接吻
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接吻(せっぷん)は、口づけ、キス / キッス(テンプレート:Lang-en)、チュウともいい、愛情表現のひとつ。人が自分の親愛の情その他を示すために唇を、相手の額や頬、唇などに接触させる行為。
目次
西洋におけるキス
キスの一種であるディープキス(フレンチ・キス)は、唇を触れ合うだけでなく、互いに舌を相手の口腔内に挿入、舌を絡め合う、濃厚なもの(唇を触れ合うだけのものは、これと区別してソフトキスと呼ばれる)。「フレンチ・キス」とはイギリスから見て「フランス式のオープンな」と揶揄してつけられた。日本ではフレンチ・キスをライト・キスのことだとする誤解があるが、これは日本とその他の国との間の、フランスに対するイメージの相違に由来するという説もある[1]。ただし、それだけではない。フランスでは、(他の欧州圏と違って)男女間でも日常的に非常に頻繁に(挨拶として)キスがなされるが、そのキスはライト・キスである。
ロシア人を始めとする東スラブ系や、フィンランド人を始めとする北方のフィン・ウゴル系の人々は男性同士でも親愛の情を示すために互いに相手の頬にキスをし、時には唇同士でキスをする。西スラブ系(ポーランド人など)・ラテン系・ゲルマン系の人々には、すぐ隣接する文化圏でありながら、それは異様に思えると言うし、ラテン系の人々は恋人たちであれば、特に音を立ててキスするなど、様々なバリエーションがある。
かつてはkissを「キッス」と発音することが多かった。
首などにつく医学名『吸引性皮下出血』(いわゆる内出血)はキスマークとも呼ばれ、前夜に性的行為をした示唆と見られることがある。
唇以外へのキス
唇と唇を接する正式のキスではなく、唇を相手の頬に付ける(または付けるフリをする)キス。唇をつけるかわりに、「チュッ」(英:smack)という擬音を発することも多い。口紅を塗った女性が相手に唇を接すると、相手に口紅が移るので、それを避けるという目的もある。
また、唇を相手の手の甲にキスをすることもある。昔の西洋において紳士や淑女に対して行うことがある。
妊婦に対しては膨らんだお腹にキスをすることもある。
東洋におけるキス
日本
「キス」という言葉が入ってきたのは明治以降であり、それが「接吻」と和訳されたのが明治20年(1887年)の頃(訳語そのものは文化13年(1816年)の『ズーフ・ハルマ』に遡る)であった。文明開化を迎える以前も以後も(もちろん現代でも)、挨拶としてのキスは一般的に成立していない。実際、男性が初対面の女性にいきなりキスをすれば、日本の法制では強制わいせつ罪や暴行罪が成立する。
ただし、性行為としてのキスは、昔からあった。文献に残る以前の太古の時代からキスはあったと推定されるようだが、はっきりと文献に残る分でも、室町時代からキスはあった。当時は「口吸い(くちすい)」と呼ばれていた。動詞としては「口吸う」という言葉があった。他に「口口」や、江戸後期には口2つで「呂」などと呼ばれた例もあるが、「口吸う」がもっとも古く、平安時代に遡る。郭言葉では「おさしみ」とも言い、これはそれが2人で刺身を食べる様に似ている、ということらしい。九州地方では「あまくち」と言ったらしく、『ズーフ・ハルマ』の該当項目に訳語として挙げられている。
時代が下るとともに、テレビや映画、音楽などといった大衆文化、ならびに文学や芸術の分野における取り扱いが増えていくとともに、特に恋人の関係にある者同士での「キス」がとりたてて珍しいものではなくなっていった。
近年の日本では、周囲の目を気にすることなく、気軽に街中や路上で行う若者も目立つようになっている。
また、セックスよりキスの方をより重視する男女が多く、特に女性にそうした傾向が強い、との調査結果もある。この(女性の方にこうした傾向が強いという)結果について日本の教育者の一人である村瀬幸浩は、まず男女間で求める快感に相異があり、瞳を合わせながら顔を近づけるという面でキスの方が精神的な親密度を高く持つとして、肉体的な快楽をより求める男性に対して、女性は触れ合うときの一体感や安心感をより求めるからである、との考え方を示している[2]。
