装甲

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装甲(そうこう)とは、兵器のような機械生物等を、過酷な環境で他の物体との衝突や熱などから護るために取り付ける板状の部品、又は、それらを取り付ける事を指す。

兵器に限らず、苛酷な環境下で運用される建築機械探査装置のような機械類でも内部を保護する装甲を備え、甲羅貝殻といった生き物でも同様である。本項目では、特に断らない限り兵器に使用される装甲について記述する。

テンプレート:Lang-en-gbテンプレート:Lang-en-usテンプレート:Lang-deと表記される。テンプレート:Lang-deは、現代では完全に戦車を意味する単語となっている。

兵器は常に相手の兵器によって破壊される危険があり、破壊されずに機能する事が要求される。相手の攻撃から防護するために多くの兵器が装甲を備えており、兵器の歴史は「矛と盾」で象徴されるように盾となる装甲の歴史である。

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戦争のために装甲された人馬(騎士

歴史

古来より戦時下において装甲の必要性が求められ、常に最前線で様々な攻撃から身を守る等の防具が必要とされた。しかし強固なこれらの防具は必然的に重くなり、次第に行動力と防護力の兼ね合いが求められるようになってきた。そこで「必要な部分だけを重い防具で守り、あまり攻撃を受けない股下等は装甲を薄くする」ことや「梁状の構造物や波板・曲面による力学的に力が分散しやすい構造」が研究・採用された。

また、受ける攻撃の種類を想定して正面打撃だけを受け流すように設計された馬上槍試合用のプレートアーマーで、落馬すると自分では動けず馬上には数名の従者が押し上げるが背面装甲は薄いものや、ナイフや軽いの切っ先だけを受け止める事を目的にしたリングメイル等も生まれた。

近代の戦闘でも兵器の攻撃能力が増すにつれて装甲による防護能力の必要性は増しており、兵器には常に互いを凌駕すべく競い合う「矛と盾」のジレンマが存在している。

近代兵器で求められる能力

最も基本的な装甲の形状は、板状の装甲材で保護対象を覆うことである。特に移動能力を備えた装甲戦闘車両戦闘艦軍用航空機では、防護性能を高めるために単純に装甲を厚くすれば装甲の重量によって運動性が損なわれるため、限られた重量内で最大の防護能力が求められる。21世紀現在の兵器の装甲は、出来るだけ重量増加を伴わない防護力の強化策などが講じられている。

近代兵器では装甲の防護性能が向上したため、攻撃兵器も装甲板の広い面全体を破壊するよりごく狭い範囲にエネルギーを集中することで穿孔し、装甲板を貫いて内部に被害を与えることを目指すものが現れている。この裏面まで貫かれる事を「貫徹」と呼ぶ。

工夫・技術

21世紀現在の兵器の装甲は、加害主体となる敵弾の運動特性・物性や、防護部位ごとの被弾頻度や脅威度の期待値、さらに利用可能な装甲技術での重量、製造コスト、加工容易性、性能の確実性、保守容易性、環境耐性と低劣化性、材料入手性、安全性などを総合的に考慮して選択される。

は代表的な装甲の材料であるが、一般に炭素を豊富に含んだ鋼鉄は硬いが脆くなる。炭素を少なくすれば柔らかくなり硬度は失われるが粘り強くなる。また、炭素以外にも多くの元素をに添加することで多様な合金が作られている。

敵弾の運動特性と物性として考慮すべき最も顕著なものが、20世紀末に登場したAPFSDS弾やHEAT弾のような弾種の能力と侵徹原理である。超高速で装甲に衝突した金属製の長い弾芯が超高圧下で装甲と共に流体化し孔外に流出しながら細い孔を穿ってゆく過程を分析した上で、それを無効化する技術がいくつか開発され装甲に使用されている。

直接の防護性能には無関係であるが、多くの場合装甲によって左右される兵器の外形がステルス性能に大きく影響するため、防護性能や運動性能と共に装甲の形状も装甲設計での重要な要素の1つとなっている。

