ハリー・ポッターシリーズ
テンプレート:ウィキプロジェクト ハリーポッターシリーズ テンプレート:Portal 文学
『ハリー・ポッターシリーズ』(英:Harry Potter Series)は、イギリスの作家J・K・ローリングによる児童文学、ファンタジー小説。1990年代のイギリスを舞台に、魔法使いの少年ハリー・ポッターの学校生活や、ハリーの両親を殺害した張本人でもある強大な闇の魔法使いヴォルデモートとの、因縁と戦いを描いた物語。1巻で1年が経過する。
第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』がロンドンのブルームズベリー出版社から1997年に刊行されると、全く無名の新人による初作であるにもかかわらず、瞬く間に世界的ベストセラーになった。子供のみならず多数の大人にも愛読され、児童文学の枠を越えた人気作品として世界的な社会現象となった。2001年から8本のシリーズで公開された映画(2011年完結)も大きなヒットを記録。当初から全7巻の構想であり、最終巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』の原書が2007年7月21日に発売され、完結した。
2010年6月には、フロリダのユニバーサル・オーランド・リゾートに、映画版のセットを模したテーマパーク:ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター(テンプレート:Interlang)が開園した。 2014年7月15日にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンでも開園した。
目次
年譜
- 1990年夏 - J・K・ローリングが、物語を着想
- 1995年 - 第1作『賢者の石』執筆終了
- 1996年8月 - 英国:ブルームズベリー社からの出版が決定
- 1997年春 - 米国:スコラスティック社からの出版が決定
- 1997年6月30日 - 第1作『賢者の石』発売。初版500部だったが、ベストセラーになる。
- 1999年12月1日 - 『賢者の石』の日本語版が静山社より発売される。
- 2001年11月16日 - 映画『賢者の石』公開。以後シリーズ化
- 2007年7月21日 - 第7作『死の秘宝』発売。物語は完結。
- 2008年6月10日 - 直筆の約800語の短編[1]が2万5000ポンドで落札される。
- 2008年12月4日 - 『吟遊詩人ビードルの物語』発売
- 2010年6月 - ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター開園
- 2011年 - ポッターモア(テンプレート:Interlang)発表
- 2014年7月15日 - ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターUSJで開園
あらすじ
テンプレート:See also 孤児で、従兄弟等にいじめられてるハリー・ポッター少年は、11歳の誕生日に自分が魔法使いであることを知る。
ホグワーツ魔法魔術学校へ入学し、いままで知らなかった魔法界に触れ、亡き両親の知人をはじめとした多くの人々との出会いを通じて成長する。
そして、両親を殺害したヴォルデモート卿と自分との不思議な因縁を知り、対決していくこととなる。
より詳細なあらすじは、各巻記事を参照
作品リスト
『ハリー・ポッター』シリーズ本編
全7巻からなる長編で、各巻の内容は相互に密接に関連している。作者のJ・K・ローリングは、インタビューで、プロットが重要なので力を注ぎ、「第1巻を書き上げる前に、全7巻のプロットができていた」と語っている[2]。
当初は、1997年から毎年1冊の刊行が予定されていたが、最終的には1-4巻までが毎年、3年おいて、5-7巻が1年おきの刊行となった。
- 第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』
- Harry Potter and the Philosopher's Stone (1997年6月30日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 4-915512-37-1 (1999年12月1日発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 4-915512-49-5 (2003年発売)
- 日本語版文庫本 ISBN 978-4-86389-160-9/ISBN 978-4-86389-161-6 (2012年7月3日発売)
