機体記号
機体記号(きたいきごう、英語:aircraft registration)とは、航空機などに付けられる個別の機体ごとの認識記号の通称で、俗に機体番号(略して機番)とも、英語のレジストレーション(registration)を略して単にレジあるいはレジスタと呼ぶ場合もある。航空法上の正式名称は国籍記号および登録記号である。
航空機認識の表示方法が数字のみの場合もあるが、こちらはアメリカ空軍(テールコード)、ロイヤルエアフォース(イギリス)や航空自衛隊(日本)などの軍用機に対し用いられる。そのため民間機に「機体数字」といった呼び方はしない。
なお船舶にも個別認識番号があるが、本稿では民間航空機に対してつけられる機体記号について論述する。
機体記号
国際民間航空機関(ICAO)に加盟する世界各国の国家および地域の民間航空機を認識するためにつけられるのが機体記号である。そのため軍用機にみられる数字のみのシリアルナンバーと区別するために、アルファベットもしくはアルファベットと数字の組み合わせで国籍を表し、一般的にはダッシュでふられた(アメリカや日本など、ダッシュでふらない国もあり)その後ろに数字もしくはアルファベットによって個別の機体認識記号が付けられることになる。
例として日本の場合はJA1234やJA12ABなどとなる。"JA"は日本国籍をあらわし、その後ろの数字もしくはアルファベットが機体固有の登録記号となる。このことは航空法施行規則に定められており、133条は「航空機の国籍は、装飾体でないローマ字の大文字JA(以下「国籍記号」という。)で表示しなければならない」、134条は「登録記号は、装飾体でない4個のアラビア数字又はローマ字の大文字で表示しなければならない」としている。
日本の機体記号
日本では国土交通省(航空機登録原簿)への登録をして交付された航空機登録証明書に記載された国籍記号と登録記号を表示しなければならない。(詳しくは航空機の登録を参照)
かつては"JA"の後ろは機種別の登記になっており、航空機の機種別に次のように分類した登録をすることとしており、民間の航空会社だけでなく警察・消防・海上保安庁などの官庁で運用される航空機にも適用される、ただし自衛隊で運用されている航空機の場合は航空法の適用除外である為、独自の機体記号が用いられる。
- 0001〜0999 第三種滑空機
- 1001〜1999 特殊航空機
- 2001〜2999 第一種、第二種滑空機、動力滑空機
- 3001〜4999 ピストン単発飛行機
- 5001〜5999 ピストン多発飛行機
- 6001〜6999 ターボシャフト・ヘリコプター
- 7001〜7999 ピストン・ヘリコプター
- 8001〜8999 ジェット機、ターボプロップ機
- 9001〜9999 ターボシャフト・ヘリコプター
- A0001〜A9999 熱気球
上記のうち、航空会社でおもに使用されるジェット機およびターボプロップ機の旅客機についてはさらに細かい分類が行われていた。最初は"JA8000"番台は4発ジェット旅客機(DC-8初号機がJA8001)、"JA8100"番台は大型4発ジェット旅客機(当時はボーイング747のみ)、"JA8300"番台は3発ジェット旅客機(ボーイング727など)、"JA8400"番台は双発ジェット旅客機(ボーイング737など)、"JA8500"番台は大型3発ジェット旅客機DC-10・トライスターなど)、"JA8600"番台はターボプロップ旅客機(YS-11など)、というように分類されていたが、1990年代以降、航空機の登録数が大幅に増加し、この法則では賄いきれなくなり、空いている番号を埋めていった(その中には、かつて忌み数として飛ばされていた番号[1]もあり、8000番台に限り[2]埋めて使用している)。
そのため、当てはまらないケースも出てきたことから、現在では”JA+3桁の数字+アルファベット1つ”もしくは”JA+2桁の数字+アルファベット2つ”のパターンになっており、さらに「アルファベットのI(アイ)・O(オー)・S(エス)は使用不可」などの詳細な規則も規定されている(アラビア数字の1・0・5と誤認されることを防ぐため)。 [3]
また、戦前までは"J-ABCD"といった、現在のイギリスに近い表記方法であった。1952年に民間航空が再開された時に国籍記号が"JA"となった。
日本では、自動車の登録番号と同様に一度使用された機体記号は原則として二度と使用しない。日本航空のボーイング747-246F(Ser.22477)のJA8151は1994年にアメリカのサザン・エア・トランスポートに売却されたのちに、1999年に日本航空に復帰したがJA8937として再登録された。(例外として一度輸出されたYS-11が帰国した時に同じ機体記号が使用されたことがある)が、一部の国では同じ記号を再使用する場合もある。例えばフランスのF-WW**やドイツの一部のレジは両国に工場を置くエアバスのテストレジ(発注者への引き渡し前に行う試験飛行の際、一時的に登録される機体記号)のため、何度も使い回されている。 ただし日本でも再割り当ての事例も確認されており、2006年12月に登録された全日空のボーイング777-381ER(Ser.32650)のJA777Aは、1997年に事故により大破し抹消登録されたロビンソンR44型回転翼機の登録記号と同じである。
日本国政府専用機は現在航空自衛隊に所属するため、専用のシリアルナンバーが付けられているが、アメリカから日本に飛行での空輸での到着時は民間機扱いの登録であった。現在はそれぞれ「1号 - JA8091→20-1101、2号機 - JA8092→20-1102」へ変更されている。また3号機の導入を見越してJA8093も割り振られていたが、導入が見送られたため未使用のまま現在も欠番である。
国籍記号一覧
この一覧を参照すればわかるように、国家名と国籍記号はほとんど一致していないことが見て取ることができ、国籍記号から国家名を連想しにくい。国籍記号と国家名の頭文字が合致しているものは
