徳之島
徳之島(とくのしま)は、南西諸島の奄美群島に属する離島の1つであり、島内には鹿児島県大島郡徳之島町、伊仙町、天城町の3町がある。
目次
概要
県内では奄美群島は奄美大島を中心とする、奄美地方という地区に分類される。面積は約247.77km2、周囲およそ80km。日本では北方領土の色丹島よりやや小さく、14番目の面積を持つ[1]。人口約27,000人の島である。
合計特殊出生率の高さでは、国内第1位-第3位を島内の3町が占めている。
主要な産業はサトウキビ、ジャガイモ、ショウガ、果樹などの農業、キハダマグロ、ソデイカ、カツオ、イセエビ類などの近海漁業、黒糖を原料とした菓子、黒糖焼酎製造など。
気候
気候は沖縄諸島などと同じく亜熱帯性気候に属する。本土に比べれば1年を通して暖かい。但し沖縄諸島(山間地域などを除けば冬の寒い日の日中の気温がおおむね15℃くらいで、最低気温が10℃を下ることが年間数日程度と珍しい)と比べると冬は意外と寒くなり、寒い日の日中の気温はおおむね13度くらいで、最低気温が10℃を割り込む日も冬季月において月に数日程度はあり、珍しくはない(冬でも暖かい日は20℃を超えるが、そのような日でも沖縄諸島よりは3℃程度低い傾向にある)。一方で夏は「猛暑(35℃以上)」となる事は滅多になく、比較的風も通るので東京などの大都市よりもしのぎやすい。梅雨は例年ゴールデンウィーク明けくらいに入り6月下旬に明ける。梅雨時の雨の降り方は、熱帯的なスコールとなる場合が多く(特に集中豪雨が起きやすいのは6月中旬頃)、山間ではどこかで土砂崩れが起きる。入梅は意外とわかりにくいものだが、梅雨明けはかなり明瞭である場合が多い。梅雨明け後は10日かそれ以上安定した晴れの天気が続くが、一方で台風シーズンも到来する。台風の通り道として知られており、接近数は沖縄・南九州とほぼ同じである。通常年の接近数はおおむね3個程度であり、異常に多かった2004年の接近数は8個だったが、この数は鹿児島県本土の10個よりも少なかった(その翌年から数年間は逆にほとんど直撃を受けていない)。ただし徳之島付近にいるときの台風は、勢力が非常に強い状態(最大風速40m/sや50m/sが普通)であるのと、この付近で方向を変えるために速度が遅いことが多く、暴風域がまる1日以上続くことが多い為、台風が直撃した後は必ずのように停電になるなど被害が大きい。ただし「台風慣れ」しているためか台風対策がしっかりしていて、大きな被害が出る割には死傷者は少ない。
地形
島の中央には井之川岳(645m)を中心とした山塊が、北部には天城岳(533m)を中心とした山塊がある。北部の天城岳を中心とした山塊は、横から見ると女の人の寝た姿に見えることから「寝姿山」とも言われる。そしてこれら2つの山塊は一部途切れているようにも見えるが、おおむね一本の線のごとく山脈状を呈している。全体的には照葉樹林に覆われている。山塊の周囲は平地となっており、奄美群島では最大の耕地面積を有している。また南部の伊仙町は石灰岩地域が広く、あまり一般には知られていないが多くの鍾乳洞を有し、最大のものは銀河洞で全長2052mである。
生物
南西諸島における「生物の宝庫の島」の一つであり、奄美大島・沖縄本島との関連が大きく、中でも奄美大島との関連が一番大きい。ハブが多いことで有名(もっともハブ自身の性質が臆病であるのでそれほど見かける訳ではない)であるが、その一方で貴重な動植物も数多く、動物についてはアマミノクロウサギを筆頭にケナガネズミ・トクノシマトゲネズミ・オビトカゲモドキ・イボイモリなどがあり、植物についてはシナヤブコウジ・タニムラアオイ・トクノシマエビネなどがある。このうち徳之島固有亜種であるオビトカゲモドキについては、全般的に奄美大島との関連が濃い徳之島の生物相の中にあって、むしろ沖縄本島との関連を示唆する存在であるが(奄美大島にはトカゲモドキの仲間は分布しない)、これについて徳之島の爬虫類相全体を見ても、例えばコブラの仲間であるハイは奄美大島のヒャンとは亜種を異にし、沖縄本島と亜種を同じくしている事など特異的な面が見られる(但し陸生カメ類は分布しないなど、徳之島の爬虫類相が完全に沖縄的であるわけではない)。この点について高等動物以上に奄美大島系と沖縄本島系のものが顕れやすい昆虫を見ていくと、徳之島産の昆虫は「アマミ○○」と名付けられる昆虫の方が比較的多いのに対し、南隣の沖永良部島から「オキナワ○○」と名付けられる昆虫の方が比較的多くなってくる。このように徳之島の生物相を鳥瞰すると、徳之島と沖永良部島との間の境界線が比較的明瞭に現れるように感じられ、「奄美系」ということができるが、その一方で「沖縄の色が見える」ことが徳之島の生物相の特徴ということができよう。