- 第2巻『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- Harry Potter and the Chamber of Secrets (1998年7月2日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 4-915512-39-8 (2000年発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 4-915512-54-1 (2004年発売)
- 日本語版文庫本 ISBN 978-4-86389-162-3/ISBN 978-4-86389-163-0 (2012年発売)
- 第3巻『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
- Harry Potter and the Prisoner of Azkaban (1999年7月8日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 4-915512-40-1 (2001年発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 4-915512-55-X (2004年発売)
- 日本語版文庫本 ISBN 978-4-86389-164-7/ISBN 978-4-86389-165-4 (2012年発売)
- 第4巻『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
- Harry Potter and the Goblet of Fire (2000年7月8日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 4-915512-45-2 (2002年10月23日発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 4-915512-60-6 (2006年9月21日発売)
- 日本語版文庫本 ISBN 978-4-86389-166-1/ISBN 978-4-86389-167-8/ISBN 978-4-86389-168-5 (2012年発売)
- 第5巻『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- Harry Potter and the Order of the Phoenix (2003年6月21日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 4-915512-51-7 (2004年9月1日発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 978-4-915512-66-7 (2008年3月17日発売)
- 日本語版文庫本 ISBN 978-4-86389-169-2/ISBN 978-4-86389-170-8/ISBN 978-4-86389-171-5/ISBN 978-4-86389-172-2 (2012年発売)
- 第6巻『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- Harry Potter and the Half-Blood Prince (2005年6月16日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 4-915512-57-6 (2006年5月17日発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 978-4-86389-042-8 (2010年3月11日発売)
- 日本語版文庫本 ISBN 978-4-86389-173-9/ISBN 978-4-86389-174-6/ISBN 978-4-86389-175-3 (2012年発売)
- 第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』
- Harry Potter and the Deathly Hallows (2007年7月21日発売)
- 日本語版単行本 ISBN 978-4-915512-63-6 (2008年7月23日発売)
- 日本語版携帯版 ISBN 978-4-86389-088-6 (2010年12月1日発売)
J・K・ローリングによる解説書
- ホグワーツ校指定教科書1『幻の動物とその生息地』
