ハードトップ
ハードトップ(hardtop)とは、自動車のボディスタイルのひとつである。 →#ボディスタイルとしての「ハードトップ」
本来は、金属製の自動車の屋根を指した。「ソフトトップ」(布製の屋根)の対義語である。→#自動車部品としての「ハードトップ」
目次
ボディスタイルとしての「ハードトップ」
由来
スリーボックスの形態(エンジンルーム、室内スペース、トランクルーム)を持つ自動車のうち、主に側面中央の窓柱(Bピラー)を持たない形状をいう。
車体デザインにスポーティさや開放感を持たせることを主な狙いとしており、固定された屋根を持つボディ形状にもかかわらず、オープンカーに脱着式の屋根を装着した時のスタイルを連想させるデザイン手法である。Faux Cabrioret(フォー・カブリオレ。偽のカブリオレ)とも呼ばれる。なお、オープンカーや一部のSUVに用意されることが多い脱着式の屋根が、元来の意味での「ハードトップ」である(#自動車部品としての「ハードトップ」にて後述)。
ハードトップ・スタイルは、アメリカで1949年に登場したキャデラック・クーペドゥビルが初めて採用した。この車は一大センセーションを巻き起こした。こののち、アメリカ車では2ドアクーペ・4ドアセダンともにこの手法が大流行した。前後の窓を全て降ろした際、中央部にはピラーが残らず大きな開口部を見せることが、乗員の開放感と共に車体デザイン上の演出になっていた。
この演出は、現在ではメルセデス・ベンツEクラスクーペやCLクラス、ベントレー・コンチネンタルGTやブルックランズ(同アルナージをベースにした2ドア4シータークーペ。550台の限定生産)といった、一部の高級クーペが引き継いでいる。
日本車のハードトップ
日本車では1965年のトヨペット・コロナハードトップ(T50型系)が初採用である。これは2ドアハードトップ車であった。その後1970年代にはトヨタ・クラウンや日産・セドリックのような高級車から、ブルーバードやカローラなどの大衆車、さらにはダイハツ・フェローMAXやホンダ・Zといった軽自動車にまで2ドア・ピラーレス・ハードトップが設定されるようになり、4ドアセダンでも、パーソナル需要を主として高級車を中心に4ドア・ピラーレス・ハードトップが流行した(後述)。
ただし、1970年代前半の2ドアハードトップは、ボディ剛性の確保および、アメリカ車から受けたデザイン上の影響によりCピラーが太く処理されており、これに伴いリヤサイドウインドウは面積が小さなものとなっていた。このため、Bピラーをなくしたことによる開放感の演出は希薄なものとなっていた。特に斜め後方視界の悪化は顕著であり、オイルショック以後発売された2ドアハードトップ車では、トヨタ・クラウン (S80系)、日産・ブルーバード(810型系)に代表されるオペラウインドウ付のものが登場する。
ピラーレスとピラードとサッシュレス
車体側面中央部の柱(Bピラー)がないため、ボディ剛性や側面衝突への安全性を十分に確保するためには、他の部分の補強が必要となり、重量とコストの上昇は避けられない[1]。そのため、Bピラーを残したままでハードトップの印象を持たせた形態のものも登場し、日本ではトヨタがピラード・ハードトップと名付け、日産との差別化を図った。窓枠を持たないドアという意味で、サッシュレスドアという表現もなされる。
日本の4ドア車で初めてサッシュレスドアを用いた車種は、1972年2月に登場したスバル・レオーネである。これはBピラーを持っており、メーカーではハードトップという表現を用いなかった。日本車初のピラーレス・ハードトップ4ドア車は、同年8月に追加設定された230型系セドリックおよびグロリアである。
この時期は、ピラーレス/ピラード両形式のハードトップ車が市場に出ていた。メーカーにより傾向があり、4ドアのピラーレス・ハードトップは主に日産が好んで採用し、ピラード・ハードトップはトヨタ・マツダ・三菱が積極的に採用していた。
しかし、ピラーレス・ハードトップ車が安全面で十分な対応をするには、前述のとおり大きなコストアップが必要である。そのため、徐々にピラード・ハードトップや4ドアセダンへと移行し、1993年のローレル(1月)、カリーナED/コロナEXiV(10月)のフルモデルチェンジをもって、日本車におけるピラーレス・ハードトップ車は完全に消滅した。ピラーレス・ハードトップからピラード・ハードトップへの移行を行った車種は、他にセドリック、グロリア、ブルーバード、シーマなどである。また、ピラード・ハードトップ/サッシュレスドアから4ドアセダンへの移行を行った車種はクラウン、マークII、チェイサー、スカイライン、レオーネなどである。軽自動車では2代目オプティが軽自動車史上唯一の4ドアピラードハードトップであった。
