ハモ
テンプレート:生物分類表 ハモ(鱧、テンプレート:Sname )は、ウナギ目・ハモ科に分類される魚の一種。
概要
沿岸部に生息する大型肉食魚で、京料理に欠かせない食材として扱われる。生鮮魚介類として流通する際には近縁種のスズハモ M. bagio (Hamilton, 1822) も一般に「ハモ」と称されており区別されていない[1]。
名称
名前の由来には、食む(はむ)に由来するとみる説、「歯持ち」に由来するとみる説、中国語の「海鰻」(ハイマン)に由来するとみる説、マムシに姿が似ていたことから蝮(ハミ)に由来するとみる説、食感が「はもはも」しているから、という説、口を張ってもがくことに由来するとみる説など諸説ある[2]。
地方名にハム(広島県)、スズ(徳島県)、バッタモ(京都府丹後地方)、ウニハモ(福井県)など。
他の魚
現代中国語でハモは「海鰻」(hǎimán)といい、「鱧」(lǐ)という漢字はライギョ類を表す。
生態
- 全長1mほどのものが多いが、最大2.2mに達する。体は他のウナギ目魚類同様に細長い円筒形で、体色は茶褐色で腹部は白く、体表に鱗がない。体側には側線がよく発達し、肛門は体の中央付近にある。ウナギ目の中では各ひれがよく発達していて、背びれは鰓蓋の直後、尻びれは体の中央付近から始まって尾びれと連続する。胸びれも比較的大きい。
- 口は目の後ろまで裂け、吻部が長く発達し、鼻先がわずかに湾曲する。顎には犬歯のような鋭い歯が並び、さらにその内側にも細かい歯が並ぶ。漁獲した際には大きな口と鋭い歯で咬みついてくるので、生体の取り扱いには充分な注意が必要である。ハモという和名も、前述のようによく咬みつくことから「食む」(はむ)が変化した呼称という説もある。
- 西太平洋とインド洋の熱帯・温帯域に広く分布し、日本でも本州中部以南で見られる。
- 水深100mまでの沿岸域に生息し、昼は砂や岩の隙間に潜って休み、夜に海底近くを泳ぎ回って獲物を探す。食性は肉食性で小魚、甲殻類、頭足類などを捕食する。
- 産卵期は夏で、浮遊卵を産卵するが、ウナギのような大規模な回遊はせず、沿岸域に留まったまま繁殖行動を行う。レプトケファルスは秋にみられ、シラス漁などで混獲されることがある。
利用
身を食材として利用するが、消費地域には偏りがある。
- 京都市では、生活に密着した食材で、スーパーにおいても鱧の湯引きなどは広く販売されており、安くはなくとも、季節の食材として扱われている。特に祇園祭の暑い季節に長いものを食べると精力が付くとして、鰻同様に食べる風習があり(下記)、夏の味覚の代表的なものとして珍重される。家庭で「骨切り」をすることは難しいが、鮮魚店で骨切りをして、生で売ることも普通である。
- 大阪市の天神祭でも鱧料理は欠かせない。
- 京阪以外の地域では、味は良いが骨が多く食べにくい雑魚として扱われ、蒲鉾や天ぷらの材料として使われてきた。特に大阪などの蒲鉾屋では身を使った後のハモの皮が売られていることがある。
- 一方、関東など東日本では京料理を提供する高級日本料理店以外ではあまり目にかかることはなく、生活に密着した食材とは言えない。このような店で出される食材のため、高級魚というイメージもある。消費量も関東の鱧消費量は関西の十分の一程度であり、関西と関東の文化の違いが現在に至るまで如実に現れている食材の一つである。同様の食材としてはフグ・クエ、逆に東日本で人気の高い食用魚としてマグロなどがあげられる。
- 大分県中津市でも特産品としてよく消費されており、JR中津駅には鱧をデザインした長いベンチも置かれている。