以下に単純な工夫から高度な技術まで示す。

素材
装甲に適した素材への模索は常に続けられており、古い時代の木の板動物の皮といった素材から青銅に次いでなどと言った金属板へと切り替わっていき、近代兵器の分野では単純な装甲といっても鋼材としては特殊なものを使用し、コストを掛ける価値さえあればマンガンニッケルコバルトモリブデンタングステンなどの貴重で高価な金属を添加、表面に浸炭処理するなど製造に手間がかかる鋼材が使われることもある。
また航空機においては軽量化のためにジュラルミンなどアルミニウム合金が多用されるところを、対空砲火に晒される危険の大きい攻撃機では軽量化と防弾性の両立を求めチタン装甲板がパイロットを防護するために使用されたり、軽量戦車において軽量化による渡河性を重視してアルミ板装甲が使用されることもある。艦艇に使用される場合は莫大な量となるため主に鋼鉄が使われる。
モノコック構造
過去には兵器の外枠となる構造体とは別に装甲だけが付加されたこともあったが、全体の重量に考慮すれば装甲が車体や船体の構造体も兼ねた方が軽くなるため、装甲だけを付け加えることは少なくなり、モノコック構造となっている[1]
傾斜装甲
弾着速度が比較的遅い砲弾が硬度の高い装甲に斜めに当れば、弾が装甲の面を滑って弾かれ被害をほとんど受けずに済むことがある。また、弾が装甲内に突き進んだ場合でも、弾の経路に対して斜めの装甲板では弾がそれだけ長い距離を装甲内で進む必要があり、装甲厚が増したのと同じ効果が得られる。ただし、後者の利点は敵方向から見た暴露面積で比べれば装甲が斜めである分だけ暴露が小さい、つまりそれだけ防護面積が小さくなっており、結局、装甲厚が増す効果と面積の縮小は同じ割合であるため特段の防護効果はないとする考え方もある。また、低速の砲弾は鋼製の装甲への侵徹時に侵入角度が屈折する現象があり、その場合には進入経路は短くなる。
21世紀のAPFSDS弾は、その高速度のために傾斜装甲が意味を持つのはごく浅い角度の場合だけである[出典 1]
傾斜装甲とほぼ同様の形状制御は、避弾経始(ひだんけいし)とも呼ばれる。
装甲厚の最適な配分
これらの装甲様式では、素材が同じであれば単純に装甲板が厚くなるほど強度が増す。しかし同時に装甲による重量も増えるため、移動体に装甲を施す場合には運動性、つまり移動速度とのバランスも考慮して、自ずと装甲の量には限界が存在する。これらの問題に関しては、一様に全体を装甲するよりもより打撃を受けやすい部位を集中的に装甲を厚くしそれ以外の装甲を薄くする事で総合的な防護能力を向上させるという思想がある。
戦車の装甲を例に挙げれば、戦車砲同士による撃ち合いで最も被弾しやすいのは正面装甲である。次に側面であり、後部や上面、下面は被弾が比較的少ない。
このため、全体に使用できる装甲の総重量を100とすると、正面に30、左右側面にそれぞれ20ずつ、残る後部と上面、下面には10ずつといった割合で、装甲の厚みに変化をもたせる事で車体全体に均一に16-17程度の同じ厚みの装甲を施すより同じ重量でより耐弾性に優れた戦車が作れる。
空間装甲
空間装甲(Spaced Armour、スペースド・アーマー)は主装甲の外側に薄い装甲を配置して、2枚の装甲の間に空間を持たせた装甲である。中空装甲とも呼ばれる。[2]
HEAT弾や粘着榴弾は、外側の装甲に命中した際に起爆し、2枚の装甲の間の空間によって衝撃波面と破片が主装甲のより広い面で受け止められて破壊効果が弱められ、車内への衝撃波による被害も減少する。HEAT弾は、外側の装甲での起爆により適切なスタンドオフ距離が保てずに貫徹力が低下する[3]。小口径弾や榴弾破片の場合は、空間装甲による特段の変化は無い[4][出典 1]
空間装甲では重量を増やさずに防護力を高める事が可能である。また、予備燃料タンクや工具箱などの搭載用バスケットを兼ねることもある[5][6]

装甲の種類

装甲には様々な種類がある。主に開発・採用された古い順に以下に示す。

鍛造装甲

鋼鉄の板を叩いてきたえ、同時に形を整える鍛造(たんぞう)によって造られた装甲である。鋳造に比べると不純物があまり入らず、冷間加工による硬度の強化も行えるが、複雑な形状は作れない。21世紀現在はあまり採用されていない[出典 1]

