ガメラ 大怪獣空中決戦

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テンプレート:Infobox Filmガメラ 大怪獣空中決戦』(ガメラ だいかいじゅうくうちゅうけっせん)は、1995年(平成7年)3月11日東宝系にて公開された怪獣映画大映製作の平成ガメラシリーズ第1作である。ガメラ誕生30周年記念作。

概要

ゴジラの復活(1984年版『ゴジラ』)を契機にガメラを復活させようという試みは1980年代からあり、ガメラ誕生20周年に当たる1985年に合わせようとしたが、1984年版『ゴジラ』の成功が思ったほどではなかったためにそれにあやかれず、平成期にずれ込み平成ゴジラvsシリーズのヒットがガメラ復活のきっかけになったという。

監督の金子修介は、大映の要請で監督を快諾したものの、当初の製作予算が5億円(最終的には6億に増額された)という事実に落胆し、ギャグかコメディー映画にすることを覚悟したという。しかし脚本に伊藤和典、特技監督に樋口真嗣を獲得したことで、「怪獣映画の王道」を作ろうということになった。また、ゴジラシリーズではどうしても実現できなかった、ゼロからのリメイク(ガメラそのものの出現と設定からのやり直し)、自由な作劇が可能となった。

舞台としては、1995年の日本を舞台に、五島列島、姫神島で孵化したギャオスと環礁のような姿から目覚めたガメラ、それらを発見した人々と、自衛隊との戦いを描いている。

本作以降に『ガメラ2 レギオン襲来』(以後、『2』)『ガメラ3 邪神覚醒』(以後、『3』)が制作されているが、本作とは時系列的に繋がっており、特に『3』では、本作での出来事が直接的に触れられており、『3』での展開に大きく関係している。

撮影にあたり自衛隊へ協力を要請したところは承諾したが、航空自衛隊(空自)だけは難色を示した。理由は、ギャオスとの空中戦でF-15Jが撃墜され、有楽町マリオンに「墜落」する、という展開に懸念が持たれたためである。[1]幾度かの折衝の結果、このシーンは「戦闘機が出動するが、市街地上空のため交戦できない」というシーンとされ、空自の全面協力を取り付けている。これを踏まえ、今作では意識して「自衛隊に損害が出る」というシーンは極力避けたとされるが、この後の2作品でも戦車が爆発し陸自隊員が吹き飛ぶシーンはあるが空自の航空機は1機も墜落しないという展開になっている。また、平成ガメラ全作品で航空機が墜落するシーンはない(予算の都合上リアリティのある空撮シーンを撮るのは難しいと考えられたため。模型戦闘機が飛び回る安っぽい特撮となるのを嫌った製作者側の意図もあった)。

観客動員は約90万人、配給収入5億2千万円[2]。配給収入目標は10億円だったが、ビデオ化権、放映権を見込んで辛うじて黒字を確保。製作陣はガメラのキャラクターは世間に浸透したと判断し、シリーズ化が決定した。評価は非常に高く、世界最古クラスの映画賞としての伝統を持つキネマ旬報ベストテンに怪獣映画として史上初めて選ばれた(その後も例はない)。

多くのカットで人間の目から見た視点で怪獣が撮られているため、完成度は高まっている。当時、ゴジラシリーズの特技監督を務めていた川北紘一も「視点の統一ということを徹底してやっていて、本篇のストーリーも面白くうまくマッチしていた。よくできたと思う」と絶賛している。

平成ガメラシリーズの製作には日本テレビも関わっていたため、劇中に同局系列のアナウンサーや報道番組である『ニュースプラス1』、また長崎国際テレビ福岡放送静岡第一テレビの番組やスタッフが登場している。ちなみに長崎国際テレビは、ギャオスが発見された島から中継するリポーターのマイクについた「社名ロゴ」のみ(リポーター役は女優)、福岡放送は古賀之士アナウンサーが福岡ドームからリポートした他、同社が契約使用している取材ヘリが登場するシーン、さらに静岡第一テレビは田辺稔アナウンサーが同社報道スタジオで臨時ニュースを読むシーンへの協力となっていた。

本作は『ガメラ2 レギオン襲来』の公開に合わせ、1996年7月に『金曜ロードショー』で放映された。この際、報道のシーンはキネコによるオリジナル版ではなく撮影時のVTRソースをダイレクトに使用したものになっており、現実の報道番組(公開当時の『ニュースプラス1』用)のセットや出演者による「もし現実に怪獣が現れ、それがテレビニュースで報道されたら」というシミュレーション風の映像となり、リアリティを高めていた。特に、深夜のテレビが固定映像にテロップだけを映し続ける場面など、公開の直前に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)の報道に酷似した描写が多かったため、不謹慎な便乗との批判も浴びたがテンプレート:誰2、実際は地震発生よりかなり前に映画は完成しており、日本テレビの協力のもと「災害報道のリアリティ」にこだわった結果としての現実との一致である。