- Fantastic Beasts and Where to Find Them
- 日本語版 ISBN 4-915512-43-6 (2001年発売)
- ニュート・スキャマンダー(Newt Scamander)著(実際の著者はJ・K・ローリング)
- ホグワーツ校指定教科書2『クィディッチ今昔』
- Quidditch Through the Ages
- 日本語版 ISBN 4-915512-44-4 (2001年版となっており、現在は書店在庫のみの販売となっている。原作国イギリスでは出版社売り上げの100%を、日本の出版元である静山社は70%を慈善事業に寄付している。)
- ケニルワージー・ウィスプ(Kennilworthy Whisp)著(実際の著者はJ・K・ローリング)
吟遊詩人ビードルの物語
- 『吟遊詩人ビードルの物語』
- The Tales of Beedle the Bard
- 2008年12月4日発売。
- J・K・ローリングがハリー・ポッターシリーズの完成後に執筆した、物語上に存在する童話集。本編7巻にもその一部が紹介されていた。
- もともと、ローリングが七冊手作りし、内輪の知人に贈呈した本である。うち一冊がオークションにかけられ、発売の運びとなった。収益は慈善団体CHLG[3]に寄付される。
- ポッターモアのサイトに作者書き下ろし番外編ハリー・ポッター掲載されています。
各国版の差異
『ハリー・ポッター』シリーズは、世界各国で刊行されており、2008年時点で67言語に翻訳され、世界合計4億部(うち第1作が1億部)のベストセラーとなっている。珍しいところでは、ラテン語・古代ギリシア語など、日常で使われることのない言語にも訳されている。
なお、著者のローリングは自著の電子書籍化に対して強固に反対しており、ハリーポッターシリーズの電子書籍版は販売されていなかったが、2012年にはオフィシャルストア「POTTERMORE」よりEPUB形式による販売が開始された。作品ごとのシリーズセットがあり、それぞれアメリカ英語版とイギリス英語版が用意されている[4]。
書籍形態
- 英語版
- イギリス/UK版(原書)
- 作者J・K・ローリングの母国イギリスでは、ブルームズベリー社から発売されている。1〜4巻まではペーパーバックが中心だったが、5巻以降はハードカバーが中心となる。児童向けの、イラストを用いたカラフルな装丁の他、大人向けに黒地にカラー写真を配したシックなデザイン(アダルト版)も存在。モノクロ写真を用いたよりシンプルなデザインのアダルト版もあったが、5巻以降は発売されていない。2010年に、新装版が発売され、白地にクレア・メリンスキーによる版画風のシンプルなイラストが描かれたデザインになっている。
- 原書であるイギリス版では、挿し絵は一切無く、一般のイタリック以外の変わりフォントは用いられていない。
- アメリカ/US版
- スコラスティック社から発売され、各国版中最大の出版部数を誇る。アメリカ版では一部の単語についてアメリカ英語に修正して出版している[5]。特に第1作『賢者の石』アメリカ版は、出版社の強い要求で"the Sorcerer's Stone"に変更されて出版された。イギリスでは"philosopher"という単語で「魔法使い」(錬金術師)というニュアンスが読者に伝わるのに対して、アメリカでは"philosopher"だと読者は「哲学者」を連想し「魔法使い」につながることがほとんどない、というイギリス英語とアメリカ英語の違いが米国側の主張する理由であった。"Sorcerer"という単語は、「魔法使い」を示す単語として以前よりアメリカ国内等で既に膾炙していた単語ではあるが、後に彼女は当時立場が強ければ改題には反対したと語っている[6]。
- アメリカ版はメアリー・グランプレによる挿絵が、各章冒頭に挿入されている。また変わりフォントが、手紙文・新聞記事などを表現するのに用いられている。
- 中国語版、韓国語版、ポルトガル語版、ノルウェー語版など、アメリカ版の表紙を用いた言語も多い。
- ドイツ語版
- カールセン社から発売。ハードカバーのみで、挿絵は無く、変わりフォントも用いられていない。作者名は「JOANNE K. ROWLING」表記(ファーストネームを記載)。表紙は7巻ともザビーネ・ウィルハームによる。なお、各章には番号が振られておらず、目次も無い。
- フランス語版
- ガリマール社から発売。ペーパーバック中心。表紙は7巻ともジャン=クロード・ゴッティングによる。
- スペイン語版
- Emece社から発売。
- イタリア語版
- French & European Pubnsから発売。
- 中国語版
