87式偵察警戒車

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テンプレート:戦闘車両 87式偵察警戒車(はちななしきていさつけいかいしゃ)は、日本小松製作所が開発し、陸上自衛隊が使用している偵察戦闘車装輪装甲車)である。陸上自衛隊各師団旅団偵察隊、戦車連隊本部などに配備される。

防衛省は略称を「87RCV」、愛称を「ブラックアイ」として広報活動に使用しているが、配備部隊内では「RCV」の通称が用いられる。

概要

陸上自衛隊では創成期にアメリカ軍から装輪式のM8装甲車M20装甲車の供与を受けたが、未舗装路面の多かった当時(1950年代)の日本の道路における機動力に不安があったこと、60式装甲車などの装軌式車両や主要装備の調達が優先されたことで配備は少数に留まり、就役期間も短かった。

その後、経済発展に伴って道路網が整備されると装輪式車両の機動力への不安要素が取り除かれ、1982年には装輪式である82式指揮通信車が制式化された。87式は82式に次いで制式化された装輪式戦闘車両であり[1]威力偵察を主任務とし、それまで偵察機材として使われていた73式小型トラック偵察用オートバイには無かった火力装甲防御力を持つ。

調達価格は一両約3億円とされており、平成25年度予算計上分も含めて111両が調達されている。

開発・調達

開発は自衛隊初の装輪式戦闘車両である82式指揮通信車を開発した小松製作所が担当した。防衛庁からの依頼を受け、1983年から約3億円を投じて試作車が2両製作された。1985年から技術試験、1986年からは実用試験を開始し、翌年の1987年に「87式偵察警戒車」として制式化された。2010年代に入っても調達が続けられている。

87式偵察警戒車の調達数[2][3]
予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数 予算計上年度 調達数
昭和62年度(1987年) 16両 平成8年度(1996年) 1両 平成17年度(2005年) 1両
昭和63年度(1988年) 15両 平成9年度(1997年) 1両 平成18年度(2006年) 3両
平成1年度(1989年) 16両 平成10年度(1998年) 1両 平成19年度(2007年) 1両
平成2年度(1990年) 16両 平成11年度(1999年) 1両 平成20年度(2008年) 2両
平成3年度(1991年) 8両 平成12年度(2000年) 2両 平成21年度(2009年) 1両
平成4年度(1992年) 4両 平成13年度(2001年) 1両 平成22年度(2010年) 3両
平成5年度(1993年) 4両 平成14年度(2002年) 1両 平成23年度(2011年) 1両
平成6年度(1994年) 4両 平成15年度(2003年) 1両 平成24年度(2012年) 1両
平成7年度(1995年) 4両 平成16年度(2004年) 1両 平成25年度(2013年) 1両

特徴

兵装には、威力偵察や警戒任務に用いるため、日本製鋼所ライセンス生産したスイスエリコン社製25mm機関砲KBA-B02(俯仰角-10~+45度、対地・対空両用 80口径)を回転式砲塔に搭載しており、機関砲同軸には74式車載7.62mm機関銃を装備している。KBA機関砲は二重給弾方式であり、徹甲弾榴弾の撃ち分け可能。APDS-T(装弾筒付曳光徹甲弾、砲口初速1,335m/s)は、射距離2,000mの傾斜角30度の25mm装甲板を貫通可能。砲塔両側面には発煙弾発射機(旧型は3連装、新型は4連装)を装備している。

82式指揮通信車と車体下部設計の大半を共有している。ディーゼルエンジンの配置は82式が車体中央部左側に有るのに対し、87式では砲塔配置との関係から車体後部右側に変更された[1]消音器も車体右側面後部にある。3軸6輪駆動(通常時は後4輪駆動)で前4輪でステアリングを行う。6輪の車輪にはある程度被弾しても走行を継続できるコンバットタイヤ(サイドウォール強化型ランフラットタイヤ)を採用した。スノータイヤは無いので積雪時や路面凍結時にはタイヤチェーンを巻く必要がある。車体と砲塔は圧延防弾鋼板の全溶接構造で、NBC防護装備や浮航能力は有していない。

車長砲手操縦士、前部偵察員、後部偵察員の5名が乗車する[1]。車体前部右側に操縦士が、左側に前部偵察員が、車体中央部の砲塔右側に車長が、左側に砲手が配置される。砲塔直後の車体後部左側に後ろ向きに後部偵察員が乗車する。後部偵察員はペリスコープや車体後面左側に備わるTVカメラにて後方監視を行う。また、操縦士及び砲手用に微光暗視装置を搭載している[1]。車長、砲手、操縦士、前部偵察員の席の上面に各々専用のハッチがある。偵察用に砲塔に地上レーダーを搭載可能である[1]

エンジン左側には後部偵察員席と車体後面乗降扉を繋ぐ狭い通路がある。車体右側面の第1輪と第2輪の間に、車長、砲手、操縦士、前部偵察員用の乗降扉がある。車体左側面の第2輪と第3輪の間と、車体後面左側に、後部偵察員用の乗降扉がある。

日本国外の性能類似車両との比較
87式偵察警戒車 テンプレート:Flagicon BRDM-2 テンプレート:Flagicon VEC テンプレート:Flagicon ルクス テンプレート:Flagicon
画像 100px 100px 100px 100px
全長 5.99m 5.75m 6.2m 7.74m
全幅 2.48m 2.35m 2.5m 2.98m
全高 2.80m 2.31m 2.51m 2.84m
重量 15.0t 7.7t 13.75t 19.5t
最高速度 100km/h 100km/h 99km/h 90km/h
水上浮航能力 ×
乗員数 5名 4名 5名 4名
武装 25mm機関砲KBA-B02×1
74式車載7.62mm機関銃×1
KPV 14.5mm重機関銃×1
PKT 7.62mm機関銃×1
M242 25mmチェーンガン×1
MG3 7.62mm機関銃×1
MK 20 Rh202 20mm機関砲×1
MG3 7.62mm機関銃×1

後継

87式偵察警戒車と89式装甲戦闘車の後継は、将来の装輪戦闘車両構想の一部と考えられる近接戦闘車として計画中で、砲塔には国産開発のテレスコープ弾(Cased Telescoped Ammunition, CTA)機関砲を搭載するとしている。87式の後継となる「偵察型」と、89式の後継となる「人員輸送型」が計画され、偵察型には対地センサが搭載されるという。

登場作品

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実写作品
日本映画に初登場。富士裾野でのガメラ攻撃に出動。
最終防衛ラインに配置。
第三特別実験中隊ロメオ隊双方に配備されていた。
アニメ・漫画作品
大友克洋監修のオムニバスアニメ映画、第2話『最臭兵器』に登場。災害派遣によって出動し、主人公が放つ臭気から逃げる避難民を救助していた。
日本陸軍所属車両として第1話に登場。日本本土に上陸したBETA群を迎撃に向かう。
73式装甲車とともに怪獣バグモン攻撃のため登場。
ゲーム
作中では戦車と呼ばれている。

脚注

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参考文献

  • 自衛隊装備年鑑 2006-2007 朝雲新聞 P69 ISBN 4-7509-1027-9

関連項目

外部リンク

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テンプレート:自衛隊の装甲戦闘車両
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 PANZER 臨時増刊 陸上自衛隊の車輌と装備2012-2013 2013年1月号,アルゴノート社,P54
  2. 防衛白書の検索
  3. 防衛省 予算などの概要