。
その他の作品に登場したバラン
- 『怪獣総進撃』に怪獣ランドの怪獣として登場している。しかし、着ぐるみの状態が大変悪く、新造された90センチサイズの人形がエピローグのカットなどに登場したのみであった。『怪獣総進撃命令』とされた検討用脚本の際はラドンと共にキングギドラと戦う予定だったが、実際はマンダやバラゴンと同様に参加していない。また、鳴き声はなく、名前すら呼ばれていないが、DVDによる映像特典では名前は呼ばれている。製作発表会のスチールでも他の怪獣と並んで飛び人形が吊られているだけであった。このような扱いから、怪獣ランドのバランは10メートルの幼体であると記述する書籍もある。
- 『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)ではライブフィルムとして登場した。
- 『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』が「キングギドラの大逆襲」の脚本段階では正義側の怪獣として[8]、『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』ではゴジラと戦う守護神としてテンプレート:Sfn登場予定があったが、どちらも途中で変更になっている。ただし『大怪獣総攻撃』劇中の本「護国聖獣伝記」には婆羅陀魏山神のことが描かれているほか、バラゴンの名前(婆羅護吽)に流用されている。なお同作のキングギドラには顔の横にバランのようなヒレがついている。
- ファミリーコンピュータ版ゲーム『ゴジラ』では、ボスキャラクターとして2面から最終面に登場する。本作ではX星人に操られる怪獣軍団の一匹という設定である。攻撃手段はパンチとキックのみ。一定以上のダメージを受けると大きくのけぞる特徴を持つ。
- 怪獣映画以外では、坂本九主演映画『アワモリ君乾杯!』(監督:古澤憲吾)の後半の、東宝砧撮影所での追っかけシーンでは、バランの着ぐるみが登場する。
- 1966年に朝日ソノラマから発売されたソノシート『大怪獣戦 30怪獣大あばれ!!』収録の「宇宙怪獣対地球怪獣」に宇宙怪獣と戦う地球怪獣空軍の一体として登場する[9]。
スタッフ
※映画本編クレジット順
本編
- 製作:田中友幸
- 原案:黒沼健
- 脚本:関沢新一
- 撮影:小泉一
- 美術:清水喜代志
- 録音:小沼渡、宮崎正信
- 照明:金子光男
- 音楽:伊福部昭
- 監督助手(チーフ):梶田興治
- 音響効果:三縄一郎
- 編集:平一二
- 製作担当者:川上勝太郎
- ノンクレジット
- 監督助手:西村潔
- 撮影助手:逢沢譲
- 照明助手:森本正邦
- 美術助手:立川英明、宮国登
- 小道具組付:石川亀三郎、山本初美
- 電飾:秋葉信夫
- 記録:黒岩美穂子
- 演技事務:中島清
- 音楽事務:原田英雄
- 経理担当:車田守
- 宣伝係:島健三郎
- スチール:田中一清
- 現像:東洋現像所
特殊技術
- ノンクレジット
- 監督助手:出目昌伸、浅井正勝
- 撮影助手:富岡素敬、真野田陽一、唐沢登喜麿
- 美術助手:井上泰幸、入江義夫、池淵剛治
- 照明助手:原文良
- 合成:土井三郎
- 合成作画:石井義雄
- 光学作画:飯塚定雄、茂田江津子
- 背景塗装:鈴木福太郎
- 火薬:山本久蔵
- 着ぐるみ頭部造形:利光貞三
- 着ぐるみ胴体造形:八木康栄、八木勘寿
- 造形助手:開米栄三、村瀬継蔵
- 記録:米山久江
- 編集:石井清子
- 製作係:森田信行
キャスト
※映画本編クレジット順
- 魚崎健二(杉本博士の助手):野村浩三
- 新庄由利子(東日本新報記者):園田あゆみ
- 杉本博士(生物学者):千田是也
- 藤村博士(化学者):平田昭彦
- 馬島博士(古生物学者):村上冬樹
- 勝本三佐:土屋嘉男
- 防衛庁長官:山田巳之助
- 新庄一郎(杉本研究所所員):伊藤久哉
- 掃海艇うらなみ艦長:田島義文
- 河田豊(杉本研究所所員):桐野洋雄
- 岩屋部落の神主:瀬良明
- 草間一佐:草間璋夫
- 源の母親:本間文子
- 一作(部落の男):山田彰
- 堀口元彦(東日本新報カメラマン):松尾文人[10]
- 中尾(県警幹部):生方壮児
- ロケット発射管制員/部落の男:伊原徳 [2役]
- 部落の男:川又吉一(次郎)、重信安宏(三吉)
- 源(部落の少年):伊東隆
- 防衛隊幹部:津田光男、熊谷二良
- 漁師:広瀬正一
- 防衛隊幹部:山田圭介
- カメラマン:渋谷英男
- 漁師:鈴木孝次
- 部落の男/漁師:篠原正記 [2役]
- 部落の女:河美智子、中野俊子
- 山伏(部落の男):安芸津広
- 記者:松本光男、大西康雄
- 防衛隊小隊長:緒方燐作、向井淳一郎
- 部落の女:一万慈鶴恵、平三富子
- F-86F(戦闘機)パイロット:中西英介
- 防衛隊小隊長:勝本圭一郎
- 防衛隊幹部:成田孝、坂本晴哉
- 杉本研究所所員:細川隆一