- 地域によって別々に翻訳されている。訳者も出版社も異なるので違う訳文であり、使用文字・慣習が異なるため、作中の固有名詞や呪文の訳し方も全く違う。なお、第1巻は繁体字版の方が3ヶ月先に刊行されたが、その後の巻はほぼ同時期(数日違い)に刊行された。
- 日本語版
- 静山社から発売。訳者は全巻とも松岡佑子。ハードカバー版および携帯版(新書サイズのソフトカバー)が発売され、アメリカ版に影響を受け、手紙文・新聞記事の他、台詞まで変わりフォントが用いられている。4巻以降は、上・下巻に分冊(ただし別売不可)。表紙および各章冒頭の挿絵は、7巻ともダン・シュレシンジャーによる。
作中の固有名詞
『ハリー・ポッター』シリーズは、ほとんどの固有名詞に意味が込められた命名がなされている[7]が、固有名詞の翻訳状況は、各言語の事情によって異なる。
中国語(特に繁体字版)では、「天狼星 布萊克」や「小仙女 東施」のように人名にも意味を重視した翻訳が成されている[8]。スロベニア語では、固有名詞をスロベニア語に訳した上で、スペルを若干変更している[9]。しかし、映画化にあたりワーナー・ブラザーズ社から、人名を変更しないよう要請が出され、各言語の翻訳者からは映画会社の横暴に不満が噴出したと言う[9]。
また、6巻終盤に登場した「R.A.B」のイニシャルも、オランダ語やノルウェー語などでは、人物の名字に意味を重視した訳語をあてていたため「R.A.Z」や「R.A.S」となった。このため他の言語と比較することで、その正体が予測できてしまうということもあった。
日本語 | 英語 | ドイツ語 | フランス語 | 繁体字 | 簡体字 |
---|---|---|---|---|---|
吸魂鬼 | Dementor | Dementoren | Détraqueurs | 催狂魔 | 摄魂怪 |
分霊箱 | Horcrux | Horkrux | Horcruxe | 分靈體(分霊体) | 魂器 |
憂いの篩 | Pensieve | Denkarium | Pensine | 儲思盆 | 冥想盆 |
日本語版における問題点
翻訳に関する問題
日本語版は、全シリーズを通じ松岡佑子が翻訳を担当した。松岡は、元々は国際会議などにおける同時通訳の専門家であり『ハリー・ポッター』前後に文学作品を翻訳した経験は皆無である。
松岡および静山社の、翻訳権獲得からミリオンセラーまでのサクセスストーリーは日本国内で大きな注目を集め[10]、また翻訳の評判もよかった[11][12][13]。
一方、翻訳家からは第1巻から誤訳・珍訳の問題点が指摘されており[14]、2001年頃には児童読者からの誤訳の指摘も松岡の元に届いていた[12]。以下には、主な問題点を挙げる。
この他、同じイギリス文学、同じ綴りでありながらビアトリクス・ポターの姓表記と統一されていない(共に“Potter”で一致)という問題点がある。
原文の単純な誤訳
- 第1巻16章
- 原文:slyly the poison trie to hide. You will always find some on nettle wine's left side.
- これを「毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左」と訳したため、原書では筋が通っているパズルが日本語版では解きにくくなっている。これを「イラクサ酒の左には いつも毒入り瓶がある」とすることで、部分的な解答を得ることが容易となる。ただし、文章では瓶の大きさを判別できないため、読者が文章のみから完全な解答を導くことはできない[15]。
- 第5巻6章
- 原文:I camped out at your dad's in the school holidays,
- "camped out"を「キャンプした」と訳した。しかしこの発言は、キャンプしたのではなく、話者が家から飛び出し親友の実家に世話になったことを意味しているため、誤訳である。携帯版では修正されている。
- 第5巻25章
- 原文:I'm on probation
- ハグリッドの発言を「停職になった」と訳したが、この発言後も学校で働き続けているため、誤訳である[14]。携帯版では「停職候補」に変更されたが、"probation"は執行猶予の意味であるため、訂正になっていない。
- 第6巻20章
- 原文:You are omniscient as ever, Dumbledore.
- これは、ヴォルデモートは他意がなさそうな様子で職をもとめにきたが、実は近くの村の宿屋ホッグズ・ヘッドに手下たちを待機させていたことをダンブルドアに指摘され、居直って返した台詞である。人から怪しい行動を指摘されて返す言葉が「博識ですね」というのはずれている。omniscientには「博識の」というような意味もあるが、この状況では「お見通しですね」「千里眼ですね」などが正しい[14]。文庫版では「相変わらずなんでもご存知ですね、ダンブルドア」に修正されている。