鋳造装甲

炭素を豊富に含む事で融点を高め流動性を確保した鋳鉄を砂などで作った型に流し込んで造る鋳造(ちゅうぞう)によって造られる装甲である。鍛造に比べると不純物が入りやすく、硬くなりすぎ脆いので厚みのある形状でその不足を補なう必要がある[7]

複雑な形状が容易に作れるので、古くは戦車の砲塔の丸い碗型の形状を1工程で造れるために多用されたが、21世紀現在はあまり採用されていない[出典 1]

表面硬化装甲

表面硬化装甲は焼き入れなどの加熱処理によって、表面だけを高硬度の鋼鉄とするものである。小銃弾や小口径の砲弾から内部を防護すればよいだけの装甲の時代には、装甲表面の硬さによってこれらの弾丸を破砕するように設計されていた。硬度の高い表面は避弾経始のような傾斜装甲に向いている。 表面硬化の方法は、単に加熱による焼き入れと炭素を浸透させる浸炭装甲の2種類がある。

表面焼き入れ
表面焼き入れによる表面硬化装甲は、所定形状に加工済みの鉄鋼の板の表面だけを加熱することで焼き入れを行い表面だけを高硬度の鋼鉄とするものである。
浸炭装甲
浸炭装甲は、所定形状に加工済みの低炭素鉄鋼の板を加熱し、片面を高温炭素ガス雰囲気中に曝すことで表面から炭素を拡散浸透させて表面だけを炭素の豊富な高硬度の鋼鉄とするものである。

両方式とも加工に長時間の加熱処理が必要であり、コストや手間、時間など量産するには不利な要素が多い。

21世紀の現在では製鋼技術の進歩によっていずれの方式も高度に管理することで品質が保てるようになっているが、技術の蓄積のなかった時代は品質が保てずにいた。 第二次世界大戦中期を境に砲弾の威力や構造が装甲表面の硬さだけでは対処しきれないようになり、より厚みを持たせた均質圧延鋼装甲の時代に代わって行った[出典 1]

均質圧延鋼装甲

英語のRolled Homogeneous Armour(RHA)を直訳した「均質圧延鋼装甲」とは全体が均質な圧延鋼板で作られた装甲であり、製鋼後に表面を焼入れすることで硬化処理を施した表面硬化装甲とは区別される。第2世代主力戦車では、品質管理が容易で性能がある程度あり量産に向いて安価だったため鋳造装甲と共に均質圧延鋼装甲の採用が多かったが、APFSDS弾やHEAT弾といった新しい対戦車用砲弾には十分な防護性能を持たなかったため21世紀現在ではRHA単独での装甲は少数である[出典 1]

第二次世界大戦初期までは、硬くすれば割れやすく、割れ難いように粘りをもたせれば硬度が落ちるというジレンマの解決策として表面硬化装甲が作られたが、その後の材料工学の進歩により高強度と高靭性が両立するようになり、表面と内部で物性の異なる表面硬化装甲を作る必要性がなくなった事による。しかし現代の材料工学でも150キログラム/ミリ平方が強度の限界と言われるようになり、硬度が靭性、展性とバランス上の限界点に達していると考えられる。RHAの限界を超えるものとして、複合装甲が開発されることになった。

21世紀現在では標準となる均質圧延鋼を定めることで、装甲(複合装甲及び爆発反応装甲)の防護性能や対戦車兵器徹甲弾及び成形炸薬弾)の貫通能力をその厚さで表しているが、攻撃する弾種によって防護の効果が変わるため防護性能の全てを表すことは出来ない。

アルミニウム合金装甲

アルミ合金は鋼鉄に比べて約3分の1の比重であり同じ厚さであれば鋼鉄よりはるかに軽くて済むが、従来型の砲弾に対する強度も約3分の1となり、鋼鉄製のRHAと同様の防護性能を求めれば3倍の厚さで重さは同じになってしまう。しかし、厚みのために剛性が高く[8]、車体や船体に使用すれば補強材を減らせて全体の重量を軽減でき、内部空間も有効活用できるなどの利点がある。一方でAPFSDS弾やHEAT弾による高速衝突では、RHAに比べてアルミニウム装甲は極めて脆弱となる[9]。また、HEAT弾のメタルジェットに対しては、強度不足だけでなく融点の低さもあって大きな穴が空き、車内に甚大な被害を生じることが多い[出典 1]

