トヨタ・AE86
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テンプレート:Infobox 自動車のスペック表 AE86(エーイーハチロク)とは、1983年にトヨタ自動車が発売したカローラとスプリンターのスポーツモデル(スポーツクーペ)である4代目カローラレビン/スプリンタートレノの共通車両型式番号。
この型式番号のカローラレビンとスプリンタートレノに対し、俗に“ハチロク”という呼称が付けられている。
なお、当項目では同系列の1.5LのSOHC・シングルキャブレター仕様のエンジン(3A-U型エンジン)を搭載した車種(型式名AE85:通称“ハチゴー”)についても便宜上記述する。
当時トヨタと提携関係のあった英国ロータス社の「エスプリ」に、AE86前期型レビンのリアコンビランプが使用されていた。
2009年の東京モーターショーに先立って、AE86を最後にトヨタのラインナップから途絶えていたライトウェイトFRスポーツクーペ車として、トヨタ・FT-86というコンセプトカーが発表され、2012年2月にトヨタ・86の名前で市販化された。
目次
評価
発売当時はターボや前輪駆動(FF、フロントエンジン・フロントドライブ方式)など先進性や利便性を追求した新メカニズムの取り入れが日本車の主流であった[1]ため、従来のレビン・トレノと同じ自然吸気(NA)の1.6Lエンジンと後輪駆動(FR、フロントエンジン・リアドライブ方式)の組み合わせ、そして先代の「TE71型」から流用した旧態的なフロントストラット、リヤラテラルロッド付きの5リンクリジッドアクスルサスペンションは、当時のレベルからしても単純な構造であり、数多あった国産スポーツカーと比較して見劣りした。しかし、基本的なサスペンション仕様が先述した先代「TE71型」と同様だったため、サスペンションの改造が容易であったこと、そして当時新規開発された4A-GEU型エンジンを搭載されたことが、チューニング志向の強い層の支持を受け、その後の人気が続く理由になっていった(発売から1週間後にはジムカーナ仕様車やラリー仕様車が完成したと言われている)。
1987年5月、レビン・トレノが次代の「AE92型」へとモデルチェンジを果たして駆動方式が前輪駆動に変更されたことで、日本車として希少となった軽量後輪駆動車として存在が再認識され、新車による販売当時以上にモータースポーツ関係者やドリフト走行愛好者の間で注目されるようになった。
また、プロレーサーの土屋圭市が事ある毎に、当時から現在に至るまで取り上げ続けたことで注目を集めるようになる。
1990年代後半からは漫画『頭文字D』の主人公の愛車(正確には父親の愛車で、後に譲り受ける)であるという理由で、漫画に影響された若者の間でAE86トレノが人気となった。それまで、新車/中古車問わず人気の中心はレビンであり、AE86といえばレビンのことを指すのが普通であった。一方のトレノは新車時の販売台数も少なく、中古車としての流通も少なかったため、漫画での紹介以降、旧式のメカニズムを持つ中古車としては異常なほどのプレミアム価格で取引され、カルト的な人気を博すことになった。絶版直後ならいざ知らず、絶版から20年以上経った現在でも中古車価格は高値安定傾向にある。乱暴な運転に使用された(違法競走型暴走族等)ケースが多く疲弊した個体が多いこと、上記の人気ゆえに絶版後も需要が相当数あったことにより状態の良い個体はそれらにより軒並み数を減らしたこと、その人気ゆえにワンオーナの個体が少なく数十年にわたり長期間使用された個体が多いため、極めて状態の良い個体には新車並みか、それ以上の価格がつけられることもある。
異常な人気のため、アメリカなどから左ハンドル仕様を逆輸入して販売する業者も現れた。北米仕様は当時の北米の法規で、規格型ヘッドライトを使用することが義務付けられていたため、リトラクタブルヘッドライトを採用したトレノマスクのみ。逆輸入左ハンドル車の注意点は、カローラ/スプリンターが実用車であるという性格上、足車として使われていたため走行距離が多い個体が多いこと、エアフロ方式を採用しているので、インテークパイプに加工が必要であること、排気側もEGR(排ガス還流装置)があり、右ハンドルの物を無加工流用できないこと、などである。
それでも長年培った様々なノウハウや社外パーツでのチューニングに加え、後に登場したレビン・トレノに採用されたスーパーチャージャー、4連スロットルボディー、20バルブ4A-GEエンジン等を流用する純正品でのチューニングメニューも多い。さらには、原形を留めない形での改造としてSR20DETやRB26DETT、2JZ-GTE、F20C、V8 (1UZ-FE) 、REなどを搭載した例もある。
AE85(1.5L車)