- 京都において、何故ハモを食べる文化が発達したかについては、生命力の非常に強い数少ない魚であるため、輸送技術が発達していなかった時代でも、大阪湾や明石海峡で採れたハモを、夏に内陸の京都まで生きたまま輸送できたからだといわれている。
- また、一説には養蚕が盛んで京都へ絹糸を供給していた大分県中津市の行商人などが京都へ食文化を伝えたとも、一説には中津藩が隣接する天領日田に招聘されていた京の料理人が往来の途中に隣国中津の漁師から「骨切り」の技術共々を教えられ持ち帰ったとも言われており骨切り技術の発祥地である中津の料理人が伝え現在につながっている。
- ハモの蒲焼は、よくウナギの蒲焼と対比される。需要があるため、日本産だけでなく韓国や中国などから輸入も行われている。
調理法
ハモには長くて硬い小骨が非常に多く、食べるには「骨切り」という下処理が必要となる。これは腹側から開いたハモの身に、皮を切らないように細かい切りこみを入れて小骨を切断する技法で、下手にこれをやると身が細かく潰れてミンチ状になってしまい、味、食感ともに落ちてしまうため熟練が必要である。骨切り包丁と呼ばれる、専用の包丁がある。京料理の板前の腕の見せ所であり「はもの骨切り 手並みのほどを見届けん」の句がある。「一寸(約3cm)につき26筋」包丁の刃を入れられるようになれば一人前といわれる。
骨切りの技術が京都へ伝わったことによりハモの消費が飛躍的に増えた。しかし、骨切りを施しても小骨が多く食べ辛いため、ウナギやアナゴに比べ関西圏以外では需要及び知名度が低い。
骨切りを施したハモを熱湯に通すと反り返って白い花のように開く。これを湯引きハモまたは牡丹ハモといい、そのまま梅肉やからし酢味噌を添えて食べるほか、吸い物、土瓶蒸し、鱧寿司、天ぷら、鱧の蒲焼や唐揚げなどさまざまな料理に用いられる。生きたハモを捌かないと湯引きがきれいに開かない。
またハモの身は上質なカマボコの原料に使われる。その際残った皮を湯引きして細かく切ったものは、酢の物にも利用される。
漁獲
おもに底引き網と延縄で漁獲される。釣りで揚がることもあるが、咬みつかれる危険がある上に調理に技能が必要(前述)なため、ハモを狙って釣る人は少ない。
陸揚げ漁港
- 2002年度
ハモに関する言葉
- ハモも一期、海老も一期(ハゼは飛んでも一代、鰻はぬたっても一代)
- 麦藁蛸に祭りハモ
- 京都のハモは山で獲れる
ハモに関する行事
近縁種
ハモ科 (テンプレート:Sname) の魚は全世界の熱帯・温帯から5属・8種ほどが知られる。ウナギ目魚類の中では比較的吻が長いことやひれが発達することなどが特徴である。
- スズハモ テンプレート:Sname (Hamilton, 1822)
- ハモ属 テンプレート:Snameの一種。全長は最大2mほど。肛門より前の側線孔数(ハモ40-47、スズハモ33-39)、歯並びなどで区別するが、外見・分布・生態などはハモとほとんど同じで、市場でもハモとは区別せずに扱う。
- ハシナガハモ テンプレート:Sname (Bleeker, 1858)
- ハシナガアナゴ属(ハシナガハモ属) テンプレート:Snameの一種。ハシナガアナゴという別名もある。全長60cmほど。ハモよりも細身で、和名通り吻が前方に尖る。紀伊半島以南からオーストラリア西部までの西太平洋に分布し、水深100mまでの海底に生息するが、生態の研究は進んでいない。
- ワタクズハモ テンプレート:Sname (Chen et Weng, 1967)
- ワタクズハモ属 テンプレート:Snameの一種。全長75cmほどで、ハモよりも細身。沖縄諸島から台湾までの海域に分布し、水深600m–750mほどの深海に生息する。