御厨貴
テンプレート:Infobox 人物 御厨 貴(みくりや たかし、1951年4月27日 - )は、日本の政治史学者・政治学者(東京大学博士(学術))。放送大学教授、東京大学・東京都立大学名誉教授。専門は近代日本政治史、オーラル・ヒストリー。復興庁復興推進委員会委員長代理を歴任。
目次
人物
東京都生まれ。文京区立第六中学校、東京都立小石川高等学校、駿台予備校を経て、東京大学法学部卒業。
東京大学法学部助手、東京都立大学法学部助教授/教授、政策研究大学院大学教授、東京大学先端科学技術研究センター教授を経て、2012年3月に東京大学を退職。東京大学名誉教授の称号を得る。2012年4月から放送大学教養学部教授。2010年に博士論文「明治国家をつくる 地方経営と首都計画」を東京大学に提出し、博士(学術)の学位を取得。
高校時代に「平沼騏一郎と国本社」という論文を校友誌に発表したところ、「朝日新聞」文化面のコラムで紹介され、政治史研究者への道を強く意識した[1]。
1980年、『明治国家と地方経営』で東京市政調査会藤田賞、1996年、『政策の総合と権力』でサントリー学芸賞、1997年に『馬場恒吾の面目』で吉野作造賞を受賞。祖父は戦前の貴族院議員で、司法大臣[2]にも就いた、父は裁判官。趣味はボウリングと自宅でのワイン会。
東京大学で三谷太一郎、伊藤隆、佐藤誠三郎らの指導を受け、明治国家中期の政治史、とりわけ首都を含めた各地方の都市計画・開発を巡る政治過程の分析からスタートし、戦後の東京都政や国土開発など現代政治の分析にも手を広げた。政治学の観点から考察する建築学、都市計画にも造形が深い。アメリカ流のオーラル・ヒストリーの手法を日本に持ち込み、多くの政治家や関係者の聞き取り調査を行っている。
1990年代後半からは論壇でも盛んに同時代の政治を論じ、書評家としても知られる。近年はジャーナリズムの分野での活動が多く、テレビのコメンテーターや解説、週刊誌などにも多く登場する。2007年4月からは政治評論家・毎日新聞社編集委員(現特別顧問)の岩見隆夫の後任として、TBSテレビ「時事放談」の司会者を務めている。2010年7月、内閣府公文書管理委員会委員長に就任。東北地方太平洋沖地震を受け、2011年4月に発足した「東日本大震災復興構想会議」の議長代理に就任。2012年2月、復興庁復興推進委員会委員長代理に就任。
定年前の60歳で東京大学を辞職し放送大学に移籍。その理由について「学問、夢のある研究をするためには、無駄や余裕が必要。かつての東大はそういうものを大切にしていたのに、今はあくせくしていて、まったくなくなった」と述べている[3]。
メディアでの発言
2009年8月5日付け産経新聞に掲載のインタビューおいて、民主党による政権交代の必要性について問われ、「民主党の政策がまとまっていないという指摘があるが、政権を獲ったことがないから仕方がない面もある。」、外交や安全保障問題については「現実路線を踏まえて軌道修正すればいい。わからない問題に無理やり答えを出す必要はない。」と発言[4]。民主党への政権交代が果たされた後の2011年、中央公論紙上での対談においては、「安全保障上の危機が発生したときには、今の民主党政権では対応不能。尖閣や米軍基地の問題で頭をのぞかせたように、外国を巻き込んだ案件は、内向き学級会主義では乗り越えられない可能性が高い。」「自民党ならば「危ない」と騒ぎ立てているうちに、誰かが何かやって形をつけるかもしれない。しかし民主党は、みんなが横一線に並んで「あ~」と言っている間に、深刻な事態に陥るような気がする。」と述べた[5]。
2011年10月13日付け毎日新聞に掲載のインタビューおいて、大阪市長選候補(当時)の橋下徹について、「彼はある種のポピュリストの典型で、鬱屈した気持ちの人たちに夢を見せている」と分析。さらに「吉本新喜劇のドタバタを好む大阪の風土にうまく乗っかった、『小泉劇場』の大阪版」と語った[6]。
略歴
- 1970年(昭和45年)3月 東京都立小石川高等学校卒業
- 1971年(昭和46年)4月 東京大学教養学部入学
- 1975年(昭和50年)
- 3月 東京大学法学部卒業
- 4月 東京大学法学部助手
- 1978年(昭和53年)10月 東京都立大学法学部助教授
- 1988年(昭和63年)10月 東京都立大学法学部教授
- 1989年(平成元年)5月 ハーバード・イェンチン研究所客員研究員(- 1991年5月)
- 1997年(平成9年)10月 政策研究大学院大学客員教授
- 1999年(平成11年)4月 政策研究大学院大学教授
- 2002年(平成14年)12月 東京大学先端科学技術研究センター教授
- 2003年(平成19年)4月 放送大学客員教授(- 2012年3月)
- 2010年(平成22年)
- 2011年(平成23年)4月 東日本大震災復興構想会議議長代理(- 2012年2月)
- 2012年(平成24年)
- 2月 復興庁復興推進委員会委員長代理(-2013年3月)
- 3月 東京大学を辞職[7]
- 4月 放送大学教養学部教授(現職)
- 4月 東京大学先端科学技術研究センター客員教授(現職、非常勤)
- 4月 国際日本文化研究センター客員教授(現職、非常勤)
著書
単著
- 『明治国家形成と地方経営――1881-1890年』(東京大学出版会、1980年)
- 『首都計画の政治――形成期明治国家の実像』(山川出版社、1984年)
