コンサートマスター

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テンプレート:出典の明記 テンプレート:国際化 テンプレート:Portal クラシック音楽 コンサートマスターテンプレート:Lang-en-short)は、オーケストラの演奏をとりまとめる職をいい、一般には第1ヴァイオリン(ヴァイオリンの第1パート)のトップ(首席奏者)がこの職を担う。

呼称

アメリカのオーケストラで多用されるアメリカ英語の呼称である。男性奏者(男性名詞)の場合「コンサートマスター (concertmaster)」と言い、女性奏者(女性名詞)の場合「コンサートミストレス (concertmistress)」と言う。しかし、近年のアメリカでは性差別の排除や男女雇用機会均等の観点から両性ともコンサートマスターと呼ぶ傾向にある。日本では「コンサートマスター」、「コンサートミストレス」およびそれぞれを省略した「コンマス」、「コンミス」という呼び方が多く使われる。クラシック音楽用語として常用されるドイツ語から直接ではなく、アメリカ経由で借用されたことは興味深い[1]イギリスを始めとする英連邦諸国などでリーダーleader)の呼称も用いられる。

ドイツ語圏ではKonzertmeister、女性はKonzertmeisterinフランスではchef d'attaqueなどと呼ばれる。ドイツ語と英語が混在したconcertmeisterという語が用いられることもあるが、ごく稀である。

役割

オーケストラなどの大きな演奏団体では、指揮者が置かれるが、実際の細かな音の出だしや切る位置、微妙なニュアンスは、指揮では示しきれないことも多い。このような場合、ほかの団員は指揮を見るのと同時にコンサートマスターを見て演奏し、コンサートマスターは必要に応じて指示を出す。

なお、何らかの事情で演奏会本番になって本来の指揮者が出演できなくなり、代役の手配がつかない場合、コンサートマスターが指揮者の代行として、オーケストラ全体に指示を出すことがある。2004年10月のNHK交響楽団定期演奏会において、本来の指揮者が本番指揮中に怪我をしてしまったため、コンサートマスターがチャイコフスキー交響曲第4番全曲を「指揮」するなど、日本国内でも幾つか実例がある。ただし、こうした場合では、コンサートマスターは指揮棒を手にしたり指揮台に上がることはほとんどなく、自分の席(第1ヴァイオリンの最前列)に座ったままサインを出したり、必要に応じて立ち上がって弓で指示を与えるぐらいである。

練習に際しては、指揮者の指示を補ったり、指揮者の指示に従って演奏法を細かく指示したり、演奏者を代表して指揮者と協議したりする。また、多くのオーケストラでは、(楽譜に特に指示されていない部分での)弦楽器セクションのボウイングを決めるのもコンサートマスターの役割であり、オーケストラの音色を特徴づける重責を担っている。

ヴァイオリン・ソロの部分はコンサートマスターが担当する。

また、演奏の前後に指揮者が挨拶をするときには、一般にオーケストラは起立するが、起立、着席、楽屋に引き揚げるなどの合図はコンサートマスターが行う。

アメリカのオーケストラでは、演奏前のチューニング(音合わせ)でコンサートマスターの出すA (La) の音に各奏者が合わせる。日本では、オーボエがA (La) の音を出し、起立したコンサートマスターがその音を引き取って各奏者が合わせる。ヨーロッパではオーボエのA (La) に直接各奏者が合わせることが多い。ドイツでの一例としては、コンサートマスターの起立を合図にオーボエがAを出し、それにまず管楽器とコンサートマスターが合わせ、そのあとコントラバスが合わせたあと、コンサートマスターのAに弦楽器が合わせるというのがある。また、団体によっては演奏前の出場の時、最後に出場して他の楽員に迎えられる、というような儀礼を取るところもある。

人選

コンサートマスターの採用・契約は、ヴァイオリンの一般団員(トゥッティと呼ばれる)とは別採用、別契約で行われる。上記のように演奏上その他で役割が大きいためである。また管弦楽曲においてもソロの目立つ曲は多いため、演奏技術も当然格段に優れている必要がある。コンサートマスターが何らかの理由により退団する場合、後任は(トゥッティから選ぶことをせず)公募を行う(団員が応募する場合もほかの応募者と共に試験を受ける)。団体によっては、コンサートマスターが複数置かれる場合や、演奏会や曲によってオーケストラに所属しない奏者がコンサートマスターを務める場合もある(客演)。