日本語訳独自の脚色
本シリーズは、1990年代のイギリスを舞台に、10代の少年を主人公とした物語である。
原書においては、一部の登場人物に訛り[16]や特徴的な口癖[17]が与えられ、個性を表現しているが、日本語では英語以上に一人称や言葉遣いの表現が多様である(役割語等も参照のこと)。
したがって、1990年代という時代設定から逸脱した一人称・言葉遣いを用いたことによって、原作と日本語版ではまるで印象が違ってしまっている登場人物も少なくない。明治大学教授で翻訳家の高山宏は、「魔術という古い世界と現代のティーンエイジャーの世界の交錯がこの作品の醍醐味なのですが、日本語訳では会話文と普通の文章がごっちゃになって読みにくい」と評している[14]。この他、『手水場』『下手人』『旅籠』など時代がかった言葉が多いことも、「センスが悪い」と批判されている[14]。口語としてあまりに不自然な場合、映画版の吹替え・字幕では修正されている。
また、本文には、特殊フォント・太字・囲み文字・網かけ文字やイラスト風の囲みが多用されているが、いずれも底本のブルームスベリー社版には無い、日本語訳独自の演出である。これは、原作者の意向で本文中に挿絵が使えないため、読者がイメージを膨らませられるようにという松岡の考えで行われた[12]。
設定・世界観の無視
「Magical Law Enforcement Squad/Patrol」は、3巻で魔法警察部隊と訳されたが、4巻11章で、魔法族は「警察」(Policeman)の語を用いることができず「慶察」(Pleaseman)と呼んでしまうことが判明した。しかし5巻7章ではこの設定は無視され、魔法"警察"パトロールと訳されている。ちなみに中国語版では、直訳の『魔法法律執行隊』が採用されている。
7巻20章では、7巻前半以降「ヴォルデモート」という言葉に呪いがかけられ、使用すると保護が破られ直ちに発見されるということが判明した。しかし7巻22章で、ハリーは保護が破られる前に「ヴォルデモートは海外だ!」と発言している。この翻訳ミスは携帯版でも訂正されていないが、文庫版では「あいつは海外だ!」に修正されている。
7巻33章では、リリー・ポッターとペチュニア・ダーズリー姉妹の長幼の順について、ペチュニアが姉であることが判明する。しかし、静山社版では長らくリリーを姉として訳し、携帯版および映画版でもそのように統一していた。このため、7巻での姉妹関係の部分は翻訳せずにぼかしている。松岡側は、4巻付属のふくろう通信にて「原作者に確認を取った上で、リリーを姉とした」と説明していた。同じく長幼を訳出する中国語(簡体字)版では、1巻からリリーが妹(=ペチュニアが姉)であることが明確に訳されていた(→詳細はペチュニア・ダーズリー#姉妹の長幼の順について)。
なお、前出の高山宏は、イギリス版の中表紙のホグワーツの紋章をカットしたことを批判した上で「翻訳以前に、物語の持つ世界観を、最低限踏まえた上で紹介するのが訳者の責任だと思う」としている[14]。しかし、紋章の不掲載についてはドイツ語版などでも行われており、日本語版だけの問題ではない。
訳語の不統一
固有名詞が、同格の用語ごと或は各巻ごとに統一されていないという問題がある。以下は、主なもの。
- 魔法の名称
- テンプレート:See
- 魔法の名称には、原書では規則性があるものの、日本語訳には反映されていない。
- 慣用表現
- 原文:Merlin's beard!
- 直訳すれば「マーリンの髭」であり、イギリス魔法界特有の驚きの表現である。様々な人物によって発言されていたが、台詞には統一性が無かった。7巻になってはじめて、魔法使いマーリンに由来することを反映させ、ある登場人物の言い間違いを「マーリンの猿股!」と訳したが、日本語読者には言い間違いであることが伝わっていない。
- 魔法省の内部部局名
- 魔法省(Ministry of Magic)の各部門の下に、Headquarters(本部)、Squad(部隊)、Office(局)などが設置されている。例えば、高度な特殊能力が求められる、闇祓い・忘却術士はHeadquartersであり5巻ではどちらも「〜本部」と訳されていた。しかし6巻では、闇祓いのみ「闇祓い局」に変更された。この他にも不統一がみられ、原文では同じ語が用いられた同格の部局であるにも関わらず、日本語訳ではそのことが反映されていない。
日本語の誤用
日本語の語彙が、正しい日本語の意味とは異なる意味で使われている箇所が多々ある。
- 第4巻3章
- 原文:He had said the magic words.
