ダイオウイカ

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テンプレート:生物分類表

ファイル:A piece of sperm whale skin with Giant Squid sucker scars.JPG
ダイオウイカによって刻み付けられた吸盤の傷痕が残るマッコウクジラの皮膚

ダイオウイカ(大王烏賊、学名: テンプレート:Snamei)は、開眼目 (テンプレート:Sname) ダイオウイカ科に分類される、巨大なイカの1(もしくは1)である。

ダイオウイカ属には複数種があるとする説もあったが、遺伝子的にきわめて均一な同一種だと判明した[1]

ヨーロッパに伝わる巨大な頭足類の伝説クラーケン」はダイオウイカをモデルにしているとも考えられている[2]

呼称

属名 テンプレート:Snamei は、テンプレート:Lang-grc (teuthis) 「イカ」に、「最高位の、最たる」を意味する接頭辞 archi-[3] を添えたもの。

和名は「大王イカ」の意。

英語では giant squid(ジャイアント・スクィッド)、中国語では テンプレート:Zhテンプレート:ピン音)と呼ぶ。ただし、科名は テンプレート:Zh

生物的特徴

ファイル:Riesenkalmar.jpg
生物標本(触腕を含め体長約3.15m、触腕を広げたとき全長約7m。2002年1月3日にヘブリディーズ諸島から約160km離れた海域で捕獲された。イギリスのテンプレート:仮リンク所蔵。)

形態

非常に大きなイカであり、日本での発見例は外套長1.8m触腕を含めると6.5mにも達する。ヨーロッパで発見された個体群(かつてはタイセイヨウダイオウイカやテイオウイカに分類)になると、特に大きなものは体長18mを超えたともいわれる。ダイオウホウズキイカとともに、世界最大級の無脊椎動物(つまり同時に、最大級の頭足類)として知られている。直径30センチメートルにもなる巨大なを持ち、ダイオウホウズキイカとともに、生物界で最大とされている。これによりごく僅かの光をも捉え、深海の暗闇においても視力を発揮できる。

触手の長さと胴体の大きさに比べ、胴体先端の遊泳鰭が小さく筋肉中に塩化アンモニウムを大量に含んでいることから遊泳能力はあまりないと考えられてきたが、後述する生きた姿の撮影、特に2013年に公開されたNHKによる小笠原沖での調査映像では、深海を巧みに動く姿が撮影されている。

生態

北アメリカヨーロッパ付近の大西洋ハワイ島付近、日本では小笠原諸島などの広い範囲で発見例があるものの、深海に棲息するため、全体としては発見数が少なく、台風によって浜辺に打ち上げられたり、死骸が漂着するなどの発見例が大半である。

漂着は、日本、ヨーロッパ各国、アフリカ各国、アメリカオーストラリアニュージーランドなどで報告されている[4]。日本では、2013年までは平均して2年に1度程度の頻度で報告されており、1941年から1978年までの37年間には20固体が報告された[4]。ただし、2013/2014年の冬は報告が極端に多く、この原因としては、7件が報告された2006/2007年の冬と同様の海水温状態が再来したとする説や、単にダイオウイカの知名度が上がったためであり過去にも報告されなかった漂着が多数あったはずだとする説などがある。

生きている個体の目撃例はほとんどなく、その生きている映像は、日本の研究家が2006年(平成18年)12月に小笠原沖650M付近に仕掛けた深海たて縄で捕獲したダイオウイカを船上から撮影したものが世界初とされている。この際の映像での体色は赤褐色だったが、2013年に公開された小笠原沖での深海映像では活発に活動する状態で他のイカと同様に体色も変化する為、光を反射する黄金色の体色であった。なお標本や死んで打ち上げられた個体は、表皮が剥がれ落ち、白く変色する。ダイオウイカについては、まだまだ生態、個体差ともに不明な点が多く、詳細は今後の研究が待たれる状態である。

天敵マッコウクジラであると考えられている。その理由としてマッコウクジラのの内容物から本種の痕跡が多く発見されることと、頭部の皮膚吸盤の跡やその爪により引き裂かれた傷が残っていることが挙げられる。ダイオウイカの吸盤には状の硬い歯が円形をなして備えられており、獲物を捕獲する際にはこれを相手の体に食い込ませることで強く絡みつくと考えられている[5]。また、弱った個体や死骸がサメやシャチ等、他の肉食生物の餌にされたり、幼体時の浮遊期にも稚イカが多くの生物の餌になっていると考えられている。なお、ダイオウイカの卵はクリーム色もしくは白色をしており、およそ1mm程度である。

