リポビタンD
リポビタンD(リポビタン・デー、Lipovitan D)とは、大正製薬が販売する栄養ドリンク剤であり、同社の登録商標(第528525号ほか)である。キャッチコピーは「ファイト!一発!」、略称はリポD(リポ・デー)。
現在ではシンガポール・タイ・中国・インドネシア・アメリカ合衆国・イギリス・アラブ首長国連邦など15ヶ国以上の国で販売されている(効能、容量、成分等が薬品に関する法規制や宗教上の禁忌とされる飲食物などの関係で日本国内販売物と異なる物もある)。
2003年度末には販売開始からの累計出荷本数が200億本を突破した。2004年現在年間約8億本が生産され、日本の栄養ドリンク市場において約5割のシェアを獲得するという[1]、まさに日本の栄養ドリンク業界を代表する商品となっている。
目次
歴史
日本では1962年3月に医薬品として販売開始された。1999年3月31日より医薬部外品へ移行し(2009年6月からは改正薬事法により「指定医薬部外品」となった)、コンビニエンスストア等の一般小売店でも販売可能となった。また自社の自動販売機で本製品の販売を開始したほか、2001年3月にはアサヒ飲料と提携し、アサヒ飲料(カルピスとの自動販売機部門の統合に伴い、現在はアサヒカルピスビバレッジ)が管理する自動販売機での販売も開始されている。
販売初期の頃には兄弟品としてチューインガム「リポビタンガム」という商品も販売されていた。
由来
脂肪分解を意味するリポクラシス(lipoclasis、またはリポリシス lipolysis とも)と、ビタミンを合わせた造語である。これは、当初は強肝・解毒の効能を謳ったためである。
Dは、ディーではなくデーと発する。公式見解では「デリシャスなどを意味する」だが、社史では、先行商品「タウローゼC」、またこれとは別の「リポビタンⅭ」に続くものという記号的意味でDを付したとある[2]。
コマーシャル
リポビタンD
「二人の男性俳優が断崖絶壁を登ったり激流へと乗り出したりと、常にコマーシャルを見ている視聴者がハッとするような様々な困難に立ち向かう姿を見せ、その最も困難な場面において、ここぞというチカラを振り絞りながら「ファイトー!」「イッパーッツ!!」と互いに叫びあい困難を乗り越える」という印象的なものであるが、このような男性俳優二人の起用によるコマーシャル形態をとったのは1977年以降のことである。その当時からテーマは常に「努力・友情・勝利」[3]。スタントマン等は使わず危険なアクションの全てを出演俳優自身が行っている。2009年6月に400作を超えた[4]。また、試験管が集まって回るシーンや親指1本でキャップが回転し瓶口から外れるシーンも有名である。
最近は著名人の2世かそれに近い俳優の起用が目立つ(宍戸開[5]、ケイン・コスギ[6]、滝川英治[7]、三浦貴大[8])。また現行路線の長期出演者である勝野洋、渡辺裕之は37歳で降板しているが、ケインは38歳になってからも続投している。
CM路線については「偉大なるマンネリ」と揶揄されている。毎年のように路線変更を考えているようで消費者に見本を見せたところでは「イメージに合わない」という声が出て路線変更できないらしい。そのためCMについては撮影地を探して選ぶことに苦労しているようで時にはスノーボード等時代の流行を取り入れたりもしている。
歴代の出演者
- 1962年: - 宮本敏雄(プロ野球選手/当時:読売ジャイアンツ)
- 1963年 - 1971年: 王貞治(プロ野球選手/当時:読売ジャイアンツ、現:福岡ソフトバンクホークス取締役会長)
- この当時は「ファイトで行こう!!リポビタンD」というフレーズだった。2005年の限定版復刻ボトルのCMでも当時の画像が放送されている。なお、王がランニングホームランを打つという設定のCMも存在するが、公式戦では全てのホームランは外野フェンス越えであり、ランニングホームランは1本も打っていない。
- 1972年 - 1974年: 宝田明
- 1975年 - 1976年: 高橋英樹
- 1977年 - 1980年: 勝野洋、宮内淳
- 1981年 - 1982年: 勝野洋、真田広之
- 1983年 - 1986年: 勝野洋、渡辺裕之(1983年は渡辺起用前に勝野単独版CMもあり)
- 1987年 - 1989年: 渡辺裕之、野村宏伸
- 1990年 - 渡辺裕之、倉田てつを
- 1991年 - 1992年: 渡辺裕之、西村和彦
- 1993年 - 1998年: 西村和彦、宍戸開
- 1999年 - 2001年: 宍戸開、ケイン・コスギ
- 2002年 - 2007年: ケイン・コスギ、滝川英治
- 2007年 - 2009年: ケイン・コスギ、山口達也 (TOKIO)(2008年秋バージョンはケイン単独で出演)
