絶版

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テンプレート:出典の明記 絶版(ぜっぱん、ぜつばん)とは、重版などで新たに印刷することを断念され、著作権者から設定を受けた出版権が放棄された書籍のこと。絶版になると書籍の現物が流通しなくなるため、当該書籍を書店で注文しても入手できなくなる。

転じて、生産が中止、または終了となり一般流通からの入手が困難になっている物品に対しても用いる。

絶版になる理由

主に以下の理由があげられる。

  1. 売上が伸びない、もしくはこれ以上売上が伸びる可能性がないと判断された場合。
    • 一番多いケースで、出版社は著者との契約に基づき出版権を放棄し、絶版となる。
  2. 著者の意向によるもの。
    • 髙村薫は、一度世に出した作品でもそれを執筆当時の成果物として絶対視せずにその後も育て続けるという考えの持ち主で、文庫化などの際には全編大幅に改稿した〈改訂版〉とし、同時に既発表版は絶版としている。
  3. 出版後、書籍の内容に問題があることが発覚した場合。
    • 安部公房の『飛ぶ男』は当初、安部の遺稿として出版されたが、出版後に安部の夫人である安部真知が故人に無断で手を加えていたことが問題となり絶版となっている。
    • 栗本薫著の『グイン・サーガ』1巻のように、問題を指摘された初版を絶版として内容を修正した改訂版が発売されたケースや、『チャタレイ夫人の恋人』のように、一旦は絶版(発禁)となったが、のちに解除されて復刊するケースもある。
    • 佐村河内守著「交響曲第一番」(講談社=単行本、幻冬舎=文庫本)は、佐村河内が作曲したとされる楽曲の多くが、第三者に製作を委託したことから、内容・主旨が全く異なることを受けて、絶版処分となり、単行本については書店入庫分を含めすべて回収・発売中止の処置を取った。
  4. 出版社が倒産して無くなってしまった場合。
    • この場合、出版権の設定契約は解約されることが多いため、その出版社から出ていた本は当然すべて絶版になる。もちろん、出版権を引き継いで印刷・発行を続けてくれる出版社が見つかった本についてはこの限りではない。
  5. 書籍に関連する不祥事が起きた場合。

絶版と著作権

絶版と似た状態で品切重版未定というものがある。版元在庫もなく重版の予定もない点では絶版と同じだが、出版権が放棄されずに維持され続けている点が絶版と異なる。このため印刷版などは廃棄されずに保管されていることが殆どである。例えば、岩波文庫岩波新書は原則として絶版がないため、版元在庫のない本はすべて「品切重版未定」である。

作品が映画化されるなど再び話題になった場合や、要望が多く出版社も興味を示した場合などには、絶版となっていた書籍が他の出版社から復刊されることがある。

しかし出版社と著者の間の契約が曖昧であったり、出版社が将来の人気再燃を睨んで出版権を保持しておきたがる場合もあるため、両者の区別が外部から見て判然としないことも少なくない。このため一般には、品切重版未定であっても事実上の絶版として捉えられることも多い。

出版の義務

著作権法により出版権者には「出版の義務」が課せられており、これを守らなければ「出版権の消滅の請求」をされる場合がある。

テンプレート:Quotation

出版以外の業界では

製造業の世界でも出版界に倣って、ある品目の生産が永久的または半永久的に中止されることを、「絶版」と呼ぶ言い回しが用いられている。これは製造(生産)および販売を終了した製品と同じ意味合いを持つ。 また、部品の在庫・生産終了のことを、部品番号が抹消されることから「廃番(はいばん)」とも呼ばれる。レコード業界での用語と混同して、しばしば「廃盤」と誤記されている場合もある。

自動車オートバイ等の中古業界では、車種が生産終了となり後継モデルが登場せず、系譜が途絶えて廃止となった車種を「絶版車(ぜっぱんしゃ)」と呼ぶ場合がある。一部の人気車種には「単なる中古車」以上の価値を求める需要があり、絶版車専門の市場も存在する。

プラモデル業界では、商品の金型が廃棄されることは少なく、同一メーカーにおける再稼働や、他メーカーへの移動などによって、一旦生産終了になった商品がのちに復活されることが少なくない。一方、玩具業界では一旦生産終了した商品が復活する例は少ない。そのため生産終了した玩具の一部は、コレクターの間では高額で取引されたり、コレクター向けの商品を扱う専門店で定価より高値(プレミアム価格)で販売されている場合もある(逆に、「生産終了したプラモデル」の場合は、先述の再生産・再発売がある為にプレミアム化するケースは少ない)。

音楽・映像ソフト業界(いわゆるレコード業界)では、「廃盤(はいばん)」という用語が使われる。廃盤は在庫の廃棄処分のみならず著作権の放棄をも伴うもので、書籍における絶版とまったく同義である。

関連項目