- 日本 = JA pan
- カナダ = C anada
- イタリア = I taly
- フランス = F rance
- ドイツ = D eutschland
- ジンバブエ = Z imbabwe
- エチオピア = EThiopia
- イギリス = G reat Britain
くらいしかない。
ほかには、
- オーストリアの"OE"は、原語であるドイツ語の国名"Österreich"の頭文字Öの代替として使用されているものであること
- アイルランドの"EI"は、原語であるアイルランド語国名"Éire"
- ロシアの"RA"は、"Russia"からであること
- ベトナムの"VN"は、"Vietnam"、ウクライナの"UR"がUkrajina、ルクセンブルクの"LX"がLuxemburgに基づくものであること
が推測できるのみである。
以上の国のうち、サンマリノには空港やヘリポートがないため登録されている航空機は存在しない。
モナコには空港はないが、ニースのコート・ダジュール空港からモナコまで、ヘリ・エア・モナコによるヘリコプター定期便が運航されているほか、遊覧飛行用や自家用も登録されている。
敗戦国と機体記号
- 前述の通り、日本の機体記号は、戦前までは「J-ABCD」といった表記方法であった。例えば神風号はJ-BAAI、ニッポン号はJ-BACIという具合であった。戦後民間航空が再開された時に現在のスタイルになった。
- ドイツの機体記号は、戦前までは「D-1929」といった、現在のイギリスなどに近い表記方法であった。戦後民間航空が再開された時に現在のスタイルになった。なお、旧東ドイツは1973年まで「DM-ABC」、それ以後は「DDR-ABA」という形であった。DDRはドイツ語の国名"Deutsche Demokratische Republik"の略称である。(例示した「DDR-ABA」はインターフルクのエアバスA310で、ドイツ統一時に「D-AOAA」となったが会社自体がなくなったため短命に終わった)
独立国や海外領土などの国籍記号
- クロアチアの国籍記号は現在「9A」であるが、ユーゴスラビアから独立した一時期「CR」という機体記号を国際的承認なしに暫定的に使用していた。
- 中華人民共和国、中華民国(台湾)、香港、澳門(マカオ)の4つの国及び地域は、全て中国の国籍記号である「B」を国表記記号として使用している。なお、中国本土と台湾は双方ともBプラス数字といった機体記号を使用している。そのため、過去に同じ機体記号が存在していた可能性もあるが、現在では中国は4桁、台湾は5桁となっているため重複は無い。香港と澳門は機体記号が全てローマ字であるので、区別がしやすい。
- 香港がイギリスから中国に返還される前まではVR-H**という機体記号が割り当てられていた。また澳門も1999年まで中国とは別の機体記号(旧宗主国のポルトガルと同じ記号)が割り当てられていた。返還に際して、中国に対してVR-Hが香港時代からそのまま割り当てられているが、現在は使用されていない。また、この時点まで同じVR-を使用していたイギリス領の各地では、VR-がイギリスと中国の両方に割り当てられてしまうと不具合が生じる事から、香港返還と同時にVP-に変更された。
その他
- かつてのソビエト連邦の機体記号は国名のロシア語表記(Союз Советских Социалистических Республик)を略した「СССР-12345」[5]という形であった。キリル文字で表記されているが、これをラテン文字アルファベットに転記すると「SSSR」となる。
- イギリスのような形態の場合は、無線連絡などの際にフォネティックコードで呼ばれることがある。例えば、英国海外航空781便墜落事故の事故機であるデ・ハビランド DH.106 コメット"G-ALYP"は"Yankee Papa"(ヤンキー・パパ[6])と呼ばれていた。
- アメリカの民間航空会社の機材では、機体番号の最後の二文字が航空会社のIATA航空会社コードになっていることが多い。例えば、アメリカン航空なら"AA"、旧パンアメリカン航空なら"PA"といった具合である。余談だが、日本貨物航空もこの法則に当てはまる(JA02KZなど)。また、最近の「JA+3桁数字+1つのアルファベット」のスタイルになってからは、日本航空が末尾にJ、全日空が末尾にAを用いているほか、全日空の一部機体では社名の略称「ANA」にちなんで、JA01ANというスタイルの機体記号も用いている。
脚注
外部リンク
- JA Search 日本の民間登録航空機検索データベース(個人サイト)
- 日本の航空会社、官公庁、報道関係登録機リスト(個人サイト)
- United States Aircraft Registry Search (連邦航空局)
- Australian Aircraft Registry Search
- Canadian Aircraft Registry Search
- Finnish Aircraft Register
- New Zealand Aircraft Registry Search
- Swedish Aircraft Search
- Danish Aircraft Registry Search
- United Kingdom Aircraft Registry Search
- Annex 7 to the Convention on International Civil Aviation
- Article 20 of the Convention on International Civil Aviation
- Supplement to Annex 7 of the Convention on International Civil Aviation