オーケストラ以外のコンサートマスター

吹奏楽では、配置上オーケストラのコンサートマスターの位置にいる第1クラリネットのトップが上述のコンサートマスターと同じ役割をすることが多い。また、曲のソロを任されることが多い。演奏者のとりまとめとしてのコンサートマスターは、他のパートのトップ(いわゆる第一奏者)がこの職を担うこともある。例えば、2014年4月現在、東京吹奏楽団ではクラリネット奏者であるが、東京佼成ウインドオーケストラではアルトサクソフォーン奏者が、大阪市音楽団ではオーボエ奏者が、それぞれ担当している。

ブラスバンドではプリンシパル・ソロ・コルネット奏者がコンサートマスターと同様の役割を果たす。

ジャズバンドビッグバンドなどでは、トランペットの第1奏者がバンドを統率することがある。バックバンドの形式ではバンドマスターが統率するが、担当する楽器は明確に決まっておらず、バンドによって異なる。

コンサートマスターの例

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン交響楽団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

第1コンサートマスター

コンサートマスター

シュターツカペレ・ドレスデン
シュターツカペレ・ベルリン
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
MDR交響楽団
バイエルン放送交響楽団
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
北ドイツ放送交響楽団
ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
ヴュルテンベルク州立管弦楽団
ケルン放送交響楽団
シュトゥットガルト放送交響楽団
ベルリン放送交響楽団
バンベルク交響楽団
ハンブルク交響楽団
ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団
ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
南西ドイツ・フィルハーモニー交響楽団
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団
ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
ハーグ・レジデンティ管弦楽団
ロンドン交響楽団
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
フィルハーモニア管弦楽団
BBC交響楽団
ボーンマス交響楽団
ハレ管弦楽団
パリ音楽院管弦楽団
パリ管弦楽団
フランス国立管弦楽団
パリ国立歌劇場管弦楽団
ラムルー管弦楽団
ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団
スイス・ロマンド管弦楽団
ニューヨーク・フィルハーモニック
シカゴ交響楽団
ボストン交響楽団
フィラデルフィア管弦楽団
クリーヴランド管弦楽団
ロサンゼルス・フィルハーモニック
サンフランシスコ交響楽団
ピッツバーグ交響楽団
デトロイト交響楽団
ミネソタ管弦楽団
シンシナティ交響楽団
ボルティモア交響楽団
ヒューストン交響楽団
ダラス交響楽団
セントルイス交響楽団
シアトル交響楽団
アメリカ交響楽団
モントリオール交響楽団
トロント交響楽団
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
フィンランド放送交響楽団
ラハティ交響楽団
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
スロヴァキア放送交響楽団
ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団
ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団
サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
NBC交響楽団

日本のオーケストラのコンサートマスターの例

NHK交響楽団

岩淵龍太郎(1949-1956年)、外山滋(1954-2014年)、海野義雄(1959-1963年)、坂本玉明田中千香士(1966-1979年)、澤和樹(1978-1980年)、川上久雄(1964-1984年)、堀伝(1964-1991年)、徳永二男(1976-1994年)、堀正文(1979年- )、山口裕之(1984年-2013年)、篠崎史紀(1997年- )

オーケストラ・アンサンブル金沢

パヴェル・ボガチュ(1990-1999年)、マイケル・ダウスサイモン・ブレンディスアビゲイル・ヤング松井直(1994年- ) 

大阪フィルハーモニー交響楽団

安田英郎(1961-1980年)、藤井允人(1980-1986年)、稲庭達(1980-1988年)、岡田英治(1980-2004年)、梅沢和人(1989-2010年)、長原幸太(2004-2012年)、崔文洙 (2009年- )、渡辺美穂(2012年- )、田野倉雅秋(2014年- )

大阪交響楽団

森下幸路(2001年- )、林七奈(2005年- )

神奈川フィルハーモニー管弦楽団

七澤清貴(1980-2000年)、深山尚久(1993-1997年)、尾花輝代充石田泰尚(2001年- )、﨑谷直人(2014年- )

関西フィルハーモニー管弦楽団

川島秀夫(1981-2009年)、ギオルギ・バブアゼ(2001年- )、岩谷祐之(2008年- )

九州交響楽団

松村英夫豊嶋泰嗣(1997-2009年)、扇谷泰朋(2004年- )、近藤薫(2011年- )

京都市交響楽団

西村順吉(1967-1985年)、尾花輝代充辻井淳(1984-1993年)、工藤千博(1986-2006年)、グレブ・ニキティン(2006-2008年)、渡辺穣(1995年- )、泉原隆志(2009年- )

