杉本秀太郎
杉本 秀太郎(すぎもと ひでたろう、1931年1月21日 - )はフランス文学者・文芸評論家・エッセイスト。国際日本文化研究センター名誉教授、京都女子大学名誉教授。日本芸術院会員。
来歴・人物
1948年、旧制四高に入学。
1949年、学制が変わり、新制京都大学文学部仏文科に入学。
1953年に卒業後、1956年、同大学院に入学し、1961年、博士課程単位取得満期退学。
1962年、京都女子大学文学部専任講師、1965年、助教授、1971年、教授。
1988年に新設された国際日本文化研究センター教授に就任し、1996年に定年退職。同年に日本芸術院会員、筑摩書房より全5巻で『杉本秀太郎文粋』が刊行された。
次女に料理研究家の杉本節子(関連著書多数)、三女に京都造形芸術大学非常勤講師の杉本歌子がいる。
文化財としての杉本家住宅
杉本家は1743年(寛保3年)に「奈良屋」の屋号で京都・四条烏丸に呉服商として開業した。現存する杉本家住宅は1870年(明治3年)の建立で、1990年(平成2年)に京都市指定文化財に指定されてから、(財)奈良屋記念杉本家保存会が維持運営にあたっている。2010年(平成22年)には国の重要文化財に指定された。[1]
敷地300坪にわたる京都市最大規模の古い町屋建築であり、江戸時代の大店の構えを残し、祇園祭の際には、「伯牙山」(はくがやま)のお飾り場として、通りに面した「店の間」に、「ご神体」や懸装品が飾られる。当主の秀太郎は、なるべく自然の趣を再現させるべく、庭にワレモコウやフジバカマを育てている。毎年、花ニレや水仙が枯れた後、芽を出すフジバカマは、秋の七草に数えられるが、今では絶滅危惧種となっている。(香りが良いので、)昔は陰干しにし、箪笥(たんす)にしまっていたという。
- 屋敷地一帯は、平安時代には、関白となった公卿・藤原頼忠の屋敷があった所で、歌人で有名な(息子の)藤原公任も住んでいた。屋敷の真ん前が「矢田寺」という寺で、「平家物語」を語る琵琶法師たちの集合場所だったそうである。だから前の通りは(平安時代には)、琵琶法師や、藤原家の召使(家人)たちが行き来していたんではないか。注意を凝らせば、京都には、まだまだ、「平安時代の匂い」の感じられる物は、ところどころに残っているんじゃないか。
と杉本秀太郎はいう[2]。
受賞歴
著書
- 新編洛中生息 ちくま文庫 1987
- 文学演技 筑摩書房 1977、筑摩叢書 1991
- 文学の紋帖 構想社 1977
- 私の歳時記 弥生書房 1979
- 続洛中生息 みすず書房 1979
- 回り道 みすず書房 1981
- 西窓のあかり 筑摩書房 1983
- 伊東静雄 <近代日本詩人選18>筑摩書房 1985、講談社文芸文庫 2009
- 絵草紙 創樹社 1986
- ピサネロ装飾論 <アートコレクション>白水社 1986
- 花ごよみ 平凡社 1987、講談社学術文庫 1994
- 新版が「春夏秋冬」の全4巻 <コロナ・ブックス>平凡社 1998
- 徒然草 <古典を読む>岩波書店 1987、岩波同時代ライブラリー 1996
- 「徒然草」を読む 講談社文芸文庫 2008
- 絵-隠された意味 平凡社 1988
- パリの電球 岩波書店 1990
- 洛中通信 岩波書店 1993
- 異郷の空-パリ・京都・フィレンツェ 白水Uブックス 1994
- 平家物語-無常を聴く 講談社 1996、講談社学術文庫 2002
- 杉本秀太郎文粋 全5巻 筑摩書房 1996
- 1.ボードレール ピサネロまたは装飾論-ドビュッシー等のフランス文学・芸術論
- 2.京住記 徒然草 洛中生息-京都歳時記
- 3.諸芸の論 絵-隠された意味 植物的なもの-芸術論