- 2010年: - ケイン・コスギ、三浦貴大
- ナレーター
- ラジオコマーシャル
疲労困憊のサラリーマン、OLをメインとしたオフィス、ゴルフ場、プライベートなどの日常生活をラジオドラマコント風にした15秒CMを1993年頃から製作しており、その数は数百本に上る。CMの最後には「青いのぼりのお店でどうぞ」の一言も入るものもある。
リポビタンファイン
2007年に新発売となったリポビタンファインでは、リポビタンD以外の商品では初めてとなる独自のCM展開を行っている。上記のリポビタンDとは一線を画するイメージのCMが特徴である。
リポビタンフィール
2013年に新発売となったリポビタンフィール(後述)では、CMキャラクターに杏が起用されている。
エピソード
- 1999年の規制緩和により登場した自販機用のビンは、破損を防ぐためガラスが厚く、通常より若干大きくなっている。
- 「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」内の企画で、同番組のスポンサーであった大正製薬にMr.オクレのCM出演を依頼したことがある。上記のCMポリシーに全くそぐわないオクレの起用に当初会社側は難色を示すが、深夜帯に1度だけ放映するとの条件で最終的に採用された。内容は、屋内プールで溺れる小学生をオクレと渡辺裕之(共にブーメランパンツ姿)が協力して救助にあたるというものであった。
- 1996年は通常シリーズの他、当時プロサッカー選手の前園真聖を起用したCMも制作・放送された。同バージョンのナレーターは矢島正明でなく田子千尋が起用されている。
- 2005年、独立行政法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部(ISAS/JAXA)の運用する小惑星探査機「はやぶさ」が探査対象天体の小惑星イトカワに到達した際、着陸運用の様子を伝える公式ブログにて管制室内にリポビタンDの空瓶が次々に増えていく様子が紹介され[11]、日本国内のみならず海外でも話題となった。その後ブログを見た大正製薬関係者から同ブログ担当者宛にリポビタンDが2カートン贈られたという。
- 2008年は映画「相棒 -劇場版-」の公開を記念し、本作に出演している川原和久・六角精児がコンビを組んで役柄の容姿で出演する特別バージョンのCMが作られた。
- 欧米で高い人気を持つ栄養ドリンクのレッドブルは、元々日本でリポビタンDシリーズ等の栄養ドリンクが大きな市場を形成していることを知ったディートリッヒ・マテシッツが、同種のドリンクを欧米で展開しようとして販売を始めた製品であり、マテシッツは商品開発など多くの面でリポビタンDの影響を受けていることを認めている。
- ニンテンドーDS版「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」にゲーム中アイテムとして「ファイトいっぱつ」が登場する。製品および企業とは無関係だが、戦闘中の攻撃力が2倍になる効果が得られる、アイテムの外観などから当製品を意識したものだと思われる。
- ユニクロより企業コラボレーションシリーズとして商標がデザインされたTシャツが発売されている。
- 2012年5月10日、発売50周年を記念して歴代CM出演者(王、宝田、渡辺、ケインほか)らが一堂に会した記念イベントが開かれた。なお5月10日は「ファイト一発!の日」であり、当日は「ファイト、イッパーツ!」とかけて午後1時8分2秒、一斉に気勢が上げられた。なお2012年には発売50周年を記念して「とどけ、ファイト!キャンペーン」も6月11日まで実施された[12]。
商品ラインナップ
2013年4月現在、リポビタンシリーズは全24種類(うち指定医薬部外品18種類)がある。 以下に示す希望小売価格は、全て税込み価格。
指定医薬部外品
※を付けた商品は、販売ルートによりブランドを変えただけの商品となる(薬局・薬店ルートと一般量販店ルートで取扱商品が異なっている)。従って売られるのはどちらか一方だけで、両方が置かれることは無い。
- リポビタンD
- 1962年に発売された、シリーズの代表格。タウリン1000mg配合。1999年に医薬部外品へ移行(2009年に指定医薬部外品となる)。Dの意味は「デリシャス」または「ダイナミック」。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンDスーパー
- 1965年発売。タウリンを2倍の2000mgにして、塩酸アルギニン、ニンジンエキスをプラス配合。2005年3月にはニンジンエキス増量、ビタミンEを新配合しリニューアル。あわせて、これまでの医薬品から医薬部外品(2009年より指定医薬部外品)へ移行。