交通
空路
- 徳之島空港(天城町)
※JALグループの運航
- 日本エアコミューター(JAC)
- - 鹿児島空港(プロペラ機・ボンバルディア Q400)毎日4便
- - 奄美空港(プロペラ機・サーブ 340)毎日2便
2010年3月31日を持ってJALが撤退、翌4月1日、日本エアコミューター(JAC)の単独運行となった。
航路
- 亀徳港(徳之島町)
- 阪神・沖縄航路
- マルエーフェリー(琉球エキスプレス)
- ※神戸港(六甲船客ターミナル) - 大阪港(南港フェリーターミナル) - ※名瀬港(新港地区) - ※亀徳港(徳之島) - ※和泊港(沖永良部島) - ※与論港(与論島) - 那覇港(新港ふ頭)
※印には寄港しないことがある。 - 平土野港(天城町)
- 鹿児島・喜界・知名航路
- 奄美海運(フェリーあまみ・フェリーきかい)
文化
方言は琉球方言の1つで、民謡(島唄)も三線(サンシン)を使ったものが多いなど、本土より沖縄県が文化的に近い。牛同士を戦わせる闘牛が盛んで、シーズンには島全体が熱気に包まれる。また、選挙でも有名な島である。
代表的な年中行事に以下のようなものがある。
- 「むちたぼれ(餅もらい)」=稲作儀礼の行事で、衣装を着て「餅たぼれ、餅たぼれ」と唄い踊りながら各家々を回る。
- 「浜おり」=旧暦7月の盆の後の3日間。昼は浜で酒を酌み交わし、夜は踊り明かす。昔、トゥール墓(洞窟墓)の下で先祖の霊を供養したのが始まり
- [夏目踊り」=8月17日に行う豊年祭。早朝8時頃から踊り始める
方言
テンプレート:Main 地元では島口(すぃまぐつぃ)と呼ぶ。昭和中期まで島内の道路整備がすすんでいなかったため、集落毎の語彙やアクセントの差異が大きい。奄美方言の内、奄美大島と徳之島及び喜界島の一部の方言には、標準日本語の5つの母音(あ、い、う、え、お)以外の母音が存在している。徳之島では、a、i、u、e、oの他に、ɪとɘがあり、それぞれに長音も存在する。後の2母音の正式な表記法は決まっていないが、それぞれ「ぃ(ィ)」または「ゐ(ヰ)」と「ぇ(ェ)」または「ゑ(ヱ)」を小さく添える表記法を提案する話者もいる[2]。また、頭音に声門破裂音があり、意味の区別に使われるため、「’」などを付けて区別する表記もある。以下の言葉の中には近似的な標記がある事に注意されたい。
- きゅーがめーら – こんにちは
- うぃーてぇー、すぃとぅめぃーてぃきゅーがめーら - おはよう
- よーねぃーうがめーら – こんばんは
- おぼーら(おぼーらだーに:伊仙町、おぼーらだれん:徳之島町、天城町) – ありがとう
- んきゃげぃれぃ、んきゃげぃてぃたぼれ – (剥いて)召し上がってください。
- くゎーきせぃー – ご馳走さま
- もーろ、もーるぃ – ようこそ、いらっしゃい
- もーるぃよー – 帰るよ、さようなら
- すぃめーらんやー – すみません
- いきゃ(いか、とぅ) – 行こう
- だぁーか いきが – どこにいくの
- ぬぅーしゅんが – 何しているの
- いぇー – ええ!、あーあ、などの感動詞
- わん – 私(第一者を指す)
- わっきゃ – 私たち
- うら(うり/うぃ) – あなた(第二者を指す)
- うきゃ(うぃきゃ) – あなたたち
- あじゃ – お父さん
- あま – お母さん
- とぅじゅとぅ – 夫婦
- とぅじ – 奥さん・妻
- むぃ – 兄(「むぃー」は、目、穴)
- あか – 姉
- われんきゃ – 子供達
- まぁーが – 孫
- うやほうがなし – 先祖
- どぅし – 友達
- きゅらめぇーれぇ – 美人
- やぁ – 家
- さんしる、さむしる – 三味線
- てぃんぐわ – ひとつ
- あっちゃー(あちゃ) - 明日
- うぁーつぃき – 天気
- すてぃむてぃ – 朝
民謡
- ワイド節 – 坪山豊作曲。闘牛の時に歌われる。牛に対するかけ声「ワイド、ワイド」で始まる。
- 六調 – 他の奄美諸島と同じく、宴会などに歌われる。速めのテンポにあわせて踊る。
- ちゅっきゃり節 – 「ちゅっきゃり」とは「一切」の意味。多方面、多歌詞で唄われる。
料理