あらすじ

太平洋上に謎の巨大漂流環礁が発見された。その環礁は黒潮の流れに乗って、だんだん日本に近づいているという。保険会社の草薙と海上保安庁の米森は環礁の調査に乗り出し、環礁の上で不思議な石版と大量の勾玉を発見する。さらに、この環礁が生物であるということが明らかになる。

同じ頃、九州の五島列島・姫神島で、島民が「鳥!」という無線を最後に消息を絶つという事件が発生。調査に呼ばれた鳥類学者の長峰はそこで、島民を喰らった巨大な怪鳥を発見する。

政府は貴重な生物であるとして怪鳥の捕獲を決定し、長峰が中心となって福岡ドームに怪鳥を誘い込む作戦を決行する。しかし、ドームの天井が閉まり切らない内に麻酔銃を放ってしまったため、1匹は命中してその場に卒倒したものの、もう1匹は空へ取り逃がしてしまう。麻酔が外れた最後の1匹は真っ直ぐに自衛隊に突進してきたが、咄嗟に上に付いていたライトを付けたため怯み、その隙に麻酔銃を打ち付け、仕留める事に成功。同じ頃、巣に向かって帰巣する1匹を自衛隊のヘリが追跡していた時、博多湾の海がいきなり大きな飛沫を上げた。その正体はあの環礁=巨大生物だったのだ。こちらに向かって来る怪鳥の1匹を平手打ちで石油コンビナートに吹き飛ばして倒し、そのまま博多に上陸。周りの建物を破壊しながら、ドームに向かって行く。攻撃をしようにも、相手が明確な攻撃行動を見せないため、自衛隊も手の出しようがない。更に、ドームに着いた巨大生物はそのままドームから一切離れようとしない。予期せぬ事態に周囲は大混乱に陥り、その隙を突いた2匹の怪鳥は自らを閉じ込めていた鉄格子を強力な光線で切断して脱出する。巨大生物も円盤のような姿となって、怪鳥を追って飛び去っていった。

――最後の希望・ガメラ、時の揺りかごに託す。災いの影・ギャオスと共に目覚めん。――

古代の石板に記された碑文から、政府は巨大生物をガメラ、怪鳥をギャオスと呼称する。政府はギャオスの捕獲にこだわる一方でギャオスよりも体格的に大きいガメラを危険視し、ギャオスを追うガメラを攻撃する。その最中、ギャオスは雌雄同体の性質をもち、単体繁殖が可能な生物であることがわかる。このまま卵が孵化すれば、爆発的な勢いでギャオスが増えることになってしまうのだ。

ガメラの妨害を逃れ、短期間で巨大に成長を遂げたギャオスは餌となる人間を求め、東京へと向かう。ここにきてようやく政府はギャオス捕獲を中止し、東京都民を避難させた後にギャオス攻撃を行うが、ギャオスは自衛隊の発射したミサイルを巧みに誘導し、東京タワーを破壊させる。

真っ二つに折れた東京タワーに営巣するギャオスをただ監視することしかできない自衛隊。しかしギャオスの産卵直後、突如大きな地震が起こった。いくつかのビルを崩落させ、土ぼこりを巻き起こしてその地震は収まった。何か不穏な気配を感じたのか、下を見下ろし鳴き声を上げるギャオス。次の瞬間、公園内の土が一気に舞い上がり、傷の癒えたガメラが地中から出現、プラズマ火球を発射、巣を東京タワーごと破壊したもののギャオスを取り逃がしてしまう。急いで飛び上がるガメラ。今ここに東京の空を舞台として、二大怪獣の空中決戦の火蓋が切られた。