同年式(E80系)のレビン・トレノの3A-U型1.5L SOHCエンジン搭載車はその型式名(AE85)から「ハチゴー」と呼ばれる。AE86同様、実用車としては必要にして十分[2]な83PS(グロス値。後期モデルは85PS)を出力するエンジンゆえスポーツ走行には向かないとされ、AE86ほどの人気車種ではない。ただし、3ドアSRだけは、車両価格が安価であること、AE86より軽量であること、AE86と共通のストラット構造のリアサスペンションを持つことなどから、改造ベース車のボディとして重宝がられる。特にエンジンスワップ車に使われ、『頭文字D』の武内樹が施したようにボルトオンターボやボルトオンスーパーチャージャーによって3A-Uの軽さを維持したまま強化するものや、4A-Gを搭載し「85改86」を制作するというライトなものから、なかには2JZを搭載する過激なケース[3]もある。 なおハチゴーにもトレノにはリセ、レビンにはライムといった当時流行した「女性仕様」なるものも存在しタコメーター非装着・ピンクなど明るい色のシート・AT仕様を選びやすくしたグレードもあった。これらのグレード名はカローラセダンやカローラFX、カローラII、スプリンターセダン、スターレットにも存在しこれらも同様のコンセプトであった。
AE85とAE86の違い
一般にはエンジン以外の違いは知られていないが実はかなり異なっているのでAE85ベースにAE86にする(いわゆる85改86)場合は注意が必要である。
・AE86のリアサスペンションにはスタビライザーが付くがAE85には付いていない
・AE86のプロペラシャフトは2分割式だがAE85は1本もの
・デフの大きさが異なる
・フロントブレーキがAE86がベンチレーテッドなのに対しAE85はソリッドディスクとなる
・リアブレーキがAE86はディスクブレーキなのに対しAE85はドラムブレーキ(AE86の2ドア競技ベースモデルGTを除く)
・タコメーターのレッドゾーンがAE86は7600r.p.mからだがAE85は6000r.p.mとなる
・AE86は3本スポークのスポーツステアリングにスポーツシートが装着されるがAE85は2本スポークのベースのカローラ・スプリンターと同じステアリングとベースのカローラ・スプリンターと似たシートが装着される(ただしAE86の2ドア競技ベースであるGTのステアリングはカローラ・スプリンターと同じ物が装着される)
・エキゾースト系が逆になる。
・後期トレノに関してはAE86にはコーナリングランプが標準装備だがAE85には装備されていない。
・エンジンがAE86は1.6ℓツインカムの4AGが積まれているがAE85は1.5ℓシングルカム3Aが積まれる
・トレノ・2ドアSE
- 85trueno f.jpg
フロント
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リア
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リアエンブレム
AE85とAE86の外観上の見分け方
外観上ほとんど変わらないものの以下の点を見ることにより外観で判断できる。
・リアトランクのステッカー(AE86の場合APEX、GT-V、GTと貼られており、AE85にはSR、SE、XL、GLと貼られている。)
モータースポーツでの活躍
レースでの大きな活躍として挙げられるのは1985年から始まった全日本ツーリングカー選手権(グループA)での活躍で、1985年と1986年にスポーツランドSUGOでスカイライン勢などを押さえ、それぞれ1勝している。しかし、1987年以後は上位に入ることもなく低迷していった。
1984年の富士フレッシュマンレースで土屋圭市の搭乗するADVANトレノでシーズン開幕以来6連勝を果たし、土屋の翌年のグループAへのステップアップに繋がった。
活躍の場はサーキットばかりではなく、ラリーやジムカーナにも参戦しており、現在でもさまざまな競技で活躍が見られる。
国内ラリーについては、扱いやすく丈夫で安価な車体やバリーエーションに富んだ安価なパーツが大量に供給されていたなどの理由から、全日本選手権からローカルイベントまでプライベーターを中心に大量のAE86がエントリーしていた。そのシェアは圧倒的であったが、トップカテゴリーである全日本ラリー選手権においては、一部の有力チームが使用していた2.0Lターボ車のランサーターボや3.0LターボのフェアレディZの後塵を拝すことも多く、また圧倒的なシェアに起因するウイナーの分散もあり、タイトル獲得はならなかった。
また当時、市販車無改造の2輪駆動車でパリ・ダカール・ラリーへの挑戦を続けていた横田紀一郎が3代目カリーナの後継車としてレビン(2ドア)を選択。1984年と1985年に参戦しているが、結果はリタイアに終わっている。
全日本GT選手権のGT300クラスにも参戦していたこともあった。エンジンは3S-GTEで、GT500クラス用をディチューンしたものである。足回りは規定上ノーマルのサスペンション型式名の上では踏襲していたが、原形を留めないほどの改造が施されていた。しかし最高で5位と健闘するも大きな成果は残せなかった。また、2001年にスポーツランドSUGOで行われた引退レースは、炎上、リタイアという形になった。
ホモロゲーションが切れた現在においてもJAF公式戦として岡山国際サーキットで行われているチャレンジカップレースなど、AE86を使用したレースが行われていることを見ても生産終了から20年以上経過した車両が公式レースでのベース車として使用されることはまれなケースである。