ニュージーランド近海での調査からは、ダイオウイカが捕食する獲物は、オレンジラフィーヒウチダイ科Orange roughy)やホキといった魚や、アカイカ、深海棲のイカなどであることが、胃の内容物などから明らかにされている。[6][7]

分類

属のシノニム

種のシノニム

ファイル:Giant Squid Specimen.jpg
ダイオウイカ (Architeuthis japonica) の液浸標本。1996年12月24日、鳥取県羽合海岸に打ち上げられたもの。国立科学博物館の展示。

これまでダイオウイカ属には21種が記されてきた[1]。ダイオウイカを単一種とする場合、これらは全てシノニムとなる。従来、これらを8種とする説、1種の3亜種とする説などがあった[1]

以下の分類が提起されていた。しかし、オーストラリアスペインアメリカ合衆国フロリダ州ニュージーランド日本の海域で発見された43体のダイオウイカをDNA解析した結果、DNAの特徴の差があまりにも小さかったことから、ダイオウイカ属にはただ1種しか存在しないとの説もある[8]

以下に、8種とした説を記す。ただし、テンプレート:Snamei 以外は近縁な別属とする説もあった。

研究史

ファイル:Giant squid 1875.png
1875年ベーリング海上にあるテンプレート:仮リンクに打ち上げられた様子を描いた挿絵
ファイル:Alecton giant squid 1861.png
のちにダイオウイカ属と判明する未知の海洋動物の、最初の標本確保の様子を伝える挿絵
1861年11月30日、カナリア諸島から出航したフランス海軍砲艦アレクタン号 (Alecton) は、海面にクジラより大きな未知の海洋動物を発見し、これに発砲した。このとき採取に成功した胴体の一部が、学会に初めてもたらされたダイオウイカ属の標本となった。画像はハーパー・リーの著書 "Sea Monsters Unmasked(未知なる海の怪物達)"(1884年刊)に掲載されたものである[9]

テンプレート:節stub

ニュース

  • 国立科学博物館窪寺恒己らが史上初めて生きているダイオウイカの写真撮影に成功[10]2005年平成17年)9月27日、学術誌『テンプレート:仮リンク』のウェブサイトで論文と写真が公開される[10]
  • 2006年(平成18年)12月4日、同じく窪寺とNHKの調査チームにより、生きているダイオウイカが小笠原において捕獲された。その際、漏斗から海水を勢いよく噴き出して強い推進力を得ることが映像によって確認され、「深海をゆっくり移動して生活している」とする従来の説が否定された。
  • 2007年(平成19年)7月10日、タスマニア島西岸の港町ストローン (Strahan Village) 近郊のオーシャンビーチに打ち上げられた。
  • 2008年(平成20年)7月28日、国立科学博物館新宿分室にて、窪寺の監督の下、インターナショナル魚拓香房の山本龍香会長および会員が、ホルマリン保存されていたダイオウイカを水槽から出して間接法によるカラー魚拓を制作した。触腕触手を伸ばした構図で、ダイオウイカが元気に水中を泳いでいる姿を色鮮やかに魚拓として完成させることに成功した。実物大のダイオウイカが生前の体色で詳細に再現された貴重な魚拓である。この魚拓作品は2枚制作され、1枚は科学博物館に教育用資料として活用されるべく贈呈された。制作状況はNHKのテレビ番組『熱中時間』で取材され、2008年10月9日にNHK衛星第2テレビジョン(NHK-BS2)にて放送れた。
  • 2010年(平成22年)2月20日、日本の新潟市西区五十嵐一の町の海岸で、腕を含め全長3.4m、体重109.2kgのダイオウイカの死骸が漂着した。
  • 2013年(平成25年)1月6日、窪寺恒己、エディス・ウィダー、スティーブ・オーシェーらが小笠原諸島父島の東沖の深海で生きているダイオウイカの動画の撮影に世界で初めて成功したと発表。同年『NHKスペシャル』1月13日放送分の「世界初撮影!深海の超巨大イカ」にて、この撮影の様子が紹介され、16.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の高視聴率を記録。後に映像が追加されたうえで映画化・DVDソフト化もされた。番組はディスカバリーチャンネルとNHKの共同制作で、2台の潜水艇と自動撮影機が投入され、およそ1000時間の撮影が行われた成果である。
  • 窪寺恒己は2013年3月にProceedings of the Royal Societyに調査結果を論文にまとめ、生活環境により外部形態を変える汎存種であると、以前の意見を変え発表した[11]
  • 2013年7月-10月、国立科学博物館が「この夏、伝説の"ダイオウイカ"にあう。」のキャッチコピーで特別展「深海」を開催。 ダイオウイカの巨大標本が展示され、実寸大のダイオウイカぬいぐるみが20万円で販売された。
  • 2014年1月4日、富山県氷見漁港[1]で体長3.5メートルのダイオウイカが水揚げされた。シーズンの寒ブリの網にかかって水揚げされた。
  • 2014年2月25日、兵庫県新温泉町諸寄漁港で体長4メートル13センチの生きたダイオウイカが水揚げされた。生きたまま捕獲されたのは今回が初めて。サザエの素潜り漁をしていた漁師が頭上を泳いでいたダイオウイカを捕獲した。[2]

