古本
古本(ふるほん)は、出版後に一度は消費者(所有者)の手元に置かれた中古本の呼称。(雑誌などを含む場合もある)。古書(こしょ)とも言う。新本(新刊本)と対応した言葉。厳密には、まだ新刊でも買える書を古本(”セコハン”second handから)と呼び、新刊では買えなくなった絶版物などを古書(稀覯本"'きこうぼん'")という。売れ残ったりして新刊なのに安価で販売される本をゾッキ本という。
概要
本は出版された時代の文化の影響を強く記すものであり、歴史的な価値となるのもある。多くの古本は、所有者が古本屋(古書店)に持ち込み、売却することで再び市場に流通するが、所有者がフリーマーケットやインターネットオークションで直接消費者に販売する事例も見受けられる。新刊時の販売価格を大幅に下回る価格で買い取られるのが一般的だが、まれに極端に流通が少なく需要が多い書籍(希少本あるいはレア本と呼ばれる)が、新刊時の販売価格を上回ることもある。流通に乗った古本は、原則買い取った古本屋でネット(「日本の古本屋」などを参照)なども含め販売され、また業者間の市に出され流通する。店頭での販売価格は各古本屋が、需給関係や本のコンディション(日焼け、汚れ、書込み等)から決定するため、まったく同じ古本でも、店によって価格がだいがい異なる。そのために「せどり」という商売が成立する。ネット環境が整うにつれて、どこにどんな古本があるか、容易に注文できるようになり、古本をめぐる状況が大きく変わっている。
価値
古本はコンディションが良好な方が価格が高いことが一般的だが、著者の署名(特に知人・著名人へ宛名入りの場合)が入っていたり、有名人の蔵書印が捺してある場合などは付加価値とみなされ、価格が上乗せされることもある。戦前戦後すぐで、有名書籍で保存状態が良好であれば、初版の方が高価であることもある。また価格が高い絶版本が、文庫化、復刊、新版刊行、デジタル化されると、古本価格が一気に安くなることもある。
古本の史上最高額については諸説あるが、2011年に『アクションコミックス』が216万ドルで落札された際、「米コミック誌としては過去最高額」[1]だと報じられた。また、2012年に、読売巨人軍監督の原辰徳が自身の愛人の日記を1億円で買い取っていたことが明るみになった際、文芸評論家の坪内祐三は「夏目漱石の日記の原本だって1億円で売れない」[2]との古書店主の意見を紹介するとともに「永井荷風の『断腸亭日乗』の原本がコンプリートで古書市場に出ても1億はいかないと思う」[2]と分析し、日記としては「古書価格史上の最高額」[2]ではないかと指摘している。
販路
古本に新刊にはない魅力を感じ取り、古本を専門に蒐集するマニアも存在し、大きな需要を形成(絶版となってしまい、古本でしか手に入らない書籍も多いため)し、業者らはデパート等で古書市を度々行っている。大学が多い都市部では、卒業する学生が使用した教科書を古本屋に売り、新入生が買うため、学生街には古本屋が複数ある。
古書街
東京都心の神田神保町にある「神田古書店街」は、百数十軒もの古本屋が散在し、世界最大の古書店街となっている。外国ではチャリング・クロス、カルチエ・ラタン、琉璃廠、イスタンブルのサハフラル・チャルシュスのように都市に成立してきたが、英ウェールズのヘイ・オン・ワイは交通の不便な田舎町に成立した珍しい例である。
古書マニアの著名人
- 清末四大蔵書家 - 丁氏兄弟、瞿紹基、楊以増、陸心源
- 柴山大四郎 - 山本周五郎の小説『ひやめし物語』の主人公(田坂具隆監督の映画『冷飯とおさんとちゃん』)
- 暁烏敏
- 山下武
- 草森紳一 - 『随筆 本が崩れる』(文春文庫)
- 紀田順一郎
- 井上ひさし - 遅筆堂文庫
- 鹿島茂 - 『子供より古書が大事と思いたい』(青土社)
- 逢坂剛 - 『古書もスペインもミステリー―逢坂剛対談集』(玉川大学出版部)などがある[3]
- 松岡正剛
- 立花隆
- 荒俣宏
- 坪内祐三
- 岡崎武志
- 横田順彌
- 喜国雅彦
- 唐沢俊一