- ハリーが伯父に向かって効き目のありそうな脅し文句を言った場面。日本語訳では「殺し文句を言ってやった」としているが、「殺し文句」とは相手をうれしがらせて引きつける言葉のことで、効果的な「脅し文句」のことではないので間違いである[14]。
- 第5巻4章
- 原文:he said the owls might be intercepted.
- 「あの人は、ふくろうが途中で傍受されるかもしれないといってた」と訳されている。"intercept"には途中で捕らえる・(電波を)傍受するという意味があるが、この場合可能なのはふくろうを捕獲して連絡内容を調べる事である。そもそも、傍受は電波に用いる語なので日本語として間違っている[14]。
この他、主語の重複といった文法の誤り(第5巻30章ほか)等もある。
その他表現に関する問題
第2巻『秘密の部屋』の作中において「先天的疾患に対する差別的表現がある」として2000年10月に市民団体「口唇・口蓋裂友の会」が抗議、問題箇所の削除を要求。静山社は著者と共にこの市民団体と協議し同年11月「第六十六刷から該当箇所を削除」する事を回答。市民団体側は各都道府県教育委員会、全国の図書館や書店に対し配慮を行うよう同年12月に要望書を送付した[18]。
販売形態に関する問題
上下2冊組となった第4巻以降、返品を不可とする「買い切り制(責任販売制、買取り制ともいう)」となったため、一般の小売りと同等のリスクが発生した。この点については、第1巻・第2巻・第3巻が入手困難となったことから、書店業界側からの要望でもあった[19]。また発行元である静山社自体が小さな出版社であるため、大量発注を受けた結果として大量の返品を抱えた場合のリスクが小さくないという出版社側の事情もある。
2004年9月1日に第5巻『不死鳥の騎士団』は、初版290万セットで発売されたが、2週間以内に売れたのは65%にとどまった[20]。発売後すぐに実売部数は200万部を越えるベストセラーとなったが、発行部数に対して大量の在庫が出たため、書店業界から悲鳴が上がる事態となった[19]。これは、書店からの発注をそのまま受け入れて発行したからで、出版社(静山社)・取次会社(トーハン)・書店の調整不足が指摘されている[21]。
日本書店連合会からも高正味[22]と買い切り制の採用や、静山社が広告を打たないことに対する不満が、複数回表明されている[23][24]。こうした状況に対し松岡佑子は「クリスマスまでにたくさん売れるように期待しています。新聞広告などで私たちも応援したい」と発言[21]。その結果、12月にネタばらしとなるキャッチコピーを広告に掲載し物議をかもした。
その後の、第6巻、第7巻では、書店が発注を控えたため、第5巻ほどのトラブルは生じていない。
映画
『ハリー・ポッター』シリーズはワーナー・ブラザース映画によって映画化された。2001年に映画『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開され大反響を呼び、その後も続編が次々と製作され、撮影はリーブスデン・スタジオで行われた。
全作品を通じ、ハリー役はダニエル・ラドクリフ、ロン役はルパート・グリント、ハーマイオニー役はエマ・ワトソン。
- 『ハリー・ポッターと賢者の石』
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
- 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
- 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
- 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』
シリーズ全体のソフト化
- 【1,000セット限定生産】ハリー・ポッター ウィザード・コレクション(Blu-ray&DVD計31枚組、2012年12月5日発売)
|
|
- 【初回限定生産】ハリー・ポッター コンプリート セット(Blu-ray版 / DVD版共に8枚組、2012年12月5日発売、2013年10月18日にジャケットを変更して再発売)
- ディスク1:『賢者の石』本編ディスク