- 希望小売価格262円。
- リポビタンDW
- 2005年発売。タウリン2000mg、ビタミンB群、イノシトール等を配合。
- 希望小売価格178円。
- ※リポビタン8NEW
- 2000年6月に「リポビタン8」を発売。ローヤルゼリー200mgを配合。"8"とは、配合成分の数とローヤルゼリーを生み出す蜂を掛け合わせたもの。2002年10月には、タウリン・ローヤルゼリーを増量し「リポビタン8II」に。2007年7月には新たにニンジンエキスとビタミンEを配合し、現在の名称にリニューアル。
- 希望小売価格262円。
- ※リポビタンD8(販売名:リポビタン8a)
- つらい疲れに。10種類の有効成分を配合。「リポビタン8NEW」と配合成分・添加物は同一。
- ※リポビタン11NEW
- 2001年8月に「リポビタン11」を発売。名前の通り、11種類の有効成分を配合。2006年9月には新たにニンジンエキスとビタミンEを配合し、現在の名称にリニューアル。
- 希望小売価格367円。
- ※リポビタンD11(販売名:リポビタン11a)
- 現代社会の疲れに。13種類の有効成分を配合。「リポビタン11NEW」と配合成分・添加物は同一。
- リポビタンエース(販売名:リポビタンDエース)
- 2009年8月発売。L-アルギニン塩酸塩、刺五加(シゴカ)、フルスルチアミン塩酸塩(ビタミンB1誘導体)など11種類の有効成分を配合。
- 希望小売価格315円。
- リポビタンFB
- 2010年3月発売。疲れた時の栄養補給に。エネルギーを産生するカルニチン塩酸塩をはじめ、タウリン・ビタミンB2・イノシトール等8種類の有効成分を配合。
- 希望小売価格199円。
- リポビタン11ローヤル
- 2000年10月に「リポビタンローヤル」を発売。医薬部外品では初めてクコシを配合。2002年12月に配合成分を増やし、「リポビタンローヤル11」にリニューアル。2006年11月にリニューアルし、現在の名称に。
- 希望小売価格367円。
- リポビタンファイン
- 2005年10月発売。糖類ゼロで、効き目しっかり。カロリーは19kcal。甘味料としてキシリトールを配合。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンDライト
- 2000年1月発売。有効成分はリポビタンDと同じながら、低カロリー(「リポビタンD」に比べ、カロリー20%カット)。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンハーフ(販売名:リポビタンDハーフ)
- 2009年5月発売。リポビタンDの効き目はそのままに、カロリー1/2設計。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンアミノ(販売名:リポビタンアミノNEW)
- 2004年6月発売。主にスポーツをされる方に勧められている製品で、3種類のアミノ酸を配合。2008年8月にローヤルゼリー・イノシトール・ニコチン酸アミドを新配合し処方強化。希望小売価格も値下げした(262円→200円)。
- 希望小売価格200円。
- リポビタンフィール(販売名:リポビタンDCF)
- 2013年4月発売。夜にドリンク剤を飲んで疲れた身体を寝ている間に癒したい方に。就寝前にも服用できるノンカフェイン・低カロリー処方で、飲みやすいカシスグレープフルーツ風味。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンノンカフェ
- 2008年10月発売。就寝前の服用やカフェインの摂取が気になる方に考慮したノンカフェイン処方。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンこども(販売名:リポビタン小児用)
- 1980年に初の子供用ドリンク剤「リポビタン小児用」(医薬品)として発売。2004年10月に医薬部外品に移行とすると共に、現在の名称へリニューアル。
- 希望小売価格210円。
- リポビタンDキッズ
- 2012年9月発売。スポーツや勉強で忙しい5~14才の子供のためのミニドリンク剤。カルシウム、タウリン、各種ビタミンを配合しながらノンカフェイン処方とし、飲みやすいミックスフルーツ味としている。
- 希望小売価格153円。
- リポビタンジンジャー
- 風邪などの栄養補給にビタミン・タウリン・生姜の入ったノンカフェインのドリンク剤。香り高いゆずジンジャー風味。
- 希望小売価格153円
第2類医薬品
- リポビタンDIIα【第2類医薬品】