食用

ファイル:Image-Churaumi-Daioh.JPG
ダイオウイカの生物標本(沖縄美ら海水族館に展示されているもの。A. japonica か)

本種やダイオウホウズキイカのような巨大なイカ類の体組織には浮力を得るための塩化アンモニウムが大量に含まれている。そのため、これらのイカの身の味には独特のえぐみがあり、食用には適さないとされている。

過去の日本のニュース番組では、捕獲したダイオウイカを漁師が刺身にして食べる場面が放映されたこともあるが、食後の感想は「しょっぱくて食えた代物ではない」との否定的なものであった。また、国立科学博物館の窪寺恒己の証言によると「食えないことはない。だが、体を浮かせるために、水より比重が軽いアンモニアの入った袋が体内にあるため、アンモニア臭がある」、「イカの味はするものの噛んでいるうちにえぐ味や苦味が出てきて」(美味ではない)とされている[12][13]。 2014年2月25日に水揚げされた際は、ぐるぐるナインティナインのスタッフが日本全国のイカの特集で取材した。この際、地元の漁業長が生のダイオウイカを食したが、味は水っぽいと評した。その後同番組でダイオウイカの足の一部も貰い受け、番組内で岡村隆史(ナインティナイン)、徳井義実(チュートリアル)、宮崎美子がダイオウイカのイカヤキを食べたが、岡村は「口触りは非常に悪く、アンモニア臭がひどい」と苦悩の表情で食した[14]。その後も、2014年4月8日富山湾で発見された個体が富山県射水市新湊漁港で水揚げされ、新湊漁協職員が試食したものの、以前の報告同様「イカ特有の歯応えはなく、また塩辛く、塩の塊を食べているようでおいしくはない」と評している[15]

ただし、本種と同様に塩化アンモニウムを含む魚介類(他の大型イカなど)の加工技術を応用することで食された例もあり、近年では主に南アメリカ諸国が輸出のための本格的な食用化研究を進めている。

画像

写真

模型

参考図書

テンプレート:参照方法

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

テンプレート:Sister テンプレート:Sister

テンプレート:Sister
  1. 1.0 1.1 1.2 テンプレート:Cite
  2. クラーケンと対比されるところは主として頭足類であるが、おおよそイカ類に限定され始める時期は近代以降である。
  3. テンプレート:Lang-grc 「主導者、首長」に由来する。テンプレート:Lang-en大天使」に見られる arch- と同じもの。
  4. 4.0 4.1 窪寺恒己 『ダイオウイカ、奇跡の遭遇』2013年 新潮社 ISBN 978-4103346913
  5. しかし、マッコウクジラはこの吸盤をも構わず丸呑みしていると考えられる。
  6. テンプレート:Cite journal
  7. 2013年の映像では大型のソデイカ(1メートル前後)を餌にして誘き寄せた。
  8. テンプレート:Cite news
  9. テンプレート:Cite book
  10. 10.0 10.1 テンプレート:Cite web(初出は技術評論社刊『英語野郎 Vol.2』(2005年12月22日発行))
  11. 窪寺 [2013:176-178]
  12. NHK総合テレビ爆笑問題のニッポンの教養』 2008年12月9日放送回より。
  13. 「ダイオウイカ、奇跡の遭遇」ISBN 978-4103346913
  14. 日本テレビぐるぐるナインティナイン』 2014年3月13日放送回より。
  15. ダイオウイカ「まずい」 富山湾で2日連続水揚げ、温暖化で北上の可能性も2014年4月8日20時45分(MSN産経ニュース