冷戦期には、M551シェリダンなど空輸や空中投下を行う空挺戦車M113の様に水上浮行能力を求められた車輌など、特に軽量化を求められた場合にしばしばアルミ合金装甲が採用されている。しかしその後、対戦車砲弾や対戦車ミサイルはもとより地雷RPGなどへの脆弱性が指摘されており、爆発反応装甲などの増加装甲による防護も重量負荷やその作動にアルミ合金装甲自体が耐えられない、火災時には比較的早期に強度を失うといった問題があり現在は使用例は少なくなっている。

複合装甲

2種以上の材質を積層させた複合装甲(コンポジット・アーマー、Composite Armour)[10]は、積層装甲とも呼ばれ、鋼鉄製の装甲板に物性が鋼鉄とは異なる物質を板状にはさみ込み、鋼鉄だけでは効率良く防げない敵弾の侵徹作用を妨害することで防護性能を高めたものである[11][12][13]

複合装甲の内部に用いられると考えられている物質には、セラミック劣化ウランチタニウム合金繊維強化プラスチック合成ゴムなどである。

セラミックを使用した複合装甲はAPFSDS弾やHEAT弾といった対戦車用砲弾には有効であるとされる。セラミックのユゴニオ弾性限界は鋼鉄の10倍以上でありHEAT弾が作るメタルジェットの圧力ではセラミックのユゴニオ弾性限界を超えることができず、さらにセラミックは原子間結合が強く亀裂の成長速度がメタルジェットの速度よりも遅いため、メタルジェットは部分的に破砕されたセラミックの固体断片を含んだ金属流体を先端部から侵徹口まで排出しながら進まなければならないが、セラミックの断片が後続のメタルジェットと干渉するため突入速度が減殺される。セラミックの破砕に消費されるエネルギーも侵徹の運動エネルギーを殺ぐことになる。これにより、HEAT弾のメタルジェットと同様にそれよりは速度の劣るAPFSDS弾に対してもHEAT弾と同様の侵徹作用を重金属製の弾芯が用いているため、高い防護性能を持つ。

セラミックは割れやすいという欠点を持っているため、速度が遅い弾頭に対しては容易に割れてしまい、従来型の砲弾に対する防護性能では均質圧延装甲に劣る。複合装甲では、小銃弾や爆弾の破片などは均質圧延装甲で防ぎ、APFSDS弾やHEAT弾はセラミック装甲で防ぐように積層構造になっている[出典 1]

増加装甲

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増加装甲を取り付けたPT-91

増加装甲、または付加装甲と呼ばれるものは、戦闘車両の主装甲や基本装甲と呼ばれる従来の装甲に追加的に取り付けられる。被弾によって破損した装甲を簡単に交換でき、空輸などで重量制限があれば脱着によって対応し、将来新たな装甲技術が開発された時に容易に対応できる。単純な鋼板と爆薬を詰めたもの、鳥カゴ状の3種類がある。後付でなく当初から車両に組み込まれている物はモジュール装甲と呼ばれる。 テンプレート:-

鋼板
単純に鋼鉄板を追加するものでは、主装甲の内外のどちらに装着するかで大きく二分されるが、多くは内側に装着される。
主装甲の外側に装着されたものとしては、シュルツェン(Schürzen:ドイツ語でエプロンの意)という第二次世界大戦時のドイツの戦車の側面や砲塔等に取り付けられた増加装甲がある。元々は対戦車ライフルからの被害を軽減させることを目的としたものではあったが、主装甲から離して取り付けられていたため成形炸薬弾の威力を減じる効果があった。III号戦車等、側面の装甲の比較的薄い戦闘車両に使用された。