- カメラマン:速水洸
- 自衛隊員:大川時生
- 部落の女:寺沢ひろ子
- 部落の巫女:高原とり子
- バラン:手塚勝巳
- バラン/哨戒艇いそなみ副長:中島春雄 [2役]
同時上映
『僕は三人前(フランキーの僕は三人前)』
海外版
アメリカでも『Varan the Unbelievable』の題でシネスコ版の映画として公開されたテンプレート:Sfn。監督はジェリー・バーウィッツ、脚本はシド・ハリス。音楽は儀式の曲以外は全て変更されている。
1958年10月に六社協定により劇映画のテレビ放映が禁止となり、テレビ映画として製作された作品でも劇場公開されたものはこの範疇に含まれ輸出の際もテレビ放映権を付与しないことが決定された。これにより、前述の通り本来はアメリカからの依頼でテレビドラマとして製作された本作も劇場公開されることとなったテンプレート:Sfn。
主人公は日本在住のアメリカ軍将校ブラットレー司令(演:マイロン・ハーレー)、ヒロインは彼の秘書シズ子(文献によってはシズカになっている、演:小林ツル子)に変更され、ストーリーもバラン撃破に出動したブラットレー司令がバランの逆襲に遭い、シズ子と共に洞窟に追い詰められる、最終的にバランは死なないなど、かなりオリジナル要素が含まれている。
備考
- 雑誌『ハイパーホビー』のソフビ化して欲しい怪獣のアンケートにウルトラ怪獣に混ざって、バランがランクインしたことがある。
- 洋上でのバランとの戦闘には、ミニチュアワークと海上自衛隊の記録フィルムが効果的に使用され、迫力のある場面となっている。なお、登場する護衛艦は劇中で「哨戒艇〜」と呼ばれていた。
- 原作者の黒沼健は、羽田空港の地下燃料貯蔵庫となってるエプロンで戦闘機が墜落自爆し、その大爆発にバランが巻き込まれるというラストシーンを提案したが、映画には採用されなかったとしている。[11]
- プール撮影中にライトの電源ボックスが水の中に落ちてしまいバランに入っていた手塚勝己が感電し失神したが救急車が来た頃には意識が戻っていた。またトラックがバランの下で爆破するシーンでは中島春雄が腹を火傷した[12]。
- バランが船に突っ込むシーンは相模川で中島が入ったバランの着ぐるみをワイヤーで釣ってモーターボートで引っ張って撮影したが水の抵抗で着ぐるみが沈み中島が溺れかけた(当人はそのことを覚えていない)[13]。
映像ソフト
- 1980年代に東宝から発売されていたVHSビデオでは、部落に関してや「日本のチベットと呼ばれる場所」といった、差別的表現にあたる台詞のあるシーンがカットされていた。
- 1998年12月23日にレーザーディスクとVHSの新装版が東宝ビデオより発売された[14]。新たに予告編などを収録している[14]。
- DVDは2005年1月21日発売。
脚注
参考資料
- 『東宝特撮映画選集3 大怪獣バラン』解説書 東芝EMI 1996年
- テンプレート:Cite book
関連項目
- ラドン (架空の怪獣) - 『三大怪獣 地球最大の決戦』以降のラドンのテーマは、本作のバランのテーマが基になっている。
- 兵士の序曲 - 1944年に伊福部昭が作曲した管弦楽曲。本作のマーチの原曲となった。
外部リンク
テンプレート:本多猪四郎監督作品- ↑ 米国のシネマスコープとほぼ同じワイドスクリーン版だが、専用のアナモルフィック・レンズを使用した方式ではなく、35ミリ・スタンダード版で撮影されたフィルム面の上下をブラックでマスキングしてシネマスコープ版に近い縦横比とした安価な方式。したがって撮影時に収録されている筈の映像情報がプリント面の上下で潰されることになり、そのためいくつかのカットでは、人物の顔アップやミニチュアセットなどの上下が見切れてしまった様な画になっている。また、巻頭の“東宝マーク”も「東宝パンスコープ」用のものが用いられている。
- ↑ このチョウ自体は実在のチョウ(Parnassius bremeri)である。ただし、実際の生息地は沿海州から朝鮮半島、華南にいたる。
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 『ゴジラ×メカゴジラ』劇場パンフレットより。
- ↑ 特撮ニュータイプ2012年4月号
- ↑ 『ゴジラ大全集』(講談社、1994年)
- ↑ 『ゴジラ大全集』、『東宝特撮映画大集』
- ↑ テンプレート:Cite
- ↑ 当初、堀口元彦役には藤木悠が候補に挙げられていた。
- ↑ 黒沼健「現代に生きる怪異」(『謎と秘境物語』1959年に収録)
- ↑ 『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』(洋泉社、2010年)208 - 209ページ
- ↑ 『怪獣人生 元祖ゴジラ俳優・中島春雄』(洋泉社、2010年)211ページ
- ↑ 14.0 14.1 テンプレート:Cite book