欧米でも、かつて大流行したアメリカ車を含め、ピラーレス・ハードトップはほとんど見られない。オープンカーや一部のショーモデル・コンセプトカーを除けば、現在では上記車種のような高級クーペに採用されるのみである。
2000年代後半以降は、主にサッシュ付きのドアを中心とした車種が販売の中心となりホンダでは1998年のインスパイアのフルモデルチェンジで、トヨタでは2001年のウィンダムのフルモデルチェンジで、日産は2004年のセドリック/グロリアのモデル廃止、最後は2005年のディアマンテのモデル廃止をもって日本車における高級4ドアハードトップ車は完全に消滅した。
スバルも伝統的にセダンとワゴンに採用し続けていたが、現在はハードトップの採用をやめる方針をとっており、インプレッサ、フォレスター、レガシィは窓枠付きのドアになった。また、同社では特にハードトップとは呼ばず、「サッシュレスドアを採用したセダン、ワゴン」としている。なお2009年のフルモデルチェンジでレガシィ3タイプ(ツーリングワゴン・アウトバック・B4)全てがサッシュ付ドアに変わったことにより、2ドアクーペ、オープンカー、コンセプトカーなどを除いて、2011年現在日本製乗用車でこの構造を採用している車種は1台もない。 テンプレート:-
消滅から4ドアクーペの台頭によるサッシュレスドアの復活
一時期、クーペ以外にはサッシュレス車はなくなっていたが、2005年にメルセデスCLSクラスが発売されたことにより、4ドアクーペという新カテゴリーが誕生し[2]、これを皮切りに、メルセデスCLAクラス、シトロエンC6、アウディA7、BMW5シリーズグランツーリスモ、BMW6シリーズグランクーペ、BMW3シリーズグランツーリスモ、BMW4シリーズグランクーペ、マセラティ・ギブリと、欧州車では4ドアのサッシュレス車が増えつつある。
4ドア車においてのサッシュレスドアはサイドウィンドウが小さめになることから、特に後席ドアの開口部が狭くなり乗降性に関しデメリットがある。そのため、スタイル優先の設計である場合は良いが、キャビンを広く設計したい場合はメリットを持たないという点がある。
その他、以下のような特徴がある。
- 市販を前提としたレベルのコンセプトカーでは、ピラーレスおよびサッシュレス構造を採用している例がよく見られる。ただし、市販段階では採用されない傾向がある。
- かつては安全性確保のため、ピラーレス構造では天井面積を小さくしており、キャビン全体が狭くなる場合が多かった。
- ウェザーストリップの経年変化による硬化から、走行中に内気の吸い出しが起こったり、ドアのしまりが悪くなる場合がある。
- ドアの窓枠がないことによる前方・側方死角の減少や、窓を降ろせば狭い場所でも乗り降りがしやすいなど、見かけのスタイリッシュさとは別の、実用的なメリットも存在する。
自動車部品としての「ハードトップ」
硬い材質でできた自動車の屋根のこと。実際的には、オープンカーの屋根構造において、「ソフトトップ」(布製の幌とビニール製の窓)と対照的に使われる。
オープンカーの装備として、脱着式のハードトップ、いわゆる「デタッチャブルハードトップ」の場合、アルミやFRPなど、比較的軽い素材で作られていることが多い。本来装備されていることの多いソフトトップに比べ、ハードトップの着脱作業は煩雑であるが、耐候性と耐久性では大きく勝り、室内の快適性とクーペ風のスタイルも得られる。
以前は幌型が基本であったジープタイプの四輪駆動車では、「メタルトップ」や「FRPトップ」という呼称が使われることも多い。いずれも寸法や重量があり、またメタルトップは複数のパネルで構成されているため頻繁に着脱する類のものではなく、あくまでも「外すことも可能」なハードトップである。また、その後のクロスカントリーカーやSUVにもメタルトップと呼ばれるものがあるが、これらはモノコックに準じた車体構造(実際にモノコック構造の車種もある)であり、屋根を分離することはできない。
車両そのものに電動格納式ハードトップを組み込み、自動的・機械的に屋根を開閉できるオープンカーもあり、クーペカブリオレと呼ばれる。日本では、このような車種の屋根構造を指して、「ハードトップ」の代わりに、「メタルトップ」という表現が使われることがある。 テンプレート:-