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爆発反応装甲
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爆発反応装甲(ERA : Explosive Reactive Armour、エクスプローシブ・リアクティブ・アーマー)は、タイル形状の鋼製ケースに低感度の爆薬が詰められ、主装甲にこれを多数、ボルト留めされるものが一般的である。
APFSDS弾やHEAT弾の侵徹時の高温高圧で内部の爆薬が起爆し、ケースの鋼板を高速で吹き飛ばす。外側の鋼板は多くの場合、侵徹体の侵入軸に対して斜めに高速移動する。鋼板が侵徹体を破砕するかその運動を阻害して、主装甲への侵徹を妨げる。ERAは砲弾の弾道に対して傾斜している必要がある。[14]
ERAは主装甲の表面で爆発するため、ケースの裏板と爆風が主装甲を通じて車体内部に伝わり、搭載機器や搭乗員に障害を与える可能性があり、飛散する鋼板の破片が、近傍の歩兵や車両等に被害を与える可能性がある。このため、小口径弾の弾着では爆発しないように爆薬の感度を抑えている。APFSDS弾でもL/D比[15]の小さなものには効果が少なくなる[出典 1][16]
ケージ装甲
ケージ装甲(en:Cage armor)は、バー・アーマー(Bar Armour)、スラット・アーマー(Slat Armour)、スタンドオフ・アーマー(Standoff Armour)、鳥篭装甲とも呼ばれるが英語表記や日本語表記での定まったものはない。これは鉄柵状や格子状の増加装甲であり、車両の周囲に装着する事でHEAT弾頭を備えたロケット弾の攻撃を無力化する目的で取り付けられた一種のスペースド・アーマーである。部分的に装着される事も多い。弾頭の直径が70mmのRPG-7が素通りしないよう鉄柵の間隔は50mm程度になっており、弾頭のどこが柵に触れても成形炸薬による効果を無力化するように考えられている。
弾頭先端部なら直ちに成形炸薬弾の弾頭が爆発し、その際に投射されるメタルジェットの焦点は20-40cm先で収束され侵徹力が最大となるように設計されているため、スラット装甲は車体から50cm程度離して装着されている。弾頭先端部以外が柵に当った場合には、信管が作動しないまま落下するか、作動する前に投射される金属コーンが変形してメタルジェットの威力が減殺される。HEAT弾頭以外にはほとんど効果がなく、車両の幅が広がるので輸送時や路上での行動の自由が阻害されるが、装甲としては極めて安価で軽量である。[出典 2]
なお、RPG-7に関しては弾頭は電気信管であるため、金網に接触することで信管がショートし不発となる確率が高い。ベトナム戦争において、この点を利用した金網による防御策で、実に半数が不発となった。

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チタン装甲

チタンは密度が鋼鉄の半分で耐弾性はおおよそ鋼鉄と同等とされ、兵器が軽く作れて良いが、金属チタン自身が高価であり、切削加工にも技術が求められる。 大深度に対する圧力に耐える必要がある潜水艦ではチタン船殻や、航空機ではA-10のコクピットと操縦系を保護する通称『バスタブ』装甲に採用されたことがある。戦車のハッチやスカート部分、付加装甲では採用例があるが、主装甲では使われていない[出典 1]

飛散防止内張り

鋼鉄製等の装甲ではHESH弾や徹甲弾のような砲弾の衝突時に装甲内面の金属が衝撃波で飛散する事がある。また、貫徹された場合には弾体の残余が装甲金属と共に高温流体となって内部に飛散する。

兵員室や砲塔などの内壁にスポール・ライナー(spall liner)と呼ばれるアラミド繊維や繊維強化プラスチック等を貼り付けることで車内にこれらの飛散物が広がるのを可能な限り抑制する。元々は比較的軽装甲の車両で使用されていたが、主力戦車での採用も多くなっている[出典 1]

その他の装甲と同等技術

電磁装甲

テンプレート:Main 米国を中心に開発が進められている新しい装甲の技術で[出典 3]2009年現在も実用はまだ先と考えられている。

アクティブ防護システム

アクティブ防護システム (Active Protection System , APS) は、対戦車擲弾対戦車ロケット弾や対戦車ミサイルの接近をレーダー・センサー類で感知し、自動的にジャミングで無力化したり飛翔体や小型ミサイルなどで迎撃する物である。重量をあまり増やさずに全方位の防衛が可能になる反面、コストや信頼性などの面でまだ課題も多い。

ソ連ロシアは既に80年代に一部で導入しており、他には中国99式戦車が装備するJD-3もある、最近ではイスラエルのラファエル社が開発したトロフィーAPSのメルカバMk.4への採用が公表され、2011年3月1日にパレスチナ自治区のハンユニス近郊で武装勢力からロケット弾攻撃を受けたが、トロフィーAPSが作動し、実戦で初めて迎撃に成功している。また、欧米でも同種のシステムの開発・採用が進められている。