薩摩料理の影響を受けた豚骨、沖縄料理の影響をうけた油そうめん、豚足、両者に共通する豚味噌などが有名。全般に甘く、濃い味付けとなっている。海水魚は刺身、煮付けの他、唐揚げによくされる。魚汁もいったん揚げた魚を使う場合がある。普通のおにぎりの海苔の部分に海苔の代わりに薄く焼いた卵焼きを巻いた「たまごおにぎり」や氷を入れる「冷やしおかゆ」は徳之島で日常的にたべられている特徴的な主食のひとつである。
教育
- 島内には大学・短期大学・専門学校は2013年現在のところはない。但し平成19年(2007年)度から鹿児島大学法文学部によって、正規の大学院科目が受講できる奄美サテライト教室科目等履修生課程が始まった。
- 島内にある高等学校は鹿児島県立徳之島高等学校と樟南第二高等学校の二校。
放送
鹿児島県のテレビ・ラジオ放送が受信できるほか、一部の地域では沖縄県のテレビ・ラジオ放送が受信可能(テレビの場合は受信ブースターを使用)。
テレビ
島内には基幹局となる徳之島中継局のほか、4か所に中継局がある(NHKのみ、MBC・KTSは3か所、KKB・KYTは徳之島局と山局のみ)。なお2006年に開始された地上デジタル放送については、NHKと民放4社が2008年11月に本放送開始している。
- NHK鹿児島放送局
- MBC南日本放送(TBS系列、徳之島中継局60ch・他中継局50ch)地デジ周波数 16CH リモコン番号 1
- KTS鹿児島テレビ放送(フジテレビ系列、徳之島中継局58ch・他中継局44ch)地デジ周波数 18CH リモコン番号 8
- KKB鹿児島放送(テレビ朝日系列、徳之島中継局のみ62ch)地デジ周波数 14CH リモコン番号 10
- KYT鹿児島読売テレビ(日本テレビ系列、徳之島中継局のみ56ch)地デジ周波数 17CH リモコン番号 4
MBCはクロージングには徳之島と山が、ホームページは徳之島4局が紹介されている。 KTSはホームページには徳之島4局(徳之島、山、天城、面縄)のチャンネルが載っている。
ラジオ
NHKのみ島内に中継局がある(AM・FMとも)。なお民放は南日本放送(MBC)は鹿児島本局・名瀬中継局(1107kHz・1449kHz)から直接受信可能だが、FM鹿児島は薩南諸島全域に中継局がないため受信不可。
- NHKラジオ第1放送(1341kHz) 沖永良部島と与論島には中継局がないためこれらの島々もカバーをしている。
- NHKラジオ第2放送(1539kHz)
- NHK-FM放送(81.6MHz)
観光
奄美群島国定公園に属する。
- ムシロ瀬
- 花崗岩がまるでムシロを敷いたように広がり、奇観を呈している。
- 犬の門蓋(いんのじょうぶた)
- 犬田布岬
- 金見ソテツトンネル
- カムィヤキ遺跡
出身者
ゆかりの人物
市町村合併の動向
島内には徳之島町・伊仙町・天城町の3町がある。2004年4月13日に徳之島地区合併協議会が発足した。当初、3町での合併を目指したが、2005年1月30日の住民投票の結果を受けて徳之島町が離脱している。残りの2町は合併協議を続けたが、2006年5月29日会合を開き、当分の間2町による協議会は休止することが承認された。
2006年末には3町長の間で合併推進の合意がなされ、2007年4月には3町の法定協議会を設置するため、合併準備委員会が設立された。しかし同年8月に選出された徳之島町の新町長は合併反対の意向を示している。
普天間基地移設候補
普天間基地移設問題では、2006年日米合意のキャンプ・シュワブ沖合の代替候補地として名前が挙がったが、その当時、徳之島が含まれる衆議院鹿児島県第2区から選出されていた代議士であった徳田毅や毅の父親で島に強い影響力を持つ徳田虎雄(元衆議院議員、徳洲会創設者)、3町長は一貫して反対を表明しており、また2010年4月18日に行われた反対集会には島民の半数以上である1万6000人が集まるなど[4]大規模な反対運動が起こった。その一方で、島の振興などの観点から受け入れを表明する町議、住民なども存在している。
脚注
- ↑ 国立天文台(編) 平成19年 理科年表 p.565 ISBN 4621077635
- ↑ 岡村隆博、『奄美方言〜カナ文字での書き方〜』、pp42-48、2007年、鹿児島、南方新社、ISBN 978-4-86124-126-0。後者を提案。
- ↑ 「ひと 城南海」『しんぶん赤旗 日曜版』、2011年9月11日、日本共産党中央委員会
- ↑ 普天間移設反対、徳之島で1万5千人集会 基地移設 特集 YOMIURI ONLINE(読売新聞)