- ディスク2:『秘密の部屋』本編ディスク
- ディスク3:『アズカバンの囚人』本編ディスク
- ディスク4:『炎のゴブレット』本編ディスク
- ディスク5:『不死鳥の騎士団』本編ディスク
- ディスク6:『謎のプリンス』本編ディスク
- ディスク7:『死の秘宝 PART1』本編ディスク
- ディスク8:『死の秘宝 PART2』本編ディスク
脚注
関連項目
- ハリー・ポッターの世界を忠実に再現したテーマパーク。アイランズ・オブ・アドベンチャー内に2010年6月18日にオープンした。今後は2014年内にユニバーサル・スタジオ・フロリダとユニバーサル・スタジオ・ジャパンに、2016年にはユニバーサル・スタジオ・ハリウッドにもオープン予定。
外部リンク
- J.K.ローリング 公式サイト
- ブルームズベリー社(英語)
- スコラスティック社(英語)
- 静山社
- 英国政府観光庁 - ハリー・ポッター映画ロケ地
- クエスト 秘宝を探せ(公式サイト)
- Harry Potter Wiki - ワーナー社認定Wiki
- テンプレート:CAPlink
テンプレート:Link GA
- ↑ ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラックの逸話で、チャリティ用に書かれたもの。「Whats Your Story Postcard Collection」に収録。落札翌日に写真がオンライン公開されたため、ネット上でも閲覧可。[1]
- ↑ All about Harry Potterボストン・グローブ紙、1999年10月18日
- ↑ Children's High Level Group チルドレンズ・ハイレベル・グループ:ローリングとエマ・ニコルソン男爵夫人が設立した弱い立場にある子供の生活の向上を目的とする慈善団体
- ↑ Pottermore ebook
- ↑ 2001年12月29日 朝日新聞「社説:違いを認め、人間を信じる 今年を振り返る」
- ↑ J. K. Rowling: BBC Online Chat. BBC. 2001年3月(2006年3月19日閲覧)
- ↑ 『「ハリー・ポッター」が英語で楽しく読める本』、クリストファー・ベルトン著、コスモピア、2006年発行、p179
- ↑ zh:哈利·波特中文翻譯詞彙對照表も参照のこと
- ↑ 9.0 9.1 論座 2004年2月号「『ハリー・ポッター』翻訳事情」鳥飼玖美子
- ↑ AERA 2002年2月4日号「静山社社長 松岡佑子 解放された姫」
- ↑ 2000年02月13日 朝日新聞「天声人語」
- ↑ 12.0 12.1 12.2 有鄰 408号「『ハリー・ポッター』人気の秘密」
- ↑ 『ハリー・ポッターとその時代』、小林矩子著、武蔵野大学出版会、2008年
- ↑ 14.0 14.1 14.2 14.3 14.4 14.5 14.6 14.7 週刊文春 2008年7月10日号「最終巻直前SP 『ハリー・ポッター』の翻訳はやっぱりおかしい」
- ↑ 桜花学園大学教授:岩井齊良によるパズルの検証、[2]
- ↑ ルビウス・ハグリッドのイギリス南西部訛り、スタン・シャンパイクのロンドン訛り、フラー・デラクールのフランス語訛り、ビクトール・クラムのブルガリア語訛り、など。
- ↑ アラスター・ムーディの"Constant vigilance!"、ニンファドーラ・トンクスの"Wotcher"、ホラス・スラグホーンの"Oho"、など。
- ↑ 「実例・差別表現」堀田貢得著 大村書店 2003年7月 ISBN 4-7563-3021-5
- ↑ 19.0 19.1 週刊朝日 2004年10月22日号「『ハリポタ』魔法切れの大失速 初版290万セット、販売の誤算」
- ↑ 2004年10月1日 読売新聞「発売1か月、ハリポタ魔法切れ? 在庫消化できず、書店困った…」
- ↑ 21.0 21.1 2004年11月23日 朝日新聞「大誤算ハリポタ第5巻 仕入れすぎで書店が悲鳴」
- ↑ 正味=版元(出版社)が取次に、取次が書店に本を売るときの掛け率をいう。高正味=この場合、版元側の取り分が多い、の意
- ↑ 全国書店新聞 10月1日号
- ↑ 全国書店新聞 10月11日号