- 『政策の総合と権力――日本政治の戦前と戦後』(東京大学出版会、1996年)
- 『東京――首都は国家を超えるか 20世紀の日本⑩』(読売新聞社、1996年)、編集委員(全12巻)
- 『馬場恒吾の面目――危機の時代のリベラリスト』(中央公論社、1997年/中公文庫、2013年9月)
- 『本に映る時代』(読売新聞社、1997年)
- 『明治国家の完成 1890-1905 日本の近代③』(中央公論新社、2001年/中公文庫、2012年12月)、編集委員(全16巻)
- 『オーラル・ヒストリー――現代史のための口述記録』(中公新書、2002年)
- 『「保守」の終わり』(毎日新聞社、2004年)
- 『ニヒリズムの宰相―小泉純一郎論』(PHP研究所[PHP新書]、2006年)
- 『天皇と政治――近代日本のダイナミズム』(藤原書店、2006年)
- 『明治国家をつくる――地方経営と首都計画』(藤原書店、2007年)
- 『表象の戦後人物誌』(千倉書房、2008年)
- 『政治の終わり、政治の始まり―ポスト小泉から政権交代まで』(藤原書店、2009年)
- 『後藤田正晴と矢口洪一の統率力』(朝日新聞出版、2010年3月)
- 『権力の館を歩く』(毎日新聞社、2010年7月/ちくま文庫、2013年12月)
- 『知と情―宮澤喜一と竹下登の政治観』(朝日新聞出版、2011年3月)
- 『「質問力」の教科書』(講談社、2011年3月)
- 『「戦後」が終わり、「災後」が始まる。』(千倉書房、2011年12月)
- 『政治へのまなざし』(千倉書房、2012年3月)
- 『知の格闘─掟破りの政治学講義』(ちくま新書、2014年1月)
共著
- (小塩和人)『忘れられた日米関係――ヘレン・ミアーズの問い』(ちくま新書、1996年)
- (天川晃)『日本政治史――20世紀の日本政治』(放送大学教育振興会、2003年)
- (天川晃・牧原出)『日本政治外交史――転換期の政治指導』(放送大学教育振興会、2007年。改訂版2013年)、後者は牧原との共著
- (半藤一利・原武史)『卜部日記・富田メモで読む人間・昭和天皇』(朝日新聞社、2008年)
- (日本放送協会)『挫折した政党政治 さかのぼり日本史③ 昭和~明治』(NHK出版、2011年9月)
- (松原隆一郎)『政治の終焉』(NHK出版新書、2013年4月)
- (芹川洋一)『日本政治ひざ打ち問答』(日本経済新聞出版社「日経プレミア新書」、2014年4月)
編著
- 『シリーズ東京を考える (1) 都政の50年』(都市出版、1994年)
- 『シリーズ東京を考える (3) 都庁のしくみ』(都市出版、1995年)
- 『歴代首相物語』(新書館、2003年、新版2013年)
- 『時代の先覚者・後藤新平 1857-1929』(藤原書店、2004年)
- 『正伝・後藤新平別巻 後藤新平大全――後藤新平の全仕事』(藤原書店、2007年)
- 『宰相たちのデッサン――幻の伝記で読む日本のリ-ダー』(ゆまに書房、2007年)
- 『オーラル・ヒストリー入門』(岩波書店、2007年)
- 『東大先端研物語-東京大学先端科学技術研究センター20年のあゆみ』(中央公論事業出版、2008年)
- 『変貌する日本政治――90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房、 2009年)
- 『近現代日本を史料で読む』 (中公新書、2011年4月)。※「大久保利通日記」から「富田メモ」まで四十余りの史料紹介
- 『「政治主導」の教訓 政権交代は何をもたらしたのか』(勁草書房、2012年3月)
共編著
- (青木保・山折哲雄・川本三郎・筒井清忠)『近代日本文化論 (全11巻)』(岩波書店、1999年-2000年)
- (北岡伸一)『戦争・復興・発展―昭和政治史における権力と構想』(東京大学出版会、2000年)
- (中内潤)『中内功―生涯を流通革命に献げた男』(千倉書房、2009年)
- (牧原出・佐藤信)『政権交代を超えて―政治改革の20年』(岩波書店、2013年11月)
共同での聞き書き
※オーラル・ヒストリーでの回想
- (渡辺昭夫)『首相官邸の決断―内閣官房副長官石原信雄の2600日』(中央公論社、1997年/中公文庫、2002年)
- (伊藤隆)『情と理―後藤田正晴回顧録 (上・下)』(講談社、1998年/講談社+α文庫、2006年)
- (伊藤隆)『政治とは何か―竹下登回顧録』(講談社、2001年)
- (中村隆英)『聞き書 宮澤喜一回顧録』(岩波書店、2005年)
- (伊藤隆・飯尾潤)『渡邉恒雄回顧録』(中央公論新社、2000年/中公文庫、2007年)
- (伊藤隆)『表舞台 裏舞台─福本邦雄回顧録』(講談社、2007年)
- (飯尾潤)『地方自治に生きる-宮澤弘回顧録』(第一法規、2007年)
- (牧原出)『聞き書 武村正義回顧録』 (岩波書店、2011年2月)
- (牧原出)『聞き書 野中広務回顧録』(岩波書店、2012年6月)
- (苅部直ほか2名)『園部逸夫オーラル・ヒストリー タテ社会をヨコに生きて』(法律文化社、2013年7月)
編纂資料
主なテレビ出演
- 時事放談(TBSテレビ、2007年4月~)
- 爆笑問題のニッポンの教養(NHK総合テレビジョン、2010年2月9日)
- 課外授業 ようこそ先輩(NHK、2010年10月31日)
- 歌うコンシェルジュ(NHK、2011年6月8日)
- 報道ステーション(テレビ朝日、2012年7月20日)