- 4.蔦の細道 大田垣蓮月 江戸の散文-近世論
- 5.幻城 荷風断腸 伊東静雄-近代日本の作家・作品論
- まだら文 新潮社 1999-特異な装丁
- 音沙汰 一の糸 朝日新聞社 2000-巻末に書誌年譜
- 神遊び 展望社 2000 ISBN 4-88546-066-2
- 品定め 展望社 2001
- 青い兎-現代随想集 岩波書店 2004
- 半日半夜-杉本秀太郎エッセイ集 講談社文芸文庫 2005
- 京都夢幻記 新潮社 2007
- 火用心 編集工房ノア 2008
- ひっつき虫 青草書房 2008
- だれか来ている 小さな声の美術論 青草書房 2011
共著
- 竜安寺 〈古寺巡礼京都33〉淡交社、1978、新版2009 (写真解説・道浦母都子と)
- 新京都案内 都鄙問答 森裕貴写真、 [岩波グラフィックス16] 岩波書店、1983
- 散文の日本語 〈日本語の世界14〉中央公論社、1981 (大槻鉄男との共著)
- 京の町家 淡交社、1992(西川孟写真の解説エッセイ)
- 夢の抜け口 青草書房、2010 (甲斐扶佐義写真のエッセイ集)
- みちの辺の花 安野光雅絵 講談社 1994
- みちの辺の花 カラー版 講談社学術文庫 2005
- 花 安野光雅絵 岩崎書店 1995、児童向け絵本
- 洛中巷談 (河合隼雄・山折哲雄・山田慶児と) 潮出版社 1994
- 先端科学の現在-大腸菌から宇宙まで (河合隼雄・山折哲雄・山田慶児と) 潮出版社 1998
- 桑原武夫-その文学と未来構想 淡交社 1996 (師の評伝編著)
翻訳
- 人生語録 アラン 井沢義雄と共訳、弥生書房, 1960
- アラン文学論集 1964/改訳版『アラン著作集8 文学折りにふれて』 1981、1997、各白水社
- 形の生命 アンリ・フォシヨン 岩波書店, 1969/改訳版 平凡社ライブラリー, 2009
- 彫刻家との対話 アラン 弥生書房, 1970、新版1988
- R.シュトラウス クロード・ロスタン <不滅の大作曲家>音楽之友社, 1971
- 音楽のために-ドビュッシー評論集 白水社, 1977、新版1993、2002
- ペレアスとメリザンド モーリス・メーテルランク[3] 湯川書房, 1978/岩波文庫, 1988
- 音楽家訪問-ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ アラン 岩波文庫, 1980
- 象徴派芸術 フィリップ・ジュリアン 白水社 1982、新版2004
- 詩集 温室 モーリス・メーテルランク 雪華社, 1985
- 酔いどれ船 アルチュール・ランボー 京都書院, 1988
- 昔の巨匠たち-ベルギーとオランダの絵画 ウジェーヌ・フロマンタン 白水社, 1992
- 悪の花 シャルル・ボードレール 弥生書房, 1998
- 赤い百合 アナトール・フランス 臨川書店, 2001 -愛蔵版も刊
評伝
- 吉岡秀明 『京都綾小路通 ある京都学派の肖像』(淡交社、2000年3月)
連載
- 聚美滴滴-『聚美』、2011年10月より連載。
脚注
- ↑ 住宅については『京 杉本家の四季 町家270年の歴史と暮らし』(奈良屋記念杉本家保存会編、ランダムハウス講談社、2009年)に詳しい。
- ↑ (朝日新聞夕刊・文化欄『風韻』、平成15年(2003年)7月18日、財団法人奈良屋記念杉本家保存会ホームページより)
- ↑ 解説を担当した。メーテルリンク『ガラス蜘蛛』(高尾歩訳、工作舎, 2008)ISBN 9784875024118。博物文学で、後期は昆虫・植物の世界を、神秘主義的世界観で捉えた作品が多い。