- 2001年4月に、「リポビタンD」の発売40周年を記念し、「リポビタンDII」を発売。ゴオウを配合しながら、低価格を実現した医薬品ドリンク。2007年3月に「ハゲキテン」を新配合し、現在の名称にリニューアル。
- 希望小売価格168円。
- リポビタンD PRO【第2類医薬品】
- 2007年発売。植物性強壮生薬「ハゲキテン」やタウリン1000mg、イノシトール、ビタミンB群等を配合。
- 希望小売価格157円。
- リポビタンゴールドN【第2類医薬品】
- 配合生薬をシゴカ、オウギ、ハゲキテンに差し替え、リボフラビンリン酸エステルナトリウム(ビタミンB2)を増量(2.5mg→3mg)に増量した「リポビタンゴールド」の改良版。
- リポビタンゴールドエース【第2類医薬品】
- 2009年10月発売。4つの生薬(ニンジン・オウギ・ハゲキテン・ローヤルゼリー)を配合したミニドリンク剤。
- 希望小売価格315円。
第3類医薬品
- リポビタンDロイヤル【第3類医薬品】
- 1998年発売。タウリン2000mg、4種の強壮生薬、塩化カルニチンを配合。現行の100mlリポビタンの中では一番価格が高い製品。
- 希望小売価格525円。
- リポビタンJr.【第3類医薬品】
- 2000年発売。小中学生(8 - 14歳)向け栄養ドリンク。L-アスパラギン酸マグネシウム・グルコン酸カルシウム配合。
- 希望小売価格210円。
企業限定品
- リポビタンBiz【指定医薬部外品】
- 2008年6月にJR東日本ウォータービジネスとの共同開発で東日本旅客鉄道(JR東日本)グループ店舗(駅構内)限定で発売開始。ローヤルゼリー200mg配合。
- リポビタンゴールドα【第2類医薬品】
- タウリン・オウギ流エキス・ハゲキテン流エキスを配合。ハピコム(旧イオン・ウエルシア・ストアーズ)限定品。
販売終了品
- リポビタンA【医薬部外品】(1976年発売)- 「アニマリンA【指定医薬部外品】】」へ継承
- リポビタンゴールド【第2類医薬品】(1979年発売) - 「リポビタンゴールドN【第2類医薬品】」へ継承
- リポビタンD EX【医薬品】(1996年発売 - 2001年製造終了)
- リポビタンDエース【医薬品】(1992年発売 - 1998年製造終了) - 「リポビタンDロイヤル【第3類医薬品】」へ継承
- リポビタンDII【医薬品】 - 「リポビタンDIIα【第2類医薬品】」へ継承
- リポビタンD2000【医薬品】(1997年発売 - 2005年製造終了)- 「リポビタンDW【医薬部外品】」へ継承
- リポビタンD復刻版【医薬部外品】(2005年発売) - 発売当時のラベルを忠実に再現した復刻版で、中身は通常の「リポビタンD」と同一。ロゴ書体や「ワシのマーク」は当時のものを使用しており、上部には当時のキャッチコピーであった「ファイトで行こう!」を記載。
- リポビタンDマクシオ【医薬部外品】(2006年発売)
- リポビタンG【医薬部外品】(2004年発売)
- リポビタンVC【医薬部外品】(2006年発売、数量限定製品)
- リポビタン8【医薬部外品】- 「リポビタン8II【医薬部外品】(販売終了品)」へ継承
- リポビタン8II【医薬部外品】 - 「リポビタン8NEW【指定医薬部外品】」へ継承
- リポビタン11【医薬部外品】 - 「リポビタン11NEW【指定医薬部外品】」へ継承
- リポビタンアミノゴールド【医薬部外品】(2004年6月発売)
- リポビタンウインズ【医薬部外品】- コンビニエンスストア限定品
- リポビタンウインズエース【医薬部外品】(2005年発売)
- リポビタン小児用【医薬品】 (1980年発売 - 2004年10月製造終了)- 「リポビタンこども【指定医薬部外品】」へ継承
- リポビタンDビビカ【医薬部外品】- 配置薬限定品
- リポビタンローヤル【医薬部外品】(2000年10月発売 - 2002年12月製造終了)- 「リポビタンローヤル11【医薬部外品】(販売終了品)」へ継承
- リポビタンローヤル11【医薬部外品】(2002年12月発売 - 2006年11月製造終了)- 「リポビタン11ローヤル【指定医薬部外品】」へ継承
- リポビタンゴールドII【第2類医薬品】(2004年4月発売)
脚注
関連項目
- リポビタンD Sports Nonfiction
- リポビタンDチャレンジ
- 挑戦者〜No.1への階段〜(テレビ朝日系/スポンサー)
- ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗(劇中、王選手が飲んでいる)
外部リンク
- リポビタン|トップページ|大正製薬
- リポビタンD博物館(リポビタンDやTVCMの歴史、シリーズ品を紹介)