D1グランプリではハチロクの車両重量の軽さを活かした走りを見せている。多くのD1選手が使用するシルビア、180SXとの大きな馬力差を埋めるためにエンジンのターボ化やNOS搭載、AE101型やAE111型のエンジン換装、シルビア、180SXのSRエンジンに換装などさまざまなハチロクが参戦している。2002年に植尾勝浩の搭乗したハチロクがシリーズチャンピオンを獲得。2004年には日比野哲也の搭乗したハチロクが2位入賞を果たし、2005年に吉岡稔記の搭乗したハチロクが優勝を果たす。D1グランプリ2009シリーズでは日比野哲也が、5バルブエンジンには珍しい排気量アップ版5A-GにNOSを搭載したMAX370馬力のスプリンタートレノ2ドアクーペを駆り参戦。軽量で機敏な動き、ウェットコンディションでもアグレッシブな攻めの走りで、ライバルとの圧倒的なパワー差を翻し、シリーズ5位に入賞した。だが、最近では馬力差が大きくなってきているため、ハチロクで参戦する選手は少なくなっている。 テンプレート:-
アメリカでの人気
アメリカでは、前述したようにトレノのフロントマスクを持ったハチロクしか正規輸入されなかったが、頭文字Dの影響でハチロクの人気が再燃し、アメリカにおけるパワーアップの常套手段ともいえるV8エンジンの換装が行われている。シボレー・コルベットに搭載されるLS1型エンジンや、セルシオ(レクサス・LS)に搭載される4.0L V8エンジンが主に用いられる。日本でも、頭文字Dの熱でハチロク人気が高まっていた。
関連イベント
東京都江東区の臨海副都心にあるトヨタ自動車のショールームスペースMEGAWEBでは2005年10月18日から2006年2月19日まで、ヒストリーガレージにて「レビン&トレノ展」を開催し、頭文字D仕様のレプリカなどが展示していた。
また、2007年11月14日から2008年2月17日まで、同じくMEGAWEBのヒストリーガレージで「劇中車展」が開催されており、カーランドの頭文字D仕様のスプリンタートレノが展示されている。
バリエーション
日本仕様車を基準に記述
レビン2Dr. | レビン3Dr. | トレノ2Dr. | トレノ3Dr. | |
---|---|---|---|---|
前期フロント | ||||
前期リア | 150px | |||
後期フロント | 150px | |||
後期リア | 150px | 150px | 150px |
グレード
グレードは以下の通りである。
・GT-APEX
・ 1.6リッターモデルの上級グレードでリアワイパーやパワステ、デジタルメーターが標準装備され、2ドア3ドアのレビン・トレノに存在する。また前期型では2トーンカラーはこのモデルのみとなる。
・GT-V
・1.6リッターモデルの競技ベース車両でパワステ、リアワイパーが廃止されておりメーターもアナログメーターとなる。ロックトゥロックが3.0回転となっていて他のグレードよりクイックなステアリング操作が出来る。3ドアのレビン・トレノに存在する
・GT
・1.6リッターの競技ベースモデルでGT-Vよりさらに装備が簡略化されリアブレーキがドラムとなりステアリングデザインがカローラ・スプリンターの純正と同じものとなる。2ドアレビン・トレノに存在する。
・ブラックリミテッド
・GT-APEXをベースに装備をより豪華にしたモデルでオプション品のパワーウインドウに専用ロゴ入りシート、サイドドアポケット、ゴールドアナログメーター、前後ボディエンブレムゴールド化、ボディサイドにブラックリミテッドステッカーが装着され後期型トレノにのみ存在しており生産台数は400台のみとなっている。
・コンバーチブル
・トヨタオート多摩がディーラーオプション品として作ったもので2ドアトレノをベースにルーフをカットしソフトトップを装着したモデルである。後期型2ドアトレノに存在する
・SR
・1.5リッターモデルに存在したスポーツモデルでストラットの構造やボディが1.6リッターモデルと共通である。3ドアレビン・トレノに存在する。
・SE
・1.5リッターモデルに存在したグレードでカローラ・スプリンター純正ステアリングとスポーツシートが装着される。2ドアレビン・トレノに存在する
・XL-LIsse
・XLをベースに装備を豪華にし、パワーステアリング、4速オートマを搭載したモデルで1.5リッター2ドアトレノに存在する
・GL-Lime
・上記のLIsse同様下級グレードのGLの装備を豪華にしたモデルで1.5リッター2ドアレビンに存在する。
・XL
・1.6リッターモデルを含む80系トレノの最下級モデルであり最も質素なモデルであり1.5リッター2ドア・トレノに存在する。
・GL
・上記と同様80系レビンの最下級グレードであり1.5リッター2ドアレビンに存在する
脚注
テンプレート:自動車- ↑ 実際、レビン/トレノにも後のAE92/AE101にはスーパーチャージャー仕様があった。
- ↑ 『頭文字D』内で書かれたような酷評は、同時期の同クラス車が軒並みFFに移行したため、FRの本形式はプロペラシャフトのトルク損失のためにスロットルレスポンスが相対的に悪く感じられたことによる。
- ↑ この実例として、かつて「C&Yスポーツ」というショップが制作した、2JZ型をスワップしたドラッグレース仕様車がある。この車両に関した雑誌記事には
「なんで、ハチロクじゃなくてハチゴーかって? それは、ハチゴーが走り屋のベースマシンになっていないぶん、ハチロクより程度がよくてしかも安く手に入るからなんだ。〔ママ〕(『OPTION2』 2000.12 245頁)」
と言う記述がある。