また、風俗業に携わる女性の中には、客としての男性に自分の唇へのキスを許さない女性もたくさんいる。
若い世代におけるキス観と状況
近年では、中高生の年代でも彼氏、彼女の関係にある者同士、すなわち恋人同士でのキスに対する容認意識は高くなっており、日本の中高生にとってキスはいくらか日常的なもの、当たり前のものとなっている、との調査結果も示されている[3](ただし後述のように、全体に占める比率は、まだ多数派にはなっていない)。
同様に、近年のある調査のもとで、大学生の年代におけるキスの経験率にはさほどの変化がなかった一方で、中高生の年代におけるキスの経験率には大きな上昇があるということが、それぞれ確認されている[4]。
詳らかには、1990年代前半頃から2000年代中盤頃までの間に、中高生、すなわち中学生、高校生のキスの経験率はともに、特に女子の間で大幅に上昇[5]。
その中でも中学生の女子のそれは男子のそれを上回る大幅な上昇率となり、近年も活発化の兆候が見られている[5]。同調査によると1987年で、中学生の5%、高校生の25%程度に過ぎなかったキス経験者は、2005年には中学生2割弱、高校生で5割程度に増えている。
また、小中高生の間では男女ともに、同性同士でもキスを面白がって冗談半分に行なうことがある。
言語上の諸表現
現代にあっては、舌を用いて行う「ディープ・キス」(単に略して「ディープ」ともいう)の語も広く膾炙し、「生まれて初めてのキス」を表す「ファースト・キス」という和製英語などが生まれた。
また唇同士の接触(接吻)のみならず、唇を何らかのものに接触させるという行為を一般的に指す「チュウ(ちゅう、チュー)」という、擬音を元にした俗語も生まれ、若者を中心に幅広く用いられるようになった。なお、接吻の擬態語としては江戸時代に既に「ちうちう」という表現を見ることができる。
他の国々のキス
わざわざ文献を示すまでもなく、世界中のあらゆる国でキスは広く行われている。もちろん、歴史的にも太古の時代からキスはなされていたと推定される。
キスをするのは、人間だけではない。チンパンジーやボノボもキスをする。このことは生物学者が既に報告している通りで、ネット上でも画像が公開されている(ただし、キスという行動を、独自の意味のあるシンボルとして認識しているわけではない)。
映像表現
絵画などにおいて、接吻は愛の表現モチーフの一つとして使われることがある。
歴史
カイロのエジプト考古学博物館には、古代エジプト第18王朝のアクエンアテン王(在位:紀元前1350年頃 - )が娘に接吻する石像が残っている。 また、世界遺産セラ・ダ・カピバラ国立公園にある壁画には、性別ははっきりしないもののヒトとヒトがキスをしているように見える壁画があり、先史時代から人類にはキスという概念が存在したことになる。
事件
- 2005年、カナダの15歳の少女が、同級生のボーイフレンドの少年とのキスが原因で死亡する事故があった。これは、少女がピーナッツアレルギーであるのを知らずに、少年がその日の朝にトーストにピーナッツバターを塗って食べ、そのままキスをしたことが原因だと判明している。
- 2007年4月19日、イスラエル人の女性がキスで舌を絡ませ、男性の舌を噛み切るという事件があった。山田風太郎の『八犬伝』にも、“舌切り雀”という名で娼婦の殺人術として登場する。
脚注
- ↑ complex fraction:COLUMN(「フレンチキス」の定義)
- ↑ 男女の意識の差 - L25
- ↑ CiNii - 中学生・高校生の男女交際と性的衝動との関係について : 横浜地域での調査をもとにして
- ↑ 日本性教育協会|研究事業|青少年の性行動調査 - 日本性教育協会
- ↑ 5.0 5.1 第6回「青少年の性行動全国調査」(2005年) 社団法人日本性教育協会 - 社団法人 日本家族計画協会
参考文献
- 暉峻康隆『日本人の笑い』(1984年)文春文庫(文藝春秋社)
関連項目