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. モノコック構造を用いた装甲では、装甲対象物を製作する際に装甲そのもので対象物を作ってしまう事で、耐久性を向上させるものである。モノコック構造では、本体と外板を一体化して作る事で、同じ強度でより軽い構造物を作ったり、同じ重量でより高い耐久性を持たせる事が可能である。
    戦車で例えるなら、車体を作る際に従来のシャーシの構造を使わずに、装甲板を折り曲げたり削り出して作った車体をシャーシとして、それに内部構造や外部の装備を取り付けていく。これにより、同じ強度で軽くなり運動性能の良い戦車ができる。しかし設計・加工技術が求められ製造コストも高くなる。
  2. 主力戦車の空間装甲としては、車体側面のキャタピラ部分では、サイドスカードが外側の装甲、車体側面の装甲が主装甲にあたる。
  3. 新しく開発されるHEAT砲弾や対戦車ミサイルはスタンドオフ距離が長くなるように改良が進んでいるが、空間装甲やケージ装甲は2013年現在のところは有効に機能しているとされる。
  4. 小口径弾や破片で傷ついた外側の装甲が比較的簡単に交換できるので、交換できない主装甲の傷より美観的には対処しやすいかも知れない。
  5. 空間装甲としては、イスラエル国防軍(IDF)の戦闘車輌は、燃料タンクや工具箱等を車体周囲に配する事で効率的に防護力を高めた構造になっている。
  6. スウェーデン陸軍のかつての主力戦車Strv.103やイスラエルのメルカバでは、車内のエンジンを装甲として考える戦車の設計思想がある。多くの戦車では給排気と放熱の為に装甲しにくいエンジンを車体の後部に配置しているが、これらの戦車では車体前部に配置することでエンジンとその空間を防弾構造として利用している。たとえエンジン部に被弾して戦車が行動不能になっても失われるのは戦車であり戦車兵は無傷、または最小の傷で済み、後部のハッチから逃げ延びれば再び別の戦車で再戦できるという思想である。 乗組員の生存率を優先するのは、戦車より戦車兵の教育コストが大きい、または人口が少ないなどの理由である。ただしHEAT弾に対しては有効な空間装甲として機能しても、APFSDS弾に対しては防弾鋼ではないエンジン・ブロックの防弾能力はかなり限定的であると云われる。
  7. 鋳造装甲を同じ厚さの均質圧延装甲と比較すると、15-20%耐弾性能が劣るとされる
  8. 厚みがあると剛性が高くなるのは、ダンボールの板に厚みを与えている理由と同じである。
  9. アルミニウムは物質密度と衝撃波速度の積で表現される「衝撃インピーダンス」が鋼鉄に比べて低く、侵徹長は衝撃インピーダンスに反比例するためである。
  10. 複合装甲は特殊装甲(スペシャル・アーマー)とも呼ばれた時代もあった。
  11. 対戦車ミサイルが登場しても有効な装甲が開発されず、その後登場した複合装甲が採用されるまでの1960年代から1970年代の戦車の装甲は、レオパルト1AMX3074式戦車のように装甲厚が薄く、機動性を重視したものが中心となった時期がある。
  12. 最初に複合装甲を採用したのは1964年のソビエト製のT-64であった。西側では1976年に英国のチョバム(Chobham)戦闘車両研究所が新型装甲の開発成功を伝え「チョバム・アーマー」と呼ばれるようになった。
  13. 複合装甲は1978年に西ドイツレオパルト2に、1980年アメリカ合衆国M1エイブラムスに、1983年イギリスチャレンジャー1にそれぞれ採用されて登場した。
  14. APFSDS弾用とHEAT弾用のERAでは構造が多少異なるとされる。
  15. L/D比とは弾芯の長さ"L"と直径"D"の比である。21世紀現在ではL/D比が30まで高くなっている。
  16. ERAの取り付け位置を前方左右側面だけとして後方に随伴歩兵などの安全圏を設けるような運用も行われる。

出典

  1. 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 一戸祟雄著 『装甲の変遷と種類』 「軍事研究2009年3月号」 (株)ジャパン・ミリタリー・レビュー 2009年3月1日発行
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web

関連項目