群馬交響楽団

松本善三大関博明(1979-1987年)、篠崎史紀(1988-1991年))、水谷晃(2010-2013年)、伊藤文乃(2009年- )

札幌交響楽団

佐々木一樹(1966-1977年)、ルイ・グレーラー(1977-1981年)、深山尚久(1988-1992年)、尾花輝代充(1993-1996年)、グレブ・ニキティン(1993-2000年)、田島高宏(2001-2004年)、三上亮(2007-2011年)、大平まゆみ(1998年- )、伊藤亮太郎(2005年- )

新日本フィルハーモニー交響楽団

ルイ・グレーラー崔文洙(1997年- )、豊嶋泰嗣(1997年- )、西江辰郎(2005年- )

仙台フィルハーモニー管弦楽団

渋谷由美子(1979-2002年)、森下幸路(1994-2000年)、西江辰郎(2001-2005年)、伝田正秀(2006-2011年)、神谷未穂(2010年- )、西本幸弘(2012年- )

セントラル愛知交響楽団

七澤清貴浅井万水美高橋律也寺田史人(2008年- )

東京交響楽団

阿部冨士雄徳永二男(1966-1968年)、佐々木一樹(1977-1980年)、荒井英治(1980-1988年)、小森谷巧(1987-1999年)、西田博(1989-1994年)、磯恒男(1989-99年)、深山尚久(1999-2001年)、高木和弘(2007-2012年)、大谷康子(1995年- )、グレブ・ニキティン(2000-2006年、2008年- )、水谷晃(2013年- )

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

山本友重(1991-1999年)、戸澤哲夫(1995年- )

東京都交響楽団

古澤巌(1988-1991年)、矢部達哉(1990年- )、四方恭子(2009年- )、山本友重(2000年- )

東京フィルハーモニー交響楽団

磯恒男(1968-89年)、山口裕之(1976-1979年)、深山尚久(1980-1986年)、平澤仁(1988-2009年)、荒井英治(1989年- )、青木高志(1990年- )、三浦章宏(2001年- )

名古屋フィルハーモニー交響楽団

北垣紀子(1976-1989年)、水野稔雄(1985-1989年)、後藤龍伸(1995年- )、日比浩一(2001年- )、田野倉雅秋(2012年- )

日本センチュリー交響楽団

稲庭達(1992-2003年)、川崎洋介(2006-2008年)、太田雅音(2006-2011年)、後藤龍伸(2009年- )

日本フィルハーモニー交響楽団

ルイ・グレーラー木野雅之(1993年- )、扇谷泰朋(2006年- )

兵庫芸術文化センター管弦楽団

朝枝信彦(2005-2010年)、四方恭子(2005年- )、豊嶋泰嗣(2005年- )

広島交響楽団

小島秀夫(1980-1998年)、ヤン・プステヨフスキーエヴァルド・ダネル伊藤文乃(1997-2005年)、上野眞樹(2002-2004年)、田野倉雅秋(2004-2014年)、佐久間聡一(2014年- )、蔵川瑠美(2014年- )

山形交響楽団

恵藤久美子(客演)(1980-1981年)、重本佳美(1983-1991年)、犬伏亜里(1996年- )、高木和弘(2006-2013年)

読売日本交響楽団

尾花輝代充篠崎史紀(1991-1997年)、藤原浜雄(1992-2012年)、デイヴィッド・ノーラン(1999-2013年)、小森谷巧(1999年- )、ダニエル・ゲーデ(2013年- )、日下紗矢子(2013年- )

日本の合唱団のコンサートマスターの例

東京混声合唱団
神戸市混声合唱団

ヴァイオリンソロの活躍する管弦楽曲

ヴァイオリンソロの活躍する管弦楽曲の例を挙げる。これらの曲では録音においては著名ヴァイオリニストがソロを演奏する場合もあるが、実演においてはまず楽団のコンサートマスターが演奏する。なお、19世紀においてあるオーケストラではコンサートマスターがソロを弾く際、起立する慣わしがあったという。

脚注

  1. 英語の発音が日本のクラシック音楽界の用語として定着している例は珍しくなく、ほかには一部の楽器名(ヴァイオリンハープ等)、(特にピアノ曲の)曲名・ジャンル名(インベンションワルツノクターン等)、一部の楽語(アクセントシンコペーション等)が挙げられる。