キャスト

米森 良成(よねもり よしなり)
演:伊原剛志
本編の主人公。海上保安庁巡視船「のじま」一等航海士。
太平洋上で謎の環礁による座礁事故に遭遇するも、庁の調査隊に参加させてもらえなかったため、直哉達の保険会社の調査隊に参加する。
ガメラ復活のきっかけを作った人物であり、やがて二体の怪獣の戦いへと関わって行く。
長峰 真弓(ながみね まゆみ)
演:中山忍
本編のヒロイン。福岡市動植物園に勤務する鳥類学者。姫神島でギャオスを発見し、大迫と共に調査を進める。今作の後もギャオスに関して独自調査を行っており、『3』では主人公として再び登場する。
師である平田がギャオスの犠牲になっている。
草薙 浅黄(くさなぎ あさぎ)
演:藤谷文子
勾玉によりガメラと心を通わすことになった女子高生。ガメラとダメージがシンクロする。三部作に亘って登場する。
大迫 力(おおさこ つとむ)
演:螢雪次朗
長崎県警察の刑事。長峰と共に姫神島でギャオスに遭遇する。三部作に亘って登場する。
斎藤 雅昭(さいとう まさあき)
演:本田博太郎
環境庁(当時)審議官。ギャオス保護を訴える。
長峰同様、『3』でも再登場している。
佐竹(さたけ)
演:長谷川初範
自衛隊一等陸佐。『2』にも登場する。
巡視船「のじま」船長
演:本郷功次郎
米森の上司。海竜丸から自ら離れていく岩礁をレーダー画面で確認する。
演じた本郷功次郎は、昭和ガメラシリーズの内3作で主演を務めた経歴を持つ。
輸送船「海竜丸」船長
演:久保明
タクシーの運転手
演:松尾貴史特別出演
浅黄に頼まれ、JR三島駅から通行規制により警察が封鎖していた富士山スカイライン料金所を強行突破し、富士山の裾野まで乗せた。
道弥
演:袴田吉彦(特別出演)
長峰の後輩で、九州大学の大学院生。長峰に頼まれギャオスの染色体を調査する。
テンプレート:Anchor
演:小野寺昭
浅黄の父親。八洲損害保険社員。『2』ではニューヨークにおり、名前だけが登場した。
雪乃
演:坂野友香
浅黄の友人。『2』にも登場する。
大野自衛隊三等陸佐(天王洲・戦闘指揮所指揮)
演:渡辺裕之
ギャオスへのミサイル攻撃を指揮する。三部作を通して同役で連続出演する。
富士裾野の自衛隊指揮官
演:渡辺哲
ドーム移動指揮所中隊長
演:坂田雅彦
買物の主婦
演:風吹ジュン友情出演
テレビリポーター
演:夏木ゆたか(飛び入り出演)
スーパーのおかみさん
演:石井トミコ
男島の商店のおばさん
演:大島蓉子
劇中「NNNニュースプラス1」キャスター
演:真山勇一木村優子大神いずみ
ドームの現場リポーター
演:古賀之士
アルタビジョンのキャスター
演:永井美奈子
深夜臨時ニュースのキャスター
演:若林健治
ドーム移動指揮所通信員
演:中村明美

怪獣

ガメラ
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ギャオス
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スタッフ

特撮ユニット


スーツアクター

受賞歴

豆知識

  • 映画内で、米森と長峰とが「XXだけでなくYYの染色体も見つかった」、「YYと言うのは雄の染色体…」というやり取りをするシーンがあったが、YYという染色体の構成は遺伝学的にありえないもので、YY=雄と言うのは間違いである。(ヒトの場合、男性はXY)
  • 作品中で環境庁(現:環境省)が希少動物としてギャオスの保護を決定しているが、あからさまに被害が多い動物に関しては保護が形式的なもので終わったり、見送られることや、希少動物でも駆除が決まることも多く、現実には有り得ない選択との指摘もある(トド#人間との関係も参照)。
  • 姫神島で見つかったギャオスのペレットと誤認されることが多いが、ペレットとは未消化物を嘔吐したものであり、主に猛禽類によるものが知られる(ただし、猛禽類のペレットは羽や骨などが固まった乾燥した物体であり、ドロドロな劇中のそれとは大幅に異なる)。
  • 本作は前述の通り古参映画雑誌『キネマ旬報』による「1995年キネマ旬報ベストテン6位」に輝いた。これは現在のところ、同賞歴史上で唯一の怪獣映画であるが、他に同誌の「日本映画ベスト100」にランクインしている。その原動力となった票の内訳は、30代及び40代の男性のみだったという。
  • 本作を監督した金子は、にっかつで助監督をしていた当時、大学の映研(映画研究会)の先輩である押井守からの誘いでテレビアニメ『うる星やつら』(文芸担当:伊藤和典[3])の脚本、第4話「つばめさんとペンギンさん」を執筆したが、その内容は巨大化したツバメが東京タワーに巣を造るというものだった。

映像ソフト化

  • DVDは2001年2月21日発売[4]
    • 2001年3月23日発売のトールケース版「ガメラ THE BOX(1995-1999)」に収録されており[4]、単品版は2007年10月26日発売。
    • 「ガメラ 生誕40周年記念Z計画 DVD-BOX」に収録されている。
  • Blu-rayディスクは2009年8月28日発売の「平成ガメラ ブルーレイ BOX」に収録されており、単品版も同時発売。
    • 同一のマスターを使用したデジタル・リマスター版DVDも、2010年7月23日に発売されている。

脚注

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外部リンク

テンプレート:ガメラ テンプレート:金子修介監督作品

テンプレート:星雲賞メディア部門
  1. 戦車が破壊されるシーンについて、陸上自衛隊の担当者は「ガメラですからねぇ、しょうがないですね。」として承諾された(『メイキング・オブ・G2』より)。
  2. テンプレート:Harvnb p.269 全スタッフ&キャストデータ
  3. 金子が『うる星やつら』に参加した当時。伊藤は後にシリーズ構成となるが、そのときにはすでに金子は『うる星やつら』から離れていた(参考外部リンク:金子修介の雑記"Essay"2013年3月16日の項)
  4. 4.0 4.1 テンプレート:Cite journal